NOBILES Days
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Pentax渾身の新ディジタル一眼レフK-7の発売日が、6/27と決まった。
正直なことを言うと、5月の発表イベントでの完成度が芳しくなかったことや、前科もあったので、「予想を上回る受注をいただいたため」などというもっともらしい言い訳で開発期間を延ばすべく発売日は遅れるものと思っていたのだ。
だから、6月末という予告を裏切らずに発売することは嬉しい驚きだったし、自信を持って出すからには、その出来には不安少々、期待大といったところだ。
Pentax K-7の発売日が決定した旨報じられたのと日を同じくして、また注目のディジタル一眼カメラが発表された。
真の意味での新世代ディジタル一眼カメラのためのフォーマット、μ Four-Thirds規格に準拠したOlympus Pen E-P1だ。
Olympus Pen E-P1
一見すると、一般のコンパクトディジタルカメラよりも一回りか二回り程度大きい程度のこのカメラ。これぞ、写真を趣味とする人が待ち望んでいたカメラと言えるかもしれない。
写真を趣味とするからには、いつもカメラを持ち歩きたい。しかし、常に持ち歩きできるコンパクトディジタルカメラは先のエントリーで述べた通り、小さいサイズの撮像素子しか持たないため、立体感に乏しく、言ってみれば「記録」的な写真しか撮れないものばかりだった（大きな撮像素子を持つSigma DP1およびDP2を除いては）。
ところがこのE-P1は、OlympusとPanasonicのディジタル一眼レフカメラと同じ（他社のディジタル一眼レフと比べると若干小さいとは言え）対角4/3インチの大型撮像素子をその小さなボディに備えている。マニアに人気のRicoh GR DigitalやCanon PowershotG10などでも、せいぜい1/1.8インチのもので、E-P1のたかだか1/6程度のサイズに留まることを考えれば、いかに巨大な撮像素子であるかが分かるというものだろう。
これが意味するところは、こんな小さなボディでありながら、得られる画像は巨大なディジタル一眼レフカメラとほぼ同等のものであり、そこら辺のコンパクトデジカメなどとは比較にならないほどの立体感を湛えた上質なものである、ということだ。
それだけではない。このカメラは一眼レフカメラと同様に、レンズの交換ができる。つまり、子供の運動会を撮りたいオトーサンなら望遠レンズ、広大な風景を収めたい旅行好きな人なら超広角レンズ、普段使いは標準ズームレンズとシーンに応じてカメラのキャラクターを変化させることができるのだ。
まだμ Four-Thirds規格自体は産まれて間もない規格であるため、ネイティブ対応したレンズは少ないが、アダプターを挟むことで豊富なFour-Thirdsレンズを使用することもできる。
というか、後述する「フランジバック」が短いという特徴のために、各種アダプターを挟めば、（露出の決定などがマニュアルになるとは言え）ライカレンズをはじめ、規格の違う各社の趣きあるレンズを装着して撮影するというマニア向けの隠れた楽しみも享受できるのだ。
巨大なボディを持つディジタル一眼レフと同等の画質を得られる機能をなぜ、いわゆる「コンパクトデジカメ」に近いサイズに搭載できたのか。それはこのカメラ、およびμ Four-Thirdsという規格自体が一眼「レフ」カメラではないことに起因している。
つまり、このE-P1には光学ファインダーが存在しない。だからファインダーへ光を跳ね上げるミラーも存在しない。同時に、ミラーがないので位相差法を利用した高速なフォーカスシステムも放棄したのだ。だから、画角（撮る範囲）の決定は液晶モニタで行い、フォーカシング（ピント合わせ）も像面コントラスト式で行う。つまり、この辺りのシステムは完全にコンパクトデジカメを踏襲したというわけである。
ということは、基本的にタイムラグのない一眼レフのファインダーのような「直接画を切り抜く」という感覚には乏しいし、ピント合わせも従来の一眼レフの位相差式ほどスピーディーではない。だから、俺が先のエントリーで述べた一眼レフの特長3つ
1.レンズ交換可能、2.画質の良さ、3.スピード
のうち、1と2だけをとって、3はある程度諦めたという見方ができる。
だが、それと引き換えに、μ Four-Thirdsではレンズのマウント面と撮像面の距離を大幅に縮めることが可能となった。それが、大幅なボディの小型化につながったのだ。
一般のディジタル一眼レフとE-P1（μ Four-Thirds）の構造の違い
それだけではない。フランジバック...正確には、レンズ後端から撮像面＝バックフォーカスが長いというのはレンズの設計にとっては厳しくなる。バックフォーカスが短い方が、同じ性能でも小さなレンズを実現できる。
あのライカは一眼レフではなく、「レンジファインダー」という方式のためミラーがない。だからこのバックフォーカスが短く、高性能なレンズを一眼レフよりも大幅に小さいサイズで実現している。その一方、レンジファインダーはマニュアルでフォーカスを合わせるため（位相差法を手でやるものと思えば良い）、いわゆる一般の人には敷居の高いものだと言わざるを得ない。
ところがこのE-P1の場合は、画角決定とフォーカシングを丸ごとコンパクトデジカメと同じ方式を採った。つまり、一般のデジカメと全く同じ手軽な感覚で撮影できるものの、撮影した作品はまさにディジタル一眼レフの品質というところが凄いのだ。同時に、バックフォーカスの小ささ故に「小さい＝レンズの性能が低下している」が成立していない。まさに、羊の皮を被った狼のようだ。
写真とは、一瞬を切り抜く芸術であり、記録である。巨大な撮像素子を備えた上に、レンズ交換もできる一方で、一般のコンパクトデジカメと同じ感覚で撮れるE-P1はこれまでわざわざ巨大な一眼レフを持って行けなかったような場所での撮影を可能としてくれる。撮影の可能性が広がるということはとても意義のあることだ。もちろん、一眼レフカメラが備えている「スピード」という武器を妥協している分、完全に一眼レフカメラを駆逐できるものではないが、この製品がもたらす価値に、興奮を覚えざるを得ない。
ディジタル一眼レフは基本的にはフィルム一眼レフの遺産を引きずったまま進化を続けて来た製品カテゴリーと言って良い。その中で、ディジタル時代の規格として一から立ち上げられたFour-Thirdsだったが、レフレックス(鏡)という過去の呪縛からは逃れられなかった。だが、このμ Four-Thirdsという更なる新しい規格を立ち上げるに至り、Panasonicは他社のディジタル一眼カメラとは比較にならないほど完成度の高い動画一眼カメラを仕立て上げた。
そして、このコンパクトなOlympusのE-P1だ。
だが、果たしてこのE-P1の価値が広く認知されるのかどうか、俺のような中途半端に知っている人間にとっては不安だ。
コンパクトディジタルカメラの中でも「上質」で「趣味的」とされたGR DigitalやPowerShotG10でも、4万ほどあれば買えてしまう。それに対しE-P1のレンズキットはその倍ほどの価格になる。
個人的には、E-P1がもたらしてくれる価値は、GRDやG10と比べても倍なんてものじゃないと考えているし、そもそも比較対象として捉えること自体おこがましいとすら思っている。K-7が控えている今、すぐにとは言えないがいつかサブシステムとして購入してもいいかなと思っているほどだ。動画システムとしてのμ Four-Thirdsにも大きな期待を寄せている。
でも、このカメラは「写真に興味はあるけど、一眼には踏み出せない」層が持ってこそ「あ、やっぱりイチガンで撮った写真ってすごいんだ！」と思わせるトロイの木馬だと思っている。果たしてそんな層が10万前後という価格に「よし買おう！」と思ってくれるのかどうか。GRDやG10とは持っているポテンシャルが全く違うことを、ちゃんと認識してもらえるのかどうか。
予約はかなりの数が入っていると聞く。でも、きっとそれは既に一眼を持っている人がセカンドシステムとして買おうとしている例が多いのではないかと想像する。その後がどうなるか興味深い。
正直なことを言うと、5月の発表イベントでの完成度が芳しくなかったことや、前科もあったので、「予想を上回る受注をいただいたため」などというもっともらしい言い訳で開発期間を延ばすべく発売日は遅れるものと思っていたのだ。
だから、6月末という予告を裏切らずに発売することは嬉しい驚きだったし、自信を持って出すからには、その出来には不安少々、期待大といったところだ。
Pentax K-7の発売日が決定した旨報じられたのと日を同じくして、また注目のディジタル一眼カメラが発表された。
真の意味での新世代ディジタル一眼カメラのためのフォーマット、μ Four-Thirds規格に準拠したOlympus Pen E-P1だ。
Olympus Pen E-P1
一見すると、一般のコンパクトディジタルカメラよりも一回りか二回り程度大きい程度のこのカメラ。これぞ、写真を趣味とする人が待ち望んでいたカメラと言えるかもしれない。
写真を趣味とするからには、いつもカメラを持ち歩きたい。しかし、常に持ち歩きできるコンパクトディジタルカメラは先のエントリーで述べた通り、小さいサイズの撮像素子しか持たないため、立体感に乏しく、言ってみれば「記録」的な写真しか撮れないものばかりだった（大きな撮像素子を持つSigma DP1およびDP2を除いては）。
ところがこのE-P1は、OlympusとPanasonicのディジタル一眼レフカメラと同じ（他社のディジタル一眼レフと比べると若干小さいとは言え）対角4/3インチの大型撮像素子をその小さなボディに備えている。マニアに人気のRicoh GR DigitalやCanon PowershotG10などでも、せいぜい1/1.8インチのもので、E-P1のたかだか1/6程度のサイズに留まることを考えれば、いかに巨大な撮像素子であるかが分かるというものだろう。
これが意味するところは、こんな小さなボディでありながら、得られる画像は巨大なディジタル一眼レフカメラとほぼ同等のものであり、そこら辺のコンパクトデジカメなどとは比較にならないほどの立体感を湛えた上質なものである、ということだ。
それだけではない。このカメラは一眼レフカメラと同様に、レンズの交換ができる。つまり、子供の運動会を撮りたいオトーサンなら望遠レンズ、広大な風景を収めたい旅行好きな人なら超広角レンズ、普段使いは標準ズームレンズとシーンに応じてカメラのキャラクターを変化させることができるのだ。
まだμ Four-Thirds規格自体は産まれて間もない規格であるため、ネイティブ対応したレンズは少ないが、アダプターを挟むことで豊富なFour-Thirdsレンズを使用することもできる。
というか、後述する「フランジバック」が短いという特徴のために、各種アダプターを挟めば、（露出の決定などがマニュアルになるとは言え）ライカレンズをはじめ、規格の違う各社の趣きあるレンズを装着して撮影するというマニア向けの隠れた楽しみも享受できるのだ。
巨大なボディを持つディジタル一眼レフと同等の画質を得られる機能をなぜ、いわゆる「コンパクトデジカメ」に近いサイズに搭載できたのか。それはこのカメラ、およびμ Four-Thirdsという規格自体が一眼「レフ」カメラではないことに起因している。
つまり、このE-P1には光学ファインダーが存在しない。だからファインダーへ光を跳ね上げるミラーも存在しない。同時に、ミラーがないので位相差法を利用した高速なフォーカスシステムも放棄したのだ。だから、画角（撮る範囲）の決定は液晶モニタで行い、フォーカシング（ピント合わせ）も像面コントラスト式で行う。つまり、この辺りのシステムは完全にコンパクトデジカメを踏襲したというわけである。
ということは、基本的にタイムラグのない一眼レフのファインダーのような「直接画を切り抜く」という感覚には乏しいし、ピント合わせも従来の一眼レフの位相差式ほどスピーディーではない。だから、俺が先のエントリーで述べた一眼レフの特長3つ
1.レンズ交換可能、2.画質の良さ、3.スピード
のうち、1と2だけをとって、3はある程度諦めたという見方ができる。
だが、それと引き換えに、μ Four-Thirdsではレンズのマウント面と撮像面の距離を大幅に縮めることが可能となった。それが、大幅なボディの小型化につながったのだ。
一般のディジタル一眼レフとE-P1（μ Four-Thirds）の構造の違い
それだけではない。フランジバック...正確には、レンズ後端から撮像面＝バックフォーカスが長いというのはレンズの設計にとっては厳しくなる。バックフォーカスが短い方が、同じ性能でも小さなレンズを実現できる。
あのライカは一眼レフではなく、「レンジファインダー」という方式のためミラーがない。だからこのバックフォーカスが短く、高性能なレンズを一眼レフよりも大幅に小さいサイズで実現している。その一方、レンジファインダーはマニュアルでフォーカスを合わせるため（位相差法を手でやるものと思えば良い）、いわゆる一般の人には敷居の高いものだと言わざるを得ない。
ところがこのE-P1の場合は、画角決定とフォーカシングを丸ごとコンパクトデジカメと同じ方式を採った。つまり、一般のデジカメと全く同じ手軽な感覚で撮影できるものの、撮影した作品はまさにディジタル一眼レフの品質というところが凄いのだ。同時に、バックフォーカスの小ささ故に「小さい＝レンズの性能が低下している」が成立していない。まさに、羊の皮を被った狼のようだ。
写真とは、一瞬を切り抜く芸術であり、記録である。巨大な撮像素子を備えた上に、レンズ交換もできる一方で、一般のコンパクトデジカメと同じ感覚で撮れるE-P1はこれまでわざわざ巨大な一眼レフを持って行けなかったような場所での撮影を可能としてくれる。撮影の可能性が広がるということはとても意義のあることだ。もちろん、一眼レフカメラが備えている「スピード」という武器を妥協している分、完全に一眼レフカメラを駆逐できるものではないが、この製品がもたらす価値に、興奮を覚えざるを得ない。
ディジタル一眼レフは基本的にはフィルム一眼レフの遺産を引きずったまま進化を続けて来た製品カテゴリーと言って良い。その中で、ディジタル時代の規格として一から立ち上げられたFour-Thirdsだったが、レフレックス(鏡)という過去の呪縛からは逃れられなかった。だが、このμ Four-Thirdsという更なる新しい規格を立ち上げるに至り、Panasonicは他社のディジタル一眼カメラとは比較にならないほど完成度の高い動画一眼カメラを仕立て上げた。
そして、このコンパクトなOlympusのE-P1だ。
だが、果たしてこのE-P1の価値が広く認知されるのかどうか、俺のような中途半端に知っている人間にとっては不安だ。
コンパクトディジタルカメラの中でも「上質」で「趣味的」とされたGR DigitalやPowerShotG10でも、4万ほどあれば買えてしまう。それに対しE-P1のレンズキットはその倍ほどの価格になる。
個人的には、E-P1がもたらしてくれる価値は、GRDやG10と比べても倍なんてものじゃないと考えているし、そもそも比較対象として捉えること自体おこがましいとすら思っている。K-7が控えている今、すぐにとは言えないがいつかサブシステムとして購入してもいいかなと思っているほどだ。動画システムとしてのμ Four-Thirdsにも大きな期待を寄せている。
でも、このカメラは「写真に興味はあるけど、一眼には踏み出せない」層が持ってこそ「あ、やっぱりイチガンで撮った写真ってすごいんだ！」と思わせるトロイの木馬だと思っている。果たしてそんな層が10万前後という価格に「よし買おう！」と思ってくれるのかどうか。GRDやG10とは持っているポテンシャルが全く違うことを、ちゃんと認識してもらえるのかどうか。
予約はかなりの数が入っていると聞く。でも、きっとそれは既に一眼を持っている人がセカンドシステムとして買おうとしている例が多いのではないかと想像する。その後がどうなるか興味深い。
nobilesの投稿(23:54:00-2009-06-18) -
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