NOBILES Days
Jump to navigationThe Lovers' Mood with Bordeaux Wine
意味深なタイトルだが、何のことは無い。車のことである。
(PentaxK10D, PentaxFA31mmLimitedF1.8, ManualExposure, 1/160sec, F1.8, ISO100)
この車を買った直後のことだ。まだそれはそれはウキウキの時、その話を聞き、初対面にも拘らず（まあどういう場かは想像に難くなかろう）「赤い車ぁ？キッザー！」と言い放った女性がいる。そりゃ、大変インプレッシブではあった。どういう意味かはともかく。
だが誰が何をどう間違ったのか、それからしばらくして、彼女は頻繁にその助手席に座るようになり、最終的には買い物の足として毎週のように利用し、この車の助手席に最も多く座った人間となるのだから不思議である。まあ、嫁さんのことだ。
だから、この車と俺のストーリーはほぼ、嫁さんとも重なる。そりゃ、思い入れもある。
実は、この車とお別れした。断腸の思いでだ。さすがにクーペボディにチャイルドシート常設では買い物もおぼつかないからだ。
そんなわけで、この車の思い出話をしたくなったわけだ。
古い車だ。初登録は1996年12月。この車のデビュー直後だ。俺はワンオーナー・距離1.1万kmという状態の中古で、車両価格120万程度だったろうか、1999年11月に買った。それから9年近くを共にすごしてきたことになる。
我が家の駐車場に鎮座するプレリュード
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ManualExposure, 1/100sec, F6.3, ISO100)
実はデビュー当時から気になっていた。当時俺は大学生で車なんて持てる経済力はなかったが、他車とは一線を画すギョロっとした目。ちょっとリトラクタブルライトの部分をそのままライトにしてしまったようにも見えるところも面白かった。まあフロントのデザインは割と賛否あったようだが、リアのノーブルなノッチバックスタイルはかなり好評価であったと聞く。俺自身、割とクラシカルな趣味のようで、買うならハッチバックではないな、とはうっすら思っていた。
ノーブルなノッチバックスタイル
(PentaxK10D, PentaxDA16-45mmF4(45.0mm), ApertureValueMode, 1/50sec, F8.0, ISO100)
何より、F-1マニアの俺である。ホンダというブランドは大きかった。この一つ前の世代ではあるが、俺にとってのヒーローの一人であるアイルトン･セナもコマーシャルに出演していた。
だから、社会人になって経済力がある程度ついて、しかも片田舎というのもあって車を買おうとなったら、ほぼ一択でプレリュードを探し始めていたというわけだ。
ホンダなのにエンジンはVTECではない。一応2.2リッターではあったが、なんとガソリンもレギュラーなのである。同じ予算なら、パワーよりも内外装が綺麗でサンルーフが付いている魅力に惹かれたのだ。
なんと、売る前にエンジンルームを撮っていなかった
現存するのは数年前に撮ったこれだけ。いかにエンジンなどに手を入れることに興味がないかという証拠である。
色も割と最初から「ワインレッド！」と決めていたように記憶している。空の色が写り込むと様々な色に見えるのが好きだった。情熱的な赤だったり、クールな青紫に見えたりするのだ。トビラの写真のように、夕暮れ時ならば、紫色っぽい色から青、そして赤とグラデーションがかっている。
そして見栄っ張りな俺だけに、当然マニュアルミッションだ。控えめながら、翼端に車幅灯？の仕組まれたリヤスポイラーなども俺の趣味にピッタリだった（フルエアロはちょっと...この車だと下品になるだけ）。当時としても時代遅れで、オマケ程度だったがCD-ROMのビルトインナビは、逆に、車と完全に調和していて俺としてはむしろ美学にあっていた。調和しすぎて（エアコンの詳細設定などはこのナビがなければできなかった）取り外しが極めて困難という難点はあったが。
前のオーナーとは、もし会えたのなら間違いなくお友達になれただろう。
サンルーフも探す条件の一つだった
(PentaxK10D, PentaxDAFisheye10-17mmF3.5-4.5(15.0mm), ProgramMode, 1/50sec, F5.0, ISO100)
いよいよ俺のファーストカーであるプレリュードが納車されて2週間。事件は起きた。まあ、ペーパードライバーから始まって、ちょうど慣れてくる頃だ。
自慢がてら、後輩に会いに大学に行ったりしてそのまま実家に帰ろうとしていた。
が、土曜の夕方から夜になろうとする時間、大通りはひどい渋滞である。10分かかっても数メートルしか進まないような状態だったと思う。そこで、慣れてきて気の大きくなっていた俺は、ナビを片目に裏道に突入した。まー、策士策に溺れると言うにはあまりに浅はかな行動である。
裏道というだけあって、かなりの狭い道だ。速度は30km/hにもなるかならないかだろう。すると、その線路脇の道は折りしも高架化工事の真っ最中で、延々とパイロンが右側に立ててあるような状態だった。
「うわっ、なんか嫌だなぁ」そんな独り言でも言って、目にも眩しいおびただしいパイロンの列に目をやった刹那である。
パリーーーーーン！
パイロンと反対側、暗いサイドとなる左のミラーが突然けたたましい音を鳴らして砕けた。
驚いて急停止する。砕けたミラーを見つめて呆然とする。呆然と言うか、パニックに近い。
告白しよう。こんなパニックになった時、自分にとって全て良い方向へ良い方向へと自分自身に暗示をかけるというのは、人間の本能なのであろうか。俺は、ぶつかったのはきっと電信柱か何か。そして、壊れたのもミラーのみ。ザッツオール。さあ、先を急げ。そう思った。きっと、轢き逃げ犯というのもこういうもんなんだろうか。
が、そこは工事現場脇である。作業員の数人もミラーの割れる音に気付いていた。「兄ちゃん、事故っちゃったから、そっち寄せて止まりな！」。
「事故...、事故なのか、これ」いや、ほんとそのくらいの呆然ぶりだったのだ。でも、ここで止めてもらえて良かった。
降りて振り返ってみる。邸宅の前に斜めにはみ出している黒いジープチェロキーが駐車されていた。そして、自分の車の左側に回りこんでみる...。その惨状に、俺はその場にへたり込んでしまったのを、我ながら記憶している。ミラーが割れただけなんてとんでもない。フロントタイヤの上あたりからリヤタイヤの直前あたりまで、見事に帯状に破損しているではないか。ジープチェロキーの高く、極めて丈夫なバンパーの角がまさに爪のようになり、ひっかかれるような形だったのだ。そのチェロキーのバンパーもさすがに角の部品が落ち、ブレーキランプのガラスも割れていた。が、どう見てもプレリュードの方が重傷だった。
さあ、へたり込んでばかりもいられない。工事のおっちゃんは、やはり音や振動のこともあって邸宅にも挨拶などをしているのか、家の人を知っているようで、呼び出してくれたのだが、不在だったようだ。警察を呼び、事故検分をしてもらい、工事のおっちゃんから邸宅の電話番号を聞き、その場を離れることになった。自走には特に問題なさそうだったからだ。
...でだ。事故った相手は車だ。停車中だから責任はこちらにあるが、車相手だから車両保険が効いたのである。それでも、免責があったので13万くらいはかかったし、当然等級も3階級特落となるわけだが...。重症のプレリュードの修理費も、軽症のチェロキーの修理費も同額38万だった。計76万。保険を使っていなかったらと思うと未だに眩暈がする。
ちなみに、買って二週間だったので...「保険証書の番号お願いいたします」「あ、まだ正式版届いていないです」。全く自らの愚かさに恥じ入る次第だ。
最初にいきなり車にそんな辛い思いをさせてしまったが、もちろん楽しい思い出も数限りない。嫁さんと、間違って、まあいわゆる初デートとやらに行ってしまったのもこの車だし、鈴鹿のF1や富士やもてぎのフォーミュラニッポンやCARTのレース観戦にも、友人と運転を交代しながら行ったものだ。前述したように、結婚してからは、毎週の食料品買い出しの足としても活躍した。狭い車内ながらも、友人夫婦と4人で温泉旅行に行ったこともある。
結局俺のところに来てからは9年で3万kmそこそこしか走らなかったことになる。...あまり乗ってやれなかった。でも、その3万kmは本当にかけがえのない大切な時間だったと思っている。
決して小回りの利く車ではなかったし、人や荷物が多く乗るわけでもない。他を圧倒するパワーではないが、それでも十二分の160馬力と、堅すぎず軟すぎず、コーナーでもそれなりに粘ってくれる足周りは素直なハンドリングにつながっていて安心感があった。
嫁さんの腹が大きくなってからはさすがに辛い姿勢だったようだが、足を投げ出す低い姿勢はいかにもスペシャリティカーというヤツの雰囲気で、乗っていて楽しい車だった。最初に持った車がコイツで本当に良かったと思っている。
実際、俺が勝手にダメージを与えた以外にトラブルらしいトラブルはなかった。事故歴もあったから、何もなければ、廃車まで仕えてもらうつもり満々だった。
（...あ、いや、売る直前になって虫の報せか、カーナビのGPSが使えなくなった。どうせ査定には何の影響もなかったけど。不思議なものだ）
でも、子供には抗えない。俺、嫁さん、そしてプレリュードでともに紡がれてきたストーリーは終演を迎え、新たに子供、そして新しい車が加わってストーリーが始まると思おう。
ここからは別れのストーリーだ。
8月の頭に次の車を決めた。一旦はそのディーラーに下取りに出すつもりだった。が、査定はゼロだった。
ゼロ...。
まあ、その前にホンダのディーラーに行った時にも、同メーカーという「お情け」込みでも「20000円」と言われていたので、まあそんなもんかとも思ったが、それなりに趣味性もある車だ。まだ必要としてくれる人もいるのではないかと思い、いろいろ査定を受けてみることにした。
実際に査定担当に見てもらうと、どこも一様に「5万」という。走行距離は4万そこそこだが、年式が古い上に事故歴アリ、ちょこちょこ小傷もあるので厳しいと。...やっぱりあの事故は大きかった。
それでも、少しでも高く...と思い、すぐには答えを出さずにいろいろ巡ってみた。
だが...そうは言っても新しい車が来てしまうという現実的問題と、「コイツ自身を売るためにコイツを引き回している」という事実に対する嫌悪感のようなものがだんだん沸いてきたのもあって、もう決めなければ、という気持ちが強くなっていった。そうしたら、先週また査定巡りに出る前には愛着がこみ上げて来て妙にセンチメンタルな気分になって涙がこぼれそうになった。嫁さんと一緒に記念撮影までしてしまった。
そして、どうせ最後に残ったガソリンだからと、かなり遠くの店まで行った。その手間に対する温情もあって「足代ということで6万にしましょう」。「もう一声！」「じゃあ、帰りの足代ってことで65000円で」。愛しのプレリュードの値段が決した。カメラのレンズか！というような値段だが、それでも下取りのゼロから比べれば、ナビ代の半額くらいにはなったというものである。
本当は、新しい車と並べて記念撮影、ということもやりたいな、とも思っていた。でも、たった65000円でも、普通に考えれば十分高額なお金だ。涙を呑んで買い取り屋に託すことにした。
買い取り屋から徒歩僅かなところの駅まで歩いていく間、ガレージに収まったプレリュードの猫目が遠ざかっていくのはとても寂しい気持ちだった。行きは一緒に楽しく最後の時間を過ごしたのが、帰りは電車で一人きりだ。この喪失感は、恋人と別れて帰る道に似ている。
まあ、俺なんかは専らフられる役担当だったわけだが、今回は俺の事情で手放すのだからフった側になるだろう。フる側もこんなに辛い気持ちだったのだな、としみじみ思ってしまった。
さめざめと滴る雨の中徒歩で家の前まで帰ってきて角を曲がった瞬間、主を失った駐車場がぽっかり空いているのを見てまたちょっと悲しくなった。
とか言いながら、実は今度の土曜には新しい車が納車されるわけだが (^_^;。まあ、駐車場が空いている今の期間くらい、プレリュードのことを思ってやっても、まあバチは当たるまい。
今一度、愛すべきマイファーストカーに惜別の言葉を。
ありがとう、さようなら。素敵な次のオーナーに出会って、元気に現役を続けてくれることを祈る。
(PentaxK10D, PentaxFA31mmLimitedF1.8, ManualExposure, 1/160sec, F1.8, ISO100)
この車を買った直後のことだ。まだそれはそれはウキウキの時、その話を聞き、初対面にも拘らず（まあどういう場かは想像に難くなかろう）「赤い車ぁ？キッザー！」と言い放った女性がいる。そりゃ、大変インプレッシブではあった。どういう意味かはともかく。
だが誰が何をどう間違ったのか、それからしばらくして、彼女は頻繁にその助手席に座るようになり、最終的には買い物の足として毎週のように利用し、この車の助手席に最も多く座った人間となるのだから不思議である。まあ、嫁さんのことだ。
だから、この車と俺のストーリーはほぼ、嫁さんとも重なる。そりゃ、思い入れもある。
実は、この車とお別れした。断腸の思いでだ。さすがにクーペボディにチャイルドシート常設では買い物もおぼつかないからだ。
そんなわけで、この車の思い出話をしたくなったわけだ。
古い車だ。初登録は1996年12月。この車のデビュー直後だ。俺はワンオーナー・距離1.1万kmという状態の中古で、車両価格120万程度だったろうか、1999年11月に買った。それから9年近くを共にすごしてきたことになる。
我が家の駐車場に鎮座するプレリュード
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ManualExposure, 1/100sec, F6.3, ISO100)
実はデビュー当時から気になっていた。当時俺は大学生で車なんて持てる経済力はなかったが、他車とは一線を画すギョロっとした目。ちょっとリトラクタブルライトの部分をそのままライトにしてしまったようにも見えるところも面白かった。まあフロントのデザインは割と賛否あったようだが、リアのノーブルなノッチバックスタイルはかなり好評価であったと聞く。俺自身、割とクラシカルな趣味のようで、買うならハッチバックではないな、とはうっすら思っていた。
ノーブルなノッチバックスタイル
(PentaxK10D, PentaxDA16-45mmF4(45.0mm), ApertureValueMode, 1/50sec, F8.0, ISO100)
何より、F-1マニアの俺である。ホンダというブランドは大きかった。この一つ前の世代ではあるが、俺にとってのヒーローの一人であるアイルトン･セナもコマーシャルに出演していた。
だから、社会人になって経済力がある程度ついて、しかも片田舎というのもあって車を買おうとなったら、ほぼ一択でプレリュードを探し始めていたというわけだ。
ホンダなのにエンジンはVTECではない。一応2.2リッターではあったが、なんとガソリンもレギュラーなのである。同じ予算なら、パワーよりも内外装が綺麗でサンルーフが付いている魅力に惹かれたのだ。
なんと、売る前にエンジンルームを撮っていなかった
現存するのは数年前に撮ったこれだけ。いかにエンジンなどに手を入れることに興味がないかという証拠である。
色も割と最初から「ワインレッド！」と決めていたように記憶している。空の色が写り込むと様々な色に見えるのが好きだった。情熱的な赤だったり、クールな青紫に見えたりするのだ。トビラの写真のように、夕暮れ時ならば、紫色っぽい色から青、そして赤とグラデーションがかっている。
そして見栄っ張りな俺だけに、当然マニュアルミッションだ。控えめながら、翼端に車幅灯？の仕組まれたリヤスポイラーなども俺の趣味にピッタリだった（フルエアロはちょっと...この車だと下品になるだけ）。当時としても時代遅れで、オマケ程度だったがCD-ROMのビルトインナビは、逆に、車と完全に調和していて俺としてはむしろ美学にあっていた。調和しすぎて（エアコンの詳細設定などはこのナビがなければできなかった）取り外しが極めて困難という難点はあったが。
前のオーナーとは、もし会えたのなら間違いなくお友達になれただろう。
サンルーフも探す条件の一つだった
(PentaxK10D, PentaxDAFisheye10-17mmF3.5-4.5(15.0mm), ProgramMode, 1/50sec, F5.0, ISO100)
いよいよ俺のファーストカーであるプレリュードが納車されて2週間。事件は起きた。まあ、ペーパードライバーから始まって、ちょうど慣れてくる頃だ。
自慢がてら、後輩に会いに大学に行ったりしてそのまま実家に帰ろうとしていた。
が、土曜の夕方から夜になろうとする時間、大通りはひどい渋滞である。10分かかっても数メートルしか進まないような状態だったと思う。そこで、慣れてきて気の大きくなっていた俺は、ナビを片目に裏道に突入した。まー、策士策に溺れると言うにはあまりに浅はかな行動である。
裏道というだけあって、かなりの狭い道だ。速度は30km/hにもなるかならないかだろう。すると、その線路脇の道は折りしも高架化工事の真っ最中で、延々とパイロンが右側に立ててあるような状態だった。
「うわっ、なんか嫌だなぁ」そんな独り言でも言って、目にも眩しいおびただしいパイロンの列に目をやった刹那である。
パリーーーーーン！
パイロンと反対側、暗いサイドとなる左のミラーが突然けたたましい音を鳴らして砕けた。
驚いて急停止する。砕けたミラーを見つめて呆然とする。呆然と言うか、パニックに近い。
告白しよう。こんなパニックになった時、自分にとって全て良い方向へ良い方向へと自分自身に暗示をかけるというのは、人間の本能なのであろうか。俺は、ぶつかったのはきっと電信柱か何か。そして、壊れたのもミラーのみ。ザッツオール。さあ、先を急げ。そう思った。きっと、轢き逃げ犯というのもこういうもんなんだろうか。
が、そこは工事現場脇である。作業員の数人もミラーの割れる音に気付いていた。「兄ちゃん、事故っちゃったから、そっち寄せて止まりな！」。
「事故...、事故なのか、これ」いや、ほんとそのくらいの呆然ぶりだったのだ。でも、ここで止めてもらえて良かった。
降りて振り返ってみる。邸宅の前に斜めにはみ出している黒いジープチェロキーが駐車されていた。そして、自分の車の左側に回りこんでみる...。その惨状に、俺はその場にへたり込んでしまったのを、我ながら記憶している。ミラーが割れただけなんてとんでもない。フロントタイヤの上あたりからリヤタイヤの直前あたりまで、見事に帯状に破損しているではないか。ジープチェロキーの高く、極めて丈夫なバンパーの角がまさに爪のようになり、ひっかかれるような形だったのだ。そのチェロキーのバンパーもさすがに角の部品が落ち、ブレーキランプのガラスも割れていた。が、どう見てもプレリュードの方が重傷だった。
さあ、へたり込んでばかりもいられない。工事のおっちゃんは、やはり音や振動のこともあって邸宅にも挨拶などをしているのか、家の人を知っているようで、呼び出してくれたのだが、不在だったようだ。警察を呼び、事故検分をしてもらい、工事のおっちゃんから邸宅の電話番号を聞き、その場を離れることになった。自走には特に問題なさそうだったからだ。
...でだ。事故った相手は車だ。停車中だから責任はこちらにあるが、車相手だから車両保険が効いたのである。それでも、免責があったので13万くらいはかかったし、当然等級も3階級特落となるわけだが...。重症のプレリュードの修理費も、軽症のチェロキーの修理費も同額38万だった。計76万。保険を使っていなかったらと思うと未だに眩暈がする。
ちなみに、買って二週間だったので...「保険証書の番号お願いいたします」「あ、まだ正式版届いていないです」。全く自らの愚かさに恥じ入る次第だ。
最初にいきなり車にそんな辛い思いをさせてしまったが、もちろん楽しい思い出も数限りない。嫁さんと、間違って、まあいわゆる初デートとやらに行ってしまったのもこの車だし、鈴鹿のF1や富士やもてぎのフォーミュラニッポンやCARTのレース観戦にも、友人と運転を交代しながら行ったものだ。前述したように、結婚してからは、毎週の食料品買い出しの足としても活躍した。狭い車内ながらも、友人夫婦と4人で温泉旅行に行ったこともある。
結局俺のところに来てからは9年で3万kmそこそこしか走らなかったことになる。...あまり乗ってやれなかった。でも、その3万kmは本当にかけがえのない大切な時間だったと思っている。
決して小回りの利く車ではなかったし、人や荷物が多く乗るわけでもない。他を圧倒するパワーではないが、それでも十二分の160馬力と、堅すぎず軟すぎず、コーナーでもそれなりに粘ってくれる足周りは素直なハンドリングにつながっていて安心感があった。
嫁さんの腹が大きくなってからはさすがに辛い姿勢だったようだが、足を投げ出す低い姿勢はいかにもスペシャリティカーというヤツの雰囲気で、乗っていて楽しい車だった。最初に持った車がコイツで本当に良かったと思っている。
実際、俺が勝手にダメージを与えた以外にトラブルらしいトラブルはなかった。事故歴もあったから、何もなければ、廃車まで仕えてもらうつもり満々だった。
（...あ、いや、売る直前になって虫の報せか、カーナビのGPSが使えなくなった。どうせ査定には何の影響もなかったけど。不思議なものだ）
でも、子供には抗えない。俺、嫁さん、そしてプレリュードでともに紡がれてきたストーリーは終演を迎え、新たに子供、そして新しい車が加わってストーリーが始まると思おう。
ここからは別れのストーリーだ。
8月の頭に次の車を決めた。一旦はそのディーラーに下取りに出すつもりだった。が、査定はゼロだった。
ゼロ...。
まあ、その前にホンダのディーラーに行った時にも、同メーカーという「お情け」込みでも「20000円」と言われていたので、まあそんなもんかとも思ったが、それなりに趣味性もある車だ。まだ必要としてくれる人もいるのではないかと思い、いろいろ査定を受けてみることにした。
実際に査定担当に見てもらうと、どこも一様に「5万」という。走行距離は4万そこそこだが、年式が古い上に事故歴アリ、ちょこちょこ小傷もあるので厳しいと。...やっぱりあの事故は大きかった。
それでも、少しでも高く...と思い、すぐには答えを出さずにいろいろ巡ってみた。
だが...そうは言っても新しい車が来てしまうという現実的問題と、「コイツ自身を売るためにコイツを引き回している」という事実に対する嫌悪感のようなものがだんだん沸いてきたのもあって、もう決めなければ、という気持ちが強くなっていった。そうしたら、先週また査定巡りに出る前には愛着がこみ上げて来て妙にセンチメンタルな気分になって涙がこぼれそうになった。嫁さんと一緒に記念撮影までしてしまった。
そして、どうせ最後に残ったガソリンだからと、かなり遠くの店まで行った。その手間に対する温情もあって「足代ということで6万にしましょう」。「もう一声！」「じゃあ、帰りの足代ってことで65000円で」。愛しのプレリュードの値段が決した。カメラのレンズか！というような値段だが、それでも下取りのゼロから比べれば、ナビ代の半額くらいにはなったというものである。
本当は、新しい車と並べて記念撮影、ということもやりたいな、とも思っていた。でも、たった65000円でも、普通に考えれば十分高額なお金だ。涙を呑んで買い取り屋に託すことにした。
買い取り屋から徒歩僅かなところの駅まで歩いていく間、ガレージに収まったプレリュードの猫目が遠ざかっていくのはとても寂しい気持ちだった。行きは一緒に楽しく最後の時間を過ごしたのが、帰りは電車で一人きりだ。この喪失感は、恋人と別れて帰る道に似ている。
まあ、俺なんかは専らフられる役担当だったわけだが、今回は俺の事情で手放すのだからフった側になるだろう。フる側もこんなに辛い気持ちだったのだな、としみじみ思ってしまった。
さめざめと滴る雨の中徒歩で家の前まで帰ってきて角を曲がった瞬間、主を失った駐車場がぽっかり空いているのを見てまたちょっと悲しくなった。
とか言いながら、実は今度の土曜には新しい車が納車されるわけだが (^_^;。まあ、駐車場が空いている今の期間くらい、プレリュードのことを思ってやっても、まあバチは当たるまい。
今一度、愛すべきマイファーストカーに惜別の言葉を。
ありがとう、さようなら。素敵な次のオーナーに出会って、元気に現役を続けてくれることを祈る。
nobilesの投稿(23:06:00-2008-08-28) -
カテゴリ: Main
コメント
ぱれお wrote:
2008-08-29 23:48:55
nobiles wrote:
あれ、最初の車だったんですか。あれだけ距離走れば大往生でしょう。
ヤフオク出てたのってそんなにイヤですか？メーターとかいじられてたんでしたっけ？
ヤフオク出てたのってそんなにイヤですか？メーターとかいじられてたんでしたっけ？
2008-08-30 16:29:34
コメントを追加
トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)TrackBack URL
DISALLOWED (TrackBack)
メインページ
Calendar
| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
NewEntries
最新COMMENTS
■20-07-11 21:47>ああ、あのeh
■20-07-10 01:07>そうです、予
■20-07-09 22:36>あっ、ショー
■20-07-06 07:27>50-34のチェ�
■18-01-05 00:53>おやこれはぱ
■18-01-04 23:56>手出しちゃっ
■15-07-27 23:21>おっと、今か
■15-07-22 11:40>良質な小説読
■15-02-21 09:29>おや、どなた
■15-02-20 08:05>ほー、勉強に
カテゴリ
- All
- Bicycle
- Breast Cancer
- Change Job
- Formula-One
- Gourmet
- Injury
- Mac
- Main
- Monaco
- Music
- Peugeot
- Photo
- Travel
Archives
My Links
NOBILES Web検索
プロフィール
RSS対応
RSS v2.0
RSS v0.91
RSS v1.0
管理
管理室へ携帯用ブログ
携帯用URL
最後は中古屋に１万円で売ってしまったけど、後でヤフオクに出ていたのは正直ショックで、自分で廃車手続きすれば良かったと思ったり。
まあ、すべては思い出ですが。