NOBILES Days
Jump to navigationConsideration Of Digital Single Lens Reflex Camera
基本的に俺はアホなので、たかが会社の同期の飲み会程度でもわざわざ一眼レフカメラを持っていく。しかも、単焦点を3本くらいは携えて。
すると、一眼を持たない一般的な人間にとってはそれが不思議に感じるらしい。「なんでわざわざ大きな一眼がいいの？そんなに違うの？」。値段を聞いてさらに驚く。「レンズだけで4万？そんなの、デジカメが買えちゃうじゃん！」...いや、これもデジカメなんですけど。4万なんて、レンズの中では安い方の部類ですけど。
そんなわけで、こんなインターネットの隅も隅のこんな拙ブログをお読み下さっている方だけでも、駄文ながら「一眼レフカメラとは何か」を伝えればと思い、キーボードに指を走らせることにした次第である。
撮ったのはもう一週間前なのでまだ蕾の多い梅
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ApertureValueMode, 1/1600sec, F2.2, ISO100)
そもそも根本的なところから話し始めよう。
俺が愛機K10Dで画像を再生して見せていると、「あれっ？これデジカメなの？」と言われる。そう、一眼レフカメラ＝銀塩フィルムカメラと思っている人は未だにかなり多いのだと思う。
だが実際には、現在は一眼レフであっても銀塩フィルムカメラの生産は、表現としてフィルムを使いたい一部の人用の極めて限られたものになっている。スピードが求められる報道のプロカメラマンの間では随分前からディジタルが当たり前だし、高画素化が進み、解像度でもフィルムを超えて久しいと言われる昨今、多くのシーンで使用されるカメラのほとんどがディジタルカメラに移行している。
さらに話を遡ると、ディジタルカメラとは。そもそも、フィルムカメラのフィルムという受光部分を、CCDとかCMOSと言った種類の半導体（撮像素子と呼ばれる）で置き換えたものだと言って良い。だからそれ以外の部分に関しては実は、フィルムだろうがディジタルだろうが構造上は実は大きく進歩はしていない。
フィルムはその表面の感光剤が光を受けると化学変化を起こす。その変化を現像処理によって定着させ、印画紙にプリントする。だから、フィルムは一枚一枚、撮影するたびに送っていかなくてはならないし、現像するまで撮影した結果を見ることはできない。
一方、ディジタルカメラの撮像素子は受光した光の強度を電気信号に置き換える。フィルム送りや現像処理が必要ないというスピード、劣化の心配もないという安心（ただし消えるときは全て一挙に消えるが）、そしてフィルムと違って記憶媒体さえあれば無制限に撮影できるという手軽さが、一気にディジタルカメラが普及した要因であろう。
閑話休題。一眼レフとコンパクトの違いの話に戻ろう。
ディジタル一眼レフカメラの、いわゆるコンパクトディジタルカメラに対するアドヴァンテージは、大雑把に言って以下の点に集約されると思う。
1.レンズ交換可能
2.画質の良さ
3.スピード
それぞれの項目は、実際に一眼レフを触ってみれば一目瞭然なのだが、コンパクトしか知らない人間にとってはなかなかピンとくるものではないだろう。それぞれについて詳しく論じてみよう。
1.レンズ交換可能
構造的にコンパクトと一眼で分かりやすく違うのがこのポイントであろう。
普通のコンパクト機は、だいたい3〜4倍程度のズームレンズがついているのが一般的だと思う。一眼レフならば、目的に応じたレンズに付け替えることができる。
非常に分かりやすい例では、魚眼レンズや、超望遠といったように、カメラの性格をガラッと変えることができるのだ。これらは「画角」と言って、写る範囲を変更するためのレンズ交換と言える。
魚眼レンズの撮影例(拡大なし)
ステージと観客席を一枚に凝縮できる
(PentaxK10D, DAFisheye10-17mmF3.5-4.5(10.0mm), ProgramMode, 1/40sec, F5.0, ISO1600)
現在の俺のシステム
単焦点4発にズーム4発。本人はまだまだ不足だと思っているのだが、普通の人にとっては既に正気の沙汰では無いのだろう (′Д`;。
(PanasonicDMC-FZ10(13.6mm=equiv82mm), ProgramMode, 1/13sec, F2.8, ISO100)
ただし、最近ではいわゆるコンパクトタイプでも倍率20倍などというレンズを搭載し、1台で様々な画角撮影のできるカメラも出現しているので、これだけではその凄さは伝わらないだろう。
だがレンズの性能は画角だけで語れるものではない。よく、「へー、光学20倍なんてもう最強じゃん、一眼なんていらないじゃん」などという人がいるが、単に撮れる範囲が広いだけで、それが良い画質かということとは全く別物なのだ。
大きく重いが性能の良いとされるレンズは、暗い場所でも明るく撮れるし、後述する立体感や背景のボケ味といった表現の幅が広くなるのだ。用途や表現したい対象に応じて性能が高いレンズにしたり、持ち運びに有利な小型のレンズに変えたりできるところも、レンズ交換ができる大きなメリットだと考えて良いだろう。
2.画質の良さ
続いて、画質の良さについて。
まあ、どれだけ予備知識がなくても、あれだけごっつい機械なんだから誰しもが一眼の方が良いに違いないということは思っていることだろう。
一方で「今では普通のデジカメでも1000万画素だし、もうあんまり変わらないんじゃないの？」などという小耳に挟んだ程度の情報で意地悪に尋ねてくる輩も少なくない。
実際のところ、いわゆる一眼レフとコンパクトデジカメには、画質の良さにおいて絶対に超えられない壁がある。あ、いや、基本的には、と言っておこうか。
その差を生んでいるのは先述の「撮像素子」の大きさに集約される。
いわゆるコンパクトデジカメが搭載している撮像素子は1/2.33インチが現在は主流だ。これは光を受けるフィルムにあたる部品が小指の爪程度の大きさしかないことを意味している。もう少し高級タイプだったり、一眼が少し小さくなったようなスタイリングのものでも1/1.8インチ程度なので、まあようやく中指の爪の大きさになるかどうかというくらいだ。
一方ディジタル一眼レフカメラに採用されているのはAPS-Cと言われる主流のものでだいたい一般の切手サイズくらいの撮像素子となる。最近増えてきた「フルサイズ」と呼ばれる高級タイプのものはフィルムと同程度の大きさと言われていて、これが36mm×24mmで記念切手サイズくらいにはなるわけだ。
撮像素子の大きさ比べ
ではなぜ撮像素子が大きくなれば画質も良くなるのか。
まず、画素数が同じ1000万画素だとしたら、画素一粒一粒の大きさは、当然ディジタル一眼レフの撮像素子の方が大きくなる。画素が大きくなれば、受ける光の量も多くなる。そうすれば、光の強さ弱さを電気信号に変換するにあたっても、より安定的にその変換を行えるようになることは明白だ。
逆に、これが小さくなればなるほど、光の強い弱いの表現のリニアリティ...つまりは例えば白から黒のグラデーションを綺麗に再現するのが難しく、ノイズが乗りやすくなってしまう。
だからとりわけ高感度域と言われる、電気信号への変換を増幅して行わなければならない状況＝暗い環境においてその画質の差は際立ってくる。また色の変化、光の強さの変化がとても微妙な場面において、その画質の違いはくっきりと目立ってくる。
そして、もっと決定的に写真の仕上がりに直結する要素がある。
それはピントの合う範囲の広さだ。これは光学的な話になってくるので原理は省略するが、実は、撮像素子が大きくなるとピントの合う範囲が狭くなっていく（これを「被写界深度が浅くなる」という）。
ピントが合う範囲が狭くなる、というと何か悪いことに聞こえるかもしれない。
ここは百聞は一見にしかずで写真をご覧いただきたい。
コンパクトによる撮影
(Panasonic DMC-FZ10, ManualExposure, 1/13sec, F2.8, ISO100)
一眼レフによる撮影
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ManualExposure, 1/13sec, F2.8, ISO100)
2枚の写真は、注釈を見れば分かる通り、露出が数値上同じになるようにして撮影している。が、その写り方は圧倒的に違う。一眼レフで撮影したものの方が、人形の顔だけにピントがあって他の部分はボケているために、非常に強調されているのが分かるだろう。ボケ具合によって、人形自体の立体感も表現されているのが分かるだろうか。
今画面から目を離し、周りを見渡してみて欲しい。そして、少し意識して自分の視界を感じて欲しい。今何か注目しているもの以外は結構ボケていることに気づかないだろうか？つまり、見たいものだけにピントが合い、他のものがボケているというのは人間の目として極めて自然なことなのだ。
それでいて、一眼レフのレンズは絞りという値を大きくしていけば、コンパクトと同じように全体にピントがあった写真を撮ることも可能だ。立体感やボケ味のコントロールをして、何を写したいのかを主張する表現の幅が圧倒的に広いのが一眼レフカメラの大いなる利点である。
逆を言えば、何も考えずに撮ると、ピントの合う範囲が非常に狭いがために、自分が意図するのと違うものにピントが合ってしまい、本来撮りたかったものが盛大なピンボケだったりする。これが一眼初心者にありがちな罠だ。
俺のカメラで他の人が撮った写真（拡大はナシ）
せっかくの満面の笑みが盛大なピンボケだ
だから各社はインテリジェントなピント合わせ（フォーカシング）プログラムを開発して、どうにかユーザーの撮りたいものにピントが自動で合うように工夫はしている。だが、「なんとなく、一眼にしたら綺麗な写真撮れそう」では失敗しかねないことは、頭の隅に置いておくべきと思う。やはり、写真はカメラが撮るのではなく、それを操る人が撮るものなのだ（俺なんかが偉そうに言うのもなんだけど）。
3.スピード
一眼レフカメラを語る上で欠かせないのがスピードだ。
そもそも、なぜ「一眼レフ」と言うのかということから話そう。
「一眼」の意味は、光を取り込むレンズが一つという意味である。じゃあ「二眼」はあるのかと聞かれれば、ある。これだ。
そう、人が覗き込んで構図を決めるためのレンズと、実際にフィルムに光を導くレンズが別々に存在しているカメラもあるのだ。
そういう意味では、いわゆる普通のデジカメも、一つのレンズで光を取り込み、それを背面の液晶モニタで見ているのだから、実は一眼カメラの一種でもあるのだ。いや、昔は別にのぞき窓（ファインダー）が搭載されているものが多かったのだ、コンパクトカメラは。
では「レフ」はなにか。これはレフレックス＝鏡のことだ。
一眼レフカメラだろうと、コンパクトデジカメだろうと、撮影の原理は同じで、カメラ前面のレンズから入った光が、撮像素子上で像を結び、それが電気信号へと変換される。違うのは、一眼レフカメラの場合、撮影する瞬間以外は撮像素子の前に鏡があって、レンズからの光を上に跳ね上げている。これによって、覗き窓＝ファインダーから、写真として撮りたい被写体を、撮影の直前までリアルタイムに確認することができるわけだ。これが一眼レフの大きなメリットである。
「そんなの、普通のデジカメの後ろの液晶画面でもできるじゃないか」。確かにそうだ。だが、...例えばその辺を走っている車でもいい。そのデジカメを向けてみると、意外なほど実際の車に比べて液晶画面上の車の動きが遅れていることが分かると思う。それは、一般のデジカメの場合は、レンズを通った光を撮像素子が受け、電気信号に変換し、映像処理エンジンが解析して、さらにそれを液晶モニタに表示するという数々の処理が入るために、どうしてもタイムラグが発生してしまうのだ。一方、一眼レフでは光が直接反射されているのでタイムラグが実質上存在しない（いや、肉眼よりも光路差が数cm発生しているのだから100億分の1秒程度は遅れているはずだが、まあ一般的にはそれは「ゼロ」と言われる (^_^;）。
技術の進歩でモニタ表示のタイムラグはどんどん小さくなっているし、多くの人にとっては満足行く性能になる時代はいずれ来るはず（マイクロフォーサーズの初号機、PanasonicDMC-G1の液晶ビューファインダーなどは既にそのレベルかもしれない）で、数年後にはミラーを廃した一眼カメラの方が一般的になっている可能性は否定できない。だが、まだその差は大きいと言っておこう。
ところで、最新コンパクトデジカメの弊害の一つとして、ファインダーを廃して液晶モニタのみで撮影しなければならないスタイリングがあげられると思っている。大型化した液晶を見るために、カメラを両手の指でつまむような形でホールドし、腕を延ばした状態で撮影をする人が非常に多いが、そんな姿勢ではカメラが容易に縦回転して、手ぶれが発生しやすくなってしまう。これでは、いくら手ぶれ補正機構が入っていても何の意味も無い。
ファインダーを覗いて撮影する場合は、両手と顔の三点で支えた上で、肘を曲げて身体に密着させることで手ぶれを抑制できるのだ。さらに、一眼レフは基本的にしっかりとしたグリップがあるので右手でしっかり握り込めるのも大きい。
でも、人に一眼を貸すと左手はボディの横っ面を指でつまむ人が多い。これもコンパクトカメラで蔓延した悪い癖だと思うのだが、とても手ぶれしやすい握り方なので注意されたい。左手は手のひらにカメラの底を乗せ、さらに指でレンズの鏡胴を包み込む感じに持つのが正しい。
また話がそれたが、こうして光路上にミラーを配したことから、一眼レフはオートフォーカス（自動ピント合わせ）方式もコンパクトカメラとは違う方式を採用している。
コンパクトカメラが採用しているオートフォーカスはコントラスト検出式と言われ、フォーカスを動かして被写体が最も先鋭に写る（コントラストが最もはっきりと出る）ポイントを探す。
一方一眼レフでは「位相差検出式」と言われる方式だ。これはミラーによって光路差を作り出すことで、三角測量の応用で被写体までの距離を計算し、その情報をレンズに伝えることで一発でレンズのフォーカスをその位置に移動させる。探す作業が必要なコントラスト式に比べるとピントが合うスピードが（一般的には）圧倒的に速いのである。
ところで、少し前に女優が「一眼レフと勝負！」と言って宣伝していたカメラのことをご存知だろうか。
確かに、あのカメラはスタイリングこそ一眼風なので「一眼じゃないの？」と疑問に思う人がいないか俺は心配だったのだが、搭載している撮像素子はいわゆるコンパクトカメラのサイズなので、クラス分けとしてはコンパクトデジカメの部類になる。
で、これは確か1秒間に最大1000コマという、業務用のハイスピードカメラも真っ青の驚異的な連写性能を持っていた。確かに、その一点においては圧倒的に一眼レフに勝利していたわけだ。
だが、これまで述べたファインダー像のスピード、フォーカスの速さについては結局コンパクトカメラのレベルであって、それらのスピードに起因する撮影の快適性に関しては、圧倒的に一眼レフが上であることは明白だ。キャッチフレーズに騙されてはならない。
ただ、こうした曲芸系のデジカメを否定するつもりはない。どいつもこいつも小さく、画素数が多くて、金属製のおしゃれなボディというのでは全く没個性だ。今後も様々なニーズに応える個性的なカメラが出てきて欲しいと思う。
さて、ここまでディジタル一眼レフとコンパクトデジカメの違いについて論じてきたが、昨今のディジタル一眼の潮流というのも述べておきたい。
一眼を人に貸すと、「あれ？画面に写らないよ。電源入ってないんじゃない？」と言う人がとても多い（嫁は何度教えても忘れる）。先ほども述べたように、一眼レフは撮影する瞬間にミラーを跳ね上げて初めて撮像素子に光が行くので、基本的に液晶画面で見ながら撮影というのは不可能なのだ。
だが、そうした一眼レフ初心者の声を聞いてかどうか分からないが、昨今は一眼でも液晶を見ながら撮影できる「ライブビュー」という機能を搭載した機種がかなり増えてきた。
すなわち、常時ミラーを跳ね上げて撮像素子に光を導いて液晶画面に表示する。この時、ほとんどの機種では光学ファインダーからは何も見えなくなる。つまり、ミラーが意味を成さなくなるのでこの時点で撮影の仕組みとしては一眼「レフ」ではなくなっているのである。
個人的には俺はちょっと否定的な立場で見ている。
なぜならば、ミラーを跳ね上げる時点で、前述の「位相差オートフォーカス」が使用できなくなるため、一眼レフならではの高速なオートフォーカスが失われ、たいていの機種がコンパクト機と同じコントラスト式になる。しかも、新たにそれを想定したレンズを作ったオリンパスやパナソニックを除き、ほとんどのレンズがコントラスト式を想定していないので、コンパクト機よりむしろフォーカススピードは遅くなるのである。
また、先ほども述べたように、液晶モニタで見るということは、二本の腕のみによるホールドとなるため、手ぶれの危険性が高まるのだ。某社は「もう俺達は覗かない」などと派手に宣伝しているが、手ぶれがしにくい基本の姿勢を認知させないまま「自由な撮影スタイルだぜ！」というのもなんだか痛々しいと思うのだ。
もちろんライブビューの利点を否定するわけではない。拡大表示などを使えるため、三脚を利用してマニュアルフォーカスを追い込むのには非常に便利だし、実際に撮影を行う撮像素子の情報そのものだから、光学ファインダーよりも厳密に写る範囲を指定できる。フィルム時代には絶対にできなかったディジタル時代ならでは機能だと思うが、それ故、まだスマートな形で実装しきれていないのではないかと感じる。
特に前述の某メーカーの宣伝のカメラはオートフォーカスが遅くなるのを嫌い、ライブビュー用のセンサーをわざわざ別に用意して、ライブビュー中でも位相差式オートフォーカスを実現したのは良いのだが、その弊害として光学ファインダーの像は小さく見づらいものになってしまった。それどころか、そのセンサーの性能が高くないために、せっかくのライブビューの利点の一つであるはずの拡大表示ができないのも痛い。
また、「フリースタイル」を標榜するために液晶モニタを可動にしたのは良いのだが、可動方向が一方向に限られ、カメラを縦にして撮影する際には意味を成さない。ライブビューをやるのなら、オリンパスやパナソニックのように、完全フリーモニタにしなければその意味は薄いと俺は思う。
もう一つの流れは「フルサイズ」だ。この1,2年で一挙にモデル数が増え、価格も、頑張ればなんとかなるようなレンジまで下がってきた。
フルサイズは上で述べた通り、35mm版フィルムと同程度の大きさの撮像素子を搭載したディジタルカメラのことだ。
ディジタル一眼レフで最もポピュラーなAPS-Cタイプの約2倍の面積を持つので、得られるボケ味も大きくなるので、表現の幅は大幅に増える。
また、同じ密度で画素を並べればおよそ2倍の解像度を誇るカメラになるし（Canon, Sony, NikonのD3Xがそうだ）、同じ画素数に抑えたなら一画素あたりの面積が増えて高感度に強い、ノイズが少ないカメラになる（Nikon D3, D700）。もちろん、絶対的な性能において、APS-Cを軽く凌駕するものであるのは明白だ。
ただし、いくら下がってきたとは言え、その価格は依然として下のクラスでもオトーサンの手取りの1ヶ月分に相当するくらいはする。また、撮像素子が大きくなる分、シャッターユニット、ファインダーなどの部品も大きくなるので重量もサイズも2回りほど大きいものになると考えて良い。
さらに、その比類なき性能を引き出すには相応のレンズを揃えなければならない。ディジタル用に最適化されたフルサイズ向けのレンズはもう一台ボディが買えてしまうくらいの恐ろしい値段がするし、サイズ・重量にしても全く同じことが言える。
そうなると、気軽に持ち歩けるものではなくなってくる。また、ピントや手ぶれに対しても非常にシビアになるので、技能的には更に上級のものが求められることになる。APS-Cのディジタル一眼でうまく写真が撮れないからフルサイズが欲しい、なんて考えて買ったら余計に愕然とすることだろう。
「フィルム時代使っていたレンズを使い回したいから」という人もいるかもしれない。それはそれで味を楽しめるからそういう人にはいいかもしれないが、ディジタルならではの問題もある（撮像素子が反射した光が再びレンズに反射して画質を低下させたり、電子回路の厚み分周辺光量がより一層強調されたりする）ので、結局APS-CのボディとAPS-Cサイズに最適化したレンズでシステムを組んだ方が総合的には画質が良いなんてことも十二分に考えられる。フルサイズを買うからには十分に自分の撮影スタイルを吟味してから選択するべきだと思う。
俺の使っているPentaxがフルサイズのラインナップがないから、というわけではないが、スナップ中心の俺のカメラライフにおいてフルサイズは重荷すぎる。
だが、街の大型電機店などに行くと、いい加減なことばかり言う店員が多くて辟易する。特に初心者に対する説明だ。
・一眼レフはレンズラインナップでメーカーを決めるべきです。
↓
...と言われて初めて一眼を買ったオトーサンの8割は、ダブルズームレンズキットで満足して二度とレンズなど買わないのだ。
確かに、ユーザーの多いCanon, Nikonはもともと純正レンズも多いし、サードパーティのレンズも早くリリースされる。
でも、SonyやPentaxも個性的なレンズが揃っている。また、撮像素子のサイズは小さいが、レンズ性能に一番こだわっているのが実はOlympusだったりするのだ。
何も考えずに良い写真を得たいという考え方にはオート化・高速化が促進されたCanon, Nikonがいいし、撮影行為自体を楽しみたいならマニュアル操作が楽しいSony, Pentax、小型軽量でライブビューも業界一熱心なのがOlympus, Panasonicという特色があるのだから、そういう勧め方をするべきなんじゃないの？
・初級一眼レフを買う場合でも、上位にフルサイズ機があるメーカーを選ぶべきです。レンズを使い回せますよ。
↓
確かにそうだが、初級一眼レフのレンズキットはAPS-Cサイズに特化されているからフルサイズ機には使い回せない。
サイズ的に小さいというメリットがあるAPS-C機を買った上でフルサイズの大きなレンズを揃えるのも利点を潰すのでナンセンスだし、上位フルサイズ機では求められるレンズの性能も違うから、結局ボディを買い替えればレンズもほぼ買い直しになる。
そもそも、初めて買う人にそんな先のことまで考えてモノを勧めるのがナンセンスだ。それよりも、今のその人のニーズに応えられるボディの機能で選ぶべきだ。上位機種に行こうという意識を持つような酔狂な人間にとって、マウントを変更することなどほとんど苦ではない。
・Pentaxは老舗ですから、上位機種も豊富です。
↓
おいおい、初心者向けK-mの上には同じAPS-Cサイズの中級機K20Dがあるだけですが！
同じPentaxユーザーながら、K-mが「ディジタルフィルタ機能が女性にウケて売れている」なんてめちゃくちゃ眉唾だ。CanonのKissX2と比べてかなり安価なことが理由ならともかく、フィルタ機能を女性がガンガン使うなんて考えにくい。
むしろ、他メーカーの一眼ユーザーが、Pentaxの個性的な単焦点を使いたくてセカンドカメラとして買っているならまだ話として分かるが。
とにかくもう、店員のいうことなんて信じちゃ駄目だ。
まあ何はともあれ、ディジタル一眼レフは楽しい。何か、いい被写体がないかと良く観察することで新たな発見もあるし、例えば子供の写真だって立体感がある自然な写真で残せた方がいいに決まっている。
是非、ひとつ。
すると、一眼を持たない一般的な人間にとってはそれが不思議に感じるらしい。「なんでわざわざ大きな一眼がいいの？そんなに違うの？」。値段を聞いてさらに驚く。「レンズだけで4万？そんなの、デジカメが買えちゃうじゃん！」...いや、これもデジカメなんですけど。4万なんて、レンズの中では安い方の部類ですけど。
そんなわけで、こんなインターネットの隅も隅のこんな拙ブログをお読み下さっている方だけでも、駄文ながら「一眼レフカメラとは何か」を伝えればと思い、キーボードに指を走らせることにした次第である。
撮ったのはもう一週間前なのでまだ蕾の多い梅
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ApertureValueMode, 1/1600sec, F2.2, ISO100)
そもそも根本的なところから話し始めよう。
俺が愛機K10Dで画像を再生して見せていると、「あれっ？これデジカメなの？」と言われる。そう、一眼レフカメラ＝銀塩フィルムカメラと思っている人は未だにかなり多いのだと思う。
だが実際には、現在は一眼レフであっても銀塩フィルムカメラの生産は、表現としてフィルムを使いたい一部の人用の極めて限られたものになっている。スピードが求められる報道のプロカメラマンの間では随分前からディジタルが当たり前だし、高画素化が進み、解像度でもフィルムを超えて久しいと言われる昨今、多くのシーンで使用されるカメラのほとんどがディジタルカメラに移行している。
さらに話を遡ると、ディジタルカメラとは。そもそも、フィルムカメラのフィルムという受光部分を、CCDとかCMOSと言った種類の半導体（撮像素子と呼ばれる）で置き換えたものだと言って良い。だからそれ以外の部分に関しては実は、フィルムだろうがディジタルだろうが構造上は実は大きく進歩はしていない。
フィルムはその表面の感光剤が光を受けると化学変化を起こす。その変化を現像処理によって定着させ、印画紙にプリントする。だから、フィルムは一枚一枚、撮影するたびに送っていかなくてはならないし、現像するまで撮影した結果を見ることはできない。
一方、ディジタルカメラの撮像素子は受光した光の強度を電気信号に置き換える。フィルム送りや現像処理が必要ないというスピード、劣化の心配もないという安心（ただし消えるときは全て一挙に消えるが）、そしてフィルムと違って記憶媒体さえあれば無制限に撮影できるという手軽さが、一気にディジタルカメラが普及した要因であろう。
閑話休題。一眼レフとコンパクトの違いの話に戻ろう。
ディジタル一眼レフカメラの、いわゆるコンパクトディジタルカメラに対するアドヴァンテージは、大雑把に言って以下の点に集約されると思う。
1.レンズ交換可能
2.画質の良さ
3.スピード
それぞれの項目は、実際に一眼レフを触ってみれば一目瞭然なのだが、コンパクトしか知らない人間にとってはなかなかピンとくるものではないだろう。それぞれについて詳しく論じてみよう。
1.レンズ交換可能
構造的にコンパクトと一眼で分かりやすく違うのがこのポイントであろう。
普通のコンパクト機は、だいたい3〜4倍程度のズームレンズがついているのが一般的だと思う。一眼レフならば、目的に応じたレンズに付け替えることができる。
非常に分かりやすい例では、魚眼レンズや、超望遠といったように、カメラの性格をガラッと変えることができるのだ。これらは「画角」と言って、写る範囲を変更するためのレンズ交換と言える。
魚眼レンズの撮影例(拡大なし)
ステージと観客席を一枚に凝縮できる
(PentaxK10D, DAFisheye10-17mmF3.5-4.5(10.0mm), ProgramMode, 1/40sec, F5.0, ISO1600)
現在の俺のシステム
単焦点4発にズーム4発。本人はまだまだ不足だと思っているのだが、普通の人にとっては既に正気の沙汰では無いのだろう (′Д`;。
(PanasonicDMC-FZ10(13.6mm=equiv82mm), ProgramMode, 1/13sec, F2.8, ISO100)
ただし、最近ではいわゆるコンパクトタイプでも倍率20倍などというレンズを搭載し、1台で様々な画角撮影のできるカメラも出現しているので、これだけではその凄さは伝わらないだろう。
だがレンズの性能は画角だけで語れるものではない。よく、「へー、光学20倍なんてもう最強じゃん、一眼なんていらないじゃん」などという人がいるが、単に撮れる範囲が広いだけで、それが良い画質かということとは全く別物なのだ。
大きく重いが性能の良いとされるレンズは、暗い場所でも明るく撮れるし、後述する立体感や背景のボケ味といった表現の幅が広くなるのだ。用途や表現したい対象に応じて性能が高いレンズにしたり、持ち運びに有利な小型のレンズに変えたりできるところも、レンズ交換ができる大きなメリットだと考えて良いだろう。
2.画質の良さ
続いて、画質の良さについて。
まあ、どれだけ予備知識がなくても、あれだけごっつい機械なんだから誰しもが一眼の方が良いに違いないということは思っていることだろう。
一方で「今では普通のデジカメでも1000万画素だし、もうあんまり変わらないんじゃないの？」などという小耳に挟んだ程度の情報で意地悪に尋ねてくる輩も少なくない。
実際のところ、いわゆる一眼レフとコンパクトデジカメには、画質の良さにおいて絶対に超えられない壁がある。あ、いや、基本的には、と言っておこうか。
その差を生んでいるのは先述の「撮像素子」の大きさに集約される。
いわゆるコンパクトデジカメが搭載している撮像素子は1/2.33インチが現在は主流だ。これは光を受けるフィルムにあたる部品が小指の爪程度の大きさしかないことを意味している。もう少し高級タイプだったり、一眼が少し小さくなったようなスタイリングのものでも1/1.8インチ程度なので、まあようやく中指の爪の大きさになるかどうかというくらいだ。
一方ディジタル一眼レフカメラに採用されているのはAPS-Cと言われる主流のものでだいたい一般の切手サイズくらいの撮像素子となる。最近増えてきた「フルサイズ」と呼ばれる高級タイプのものはフィルムと同程度の大きさと言われていて、これが36mm×24mmで記念切手サイズくらいにはなるわけだ。
撮像素子の大きさ比べ
ではなぜ撮像素子が大きくなれば画質も良くなるのか。
まず、画素数が同じ1000万画素だとしたら、画素一粒一粒の大きさは、当然ディジタル一眼レフの撮像素子の方が大きくなる。画素が大きくなれば、受ける光の量も多くなる。そうすれば、光の強さ弱さを電気信号に変換するにあたっても、より安定的にその変換を行えるようになることは明白だ。
逆に、これが小さくなればなるほど、光の強い弱いの表現のリニアリティ...つまりは例えば白から黒のグラデーションを綺麗に再現するのが難しく、ノイズが乗りやすくなってしまう。
だからとりわけ高感度域と言われる、電気信号への変換を増幅して行わなければならない状況＝暗い環境においてその画質の差は際立ってくる。また色の変化、光の強さの変化がとても微妙な場面において、その画質の違いはくっきりと目立ってくる。
そして、もっと決定的に写真の仕上がりに直結する要素がある。
それはピントの合う範囲の広さだ。これは光学的な話になってくるので原理は省略するが、実は、撮像素子が大きくなるとピントの合う範囲が狭くなっていく（これを「被写界深度が浅くなる」という）。
ピントが合う範囲が狭くなる、というと何か悪いことに聞こえるかもしれない。
ここは百聞は一見にしかずで写真をご覧いただきたい。
コンパクトによる撮影
(Panasonic DMC-FZ10, ManualExposure, 1/13sec, F2.8, ISO100)
一眼レフによる撮影
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ManualExposure, 1/13sec, F2.8, ISO100)
2枚の写真は、注釈を見れば分かる通り、露出が数値上同じになるようにして撮影している。が、その写り方は圧倒的に違う。一眼レフで撮影したものの方が、人形の顔だけにピントがあって他の部分はボケているために、非常に強調されているのが分かるだろう。ボケ具合によって、人形自体の立体感も表現されているのが分かるだろうか。
今画面から目を離し、周りを見渡してみて欲しい。そして、少し意識して自分の視界を感じて欲しい。今何か注目しているもの以外は結構ボケていることに気づかないだろうか？つまり、見たいものだけにピントが合い、他のものがボケているというのは人間の目として極めて自然なことなのだ。
それでいて、一眼レフのレンズは絞りという値を大きくしていけば、コンパクトと同じように全体にピントがあった写真を撮ることも可能だ。立体感やボケ味のコントロールをして、何を写したいのかを主張する表現の幅が圧倒的に広いのが一眼レフカメラの大いなる利点である。
逆を言えば、何も考えずに撮ると、ピントの合う範囲が非常に狭いがために、自分が意図するのと違うものにピントが合ってしまい、本来撮りたかったものが盛大なピンボケだったりする。これが一眼初心者にありがちな罠だ。
俺のカメラで他の人が撮った写真（拡大はナシ）
せっかくの満面の笑みが盛大なピンボケだ
だから各社はインテリジェントなピント合わせ（フォーカシング）プログラムを開発して、どうにかユーザーの撮りたいものにピントが自動で合うように工夫はしている。だが、「なんとなく、一眼にしたら綺麗な写真撮れそう」では失敗しかねないことは、頭の隅に置いておくべきと思う。やはり、写真はカメラが撮るのではなく、それを操る人が撮るものなのだ（俺なんかが偉そうに言うのもなんだけど）。
3.スピード
一眼レフカメラを語る上で欠かせないのがスピードだ。
そもそも、なぜ「一眼レフ」と言うのかということから話そう。
「一眼」の意味は、光を取り込むレンズが一つという意味である。じゃあ「二眼」はあるのかと聞かれれば、ある。これだ。
そう、人が覗き込んで構図を決めるためのレンズと、実際にフィルムに光を導くレンズが別々に存在しているカメラもあるのだ。
そういう意味では、いわゆる普通のデジカメも、一つのレンズで光を取り込み、それを背面の液晶モニタで見ているのだから、実は一眼カメラの一種でもあるのだ。いや、昔は別にのぞき窓（ファインダー）が搭載されているものが多かったのだ、コンパクトカメラは。
では「レフ」はなにか。これはレフレックス＝鏡のことだ。
一眼レフカメラだろうと、コンパクトデジカメだろうと、撮影の原理は同じで、カメラ前面のレンズから入った光が、撮像素子上で像を結び、それが電気信号へと変換される。違うのは、一眼レフカメラの場合、撮影する瞬間以外は撮像素子の前に鏡があって、レンズからの光を上に跳ね上げている。これによって、覗き窓＝ファインダーから、写真として撮りたい被写体を、撮影の直前までリアルタイムに確認することができるわけだ。これが一眼レフの大きなメリットである。
「そんなの、普通のデジカメの後ろの液晶画面でもできるじゃないか」。確かにそうだ。だが、...例えばその辺を走っている車でもいい。そのデジカメを向けてみると、意外なほど実際の車に比べて液晶画面上の車の動きが遅れていることが分かると思う。それは、一般のデジカメの場合は、レンズを通った光を撮像素子が受け、電気信号に変換し、映像処理エンジンが解析して、さらにそれを液晶モニタに表示するという数々の処理が入るために、どうしてもタイムラグが発生してしまうのだ。一方、一眼レフでは光が直接反射されているのでタイムラグが実質上存在しない（いや、肉眼よりも光路差が数cm発生しているのだから100億分の1秒程度は遅れているはずだが、まあ一般的にはそれは「ゼロ」と言われる (^_^;）。
技術の進歩でモニタ表示のタイムラグはどんどん小さくなっているし、多くの人にとっては満足行く性能になる時代はいずれ来るはず（マイクロフォーサーズの初号機、PanasonicDMC-G1の液晶ビューファインダーなどは既にそのレベルかもしれない）で、数年後にはミラーを廃した一眼カメラの方が一般的になっている可能性は否定できない。だが、まだその差は大きいと言っておこう。
ところで、最新コンパクトデジカメの弊害の一つとして、ファインダーを廃して液晶モニタのみで撮影しなければならないスタイリングがあげられると思っている。大型化した液晶を見るために、カメラを両手の指でつまむような形でホールドし、腕を延ばした状態で撮影をする人が非常に多いが、そんな姿勢ではカメラが容易に縦回転して、手ぶれが発生しやすくなってしまう。これでは、いくら手ぶれ補正機構が入っていても何の意味も無い。
ファインダーを覗いて撮影する場合は、両手と顔の三点で支えた上で、肘を曲げて身体に密着させることで手ぶれを抑制できるのだ。さらに、一眼レフは基本的にしっかりとしたグリップがあるので右手でしっかり握り込めるのも大きい。
でも、人に一眼を貸すと左手はボディの横っ面を指でつまむ人が多い。これもコンパクトカメラで蔓延した悪い癖だと思うのだが、とても手ぶれしやすい握り方なので注意されたい。左手は手のひらにカメラの底を乗せ、さらに指でレンズの鏡胴を包み込む感じに持つのが正しい。
また話がそれたが、こうして光路上にミラーを配したことから、一眼レフはオートフォーカス（自動ピント合わせ）方式もコンパクトカメラとは違う方式を採用している。
コンパクトカメラが採用しているオートフォーカスはコントラスト検出式と言われ、フォーカスを動かして被写体が最も先鋭に写る（コントラストが最もはっきりと出る）ポイントを探す。
一方一眼レフでは「位相差検出式」と言われる方式だ。これはミラーによって光路差を作り出すことで、三角測量の応用で被写体までの距離を計算し、その情報をレンズに伝えることで一発でレンズのフォーカスをその位置に移動させる。探す作業が必要なコントラスト式に比べるとピントが合うスピードが（一般的には）圧倒的に速いのである。
ところで、少し前に女優が「一眼レフと勝負！」と言って宣伝していたカメラのことをご存知だろうか。
確かに、あのカメラはスタイリングこそ一眼風なので「一眼じゃないの？」と疑問に思う人がいないか俺は心配だったのだが、搭載している撮像素子はいわゆるコンパクトカメラのサイズなので、クラス分けとしてはコンパクトデジカメの部類になる。
で、これは確か1秒間に最大1000コマという、業務用のハイスピードカメラも真っ青の驚異的な連写性能を持っていた。確かに、その一点においては圧倒的に一眼レフに勝利していたわけだ。
だが、これまで述べたファインダー像のスピード、フォーカスの速さについては結局コンパクトカメラのレベルであって、それらのスピードに起因する撮影の快適性に関しては、圧倒的に一眼レフが上であることは明白だ。キャッチフレーズに騙されてはならない。
ただ、こうした曲芸系のデジカメを否定するつもりはない。どいつもこいつも小さく、画素数が多くて、金属製のおしゃれなボディというのでは全く没個性だ。今後も様々なニーズに応える個性的なカメラが出てきて欲しいと思う。
さて、ここまでディジタル一眼レフとコンパクトデジカメの違いについて論じてきたが、昨今のディジタル一眼の潮流というのも述べておきたい。
一眼を人に貸すと、「あれ？画面に写らないよ。電源入ってないんじゃない？」と言う人がとても多い（嫁は何度教えても忘れる）。先ほども述べたように、一眼レフは撮影する瞬間にミラーを跳ね上げて初めて撮像素子に光が行くので、基本的に液晶画面で見ながら撮影というのは不可能なのだ。
だが、そうした一眼レフ初心者の声を聞いてかどうか分からないが、昨今は一眼でも液晶を見ながら撮影できる「ライブビュー」という機能を搭載した機種がかなり増えてきた。
すなわち、常時ミラーを跳ね上げて撮像素子に光を導いて液晶画面に表示する。この時、ほとんどの機種では光学ファインダーからは何も見えなくなる。つまり、ミラーが意味を成さなくなるのでこの時点で撮影の仕組みとしては一眼「レフ」ではなくなっているのである。
個人的には俺はちょっと否定的な立場で見ている。
なぜならば、ミラーを跳ね上げる時点で、前述の「位相差オートフォーカス」が使用できなくなるため、一眼レフならではの高速なオートフォーカスが失われ、たいていの機種がコンパクト機と同じコントラスト式になる。しかも、新たにそれを想定したレンズを作ったオリンパスやパナソニックを除き、ほとんどのレンズがコントラスト式を想定していないので、コンパクト機よりむしろフォーカススピードは遅くなるのである。
また、先ほども述べたように、液晶モニタで見るということは、二本の腕のみによるホールドとなるため、手ぶれの危険性が高まるのだ。某社は「もう俺達は覗かない」などと派手に宣伝しているが、手ぶれがしにくい基本の姿勢を認知させないまま「自由な撮影スタイルだぜ！」というのもなんだか痛々しいと思うのだ。
もちろんライブビューの利点を否定するわけではない。拡大表示などを使えるため、三脚を利用してマニュアルフォーカスを追い込むのには非常に便利だし、実際に撮影を行う撮像素子の情報そのものだから、光学ファインダーよりも厳密に写る範囲を指定できる。フィルム時代には絶対にできなかったディジタル時代ならでは機能だと思うが、それ故、まだスマートな形で実装しきれていないのではないかと感じる。
特に前述の某メーカーの宣伝のカメラはオートフォーカスが遅くなるのを嫌い、ライブビュー用のセンサーをわざわざ別に用意して、ライブビュー中でも位相差式オートフォーカスを実現したのは良いのだが、その弊害として光学ファインダーの像は小さく見づらいものになってしまった。それどころか、そのセンサーの性能が高くないために、せっかくのライブビューの利点の一つであるはずの拡大表示ができないのも痛い。
また、「フリースタイル」を標榜するために液晶モニタを可動にしたのは良いのだが、可動方向が一方向に限られ、カメラを縦にして撮影する際には意味を成さない。ライブビューをやるのなら、オリンパスやパナソニックのように、完全フリーモニタにしなければその意味は薄いと俺は思う。
もう一つの流れは「フルサイズ」だ。この1,2年で一挙にモデル数が増え、価格も、頑張ればなんとかなるようなレンジまで下がってきた。
フルサイズは上で述べた通り、35mm版フィルムと同程度の大きさの撮像素子を搭載したディジタルカメラのことだ。
ディジタル一眼レフで最もポピュラーなAPS-Cタイプの約2倍の面積を持つので、得られるボケ味も大きくなるので、表現の幅は大幅に増える。
また、同じ密度で画素を並べればおよそ2倍の解像度を誇るカメラになるし（Canon, Sony, NikonのD3Xがそうだ）、同じ画素数に抑えたなら一画素あたりの面積が増えて高感度に強い、ノイズが少ないカメラになる（Nikon D3, D700）。もちろん、絶対的な性能において、APS-Cを軽く凌駕するものであるのは明白だ。
ただし、いくら下がってきたとは言え、その価格は依然として下のクラスでもオトーサンの手取りの1ヶ月分に相当するくらいはする。また、撮像素子が大きくなる分、シャッターユニット、ファインダーなどの部品も大きくなるので重量もサイズも2回りほど大きいものになると考えて良い。
さらに、その比類なき性能を引き出すには相応のレンズを揃えなければならない。ディジタル用に最適化されたフルサイズ向けのレンズはもう一台ボディが買えてしまうくらいの恐ろしい値段がするし、サイズ・重量にしても全く同じことが言える。
そうなると、気軽に持ち歩けるものではなくなってくる。また、ピントや手ぶれに対しても非常にシビアになるので、技能的には更に上級のものが求められることになる。APS-Cのディジタル一眼でうまく写真が撮れないからフルサイズが欲しい、なんて考えて買ったら余計に愕然とすることだろう。
「フィルム時代使っていたレンズを使い回したいから」という人もいるかもしれない。それはそれで味を楽しめるからそういう人にはいいかもしれないが、ディジタルならではの問題もある（撮像素子が反射した光が再びレンズに反射して画質を低下させたり、電子回路の厚み分周辺光量がより一層強調されたりする）ので、結局APS-CのボディとAPS-Cサイズに最適化したレンズでシステムを組んだ方が総合的には画質が良いなんてことも十二分に考えられる。フルサイズを買うからには十分に自分の撮影スタイルを吟味してから選択するべきだと思う。
俺の使っているPentaxがフルサイズのラインナップがないから、というわけではないが、スナップ中心の俺のカメラライフにおいてフルサイズは重荷すぎる。
だが、街の大型電機店などに行くと、いい加減なことばかり言う店員が多くて辟易する。特に初心者に対する説明だ。
・一眼レフはレンズラインナップでメーカーを決めるべきです。
↓
...と言われて初めて一眼を買ったオトーサンの8割は、ダブルズームレンズキットで満足して二度とレンズなど買わないのだ。
確かに、ユーザーの多いCanon, Nikonはもともと純正レンズも多いし、サードパーティのレンズも早くリリースされる。
でも、SonyやPentaxも個性的なレンズが揃っている。また、撮像素子のサイズは小さいが、レンズ性能に一番こだわっているのが実はOlympusだったりするのだ。
何も考えずに良い写真を得たいという考え方にはオート化・高速化が促進されたCanon, Nikonがいいし、撮影行為自体を楽しみたいならマニュアル操作が楽しいSony, Pentax、小型軽量でライブビューも業界一熱心なのがOlympus, Panasonicという特色があるのだから、そういう勧め方をするべきなんじゃないの？
・初級一眼レフを買う場合でも、上位にフルサイズ機があるメーカーを選ぶべきです。レンズを使い回せますよ。
↓
確かにそうだが、初級一眼レフのレンズキットはAPS-Cサイズに特化されているからフルサイズ機には使い回せない。
サイズ的に小さいというメリットがあるAPS-C機を買った上でフルサイズの大きなレンズを揃えるのも利点を潰すのでナンセンスだし、上位フルサイズ機では求められるレンズの性能も違うから、結局ボディを買い替えればレンズもほぼ買い直しになる。
そもそも、初めて買う人にそんな先のことまで考えてモノを勧めるのがナンセンスだ。それよりも、今のその人のニーズに応えられるボディの機能で選ぶべきだ。上位機種に行こうという意識を持つような酔狂な人間にとって、マウントを変更することなどほとんど苦ではない。
・Pentaxは老舗ですから、上位機種も豊富です。
↓
おいおい、初心者向けK-mの上には同じAPS-Cサイズの中級機K20Dがあるだけですが！
同じPentaxユーザーながら、K-mが「ディジタルフィルタ機能が女性にウケて売れている」なんてめちゃくちゃ眉唾だ。CanonのKissX2と比べてかなり安価なことが理由ならともかく、フィルタ機能を女性がガンガン使うなんて考えにくい。
むしろ、他メーカーの一眼ユーザーが、Pentaxの個性的な単焦点を使いたくてセカンドカメラとして買っているならまだ話として分かるが。
とにかくもう、店員のいうことなんて信じちゃ駄目だ。
まあ何はともあれ、ディジタル一眼レフは楽しい。何か、いい被写体がないかと良く観察することで新たな発見もあるし、例えば子供の写真だって立体感がある自然な写真で残せた方がいいに決まっている。
是非、ひとつ。
nobilesの投稿(00:30:00-2009-02-16) -
カテゴリ: Photo
コメント
たー wrote:
2009-02-16 23:08:16
nobiles wrote:
おや！お久しぶりです。
こんな駄文長文、誰も読んでくれないだろうなー、でもいいやどうせ趣味だから、
と思ってアップしたのですが、まさかお読みになってくださるとは光栄です (^_^;。
いえ、私は理系アタマですから理屈・仕組みを知りたがるのですが、
「いい写真を撮ること」については全然勉強中の身です。畏れ多いです。
ところで、そういえば、アレのリコール、来ましたね。もうお済みですか？
私は来月になってしまいいそうなので、その前に動かなくなったらどうしようと不安です (′Д`;。
こんな駄文長文、誰も読んでくれないだろうなー、でもいいやどうせ趣味だから、
と思ってアップしたのですが、まさかお読みになってくださるとは光栄です (^_^;。
いえ、私は理系アタマですから理屈・仕組みを知りたがるのですが、
「いい写真を撮ること」については全然勉強中の身です。畏れ多いです。
ところで、そういえば、アレのリコール、来ましたね。もうお済みですか？
私は来月になってしまいいそうなので、その前に動かなくなったらどうしようと不安です (′Д`;。
2009-02-17 00:50:22
カルいロス wrote:
＞俺のカメラで他の人が撮った写真（拡大はナシ）
＞せっかくの満面の笑みが盛大なピンボケだ
つーか、これ俺が取ったやつっすね笑。
次回からは気をつけますわ！
カメラって奥が深いのね。
＞せっかくの満面の笑みが盛大なピンボケだ
つーか、これ俺が取ったやつっすね笑。
次回からは気をつけますわ！
カメラって奥が深いのね。
2009-02-17 01:26:00
nobiles wrote:
げっ、バレた (^_^;。意外にみんなちゃんと見てるんだなー。
悪い方の例で使っちゃってごめんなさい (^_^ゞ。
種明かしすると、あの時は、どうせ俺が撮るからと思って
実はピント合う位置を手設定で動かす設定にしてたんで、
多分、それで後ろにピントが行ってしまったんだと思いますよ。
オートよりも確実に思ったところにピント寄せられるんですが、
知らない人が使うといつまで経っても
あさってのところでピントを合わせ続ける恐ろしい設定です (^_^;。
悪い方の例で使っちゃってごめんなさい (^_^ゞ。
種明かしすると、あの時は、どうせ俺が撮るからと思って
実はピント合う位置を手設定で動かす設定にしてたんで、
多分、それで後ろにピントが行ってしまったんだと思いますよ。
オートよりも確実に思ったところにピント寄せられるんですが、
知らない人が使うといつまで経っても
あさってのところでピントを合わせ続ける恐ろしい設定です (^_^;。
2009-02-17 01:45:37
たー wrote:
リコール来ましたねぇ。ちょうど来月車検なのでそのついでにやってもらう予定です。 そのついでにカーステレオのAUX入力を選択できるように設定変更もお願いしようと企んでます（ナビなしなので純正のラジオ・CDのみのやつです）。 DIYしたケーブルとつないでiPodのPhone出力を突っ込もうって寸法です。
2009-02-17 22:40:16
asu wrote:
すごい！めっちゃ勉強になりました〜。が、あたしには無理だな〜（＾＾；）
いまは毎日一枚はbabyの写真を記録していますが、ごくごくふつ〜の記録写真だわね。
ほんとはもっと上手に撮ってあげられるとよいんだけどね。
いまは毎日一枚はbabyの写真を記録していますが、ごくごくふつ〜の記録写真だわね。
ほんとはもっと上手に撮ってあげられるとよいんだけどね。
2009-02-20 12:01:53
nobiles wrote:
えー。いやいや、asuさんのような人が一眼使わないで誰が使うんですか (^_^;。
2009-02-23 01:02:28
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僕も常々デジタル一眼欲しいなぁと思ってるんですが、予算がつきません・・・。 あとたとえNobilesさんと同じ機材でもあんな綺麗な写真が撮れる自信もないわけですが。
ともあれ、とても勉強になりました。 ありがとうございました。