NOBILES Days
Jump to navigationPeaceful Death
結婚して7年が経った。その最初の引っ越しを含めると3度の引っ越しなど、激動と言っていい7年間だったが、それでも2人の子どもを設けて、それなりに幸せにやっていられることに感謝をしている。7年経つと、当時揃えた生活器具が結構痛んできたり、容量不足になってきたりしている。洗濯機は大きいのにしたいし、冷蔵庫や掃除機は少しずつ部品が壊れたりしている。どんどんお金ばっかかかるね。
せっかくの記念日だが、後述する理由でなんだか辛気くさくなってしまった。それでも、次女の生後半年の日でもあったので、ささやかにお取り寄せグルメを楽しんだ。やっぱり、子どもの成長が一番嬉しいね。
見返り美人？
(PentaxLX, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ISO1600)
先週の土曜日のことだ。
まとわりつくような湿気に、なんともダルくて子ども達と過ごしていた。重苦しい曇天が気分を滅入らせていた。
そんな時一報が届いた。
嫁さんのおじいちゃんが亡くなった。
なかなかユニークなおじいちゃんだった。
若い頃は鉄道職員なんかもやっていたらしいが、農家として米や野菜など手広くやっていた。だから、指は驚くほどごついし、酒もがっつり飲む。元気な頃は、毎晩のように近くの行きつけのスナックにチャリンコで行き（昔は原チャリで、しかも事故ったことがあるらしい）、夜中に帰ってきていた。正月には無駄なくらい親族をたくさん集めて大宴会をして潰れるまで飲んでいた。
とにかくお喋り好きで、俺達が結婚したばかりの頃なんかは、ふんふん話を聞いてくれる俺が貴重な存在だったらしく、食卓で捕まると延々話を聞かされた。既に総入れ歯だったし、耳も遠くなっていたので、何を話しているのか良く分からないところがあったのだが、別に意見を求めたり返答を期待しているわけではないので、相づちだけ打っていれば良かったんだけどね。
でも、農家だけに結構政治などに対する興味が強かったので、新聞などはかなり貪欲に読んでいた。だから話すことは下らないことではなく、むしろ、ハイソと言っても良い内容だった。まあ、だからこそ俺もそうイヤにもならずにふんふん相づちを打てていたのだろう。他のご家族は結構放置してたけどね。
奥さんであるおばあちゃんはご存命だ。
実は、10ほど年上女房である。その世代で10年上？と意外だが、これには現代ではあり得ない悲しい裏がある。もともとおばあちゃんが結婚したのは、おじいちゃんのお兄さんだった。しかし、最初のお子さんを設けた後、戦死された。それで、家から離れるわけにもいかず、弟であるおじいちゃんと結婚することになったのだという。
おじいちゃんもなかなかヤンチャだったわけだが、そういう経緯で結婚したこともあって、それを許していた面もあるのかもしれない。
それでも晩年、「おばあさん、あんたはいくつになっても美しいな！！」なんておじいちゃんが言っているのを聞いて、なんだかんだ言っても夫婦だと思った。
いや、口先だけかもしれないよ？お調子モンな言葉かもしれない。でも、現実として長年一緒に暮らし、家庭を築いてきて言う言葉は、たとえ軽口であっても、相反することに「重み」があった。
数年前のある夜、嫁さんのご実家で、嫁さんが風呂に入って俺が一人でテレビを見ていると、玄関で轟音を立てて扉が開閉された。
何事かと驚いていると、部屋の引き戸が再び轟音とともに開けられた。顔を真っ赤にして酔っぱらったおじいちゃんだった。
「おー、ダンナさんか！良く来たな」
文字では表せないが、若干ろれつが回っていない。しかも、そこから必殺の「お喋り」が始まってしまった。
「わたしですね、難病なんですね。不治の病って言われている。実はですね。市から全額医療費が出てるんですね」
酔っぱらった時の口調は嫁さんとそっくりだ。なんで敬語になるんだろうか？
それはともかく、言っていることは事実だ。
おじいちゃんは、数年前から難病を患っていた。筋肉が萎縮し麻痺していく病気らしく、根本的な治療法が依然確立されていないらしい。だから、治療費も市から全額出ていた。
病気はゆっくり進行するので、さすがに農業は畳んだが、当初は飲みに行く回数は変わらないし、おばあちゃんと二人で（お義父さんに車で送らせて）泊まりの旅行に行ったり、余生を満喫していた。病気の進行を遅らせるために、飲酒や喫煙は控えるように言われていたらしいが、「この歳までやってきて、今さらちょっとの寿命のために止められるか」と一切耳を貸そうとしなかった。実に、このおじいちゃんらしい。
しかし、確実に病魔は身体を蝕んでいった。麻痺が徐々に進み、自転車に乗るのが難しくなったし、自力でトイレなどに行くのも辛くなった。それでもタバコはやめなかったけど。
そして昨年末、風邪から肺炎を併発した。麻痺が進む身体には酷だった。自発的な呼吸では酸欠に陥る状況になり、病院に入院し、危険な状態だから、と何度か親族招集がかかったほどだった。
それでも、農業でならした身体は丈夫で、特に消化器系が無事だったので、年明けには退院して家に戻った。しかし、目に見えて身体が消耗していっていた。お義父さんやお義母さんの介護も限界に来ていて、医療施設が充実した老人ホームへの入居も考え始めた時だった。苦しい、と訴えたおじいさんを病院に連れて行くと、入院となった。短くて2週間、長くとも3ヶ月だろうと言われた。
かなり苦しいらしく、強い鎮痛剤を打つことになった。それは、痛みは和らげても、身体に大きな負担を強いるものだった。結局、鎮痛剤を打ったその日の午後、亡くなった。昨年末、不死鳥のように復活したおじいちゃんだったが、残念ながら、その時の負担が身体をより蝕んでいたのかもしれない。
80代前半なので、大往生というには少し早いくらいかもしれない。だが、ひ孫を3人も見られたし、最後まで自分の主義を変えず、入院すれば子ども達が集まって介護してくれたわけで、とても幸せな人生だったんじゃないかと思う。
実はひ孫の中でも、うちの長女のことがいたくお気に入りだった。入院すると「キー子に会いてぇ、キー子に会いてぇ」と繰り返していたという（キー子は愛称だ）。最期があまりに突然だったので、ちゃんと会わせてあげられらなかったのは少々心残りだ。
せめてと思い、「キーちゃん、おじいちゃんにお別れするから、おじいちゃんの赤ちゃん（顔のことだ (^_^;）、描いてみて」とお願いして、おじいちゃんの似顔絵を長女に描かせた。これを、棺に入れてもらうことにした。
亡くなって家に戻ってから、家族で線香を上げにいった。戻ってきてすぐだったので、苦しんだ顔のままだったので、俺でも少し「えっ」と驚くような姿だった。長女は余計に驚いたみたいだったし、ひいおじいちゃんが亡くなったとは、未だによく理解できていないかもしれない。
でも、人生を終える者と、人生のスタートラインをようやくまたいだばかりの者。2つの人生がわずかに交差した時間に、感慨深いものを感じた。長女が大きくなった時に、少しでもひいおじいちゃんの記憶が残っていれば、と思う。
今日はこれから通夜だ。きっともうあちらで散々飲んでいることだろうけど、とにかく、ご冥福を祈るばかりである。
せっかくの記念日だが、後述する理由でなんだか辛気くさくなってしまった。それでも、次女の生後半年の日でもあったので、ささやかにお取り寄せグルメを楽しんだ。やっぱり、子どもの成長が一番嬉しいね。
見返り美人？
(PentaxLX, PentaxFA77mmLimitedF1.8, ISO1600)
先週の土曜日のことだ。
まとわりつくような湿気に、なんともダルくて子ども達と過ごしていた。重苦しい曇天が気分を滅入らせていた。
そんな時一報が届いた。
嫁さんのおじいちゃんが亡くなった。
なかなかユニークなおじいちゃんだった。
若い頃は鉄道職員なんかもやっていたらしいが、農家として米や野菜など手広くやっていた。だから、指は驚くほどごついし、酒もがっつり飲む。元気な頃は、毎晩のように近くの行きつけのスナックにチャリンコで行き（昔は原チャリで、しかも事故ったことがあるらしい）、夜中に帰ってきていた。正月には無駄なくらい親族をたくさん集めて大宴会をして潰れるまで飲んでいた。
とにかくお喋り好きで、俺達が結婚したばかりの頃なんかは、ふんふん話を聞いてくれる俺が貴重な存在だったらしく、食卓で捕まると延々話を聞かされた。既に総入れ歯だったし、耳も遠くなっていたので、何を話しているのか良く分からないところがあったのだが、別に意見を求めたり返答を期待しているわけではないので、相づちだけ打っていれば良かったんだけどね。
でも、農家だけに結構政治などに対する興味が強かったので、新聞などはかなり貪欲に読んでいた。だから話すことは下らないことではなく、むしろ、ハイソと言っても良い内容だった。まあ、だからこそ俺もそうイヤにもならずにふんふん相づちを打てていたのだろう。他のご家族は結構放置してたけどね。
奥さんであるおばあちゃんはご存命だ。
実は、10ほど年上女房である。その世代で10年上？と意外だが、これには現代ではあり得ない悲しい裏がある。もともとおばあちゃんが結婚したのは、おじいちゃんのお兄さんだった。しかし、最初のお子さんを設けた後、戦死された。それで、家から離れるわけにもいかず、弟であるおじいちゃんと結婚することになったのだという。
おじいちゃんもなかなかヤンチャだったわけだが、そういう経緯で結婚したこともあって、それを許していた面もあるのかもしれない。
それでも晩年、「おばあさん、あんたはいくつになっても美しいな！！」なんておじいちゃんが言っているのを聞いて、なんだかんだ言っても夫婦だと思った。
いや、口先だけかもしれないよ？お調子モンな言葉かもしれない。でも、現実として長年一緒に暮らし、家庭を築いてきて言う言葉は、たとえ軽口であっても、相反することに「重み」があった。
数年前のある夜、嫁さんのご実家で、嫁さんが風呂に入って俺が一人でテレビを見ていると、玄関で轟音を立てて扉が開閉された。
何事かと驚いていると、部屋の引き戸が再び轟音とともに開けられた。顔を真っ赤にして酔っぱらったおじいちゃんだった。
「おー、ダンナさんか！良く来たな」
文字では表せないが、若干ろれつが回っていない。しかも、そこから必殺の「お喋り」が始まってしまった。
「わたしですね、難病なんですね。不治の病って言われている。実はですね。市から全額医療費が出てるんですね」
酔っぱらった時の口調は嫁さんとそっくりだ。なんで敬語になるんだろうか？
それはともかく、言っていることは事実だ。
おじいちゃんは、数年前から難病を患っていた。筋肉が萎縮し麻痺していく病気らしく、根本的な治療法が依然確立されていないらしい。だから、治療費も市から全額出ていた。
病気はゆっくり進行するので、さすがに農業は畳んだが、当初は飲みに行く回数は変わらないし、おばあちゃんと二人で（お義父さんに車で送らせて）泊まりの旅行に行ったり、余生を満喫していた。病気の進行を遅らせるために、飲酒や喫煙は控えるように言われていたらしいが、「この歳までやってきて、今さらちょっとの寿命のために止められるか」と一切耳を貸そうとしなかった。実に、このおじいちゃんらしい。
しかし、確実に病魔は身体を蝕んでいった。麻痺が徐々に進み、自転車に乗るのが難しくなったし、自力でトイレなどに行くのも辛くなった。それでもタバコはやめなかったけど。
そして昨年末、風邪から肺炎を併発した。麻痺が進む身体には酷だった。自発的な呼吸では酸欠に陥る状況になり、病院に入院し、危険な状態だから、と何度か親族招集がかかったほどだった。
それでも、農業でならした身体は丈夫で、特に消化器系が無事だったので、年明けには退院して家に戻った。しかし、目に見えて身体が消耗していっていた。お義父さんやお義母さんの介護も限界に来ていて、医療施設が充実した老人ホームへの入居も考え始めた時だった。苦しい、と訴えたおじいさんを病院に連れて行くと、入院となった。短くて2週間、長くとも3ヶ月だろうと言われた。
かなり苦しいらしく、強い鎮痛剤を打つことになった。それは、痛みは和らげても、身体に大きな負担を強いるものだった。結局、鎮痛剤を打ったその日の午後、亡くなった。昨年末、不死鳥のように復活したおじいちゃんだったが、残念ながら、その時の負担が身体をより蝕んでいたのかもしれない。
80代前半なので、大往生というには少し早いくらいかもしれない。だが、ひ孫を3人も見られたし、最後まで自分の主義を変えず、入院すれば子ども達が集まって介護してくれたわけで、とても幸せな人生だったんじゃないかと思う。
実はひ孫の中でも、うちの長女のことがいたくお気に入りだった。入院すると「キー子に会いてぇ、キー子に会いてぇ」と繰り返していたという（キー子は愛称だ）。最期があまりに突然だったので、ちゃんと会わせてあげられらなかったのは少々心残りだ。
せめてと思い、「キーちゃん、おじいちゃんにお別れするから、おじいちゃんの赤ちゃん（顔のことだ (^_^;）、描いてみて」とお願いして、おじいちゃんの似顔絵を長女に描かせた。これを、棺に入れてもらうことにした。
亡くなって家に戻ってから、家族で線香を上げにいった。戻ってきてすぐだったので、苦しんだ顔のままだったので、俺でも少し「えっ」と驚くような姿だった。長女は余計に驚いたみたいだったし、ひいおじいちゃんが亡くなったとは、未だによく理解できていないかもしれない。
でも、人生を終える者と、人生のスタートラインをようやくまたいだばかりの者。2つの人生がわずかに交差した時間に、感慨深いものを感じた。長女が大きくなった時に、少しでもひいおじいちゃんの記憶が残っていれば、と思う。
今日はこれから通夜だ。きっともうあちらで散々飲んでいることだろうけど、とにかく、ご冥福を祈るばかりである。
nobilesの投稿(15:03:24-2011-11-07) -
カテゴリ: Main
コメント
No comments yet
コメントを追加
トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)TrackBack URL
DISALLOWED (TrackBack)
メインページ
Calendar
| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
NewEntries
最新COMMENTS
■20-07-11 21:47>ああ、あのeh
■20-07-10 01:07>そうです、予
■20-07-09 22:36>あっ、ショー
■20-07-06 07:27>50-34のチェ�
■18-01-05 00:53>おやこれはぱ
■18-01-04 23:56>手出しちゃっ
■15-07-27 23:21>おっと、今か
■15-07-22 11:40>良質な小説読
■15-02-21 09:29>おや、どなた
■15-02-20 08:05>ほー、勉強に
カテゴリ
- All
- Bicycle
- Breast Cancer
- Change Job
- Formula-One
- Gourmet
- Injury
- Mac
- Main
- Monaco
- Music
- Peugeot
- Photo
- Travel
Archives
My Links
NOBILES Web検索
プロフィール
RSS対応
RSS v2.0
RSS v0.91
RSS v1.0
管理
管理室へ携帯用ブログ
携帯用URL