NOBILES Days
Jump to navigationCatastrophe Vol.2
昨日の自宅待機から一転、今日は通常勤務との連絡が入り、恐る恐る会社に向かった。
が、ターミナル駅までチャリで出ると、ローカル線が動いていないため、人がほとんど集まっていなかった。却って気持ち悪くて、帰りが怖くなったが、今の仕事を自分の手が離れるところまで進めようと思い、「ままよ」とガラガラの電車へ乗り込んだ。思った以上に電車はスムースで、仕事も無事こなし、早めに切り上げて帰りも無事に帰ってきた。
不安は数限りない。被災の状況をテレビでずっと見ていると気も滅入ってくる。
被災地のためにこんなことをしよう！と活動している人も多くいる。それは本当にすごいことだと思う。
だが、俺は自分と、自分の家族を守ることが精一杯だ。だけど、それが自己中心的だなんて卑下するつもりはまったくない。
自分が早く自分の本来のペースを取り戻し、生産活動をすることが、最終的には日本を再興する力になるのだと思う。被災地のことばかり考えて自分が心の病にかかってもしょうがない。
無理矢理「今俺ができることってなんだ？」なんて背伸びしたってしょうがねぇんだよ。家族と命あって一緒に過ごせる幸せをかみしめて、これまで通りの日常を過ごすことはなんら恥じることでもなんでもない。
っていうか、買い占め、あまりに滑稽じゃない？
停電に備え、一応懐中電灯買いに行ったのだが、当然売り切れていた。じゃあ、と庭に置くソーラーライトを見てみたら、10個もカートに積んでホクホクしているおばちゃんがいた。あんた、この騒動が終わったらそれ、どうすんの？庭に10個も置くの、それ？全部で1万円よ？
あ た ま 冷 や せ バ カ ！！
それを一家に一つ分けるだけで10の家庭がちょっとだけ停電下を明るく暮らせるんだぜ？
頭に来たので俺は買うのを止め、ホームセンターを出た。結局、あんなソーラーライトなんて10個あったって本も読めないよ。停電になったら黙って寝ろ。
Shadow Picture（拡大なし）
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/8sec, F2.5, ISO200)
実は、会社の机の上に飾っておいたこのプレートも地震で倒れてしまっていた。もちろん無傷だったから恭しく元に戻したけどね。
そんなわけで、トビラ文長すぎだが、地震の日のドキュメントを続けよう。
ビルの外側にある非常階段を伝い、フロアのある3階から地上へ出た。
ニュース速報の伝えた「震源宮城県沖、震度7、大津波警報発令」という衝撃的な内容に困惑しつつも、翌日の箱根への旅行についても頭をよぎった。人間なんて勝手なもんだ。いやいや、でも楽しみにしていた大切な家族イベントだからね！その日いつ帰れるか、それで翌日早く起きて出かけられるのか、高速は普通に走れるのか、一気に不安になったのである。
地上に出ると、周囲でスマートフォンを持っているメンバーも多く、同じように情報を見ていた。携帯で家族に電話をしようと試みる人もいたが、やはりこんな事態、全然通じていないようだった。
俺が地上に降りて5分も経ってないと思うが、オフィスに戻るように言われる。一応、内部の安全を確認できたということだろうか。再び非常階段を登ってオフィスに戻る。途中、だいぶ年配の、帰宅方向が同じ数少ない先輩がいたので、「厳しいですかね、電車」などと話しながらゆっくり登っていたら、危うく非常口を中から塞がれるところだった。
パソコンは起動したままだったので、もっと都心寄りに勤務する嫁さんにメールを送った。すぐに無事だとの返事が来た。自分のオフィスでの被害状況を見るにつけ、大丈夫だろうとは思っていたが、安心する。後に報道でもあったが、こういう時は携帯電話回線よりもIPの方が確実に伝わるのかもしれない。
その後も、ニュースサイトを開いたりしつつ、わずかに乱れた机の上を片付けたりしていた。だが、何が次に起こるか分からない。仕事に手はつかないし、コートは脱がず、荷物もすぐ横に置いておいた。
...と、横に座るグループリーダーのところに悠然と仕事の質問をしにきた人がいた。その人は5分ほど後、今度はコーヒーを淹れに行っていた。すごいぜ、その平常心。
気を落ち着かせようとトイレに行こうとすると、セキュリティチェックになっている自動ドアが、総務のおじさんによって外され、全開になっていた。
その向こうの書類棚からは書類がかなりこぼれ落ちたようだ。その上のエアコンは、風の向きを変える板が外れて、ブラブラとぶら下がっていた。ここにいたら怪我をしていたかもしれない。地震時は誰もいなかっただろうか？
30分もそんな感じで非現実的の中にいるようなフワフワとした感覚で過ごしていると、再び避難命令が出る。今度は、道路を挟んだ広場まで避難しろ、ということだ。
また完全にそのまま帰れる装備をして、非常階段を降り、横断歩道まで行く。車の往来が意外に激しい。なんだろう？渋滞を予測して、一刻も早く、ということなのだろうか？
道を挟んだ反対側にはかなり年代物の工場がある。外見には特に大きなダメージもなさそうだ。
あの地震で大丈夫なんて大したモンだね、なんて言いながら、その敷地内に入り、工場の脇の、緑地化した広場へ向かう。
この広場にも以前は工場が立っていたらしい。それを減反し、浄化させるために緑化していると聞いた。
が、広場には既に結構な数の人がいる。かなり入り口近くに、部の人達とともに陣取った。建物にかなり近いところだ。
こうして見ると、工場はダクトなどの補記類が露出していたりして、やはり時代を感じさせる。工場とは言っても、精密機器関係なので、一般のイメージとも違うかもしれないが、まあとにかく昭和初期なんじゃなかろうか。
建物の上の方を眺めていたら、屋上に人の姿があった。あれ、危ないんじゃないの、なんて話していたら、ドン、ユラユラといった感じで地面が揺れた。余震だ。
ガチャガチャと、窓ガラスが狂おしく音を立てる。屋上の避雷針もグラグラと揺れている。落ちてくる恐怖に、俺達を含めて人の波がグググっと建物から離れる方向へ移動した。
幸い、何も落下することはなく、それ以上の混乱はなかった。
しかし、あそこで何かあったなら、一体どうなっていただろうか。パニックだった可能性もある。避難の仕方に再考が必要だと感じた。
広場に集結してからも、しばらくはなんの指示も出ず、ただ立ち尽くすしかなかった。
「俺、すぐ解散になると思ったんだよ」
例の口の悪い先輩はコートも着ずに、携帯片手のほぼ手ぶらで出て来ていた。見るからに寒そうだ。
「あれって何の煙だろう？」誰かが言う。もともと晴れ間に筋状の雲という天候で、そろそろ夕刻へ向かうというような時間だったが、そこに黒い筋状の雲のような、煙のようなものが混じっていた。
それからほどなく、数機のヘリコプターが飛来した。そして、人々の間にも、どうやら近くで火事があったらしいという話が回り始めた。
後から報道で知ったことには、数km離れた埋立地の建築中のビルで大きな火災があった。俺達が見たのはその煙だったようだ。
煙を見て少し不安になったので、ダメ元で嫁さんへの電話を試みた。何度か通じなかったが、なんとかつながった。
嫁さんの会社はなんと既に解散したらしく、駅に向かっているということだった。果たして電車に乗れるのかどうか分からなかったが、とりあえず、一度声を聞くと本当に安心するものだ。
それから20〜30分程度だったろうか。白衣を来た太った女性が大声を張り上げてやってきた。
「避難中止でーす！避難中止！」
その人の身分が、医務室の看護師さんなのか何なのかよく分からないが、とにかく、その言葉を合図にして、そこに集まった人達は解散し、動き出した。やっと薄着の先輩も、コートを置きっぱなしのオフィスに戻ることができるというものだ。
つづく。
が、ターミナル駅までチャリで出ると、ローカル線が動いていないため、人がほとんど集まっていなかった。却って気持ち悪くて、帰りが怖くなったが、今の仕事を自分の手が離れるところまで進めようと思い、「ままよ」とガラガラの電車へ乗り込んだ。思った以上に電車はスムースで、仕事も無事こなし、早めに切り上げて帰りも無事に帰ってきた。
不安は数限りない。被災の状況をテレビでずっと見ていると気も滅入ってくる。
被災地のためにこんなことをしよう！と活動している人も多くいる。それは本当にすごいことだと思う。
だが、俺は自分と、自分の家族を守ることが精一杯だ。だけど、それが自己中心的だなんて卑下するつもりはまったくない。
自分が早く自分の本来のペースを取り戻し、生産活動をすることが、最終的には日本を再興する力になるのだと思う。被災地のことばかり考えて自分が心の病にかかってもしょうがない。
無理矢理「今俺ができることってなんだ？」なんて背伸びしたってしょうがねぇんだよ。家族と命あって一緒に過ごせる幸せをかみしめて、これまで通りの日常を過ごすことはなんら恥じることでもなんでもない。
っていうか、買い占め、あまりに滑稽じゃない？
停電に備え、一応懐中電灯買いに行ったのだが、当然売り切れていた。じゃあ、と庭に置くソーラーライトを見てみたら、10個もカートに積んでホクホクしているおばちゃんがいた。あんた、この騒動が終わったらそれ、どうすんの？庭に10個も置くの、それ？全部で1万円よ？
あ た ま 冷 や せ バ カ ！！
それを一家に一つ分けるだけで10の家庭がちょっとだけ停電下を明るく暮らせるんだぜ？
頭に来たので俺は買うのを止め、ホームセンターを出た。結局、あんなソーラーライトなんて10個あったって本も読めないよ。停電になったら黙って寝ろ。
Shadow Picture（拡大なし）
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/8sec, F2.5, ISO200)
実は、会社の机の上に飾っておいたこのプレートも地震で倒れてしまっていた。もちろん無傷だったから恭しく元に戻したけどね。
そんなわけで、トビラ文長すぎだが、地震の日のドキュメントを続けよう。
ビルの外側にある非常階段を伝い、フロアのある3階から地上へ出た。
ニュース速報の伝えた「震源宮城県沖、震度7、大津波警報発令」という衝撃的な内容に困惑しつつも、翌日の箱根への旅行についても頭をよぎった。人間なんて勝手なもんだ。いやいや、でも楽しみにしていた大切な家族イベントだからね！その日いつ帰れるか、それで翌日早く起きて出かけられるのか、高速は普通に走れるのか、一気に不安になったのである。
地上に出ると、周囲でスマートフォンを持っているメンバーも多く、同じように情報を見ていた。携帯で家族に電話をしようと試みる人もいたが、やはりこんな事態、全然通じていないようだった。
俺が地上に降りて5分も経ってないと思うが、オフィスに戻るように言われる。一応、内部の安全を確認できたということだろうか。再び非常階段を登ってオフィスに戻る。途中、だいぶ年配の、帰宅方向が同じ数少ない先輩がいたので、「厳しいですかね、電車」などと話しながらゆっくり登っていたら、危うく非常口を中から塞がれるところだった。
パソコンは起動したままだったので、もっと都心寄りに勤務する嫁さんにメールを送った。すぐに無事だとの返事が来た。自分のオフィスでの被害状況を見るにつけ、大丈夫だろうとは思っていたが、安心する。後に報道でもあったが、こういう時は携帯電話回線よりもIPの方が確実に伝わるのかもしれない。
その後も、ニュースサイトを開いたりしつつ、わずかに乱れた机の上を片付けたりしていた。だが、何が次に起こるか分からない。仕事に手はつかないし、コートは脱がず、荷物もすぐ横に置いておいた。
...と、横に座るグループリーダーのところに悠然と仕事の質問をしにきた人がいた。その人は5分ほど後、今度はコーヒーを淹れに行っていた。すごいぜ、その平常心。
気を落ち着かせようとトイレに行こうとすると、セキュリティチェックになっている自動ドアが、総務のおじさんによって外され、全開になっていた。
その向こうの書類棚からは書類がかなりこぼれ落ちたようだ。その上のエアコンは、風の向きを変える板が外れて、ブラブラとぶら下がっていた。ここにいたら怪我をしていたかもしれない。地震時は誰もいなかっただろうか？
30分もそんな感じで非現実的の中にいるようなフワフワとした感覚で過ごしていると、再び避難命令が出る。今度は、道路を挟んだ広場まで避難しろ、ということだ。
また完全にそのまま帰れる装備をして、非常階段を降り、横断歩道まで行く。車の往来が意外に激しい。なんだろう？渋滞を予測して、一刻も早く、ということなのだろうか？
道を挟んだ反対側にはかなり年代物の工場がある。外見には特に大きなダメージもなさそうだ。
あの地震で大丈夫なんて大したモンだね、なんて言いながら、その敷地内に入り、工場の脇の、緑地化した広場へ向かう。
この広場にも以前は工場が立っていたらしい。それを減反し、浄化させるために緑化していると聞いた。
が、広場には既に結構な数の人がいる。かなり入り口近くに、部の人達とともに陣取った。建物にかなり近いところだ。
こうして見ると、工場はダクトなどの補記類が露出していたりして、やはり時代を感じさせる。工場とは言っても、精密機器関係なので、一般のイメージとも違うかもしれないが、まあとにかく昭和初期なんじゃなかろうか。
建物の上の方を眺めていたら、屋上に人の姿があった。あれ、危ないんじゃないの、なんて話していたら、ドン、ユラユラといった感じで地面が揺れた。余震だ。
ガチャガチャと、窓ガラスが狂おしく音を立てる。屋上の避雷針もグラグラと揺れている。落ちてくる恐怖に、俺達を含めて人の波がグググっと建物から離れる方向へ移動した。
幸い、何も落下することはなく、それ以上の混乱はなかった。
しかし、あそこで何かあったなら、一体どうなっていただろうか。パニックだった可能性もある。避難の仕方に再考が必要だと感じた。
広場に集結してからも、しばらくはなんの指示も出ず、ただ立ち尽くすしかなかった。
「俺、すぐ解散になると思ったんだよ」
例の口の悪い先輩はコートも着ずに、携帯片手のほぼ手ぶらで出て来ていた。見るからに寒そうだ。
「あれって何の煙だろう？」誰かが言う。もともと晴れ間に筋状の雲という天候で、そろそろ夕刻へ向かうというような時間だったが、そこに黒い筋状の雲のような、煙のようなものが混じっていた。
それからほどなく、数機のヘリコプターが飛来した。そして、人々の間にも、どうやら近くで火事があったらしいという話が回り始めた。
後から報道で知ったことには、数km離れた埋立地の建築中のビルで大きな火災があった。俺達が見たのはその煙だったようだ。
煙を見て少し不安になったので、ダメ元で嫁さんへの電話を試みた。何度か通じなかったが、なんとかつながった。
嫁さんの会社はなんと既に解散したらしく、駅に向かっているということだった。果たして電車に乗れるのかどうか分からなかったが、とりあえず、一度声を聞くと本当に安心するものだ。
それから20〜30分程度だったろうか。白衣を来た太った女性が大声を張り上げてやってきた。
「避難中止でーす！避難中止！」
その人の身分が、医務室の看護師さんなのか何なのかよく分からないが、とにかく、その言葉を合図にして、そこに集まった人達は解散し、動き出した。やっと薄着の先輩も、コートを置きっぱなしのオフィスに戻ることができるというものだ。
つづく。
nobilesの投稿(23:49:56-2011-03-15) -
カテゴリ: Main
コメント
end wrote:
2011-03-16 09:20:26
nobiles_mobile wrote:
だよねぇ。チャリ用のライトだってあるしさ。
キャンプコーナーにランタンも売ってたけど、
今回のためだけに買うのもバカバカしいと思って置いたら、
おっちゃんがぶんどってったよ。それ、燃料で炊くやつだよ？わかってる？
キャンプコーナーにランタンも売ってたけど、
今回のためだけに買うのもバカバカしいと思って置いたら、
おっちゃんがぶんどってったよ。それ、燃料で炊くやつだよ？わかってる？
2011-03-16 12:37:55
軽いLOSS wrote:
あの買い占めは何なんだ！ってね！別にそんなに逼迫してねぇだろ！って！スーパーではパンとかご飯が売り切れて、惣菜やオカズがあまってるんだって。まったくどうしてるよね。
2011-03-16 20:44:22
nobiles wrote:
どう「か」してるゼ！ね (^_^;。
だいたい、生モノの牛乳とか卵とか買い占めてどうすんのよ。
そんでもって停電になったらますます痛みやすいんだよ？
頭悪いよねぇ？
だいたい、生モノの牛乳とか卵とか買い占めてどうすんのよ。
そんでもって停電になったらますます痛みやすいんだよ？
頭悪いよねぇ？
2011-03-16 21:52:33
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