NOBILES Days
Jump to navigationMy wife, her breast cancer and her family(7) - children power
11月の自称「ブログ強化月間（誰にも頼まれてないけど）」が終わった途端、ぱったり更新してなかったな。
ま、無理なくぼちぼち更新できればな、とは思ってるんだけどね。
というわけで、記憶が薄まらないうちに（まあ、適宜執筆してきてたんだけど）、2015年以降のヨメさんの乳がん手記を進めていこう。
伏見稲荷
(PentaxK-3, PentaxDA15mmLimitedF4.0, 1/4sec, F4.0, ISO1600)
右胸の全摘という宣告を受けたヨメさんに会うべく、俺は16時を前に会社を飛び出した。
1時間電車に乗り、自宅近くのターミナル駅に着く。そこからさらに20分以上かけて自転車で帰らなければならない。もどかしい。2015年7月末、しかも記録的な暑さを記録した夏だった。普段は日が落ちてから帰るが、まだまだ日も高い。だが俺はいつも以上に自転車を飛ばした。汗だくでペダルを漕いだ。
自宅まで残り1kmのところで、道の脇に焦げ茶色の建物が見えてきた。がんセンターだ。ついさっき、ヨメさんが絶望の宣告を受けた場所だ。でも今後、俺たちの平和な日常を取り戻すためには長い付き合いをしていくことになる場所でもある。
そんな、とても複雑な思いを抱えながら、俺はがんセンターの前を通過し、自宅に帰り着いた。滝のように汗をかいていた。
自宅に帰り着いたが、家にはヨメさんも子ども達もいなかった。徒歩2分のところにあるヨメさんの実家にいたからだ。自転車の全力漕ぎで噴き出した汗を拭い、着替えてからすぐに俺もヨメさんの実家に向かった。
実家に着くと、「キャーー！」と騒がしい声が聞こえてきた。ここまでの気持ちとは至って釣り合わない声である。タイミングが良いのか悪いのか分からないが、ちょうどこのとき、ヨメさんの妹一家が遊びに来ていたのだ。我が家の娘2人に、そのいとこ姉弟2人が加わって大騒ぎだった。
玄関を入って、長さ数mほどの廊下の奥の台所まで行くと、テーブルの前のイスに、こちらに背を向ける向きにヨメさんが座っていた。俺が来たのに気づいて振り返るが、いつも以上に表情がない。
「ただいま。今日はオツカレだったね」
その程度しか話しかけることができなかった。ヨメさんの方も無表情なまま、おかえり、と小さな声で答えただけだった。
台所では、ヨメさんのお母さんや、近所に住む叔母さんが来て、おにぎりを作っていた。
「今日はみんな、こんなもんしか食べないから。もっと食べたきゃ、どっか外に食べに行ってね」
...なんて言われたが、俺もとてもそんな気にはなれなかった。それで、ヨメさんの右側の席に腰を下ろした。
その台所横のリビングのように使っている和室に、子ども達が集結して騒いでいた。若干、沈痛な空気になりがちなところ、子ども達の生命力に溢れた声は、ちょっと救いに思えた。それにしたって、甲高く叫ぶ声はうるさすぎだったが。
...ヨメさんになんと声をかけたら良いのかわからない。受けとめきれない事態が起きた時、言葉なんて無力もいいところだ。あれだけ「一刻も早く顔を合わせなきゃ！」と飛び出してきたのに、実際に会ったらこんなもんである。いや、それでも多少は安心を与えられたかもしれないけど。
軽い夕食をとったら、子ども達も一緒に自宅に戻った。
さて、ヨメさんによると、骨への転移が疑われるので、翌週8/5水曜に骨の検査をするという。
「私じゃ分からない話も多いし、ショックを受けたら、話が頭に入ってこないから、ついてきて欲しい」。
確かにその通りだろう。ヨメさんは、決して論理的なタイプではない。いや、理系出身である俺でも、仮にヨメさんの立場であったとしたら、医者からドサドサと投下される悲観的な情報を1人で受け止めて、それらを冷静に分析できるかどうか、自信がない。
今後は、第三者とまでは言えないが、比較的冷静に聞ける人間ということで、基本的には俺も同席することにしよう、と決めた。
この日、麻酔を打って針生検を行ったヨメさんの右胸には、痛々しい針の痕があった。結構痛いらしい。腕も上がりづらいし、そもそも湯船に浸かるのはNGだそうなので、子どもの風呂は俺が担当した。
子どもたちもキャーキャー騒いではいたが、ヨメさんの異変は認識していた。
「ねーパパー、ママ、おっぱい変なの？」
「あー...うん、そうなんだ。病気なんだよ。」
「えっ、死んじゃうの？」
「いやいや、死なないよー。」
即答したものの、それを断言できる材料はなにもない。
「でもね、片方なくなっちゃうかもしれないんだ」
「えー、やだよー」
まだ子どもたちはさほど深刻には捉えていない。でも実際に手術で全摘した姿を見たらさぞや驚くことだろう。また、重い気持ちになった。
つづく。
ま、無理なくぼちぼち更新できればな、とは思ってるんだけどね。
というわけで、記憶が薄まらないうちに（まあ、適宜執筆してきてたんだけど）、2015年以降のヨメさんの乳がん手記を進めていこう。
伏見稲荷
(PentaxK-3, PentaxDA15mmLimitedF4.0, 1/4sec, F4.0, ISO1600)
右胸の全摘という宣告を受けたヨメさんに会うべく、俺は16時を前に会社を飛び出した。
1時間電車に乗り、自宅近くのターミナル駅に着く。そこからさらに20分以上かけて自転車で帰らなければならない。もどかしい。2015年7月末、しかも記録的な暑さを記録した夏だった。普段は日が落ちてから帰るが、まだまだ日も高い。だが俺はいつも以上に自転車を飛ばした。汗だくでペダルを漕いだ。
自宅まで残り1kmのところで、道の脇に焦げ茶色の建物が見えてきた。がんセンターだ。ついさっき、ヨメさんが絶望の宣告を受けた場所だ。でも今後、俺たちの平和な日常を取り戻すためには長い付き合いをしていくことになる場所でもある。
そんな、とても複雑な思いを抱えながら、俺はがんセンターの前を通過し、自宅に帰り着いた。滝のように汗をかいていた。
自宅に帰り着いたが、家にはヨメさんも子ども達もいなかった。徒歩2分のところにあるヨメさんの実家にいたからだ。自転車の全力漕ぎで噴き出した汗を拭い、着替えてからすぐに俺もヨメさんの実家に向かった。
実家に着くと、「キャーー！」と騒がしい声が聞こえてきた。ここまでの気持ちとは至って釣り合わない声である。タイミングが良いのか悪いのか分からないが、ちょうどこのとき、ヨメさんの妹一家が遊びに来ていたのだ。我が家の娘2人に、そのいとこ姉弟2人が加わって大騒ぎだった。
玄関を入って、長さ数mほどの廊下の奥の台所まで行くと、テーブルの前のイスに、こちらに背を向ける向きにヨメさんが座っていた。俺が来たのに気づいて振り返るが、いつも以上に表情がない。
「ただいま。今日はオツカレだったね」
その程度しか話しかけることができなかった。ヨメさんの方も無表情なまま、おかえり、と小さな声で答えただけだった。
台所では、ヨメさんのお母さんや、近所に住む叔母さんが来て、おにぎりを作っていた。
「今日はみんな、こんなもんしか食べないから。もっと食べたきゃ、どっか外に食べに行ってね」
...なんて言われたが、俺もとてもそんな気にはなれなかった。それで、ヨメさんの右側の席に腰を下ろした。
その台所横のリビングのように使っている和室に、子ども達が集結して騒いでいた。若干、沈痛な空気になりがちなところ、子ども達の生命力に溢れた声は、ちょっと救いに思えた。それにしたって、甲高く叫ぶ声はうるさすぎだったが。
...ヨメさんになんと声をかけたら良いのかわからない。受けとめきれない事態が起きた時、言葉なんて無力もいいところだ。あれだけ「一刻も早く顔を合わせなきゃ！」と飛び出してきたのに、実際に会ったらこんなもんである。いや、それでも多少は安心を与えられたかもしれないけど。
軽い夕食をとったら、子ども達も一緒に自宅に戻った。
さて、ヨメさんによると、骨への転移が疑われるので、翌週8/5水曜に骨の検査をするという。
「私じゃ分からない話も多いし、ショックを受けたら、話が頭に入ってこないから、ついてきて欲しい」。
確かにその通りだろう。ヨメさんは、決して論理的なタイプではない。いや、理系出身である俺でも、仮にヨメさんの立場であったとしたら、医者からドサドサと投下される悲観的な情報を1人で受け止めて、それらを冷静に分析できるかどうか、自信がない。
今後は、第三者とまでは言えないが、比較的冷静に聞ける人間ということで、基本的には俺も同席することにしよう、と決めた。
この日、麻酔を打って針生検を行ったヨメさんの右胸には、痛々しい針の痕があった。結構痛いらしい。腕も上がりづらいし、そもそも湯船に浸かるのはNGだそうなので、子どもの風呂は俺が担当した。
子どもたちもキャーキャー騒いではいたが、ヨメさんの異変は認識していた。
「ねーパパー、ママ、おっぱい変なの？」
「あー...うん、そうなんだ。病気なんだよ。」
「えっ、死んじゃうの？」
「いやいや、死なないよー。」
即答したものの、それを断言できる材料はなにもない。
「でもね、片方なくなっちゃうかもしれないんだ」
「えー、やだよー」
まだ子どもたちはさほど深刻には捉えていない。でも実際に手術で全摘した姿を見たらさぞや驚くことだろう。また、重い気持ちになった。
つづく。
nobilesの投稿(01:01:13-2018-12-19) -
カテゴリ: Breast Cancer
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