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もう2ヶ月も前になっちゃったけど、京都出張の写真シリーズ。
魚河岸宮武のランチ
(Panasonic DMC-GM5, Lumix G Vario 12-32mmF3.5-5.6(12.0mm), 1/60sec, F3.5, ISO1600)
初日の昼食は、業務場所から近い、人気の鮮魚料理店で食べた。30分待たされたが、この内容のものが800円で供されるならなんの文句もないどころか、待った甲斐があったというものだ。
さて、なかなか進まないけど、2年半前に我が家にふりかかった、ヨメさんの「乳がん」にまつわる手記を続けよう。
前回、「がんおよび乳がんとは」という知識編を挟んだ。
今回は、検査を受けた乳腺外来で紹介状を書いてもらった、がんセンターでの初診のシーンである。
乳腺外来の医師が紹介状を書いてくれたがんセンターは、実は我が家から徒歩15分もかからないところにある。くしくも当時、我が家から一番近い医療施設だった。俺のチャリ通勤路上でもあり、ほぼ毎日前を通っていた。そこにまさか、この歳で自分の妻が世話になるとは、考えたこともなかった。
2015年7月29日、ジリジリとするような真夏日。水曜日だった。子ども達を学童保育と保育園に送ってから、俺たち夫婦はがんセンターへと向かった。駐車場は混み合い、整理員まで出ていて、かなり隅の方まで誘導された。
建物は、昭和を感じさせるものだ。「日本が良かった時代」とでも言おうか。建物全体の表面がレンガで覆われていて、だいぶゆったりした作りになっている。当時としてはかなりいい建物だったに違いないが、さすがにくたびれたように見える。ただ、何の気なしに前を通って感じていた印象よりも建物は小さく感じた。診療棟は2階建てだし、病棟は6階建てだがさほど床面積は広くない。考えてみれば総合病院でなく、がん専門なのだから規模もそこまで大きくはないのだろう。
がんセンターの外観（公式ホームページより）
中に入っても、駐車場に駐まっていた車の数の割には患者で溢れかえっているというほどではない。がん絡みの人しか来ないので、総合病院のように「老人たちの憩いのサロン」にはなっていないようだ。
さて、乳腺外来医院の紹介状を持って受付に向かった。対応した、安藤美姫似の受付さんの顔が少し曇った。
「10時からのご予約ですよね。一応初診の方は30分前にいらしていただくようお願いしているんですが...」
近いからと油断して15分前入りしたところ、初診の場合は30分前に来るよう注意書きがあったのを見落としていた。出だしから「不良患者」である。
慌ただしく、受付で問診票の記入をしてから、乳腺科へ行った。乳腺科は1階、受付のすぐ裏手だった。まずマンモグラフィーを撮り、ようやく担当の医師と顔を合わせたのは10時半を過ぎてからだった。
医師は見た目、俺より若いと思われる、メガネの男性だった。その黒縁のメガネが、こちらから見て若干左に傾いていたが、まあ気にしないことにする。
医師は、挨拶後のほぼ最初の言葉で俺たちの希望をあっさり打ち砕いた。
「しこりを感じて○○先生のところで検査をして、悪性だと言われて、こちらに紹介状を書いていただいたということで...。資料を見させていただいたんですが、やはり乳がんの可能性が高いですね」
乳がん。
...やはりそうなのか...。あっさりとした宣告に、俺たちは呆然とした。そして、やはり手術は不可避であるということも言われた。今後はまずガンのタイプを調べるとともに、全身への転移の有無を調べていくことになるという。
早いうちに調査をしようということで、この日の16時にはCTスキャンを撮ることになった。そのためには、4時間前の正午から飲食できないこと、また、血液検査を済ませなければならないことを矢継ぎ早に伝えられた。時計は既に11時を回ろうとしていた。まじか！
しかもその前に、超音波で患部を観るという。慌ただしく、脇の更衣室で上半身の服を脱ぎ、ヨメさんがベッドに横たわった。
仮にも最愛の妻の女性のシンボルを他人の男性に晒すというのは気分が悪くなるかと思っていたが、この場においてはまったくそんな感情は起きなかった。
診断によると、実は腫瘍は3つあるという。手に触れるところにあるのが8mmくらいのもので、その奥に4mm程度のものが2つあるという。その周りにも石灰化（がんによる壊死でカルシウムが付着する）の広がりが見られるという。
「広がり」という言葉に、少し寒気を感じた。
診察が終わる頃には11時15分を過ぎていた。服を着て診察室を出て、2階の採血室に向かった。これがまた混み合っている。採血が終わると11時40分だった。慌ただしい。食事できる時間は20分だ。
「なに食うよ？」
「時間もないし、わたしそこのサンドイッチでいいよ。何か好きなもの食べてくれば？」
わざわざ別行動する必要もないので、一緒に病院内のスターバックスで高値のサンドイッチを食べた。ぎりぎり、正午までに食べ終わった。
16時までヒマなので、一旦家に引き返して洗濯物を畳んだり、なぜか粗大ゴミの申請をしたりした。まあ、せっかくの平日休みを有効に使おうという意識でも働いたんだろう。これができるのは、幸か不幸か病院がすぐ近くだからだ。今後も、この点については安心だと思った。とは言え暑い時期だったので、4時間、飲み物も飲めないのは、結構辛かったようだ。
16時に病院の乳腺科に戻ると、患者もかなり減って閑散とした雰囲気の待合室に西日が差し込んでいた。待合室はガラス張りになっていて、出入りする車や、周囲の緑豊かな風景もよく見えた。とても見晴らしが良くて明るい雰囲気なのは病院の配慮なんだろうか。
CTスキャンを撮るため、まずは放射線棟に行く。午前、マンモグラフィーを撮ったところよりもう少し奥の部屋だった。その中待合には、待合室とは打って変わって、3〜4組が座って混み合っていて少し驚いた。
別の節で詳しく書くように、CTスキャンの目的は多臓器への転移の有無を調べることにある。人間の身体を金太郎飴状態で輪切りした連続画像が得られる。20〜30分程度かかったろうか。ようやくヨメさんが中待合に戻ってきた。造影剤の注射がかなりきつかったらしく、刺された左腕を痛そうにしている。
最後に乳腺科に寄って、医師と話した。診察室のPCには、既にCTスキャンの画像が表示されていた。
「CTの結果ですが、他臓器に転移はありません」
ああ、よかった。
「患部がここですね。他の臓器をこうして見てみても、ガンは確認できません」
マウスのホイールを回すと、ヨメさんの身体の断層が、連続的に変化して表示されるようだ。患部である胸、肺の辺りから、消化器、果ては卵巣あたりまで、グリグリと動く。不謹慎だが、これは面白い。PCの進化で、病気の診断も格段に早くなっていると思った。
この日でCTスキャンまで撮れたので、翌7/30にMRI、7/31に患部の組織を採取する針生検を行うことになった。こうして、病気の進行具合...端的に言えば転移の有無を検査して治療の方針を決めていくというわけだ。
針生検の結果は1週間後の8/7に分かるという。そこで検査の結果が大体出揃うので方針を決められるということと、最短で行けば8月の後半に手術することもあり得る、という話があった。
こうして慌ただしく、がんセンターでの診察初日が終わった。診察料は2万円近くかかった。
転移がなかったということはまずホッとしたが、腫瘍が1つでなく3つあること、病気の広がりがあるということは、少なからずショックだった。
だが俺たちは、この時はまだ、患部をスポット的に取り除けば終わりなのではないか、という認識でしかなかった。毎年検査を受けていたから、大掛かりな治療が必要になるくらいまで病気が進行することはないだろう、という観念からどうしても抜け出せなかったのだ。
つづく。
魚河岸宮武のランチ
(Panasonic DMC-GM5, Lumix G Vario 12-32mmF3.5-5.6(12.0mm), 1/60sec, F3.5, ISO1600)
初日の昼食は、業務場所から近い、人気の鮮魚料理店で食べた。30分待たされたが、この内容のものが800円で供されるならなんの文句もないどころか、待った甲斐があったというものだ。
さて、なかなか進まないけど、2年半前に我が家にふりかかった、ヨメさんの「乳がん」にまつわる手記を続けよう。
前回、「がんおよび乳がんとは」という知識編を挟んだ。
今回は、検査を受けた乳腺外来で紹介状を書いてもらった、がんセンターでの初診のシーンである。
乳腺外来の医師が紹介状を書いてくれたがんセンターは、実は我が家から徒歩15分もかからないところにある。くしくも当時、我が家から一番近い医療施設だった。俺のチャリ通勤路上でもあり、ほぼ毎日前を通っていた。そこにまさか、この歳で自分の妻が世話になるとは、考えたこともなかった。
2015年7月29日、ジリジリとするような真夏日。水曜日だった。子ども達を学童保育と保育園に送ってから、俺たち夫婦はがんセンターへと向かった。駐車場は混み合い、整理員まで出ていて、かなり隅の方まで誘導された。
建物は、昭和を感じさせるものだ。「日本が良かった時代」とでも言おうか。建物全体の表面がレンガで覆われていて、だいぶゆったりした作りになっている。当時としてはかなりいい建物だったに違いないが、さすがにくたびれたように見える。ただ、何の気なしに前を通って感じていた印象よりも建物は小さく感じた。診療棟は2階建てだし、病棟は6階建てだがさほど床面積は広くない。考えてみれば総合病院でなく、がん専門なのだから規模もそこまで大きくはないのだろう。
がんセンターの外観（公式ホームページより）
中に入っても、駐車場に駐まっていた車の数の割には患者で溢れかえっているというほどではない。がん絡みの人しか来ないので、総合病院のように「老人たちの憩いのサロン」にはなっていないようだ。
さて、乳腺外来医院の紹介状を持って受付に向かった。対応した、安藤美姫似の受付さんの顔が少し曇った。
「10時からのご予約ですよね。一応初診の方は30分前にいらしていただくようお願いしているんですが...」
近いからと油断して15分前入りしたところ、初診の場合は30分前に来るよう注意書きがあったのを見落としていた。出だしから「不良患者」である。
慌ただしく、受付で問診票の記入をしてから、乳腺科へ行った。乳腺科は1階、受付のすぐ裏手だった。まずマンモグラフィーを撮り、ようやく担当の医師と顔を合わせたのは10時半を過ぎてからだった。
医師は見た目、俺より若いと思われる、メガネの男性だった。その黒縁のメガネが、こちらから見て若干左に傾いていたが、まあ気にしないことにする。
医師は、挨拶後のほぼ最初の言葉で俺たちの希望をあっさり打ち砕いた。
「しこりを感じて○○先生のところで検査をして、悪性だと言われて、こちらに紹介状を書いていただいたということで...。資料を見させていただいたんですが、やはり乳がんの可能性が高いですね」
乳がん。
...やはりそうなのか...。あっさりとした宣告に、俺たちは呆然とした。そして、やはり手術は不可避であるということも言われた。今後はまずガンのタイプを調べるとともに、全身への転移の有無を調べていくことになるという。
早いうちに調査をしようということで、この日の16時にはCTスキャンを撮ることになった。そのためには、4時間前の正午から飲食できないこと、また、血液検査を済ませなければならないことを矢継ぎ早に伝えられた。時計は既に11時を回ろうとしていた。まじか！
しかもその前に、超音波で患部を観るという。慌ただしく、脇の更衣室で上半身の服を脱ぎ、ヨメさんがベッドに横たわった。
仮にも最愛の妻の女性のシンボルを他人の男性に晒すというのは気分が悪くなるかと思っていたが、この場においてはまったくそんな感情は起きなかった。
診断によると、実は腫瘍は3つあるという。手に触れるところにあるのが8mmくらいのもので、その奥に4mm程度のものが2つあるという。その周りにも石灰化（がんによる壊死でカルシウムが付着する）の広がりが見られるという。
「広がり」という言葉に、少し寒気を感じた。
診察が終わる頃には11時15分を過ぎていた。服を着て診察室を出て、2階の採血室に向かった。これがまた混み合っている。採血が終わると11時40分だった。慌ただしい。食事できる時間は20分だ。
「なに食うよ？」
「時間もないし、わたしそこのサンドイッチでいいよ。何か好きなもの食べてくれば？」
わざわざ別行動する必要もないので、一緒に病院内のスターバックスで高値のサンドイッチを食べた。ぎりぎり、正午までに食べ終わった。
16時までヒマなので、一旦家に引き返して洗濯物を畳んだり、なぜか粗大ゴミの申請をしたりした。まあ、せっかくの平日休みを有効に使おうという意識でも働いたんだろう。これができるのは、幸か不幸か病院がすぐ近くだからだ。今後も、この点については安心だと思った。とは言え暑い時期だったので、4時間、飲み物も飲めないのは、結構辛かったようだ。
16時に病院の乳腺科に戻ると、患者もかなり減って閑散とした雰囲気の待合室に西日が差し込んでいた。待合室はガラス張りになっていて、出入りする車や、周囲の緑豊かな風景もよく見えた。とても見晴らしが良くて明るい雰囲気なのは病院の配慮なんだろうか。
CTスキャンを撮るため、まずは放射線棟に行く。午前、マンモグラフィーを撮ったところよりもう少し奥の部屋だった。その中待合には、待合室とは打って変わって、3〜4組が座って混み合っていて少し驚いた。
別の節で詳しく書くように、CTスキャンの目的は多臓器への転移の有無を調べることにある。人間の身体を金太郎飴状態で輪切りした連続画像が得られる。20〜30分程度かかったろうか。ようやくヨメさんが中待合に戻ってきた。造影剤の注射がかなりきつかったらしく、刺された左腕を痛そうにしている。
最後に乳腺科に寄って、医師と話した。診察室のPCには、既にCTスキャンの画像が表示されていた。
「CTの結果ですが、他臓器に転移はありません」
ああ、よかった。
「患部がここですね。他の臓器をこうして見てみても、ガンは確認できません」
マウスのホイールを回すと、ヨメさんの身体の断層が、連続的に変化して表示されるようだ。患部である胸、肺の辺りから、消化器、果ては卵巣あたりまで、グリグリと動く。不謹慎だが、これは面白い。PCの進化で、病気の診断も格段に早くなっていると思った。
この日でCTスキャンまで撮れたので、翌7/30にMRI、7/31に患部の組織を採取する針生検を行うことになった。こうして、病気の進行具合...端的に言えば転移の有無を検査して治療の方針を決めていくというわけだ。
針生検の結果は1週間後の8/7に分かるという。そこで検査の結果が大体出揃うので方針を決められるということと、最短で行けば8月の後半に手術することもあり得る、という話があった。
こうして慌ただしく、がんセンターでの診察初日が終わった。診察料は2万円近くかかった。
転移がなかったということはまずホッとしたが、腫瘍が1つでなく3つあること、病気の広がりがあるということは、少なからずショックだった。
だが俺たちは、この時はまだ、患部をスポット的に取り除けば終わりなのではないか、という認識でしかなかった。毎年検査を受けていたから、大掛かりな治療が必要になるくらいまで病気が進行することはないだろう、という観念からどうしても抜け出せなかったのだ。
つづく。
nobilesの投稿(22:52:12-2017-12-10) -
カテゴリ: Breast Cancer
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