NOBILES Days
Jump to navigationF-1 Machine Trend 2009(1)
このblogを開設して2年半、気がつくと前回のエントリーで400回だったらしい。
これまでのエントリー内容は全てあげっぱなしで手元には保存していなかった。でも、もしここが潰れたりしたらそれらも全てなくなるのはちょっと寂しい。
そこで、実は先日から少しずつ昔のエントリーを保存しつつ、小さいサイズだった写真を大きいものに入れ替えたりしている。
とは言ってもまだ10エントリー程度なので、長い道のりである。
McLarenの今年のコンテンダーとなるMP4-24
さて今シーズンを戦うF-1マシンのローンチが続々と行われている。
ここまでローンチされた数チームを見てみると、やはり昨年までよりも各車に個性というか、試行錯誤が見られて興味深い。見た目がダサいという声も多く聞かれるし、まあもちろん人一倍F-1マシンの美意識にうるさいつもりの俺もそれには大いに同感ではあるのだが、一方で、レギュレーション変更によってこういう個性が見られるというのも、個人的にはとても面白いと思っている。
さて、ここまで既にローンチ済のマシンを見ていくと、フロントウィングが1800mm＋中央部分の規定形状という新レギュレーションで大きく変わったフロントセクション、そして空力付加物の禁止されたサイドポンツーン周辺が、大きく変化していて、各マシン個性もこの付近に多く現れていることが分かる。
まずフロントセクションについて見てみよう。
昨年を振り返ると、いわゆるマクラーレン型が主流であった。ゼロキールの基点ともなっているモノコックの前端がかなり高い位置にある一方、そこからノーズ先端にかけてスラント形状とすることで、ノーズ下面に後方に向かって広がっているベンチュリー空間を形成していた。これがフロントウィングと関連されてさらなるエクストラダウンフォースを稼いでいた。
FerrariF2001 (2001年)
2001年のフロントウィング高の規定変更に合わせ、フェラーリがF2001でこのスラントノーズ思想をいち早く打ち出し、2003年にマクラーレンが幻のMP4-18で発展させ2005年のゼロキールMP4-20で完成させたと言える。この構造は、MP4-18系と同じアドリアン・ニューウィーによるレッドブル/トロロッソのみならず、トヨタ、ウィリアムズらも追従し、ディファクトスタンダードとなっていた。
McLarenMP4-20 (2005年)
一方でフェラーリはここ数年はスラントノーズよりも、ノーズ下にも巨大なフラップを立てる思想であったが、昨年はハイダウンフォースのサーキットにおいて、フラップの後方のノーズ下の空間の圧力を下げるべく、ノーズに穴を開けて上方へ抜くという奇抜なデザインを投入した。
FerrariF2008の穴開きノーズ (2008年)
いずれにしても、フロントウィングとそのフラップ、そしてノーズやモノコックのデザインは極めて有機的に結びつき、強大なダウンフォース発生装置を形成していたのだ。それが、フロントウィングについては規定形状とされてフラップも消えたために、一気にリセットされてしまった。
そのため、この部分の処理に関してはこれまでのところ、大きく見て2つのパターンに分かれているように感じられる。
一つは、今のところこちらが主流と思えるが、中央の規定形状部分はメインプレーンのみとなった代わりに地上高が下がってヴェンチュリー効果は高まっていると考えられるフロントウィングは、あくまでウィング単体として働かせ、ノーズはかなり高く設定し、その下を通ったエネルギーの高いエアをサイドやボトムへと導き、リアのディフューザーによるダウンフォース向上に寄与させようという考え方だ。
このグループには昨年度のトップ3であるフェラーリ、マクラーレン、BMW、それにトヨタが属する。これらのマシンは一見、フロントウィング地上高が低く、また中央部分にフラップがなかったベネトンB191にも似た印象を受ける。言ってみれば先祖帰りで、この約20年F-1空力の進化は重箱の隅をつつくものであって、基本的な思想自体は何ら変化がなかったことの裏返しとも言え、少々残念な気持ちにもなる。
BenettonB191 (1991年)
だからと言ってもう一つのグループが革新的かというと、これも従来どおりの小手先にすぎないのだが、彼らは規定形状のウィングにおいてもノーズ下面との関連によるフロントベンチュリーを残すことを模索したようだ。
こちらに属するのは今のところルノーとウィリアムズということになる。R29とFW31のノーズは昨年までと同様かなり先端が低められていて、ウィングとの距離はかなり狭い。明確にノーズ下面とウィングとを関連付けていることを示している。また、フラップが無くなった分をノーズでカバーしようという意図なのか、ノーズの幅は両車ともかなり広くなっている。
RenaultR29
さらにルノーはこのノーズの下面の左右端にスプリッターのようなものを設けている。これによってノーズ下、ウィングマウントの間を通った空気は、ウィングマウンターとスプリッターによってシールされるわけで、完全にベンチュリー空間を形成している。見栄えは極めて美しくないのだが、極めて明快な意思を感じるデザインでもある。ただし、だからと言って強大で扱いやすいダウンフォースが実車として発揮されるかどうかは別問題で、それは今後明らかになっていくであろう。
...などと思っていたら、ウィリアムズは早速ノーズ先端がかなり高くなったノーズを既にテストに投入しているようだ。今の段階では主流は高めのノーズという流れができつつある。ルノーがこのままでいくのかどうか興味深い。
あー、なんか止まらなくなって来たぞ。
...続く。
これまでのエントリー内容は全てあげっぱなしで手元には保存していなかった。でも、もしここが潰れたりしたらそれらも全てなくなるのはちょっと寂しい。
そこで、実は先日から少しずつ昔のエントリーを保存しつつ、小さいサイズだった写真を大きいものに入れ替えたりしている。
とは言ってもまだ10エントリー程度なので、長い道のりである。
McLarenの今年のコンテンダーとなるMP4-24
さて今シーズンを戦うF-1マシンのローンチが続々と行われている。
ここまでローンチされた数チームを見てみると、やはり昨年までよりも各車に個性というか、試行錯誤が見られて興味深い。見た目がダサいという声も多く聞かれるし、まあもちろん人一倍F-1マシンの美意識にうるさいつもりの俺もそれには大いに同感ではあるのだが、一方で、レギュレーション変更によってこういう個性が見られるというのも、個人的にはとても面白いと思っている。
さて、ここまで既にローンチ済のマシンを見ていくと、フロントウィングが1800mm＋中央部分の規定形状という新レギュレーションで大きく変わったフロントセクション、そして空力付加物の禁止されたサイドポンツーン周辺が、大きく変化していて、各マシン個性もこの付近に多く現れていることが分かる。
まずフロントセクションについて見てみよう。
昨年を振り返ると、いわゆるマクラーレン型が主流であった。ゼロキールの基点ともなっているモノコックの前端がかなり高い位置にある一方、そこからノーズ先端にかけてスラント形状とすることで、ノーズ下面に後方に向かって広がっているベンチュリー空間を形成していた。これがフロントウィングと関連されてさらなるエクストラダウンフォースを稼いでいた。
FerrariF2001 (2001年)
2001年のフロントウィング高の規定変更に合わせ、フェラーリがF2001でこのスラントノーズ思想をいち早く打ち出し、2003年にマクラーレンが幻のMP4-18で発展させ2005年のゼロキールMP4-20で完成させたと言える。この構造は、MP4-18系と同じアドリアン・ニューウィーによるレッドブル/トロロッソのみならず、トヨタ、ウィリアムズらも追従し、ディファクトスタンダードとなっていた。
McLarenMP4-20 (2005年)
一方でフェラーリはここ数年はスラントノーズよりも、ノーズ下にも巨大なフラップを立てる思想であったが、昨年はハイダウンフォースのサーキットにおいて、フラップの後方のノーズ下の空間の圧力を下げるべく、ノーズに穴を開けて上方へ抜くという奇抜なデザインを投入した。
FerrariF2008の穴開きノーズ (2008年)
いずれにしても、フロントウィングとそのフラップ、そしてノーズやモノコックのデザインは極めて有機的に結びつき、強大なダウンフォース発生装置を形成していたのだ。それが、フロントウィングについては規定形状とされてフラップも消えたために、一気にリセットされてしまった。
そのため、この部分の処理に関してはこれまでのところ、大きく見て2つのパターンに分かれているように感じられる。
一つは、今のところこちらが主流と思えるが、中央の規定形状部分はメインプレーンのみとなった代わりに地上高が下がってヴェンチュリー効果は高まっていると考えられるフロントウィングは、あくまでウィング単体として働かせ、ノーズはかなり高く設定し、その下を通ったエネルギーの高いエアをサイドやボトムへと導き、リアのディフューザーによるダウンフォース向上に寄与させようという考え方だ。
このグループには昨年度のトップ3であるフェラーリ、マクラーレン、BMW、それにトヨタが属する。これらのマシンは一見、フロントウィング地上高が低く、また中央部分にフラップがなかったベネトンB191にも似た印象を受ける。言ってみれば先祖帰りで、この約20年F-1空力の進化は重箱の隅をつつくものであって、基本的な思想自体は何ら変化がなかったことの裏返しとも言え、少々残念な気持ちにもなる。
BenettonB191 (1991年)
だからと言ってもう一つのグループが革新的かというと、これも従来どおりの小手先にすぎないのだが、彼らは規定形状のウィングにおいてもノーズ下面との関連によるフロントベンチュリーを残すことを模索したようだ。
こちらに属するのは今のところルノーとウィリアムズということになる。R29とFW31のノーズは昨年までと同様かなり先端が低められていて、ウィングとの距離はかなり狭い。明確にノーズ下面とウィングとを関連付けていることを示している。また、フラップが無くなった分をノーズでカバーしようという意図なのか、ノーズの幅は両車ともかなり広くなっている。
RenaultR29
さらにルノーはこのノーズの下面の左右端にスプリッターのようなものを設けている。これによってノーズ下、ウィングマウントの間を通った空気は、ウィングマウンターとスプリッターによってシールされるわけで、完全にベンチュリー空間を形成している。見栄えは極めて美しくないのだが、極めて明快な意思を感じるデザインでもある。ただし、だからと言って強大で扱いやすいダウンフォースが実車として発揮されるかどうかは別問題で、それは今後明らかになっていくであろう。
...などと思っていたら、ウィリアムズは早速ノーズ先端がかなり高くなったノーズを既にテストに投入しているようだ。今の段階では主流は高めのノーズという流れができつつある。ルノーがこのままでいくのかどうか興味深い。
あー、なんか止まらなくなって来たぞ。
...続く。
nobilesの投稿(23:57:00-2009-01-25) -
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