NOBILES Days
Jump to navigationCatastrophe Vol.1
想像を絶する光景を前にすると、目を奪われて、いつまでもテレビの前を離れられなくなる。
まさに、全てを破壊し尽くすもの。
人も、物も。
家も、車も。
...そして、夢も、希望も。
まずは、今回の災害の犠牲になった方々にお悔やみを言わねばならない。
そして、自分や自分に関係する人たちには幸運にも大きな被害もなく、日常の生活に戻っていることを報告したい。
それにしても、かつてない未曾有の被害を目にして、ライターとして情けないことだが、もはや言葉が見つからない。
だから。
恐らく多くの読者諸兄も体験したことだろうが、この記憶を風化させないためにも、せめて今回俺自身が体験したことを、ドキュメンタリーにしたい。
In the sunshine light
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/1600sec, F3.2, ISO100)
その刹那。
ドンと身体を縦に揺すられた。
平日の金曜日。俺はもちろん会社で仕事をしていた。週明けに締め切りを控えた業務のラストスパートに入ろうとしているときだった。
少し気合いを入れようと思い、書類をまとめ、端を揃えようと机の上で立てた瞬間、揺れが襲ってきた。
たしか高校で習ったことだが、震源が浅い直下型の地震以外では、伝達スピードの違いから、縦揺れ＝P波が、本震とも言える横揺れ＝S波よりもかなり早く到達する。習った当時、興味があったのもあって、俺はそれを鮮明に覚えていた。
だから縦揺れがきた瞬間に俺はその後を予測した。P波にしては強すぎる...きっとかなり強いS波が来る。そして嫌な予感は想像を絶する形で的中する。
数秒程度置いて始まったS波の横揺れは当初は予想の範囲内にあった。だから、物が落ちないように、席から立ち上がって押さえる余裕がまだあった。
だが、揺れは全く緩むことなく続き、むしろ強くすらなっていった。
部長が大きな声をあげる。
「頭を守って！机潜って！！」
その剣幕に全員一斉に机の下へ潜る。
潜るが先か、自分の机に積んでいた書類がばさばさと床に落ちた。
地震はさらに有無を言わさぬような強さになって俺達を揺すった。向かいの机の女性が机の下からこちらに顔を向けて「ウソ、夢みたい」と言った。
その声はさほどオーバーなものではなかったが、普段は飄々としている彼女もさすがに動揺しているように見えた。
あまりに非日常なシチュエーションであったため、それがどのくらいの時間であったか、もはや客観的に推測することも難しい。2〜3分であったような気もするし、「ずっとこのままなんじゃないか」と永遠のようにも感じられた。まさに、夢のようだった。もちろん、nightmare＝悪夢の方だ。
ようやく収まり、全員机の下から這い出す。
机の上を見ると、パソコンやディスプレイが10cmくらいずれ、PC筐体の上に置いておいた先輩からもらった菓子玩のF-1モデルカーは全部落下していた。幸いにして、棚の上に数冊置いておいた本は、やはり10cm程度ずれたものの、落下を免れた。机の上の書類もかなりずれていたが、まああの揺れから考えるほどひどい状態にはなっていなかった。
「あれ！？震源は？」
数日前に東北地方を震源としてそこそこ強い地震が起きていたのが頭をよぎったのだ。iPhoneを手にする。...とその時、
「一旦出て！避難！」
同じフロアにいる総務部長が大声で呼びかけてきた。
これはそのまま追い出される可能性もあると思った俺は、荷物を鞄に放り込み、サンダルを靴に履き替え、たまたま非常口手前にかけてあったコートをとって、避難の列に加わった。やっぱり、身の回りの物は近くに置いておくに限る。
数ヶ月前避難訓練をしたばかりなので、すんなりと非常階段へ出る。あの時は「来たばかりを口実にしやがって」と思ったが、やっぱりやるべきだったのだと、自らの浅はかさを悔いた。
悔いるのもそこそこに、階段を降りながらiPhoneを手繰り、ニュースサイトにアクセスする。
「震源、宮城県沖」
嘘だろ。
「震度7」
7？？？
背筋に冷たい物が走った。
首都圏の我が社でもあの尋常でない強さの揺れと、継続時間だったのだ。東北地方の被害が甚大な物になるであろうことは容易に想像できた。
そしてその後ろに、この文字が続いていた。
「広範囲に大津波警報発令」
聞いたことのない警報は、まさに現実感がなく、まさかその言葉通り、いや言葉の内容をはるかにこえる現実が待っていようとは、想像するべくもなかったのだ。
つづく。
まさに、全てを破壊し尽くすもの。
人も、物も。
家も、車も。
...そして、夢も、希望も。
まずは、今回の災害の犠牲になった方々にお悔やみを言わねばならない。
そして、自分や自分に関係する人たちには幸運にも大きな被害もなく、日常の生活に戻っていることを報告したい。
それにしても、かつてない未曾有の被害を目にして、ライターとして情けないことだが、もはや言葉が見つからない。
だから。
恐らく多くの読者諸兄も体験したことだろうが、この記憶を風化させないためにも、せめて今回俺自身が体験したことを、ドキュメンタリーにしたい。
In the sunshine light
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/1600sec, F3.2, ISO100)
その刹那。
ドンと身体を縦に揺すられた。
平日の金曜日。俺はもちろん会社で仕事をしていた。週明けに締め切りを控えた業務のラストスパートに入ろうとしているときだった。
少し気合いを入れようと思い、書類をまとめ、端を揃えようと机の上で立てた瞬間、揺れが襲ってきた。
たしか高校で習ったことだが、震源が浅い直下型の地震以外では、伝達スピードの違いから、縦揺れ＝P波が、本震とも言える横揺れ＝S波よりもかなり早く到達する。習った当時、興味があったのもあって、俺はそれを鮮明に覚えていた。
だから縦揺れがきた瞬間に俺はその後を予測した。P波にしては強すぎる...きっとかなり強いS波が来る。そして嫌な予感は想像を絶する形で的中する。
数秒程度置いて始まったS波の横揺れは当初は予想の範囲内にあった。だから、物が落ちないように、席から立ち上がって押さえる余裕がまだあった。
だが、揺れは全く緩むことなく続き、むしろ強くすらなっていった。
部長が大きな声をあげる。
「頭を守って！机潜って！！」
その剣幕に全員一斉に机の下へ潜る。
潜るが先か、自分の机に積んでいた書類がばさばさと床に落ちた。
地震はさらに有無を言わさぬような強さになって俺達を揺すった。向かいの机の女性が机の下からこちらに顔を向けて「ウソ、夢みたい」と言った。
その声はさほどオーバーなものではなかったが、普段は飄々としている彼女もさすがに動揺しているように見えた。
あまりに非日常なシチュエーションであったため、それがどのくらいの時間であったか、もはや客観的に推測することも難しい。2〜3分であったような気もするし、「ずっとこのままなんじゃないか」と永遠のようにも感じられた。まさに、夢のようだった。もちろん、nightmare＝悪夢の方だ。
ようやく収まり、全員机の下から這い出す。
机の上を見ると、パソコンやディスプレイが10cmくらいずれ、PC筐体の上に置いておいた先輩からもらった菓子玩のF-1モデルカーは全部落下していた。幸いにして、棚の上に数冊置いておいた本は、やはり10cm程度ずれたものの、落下を免れた。机の上の書類もかなりずれていたが、まああの揺れから考えるほどひどい状態にはなっていなかった。
「あれ！？震源は？」
数日前に東北地方を震源としてそこそこ強い地震が起きていたのが頭をよぎったのだ。iPhoneを手にする。...とその時、
「一旦出て！避難！」
同じフロアにいる総務部長が大声で呼びかけてきた。
これはそのまま追い出される可能性もあると思った俺は、荷物を鞄に放り込み、サンダルを靴に履き替え、たまたま非常口手前にかけてあったコートをとって、避難の列に加わった。やっぱり、身の回りの物は近くに置いておくに限る。
数ヶ月前避難訓練をしたばかりなので、すんなりと非常階段へ出る。あの時は「来たばかりを口実にしやがって」と思ったが、やっぱりやるべきだったのだと、自らの浅はかさを悔いた。
悔いるのもそこそこに、階段を降りながらiPhoneを手繰り、ニュースサイトにアクセスする。
「震源、宮城県沖」
嘘だろ。
「震度7」
7？？？
背筋に冷たい物が走った。
首都圏の我が社でもあの尋常でない強さの揺れと、継続時間だったのだ。東北地方の被害が甚大な物になるであろうことは容易に想像できた。
そしてその後ろに、この文字が続いていた。
「広範囲に大津波警報発令」
聞いたことのない警報は、まさに現実感がなく、まさかその言葉通り、いや言葉の内容をはるかにこえる現実が待っていようとは、想像するべくもなかったのだ。
つづく。
nobilesの投稿(14:54:01-2011-03-14) -
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