NOBILES Days
Jump to navigationThe Rebirth Of The Hero
先週、F-1界の元スーパースター、ミヒャエル・シューマッハ復帰が正式発表された。ハンガリーGPで負傷したフェラーリのフェリッペ・マッサの代役としてだ。
期待と興奮をもって伝えられることが多かったように思えたこのニュース。後輩からどう思うか聞かれ、本人にはもう返事しちまったのだが、せっかくだから自分の思いはここにも記したい。
もちろん、不世出と言われる偉大なドライバーの復帰は楽しみということに間違いはない。
ただ、彼はもう2006年を以って「これ以上は自分らしいパフォーマンスは出せない」という思いを持って潔く身を引いたはずだ。その翻意がまず彼らしくない。だから、何らかの政治的意図さえ、感じずにはいられないのだ。
また、彼の活躍ぶりがどうであれ、ちょっとずつがっかりする事が発生するだろう。
もし大活躍してしまったら、一体現役ドライバーの立場はどうなるだろう？そこそこの活躍だったらそれはそれで「あの盛り上がりはなんだったの？」という微妙な空気になるし、全然ダメだったら'86年のアラン･ジョーンズのように「経歴に傷つけちゃったね」という残念感が漂うことになる。
とは言え、3年ぶりの復帰だ。どうせなら徹底的に引っ掻き回してもらいたい、というのがやはり本音だ。
さて、この週末は久々にライブを観に行った。前々から是非生で聴きたいと思っていたアーティストだ。
Hirotaka Mori “英雄の誕生”
それはもう6〜7年ほども前のことになる。
今と変わらぬ夜更かし野郎だった俺はその日、某TV局が放送終了直前に流す”Sound Weather”という番組が流れはじめたことに気づいた。いつにも増して夜更かししてしまったと、TVを消そうとした。
その番組は、音楽のプロモビデオを流しながらテロップで翌日の天気を伝えるというもので、まあ要はアーティスト側としては宣伝になるし、TV局側は天気部分だけオーバーラップすればいいから制作費が浮くということなんだろうが、そこで流される曲は、記憶では...個人的には結構微妙な線の曲が多かった気がしていたのだ。
が、その日はその手を止めた。
それはStevie Wonderの”Isn’t She Lovely?”のカバーをライブでやったものだったと記憶している。
どこまでも延びるようなハイトーンボイス。（後にアルバムを買ってそこに収録されていたのとは違うアレンジの）とてもファンキーに変化させたアレンジ。何より、バンド全体が躍動し、その頂点に君臨するかのようにぐいぐい引っ張る彼のかき鳴らすギタープレイに目を奪われた。
そして、順番は忘れてしまったが、「ただ時が経っただけで」「ゼロ地点」などのオリジナル曲が流れる。壮絶なキメが連発する曲だが、それを涼しい顔で楽しげに演奏しこなすバンド。畳み掛けるようなボーカル。
俺は確信した。これはとんでもない奴だ。
それが、デビューアルバム「並立概念」をワーナーからリリースしたばかりの森広隆という男だった。
当時から俺はファンク系の音楽に傾倒し、いわゆる邦楽と言われる音楽の中ではスガシカオなどは、今に至るまで熱心に聴いている。だが、彼から受けた衝撃はそれ以上のものだった。瑞々しく溢れ出るような確信に満ちた音は心を揺さぶり、スケール感に溢れる詞は極めて純粋なものだと感じた。聴き込むほどに、彼が俺の中でフェイヴァリットアーティストになるのにそう時間は必要としなかった。
それから程なくミニアルバム”Cyclone”、シングル”Rainbow Seekers”を発表し、精力的な活動をしているかに思われた彼だが、それからしばらく、ぽっかり彼の活動は耳に届かなくなってしまった。
彼の才能ほとばしる作品の数々は一部で大きな評価を得たものの、残念ながら売り上げに結びつかなかった。そしてフルアルバムたった一枚でワーナーとのメジャー契約を切られてしまったそうなのだ。
だが、この森広隆という男は音楽の才能だけの男ではなかった。メジャー契約まで果たした男が、再び地道な音楽活動に戻り、マネージャーもつけずに自分で関係者に頭を下げ、そして自主制作でCDを作った。シングル「英雄の誕生」だ。
受け継いだ肌の色は
身分などを示すものじゃなく
この身を伝う愛の証
こう歌うこの曲は以前にも増して切れ味に満ち、スケール感に溢れた曲に仕上がっていた。俺には、この曲が「英雄の帰還」に感じられたのだ。
その後彼はインディーズへと活動を移し、インディーズレーベルからシングル”My☆Girl”、そして、待望の2ndアルバム”Planetblue”を作り上げたのだった。
インスト2曲を含めたこのアルバムの13曲は彼の7年間が込められたかのように、凝縮感に満ちたエネルギーに溢れる作品になった。しかし、瑞々しい音と純粋なパワーは何も変わっていなかった。
そうだ。彼は帰って来たのだ。
ただ想像でしかない。だが、絶望の淵に立ったはずだ。屈辱を味わったはずだ。それでも彼は負けなかった。
同い年である彼の気迫に満ちた作品を聴くにつけ、昨今の自分の悩みが後ろ向きであるかを悟った。萎縮した俺の心に彼の瑞々しい音が突き刺さった。
そして、俺は彼がワンマンライブを行うことを知った。音楽業界で仕事をしているバンドのメンバーが教えてくれて、なんとかギリギリチケットを確保することができた。
奇しくも会場は、所属バンドであるLoop on pooLが3度にわたりパイオニア音楽祭に出演した時と同じ、O-Westだった。
ってか、彼への想いが強すぎて長くなりすぎてしまった。
続く。
期待と興奮をもって伝えられることが多かったように思えたこのニュース。後輩からどう思うか聞かれ、本人にはもう返事しちまったのだが、せっかくだから自分の思いはここにも記したい。
もちろん、不世出と言われる偉大なドライバーの復帰は楽しみということに間違いはない。
ただ、彼はもう2006年を以って「これ以上は自分らしいパフォーマンスは出せない」という思いを持って潔く身を引いたはずだ。その翻意がまず彼らしくない。だから、何らかの政治的意図さえ、感じずにはいられないのだ。
また、彼の活躍ぶりがどうであれ、ちょっとずつがっかりする事が発生するだろう。
もし大活躍してしまったら、一体現役ドライバーの立場はどうなるだろう？そこそこの活躍だったらそれはそれで「あの盛り上がりはなんだったの？」という微妙な空気になるし、全然ダメだったら'86年のアラン･ジョーンズのように「経歴に傷つけちゃったね」という残念感が漂うことになる。
とは言え、3年ぶりの復帰だ。どうせなら徹底的に引っ掻き回してもらいたい、というのがやはり本音だ。
さて、この週末は久々にライブを観に行った。前々から是非生で聴きたいと思っていたアーティストだ。
Hirotaka Mori “英雄の誕生”
それはもう6〜7年ほども前のことになる。
今と変わらぬ夜更かし野郎だった俺はその日、某TV局が放送終了直前に流す”Sound Weather”という番組が流れはじめたことに気づいた。いつにも増して夜更かししてしまったと、TVを消そうとした。
その番組は、音楽のプロモビデオを流しながらテロップで翌日の天気を伝えるというもので、まあ要はアーティスト側としては宣伝になるし、TV局側は天気部分だけオーバーラップすればいいから制作費が浮くということなんだろうが、そこで流される曲は、記憶では...個人的には結構微妙な線の曲が多かった気がしていたのだ。
が、その日はその手を止めた。
それはStevie Wonderの”Isn’t She Lovely?”のカバーをライブでやったものだったと記憶している。
どこまでも延びるようなハイトーンボイス。（後にアルバムを買ってそこに収録されていたのとは違うアレンジの）とてもファンキーに変化させたアレンジ。何より、バンド全体が躍動し、その頂点に君臨するかのようにぐいぐい引っ張る彼のかき鳴らすギタープレイに目を奪われた。
そして、順番は忘れてしまったが、「ただ時が経っただけで」「ゼロ地点」などのオリジナル曲が流れる。壮絶なキメが連発する曲だが、それを涼しい顔で楽しげに演奏しこなすバンド。畳み掛けるようなボーカル。
俺は確信した。これはとんでもない奴だ。
それが、デビューアルバム「並立概念」をワーナーからリリースしたばかりの森広隆という男だった。
当時から俺はファンク系の音楽に傾倒し、いわゆる邦楽と言われる音楽の中ではスガシカオなどは、今に至るまで熱心に聴いている。だが、彼から受けた衝撃はそれ以上のものだった。瑞々しく溢れ出るような確信に満ちた音は心を揺さぶり、スケール感に溢れる詞は極めて純粋なものだと感じた。聴き込むほどに、彼が俺の中でフェイヴァリットアーティストになるのにそう時間は必要としなかった。
それから程なくミニアルバム”Cyclone”、シングル”Rainbow Seekers”を発表し、精力的な活動をしているかに思われた彼だが、それからしばらく、ぽっかり彼の活動は耳に届かなくなってしまった。
彼の才能ほとばしる作品の数々は一部で大きな評価を得たものの、残念ながら売り上げに結びつかなかった。そしてフルアルバムたった一枚でワーナーとのメジャー契約を切られてしまったそうなのだ。
だが、この森広隆という男は音楽の才能だけの男ではなかった。メジャー契約まで果たした男が、再び地道な音楽活動に戻り、マネージャーもつけずに自分で関係者に頭を下げ、そして自主制作でCDを作った。シングル「英雄の誕生」だ。
受け継いだ肌の色は
身分などを示すものじゃなく
この身を伝う愛の証
こう歌うこの曲は以前にも増して切れ味に満ち、スケール感に溢れた曲に仕上がっていた。俺には、この曲が「英雄の帰還」に感じられたのだ。
その後彼はインディーズへと活動を移し、インディーズレーベルからシングル”My☆Girl”、そして、待望の2ndアルバム”Planetblue”を作り上げたのだった。
インスト2曲を含めたこのアルバムの13曲は彼の7年間が込められたかのように、凝縮感に満ちたエネルギーに溢れる作品になった。しかし、瑞々しい音と純粋なパワーは何も変わっていなかった。
そうだ。彼は帰って来たのだ。
ただ想像でしかない。だが、絶望の淵に立ったはずだ。屈辱を味わったはずだ。それでも彼は負けなかった。
同い年である彼の気迫に満ちた作品を聴くにつけ、昨今の自分の悩みが後ろ向きであるかを悟った。萎縮した俺の心に彼の瑞々しい音が突き刺さった。
そして、俺は彼がワンマンライブを行うことを知った。音楽業界で仕事をしているバンドのメンバーが教えてくれて、なんとかギリギリチケットを確保することができた。
奇しくも会場は、所属バンドであるLoop on pooLが3度にわたりパイオニア音楽祭に出演した時と同じ、O-Westだった。
ってか、彼への想いが強すぎて長くなりすぎてしまった。
続く。
nobilesの投稿(02:59:36-2009-08-04) -
カテゴリ: Music
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