NOBILES Days
Jump to navigationWhy Pentax? (2)
変則カレンダーが始まって2週経った。やっぱりなかなか慣れるモンじゃないね。
今日は「事業所全体としては休みだけどウチの部署だけ出勤」の初日だ。つまり、食堂や売店も営業していない。
駅前のコンビニで昼食を買っていざ出勤してみると、分かっていたことだけど、同じフロアでも他部署はごっそり空席で、まるで休日出勤でもしたかのような感覚に襲われた。だがそこそこ業務が忙しかったのもあって、途中からはそんな感覚もどっかに吹っ飛んでしまった。
でも、やっぱり休みが不定期なんて落ち着かないね。気が休まらない。
明日は予定のない休日だ。のんびりしたい。
前回から「Pentax愛」トークを始めたが、一眼レフ市況トークで終わってしまった。
というわけで、今回ようやく本題に入ろう。
「なぜ俺は（立場が立場なのに (^_^;）Pentaxの一眼レフを使っているのか」
Dance with the Cousin
1ヶ月半早く産まれた従姉と次女
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/40sec, F2.8, ISO800)
まず最大の理由から行こう。
・まず間違いなく、開発者全員がカメラ大好きで、自分の開発したカメラを使ってそうな雰囲気
「雰囲気かよ！」と突っ込まれそうだね (^_^;。
でも、たとえばCanonなんかは、俺の勝手なイメージだと、「カメラが好きな人」ではなく「優秀な技術者」が作っているイメージがある。車で言うとトヨタな感じ。何人かいるんだよ、車持っていないトヨタ社員。
その意味ではNikonの方がカメラ好きな人が作ってそうだけど、ここは「Nikonの伝統」とやらに縛られてそうなイメージだ。好き勝手にやらせてもらえなそうなね。
「伝統？なにそれ、食えんの？いいよ、便利なもんなら積んじゃえー」がPentaxのイメージ（あくまでイメージです (^_^;）。
いや、実際それはカメラを使っているとよーく分かる。例えばGUI一つとってもそうだ。K10Dで導入された、高機能な2軸補正のホワイトバランス調整だ。これは、直前に撮影して本体に残っているRAWデータを使用して、実際の画像での効果を見ながら調整できるのだ。実に気が利いている。
さらに現行機種なら、これで調整した結果を新たなJPEG画像としてワンボタンで保存できる。他社なら前のデータなんて絶対切り捨てるところだろう。だがPentaxは、「だって、本体にデータ残ってんだもん。利用できた方が嬉しいっしょ？同じ写真撮れるとは限らないしねー」なのだ。
グリップの形状にも非常にこだわりが感じられる。K-7およびK-5のそれは、現役モデルの中では握りやすさ最強のグリップだと思っている。これなんかは、根気強くテストを繰り返さないと得られないものだと思う。好きじゃなきゃできないと思う。
ではもっと具体的な事例で述べて行こう。
・レンズが面白い
まず、カメラにとってボディ以上に大事と言われているのがレンズだ。カメラは、レンズによって如何ようにも性格を変化できる。
Pentaxのレンズ群は、絶対的な光学性能を追求したものは多くはない。でも、楽しさを追求したレンズがたくさんある。その代表がLimitedシリーズというレンズ群だ。
(PentaxK10D, PentaxDA16-45mmF4(31.0mm), 1/2sec, F11.0, ISO400)
これらは、MTFなどのスペックを追わず、実写による評価をもっとも重視して設計された単焦点レンズだ。写りは、どれも味わいがあって、ズームレンズとの違いがよく分かるものになっている。
しかも、無理に明るいレンズとせず、サイズを抑えているので、いくつも持ち歩きたくなる。また、モノとしての存在感も考えてアルミの削り出しボディが奢られていて、触っているだけで嬉しくなってくる。
確かに、ズームレンズは便利だ。だけど、画角を変えられないからこそ、自分の足で被写体を隈無くいろいろな角度から見ることで発見できることがある。Limitedレンズはそれをさりげなく教えてくれるレンズ達だ。
・ボディ内手ブレ補正機構を搭載している
俺がK10Dを買う決め手となった大きな理由の一つだ。
ボディ内か、レンズ側か、というのは常に議論の的だというのは承知している。どっちが最適解かというのも答えのでない話と思う。
それでもなお、全てのレンズで何らかのプラスの効果があるボディ内補正は、やはり積むべきだと思う（理想を言えば、両方積んで欲しいけど、パテントが絡んでるのかなあ）。
その点においても、Pentaxの姿勢は徹底している。どんなに古いレンズでも、マウントアダプターをかました他マウントのレンズでも、焦点距離さえ入力すれば手ブレ補正が有効になる。
「大口径なら手ブレ補正はいらない」「高感度が良くなっているんだからシャッタースピードで補える」
どれもそれはそれで真実だろう。でも、たとえ同じ環境でも『大口径でスローシャッター、低感度』という「可能性」を残してくれるのがボディ内補正だ。その分だけ、ユーザーの表現手法の選択肢が広がるのだ。カメラを作る側としては可能性はなるべく残す。それを使うか使わないかはユーザーが選べばいい。この姿勢が徹底しているのがいい。
同じ素子と画像エンジンの組み合わせを使った、先に発売された中級機が高い感度に対応しているのに「これは初級機だから」とかいうワケの分からんことを言って、初級機はより低い感度までしか対応しないなんて余計なお世話もいいところなんだよ、某社さんよ。メーカーの傲慢と言ってもいい。初級機でも、小型なサイズを理由に使う上級者だっているんだぜ？
あー、また愚痴っぽくなったけど続けよう。
・ボディ内手ブレ補正機構を使った小技がスゴい
さっきの項目の続きになるけど、このPentax版手ブレ補正機構が、技術者のアイディア炸裂という感じで感服してしまう。
そもそも手ブレ補正機構とは、シャッターを開けている間にカメラが動いてしまう（それがすなわちブレとなる）のを検知し、それを打ち消す方向に補正用レンズや撮像素子を動かすことでブレを減らす機構のことだ。
通常、これらの補正機構はレンズ補正だろうとボディ内補正だろうと、その駆動対象はX方向、Y方向それぞれの駆動方向にレールで保持され、アクチュエーターで駆動される。最近ではCanonが前後方向（Z方向でいいのか？）も補正するハイブリッド型を始めたが、これも単に1軸加えただけと思えば良いだろう。制御は飛躍的に難しくなりそうだけど。
だから、これらの機構では、駆動される撮像素子もしくはレンズは、水平・垂直は維持したままで駆動される。
ところが、2006年のK100Dで導入されたPentaxの手ブレ補正機構SRは全く違う。補正する間、撮像素子のユニットは磁力によって浮上する独自の機構なのだ。だからこのユニットは、なんと回転方向もある程度制御できる。
その代わりにCanonのように前後方向を動かすのは構造的に厳しそうだが...だったら、前後方向のブレにシビアなマクロレンズだけは前後補正レンズを光学系に仕組めばいいんじゃないの？と思うのだが、どうだろう。
閑話休題。Pentaxの技術者がスゴイのは、他社にないこのオンリーワンの機構を単なる手ブレ補正機構で終わらせなかったことだ。考えられるアイディアを次々に新製品に盛り込んできている。
SRの最初の応用はK10Dで導入されたDR＝Dust Reductionだ。
これは、SONYもアクチュエーター式手ブレ補正機構を利用して行ったことだが、撮像素子を手ブレ補正機構で揺すって、そこ（厳密に言えば、その直前にあるローパスフィルター）に付着したゴミをふるい落とす機構だ。
だが、正直言ってこれは、Olympusが先鞭をつけた、ローパスフィルターの超音波振動式と比べると、笑ってしまうくらい効果が低かった。現行機種では、コストを抑えなければならない初級機のK-rにはDRは残っているが、上位機種はK-7以降、ローパスフィルターの超音波振動であるDR2に移行した。
だが、SRの応用はまだまだこんなモンでは終わらなかった。以降はそれらを列挙していく。
・水平自動補正機能
2008年のK20Dで導入されたのがこれだ。
ちょうどこの頃、電子水準器をカメラに表示させる機能が流行り出していて、Pentaxも導入した。しかし、Pentaxの場合、最大2度まで撮像素子を回転できるSRを利用して、傾きをキャンセルする機能を入れてきた。
多分、同じ機能を搭載した他社カメラもあるだろう。しかし、他社のそれは画像補正で回転とトリミングを行っているのに対し、Pentaxは撮像素子自体を回転させるので、画質の劣化も画角の変化もないことが大きな違いだ。
なかなか実用的な機能だが、惜しむらくは水平水準器の精度がイマイチで、これがずれていると、当然自動補正機能で補正されたものもずれてしまった。
でも、SRの応用はまだまだ終わらんよ！
・厳密な視野率100%の達成
一昔前は、一部の上級機のみが実現していたファインダー視野率100%を本体価格10万円台前半の中級機で最初に達成したのが2009年のK-7だ。言わずもがな、現在の我が愛機だ。
視野率とは、実際に撮れる画角のうち、ファインダーで見える範囲をパーセンテージで表したものだ。
知らない人にとっては意外かもしれないが、多くの一眼レフカメラでは、光学ファインダーは実際に写る範囲全体を反映できていない。つまり、ファインダーの端ぎりぎりで「写っていない」と思って撮影したのに、実際の画像では写ってしまっていた、という現象が起きうる。
ちなみに、ミラーレスカメラやコンパクトデジカメなどは、実際に撮影を行う撮像素子からの画像が表示されているので、（余計なことをしていない限り）厳密な視野率100%だ。その代わり、A/D変換や画像処理が行われるのでタイムラグが発生するし、表示するモニターによってはチラつきや粗さが気になる、というわけだ。
さてなぜ一眼レフの光学ファインダーで視野率が100%のものが少ないかというと、シャッターのたびに高速で移動するミラーを含むファインダーの光学系と、撮像素子の光学系とを厳密にマッチングさせるのには、かなり精度の高い、ファインダー側の調整が必要で、あからさまにコストがかかるからだ。例えば、SONYのフルサイズ機α900は、海外に限って廉価版のα850？？が投入されたが、たしかこの2機種のスペックの違いはファインダーの視野率のみだったと記憶している。それでいて確か、価格は8万くらい安くなっていた。
だからこそ、それまで視野率100%の光学ファインダーは上級機のみに限られていた。しかも、どんなに調整しても厳密な100%は難しく、個体差で97%程度のものも少なくなかった。
ところが、K-7および後継のK-5は、極めて高精度な100%視野率光学ファインダーを達成した。
そう。SRを使ってファインダーの視野に撮影の瞬間に撮像素子を合わせこむ制御を行っているのだ。当然、ファインダー側の高精度な調整も大幅に削減できる。これは、撮像素子を回転できるSRだからできる芸当だ。
叡智だね。
他社が血眼で光学ファインダーの調整をキリキリやって、それでも個体差で97%程度のものがゴロゴロ発生している中、「じゃあ、CMOS側を合わせちゃえばいいんだろ」ときたもんだ。
この軽やかさがPentaxだ。実に鮮やかである。
・星を追いかけるAstroTracer
そして2011年、Pentaxは、絶対他社がやらないであろう機能を、またしてもSRを利用して実現させた。
発売したのは、GPSユニットだ。既に多くの他社が一眼レフ用のGPSユニットを発売していた中では、今回も後発となった。
ところが、これにはとんでもない付加機能が搭載されていた。
なんと、GPSで得られた緯度情報から地球の自転による星の動きを算出し、長時間露光の際、星に追従するように撮像素子を動かすという機能である。
これをすると何が嬉しいのかというと、星がちゃんと点として写る。
星を写すには長時間露光をしなければならないが、その間に地球が自転するため、北極星を中心とした同心円上に星が流れた画像になってしまうのだ。これをキャンセルするというわけだ。
もともと、これを実現するには、専用の機械、赤道儀が必要だった。しかし、大掛かりなこの機械は、よほど天文に入れ込んでる人しか所有出来ない。
一般の人が、三脚にカメラを固定し、たかだか1万円そこそこの小さなGPSユニットを取り付ければ、簡易的ではあるが同じ機能を実現できる。
他社ほど大規模な投資はできない。でも、他社にはないオンリーワンな資産をとことん利用して、ユーザーにとってちょっと嬉しい機能を実現する。
これが、技術ってものだよね。
とにかく、技術者達の良心がたくさん詰まったPentaxのカメラは、使っていてとても楽しい。これが俺がPentaxを使う理由かな。
多分、なーんも考えないで「思い出」を残すだけだったら、自動機能に一日の長があるCanonかNikonを選択すればいいと思うよ。だけど、「撮影すること」そのものに楽しみを見いだしたいのだったら、「Pentaxで単焦点行ってみ？」と誘ってあげたいところだね。
今日は「事業所全体としては休みだけどウチの部署だけ出勤」の初日だ。つまり、食堂や売店も営業していない。
駅前のコンビニで昼食を買っていざ出勤してみると、分かっていたことだけど、同じフロアでも他部署はごっそり空席で、まるで休日出勤でもしたかのような感覚に襲われた。だがそこそこ業務が忙しかったのもあって、途中からはそんな感覚もどっかに吹っ飛んでしまった。
でも、やっぱり休みが不定期なんて落ち着かないね。気が休まらない。
明日は予定のない休日だ。のんびりしたい。
前回から「Pentax愛」トークを始めたが、一眼レフ市況トークで終わってしまった。
というわけで、今回ようやく本題に入ろう。
「なぜ俺は（立場が立場なのに (^_^;）Pentaxの一眼レフを使っているのか」
Dance with the Cousin
1ヶ月半早く産まれた従姉と次女
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/40sec, F2.8, ISO800)
まず最大の理由から行こう。
・まず間違いなく、開発者全員がカメラ大好きで、自分の開発したカメラを使ってそうな雰囲気
「雰囲気かよ！」と突っ込まれそうだね (^_^;。
でも、たとえばCanonなんかは、俺の勝手なイメージだと、「カメラが好きな人」ではなく「優秀な技術者」が作っているイメージがある。車で言うとトヨタな感じ。何人かいるんだよ、車持っていないトヨタ社員。
その意味ではNikonの方がカメラ好きな人が作ってそうだけど、ここは「Nikonの伝統」とやらに縛られてそうなイメージだ。好き勝手にやらせてもらえなそうなね。
「伝統？なにそれ、食えんの？いいよ、便利なもんなら積んじゃえー」がPentaxのイメージ（あくまでイメージです (^_^;）。
いや、実際それはカメラを使っているとよーく分かる。例えばGUI一つとってもそうだ。K10Dで導入された、高機能な2軸補正のホワイトバランス調整だ。これは、直前に撮影して本体に残っているRAWデータを使用して、実際の画像での効果を見ながら調整できるのだ。実に気が利いている。
さらに現行機種なら、これで調整した結果を新たなJPEG画像としてワンボタンで保存できる。他社なら前のデータなんて絶対切り捨てるところだろう。だがPentaxは、「だって、本体にデータ残ってんだもん。利用できた方が嬉しいっしょ？同じ写真撮れるとは限らないしねー」なのだ。
グリップの形状にも非常にこだわりが感じられる。K-7およびK-5のそれは、現役モデルの中では握りやすさ最強のグリップだと思っている。これなんかは、根気強くテストを繰り返さないと得られないものだと思う。好きじゃなきゃできないと思う。
ではもっと具体的な事例で述べて行こう。
・レンズが面白い
まず、カメラにとってボディ以上に大事と言われているのがレンズだ。カメラは、レンズによって如何ようにも性格を変化できる。
Pentaxのレンズ群は、絶対的な光学性能を追求したものは多くはない。でも、楽しさを追求したレンズがたくさんある。その代表がLimitedシリーズというレンズ群だ。
(PentaxK10D, PentaxDA16-45mmF4(31.0mm), 1/2sec, F11.0, ISO400)
これらは、MTFなどのスペックを追わず、実写による評価をもっとも重視して設計された単焦点レンズだ。写りは、どれも味わいがあって、ズームレンズとの違いがよく分かるものになっている。
しかも、無理に明るいレンズとせず、サイズを抑えているので、いくつも持ち歩きたくなる。また、モノとしての存在感も考えてアルミの削り出しボディが奢られていて、触っているだけで嬉しくなってくる。
確かに、ズームレンズは便利だ。だけど、画角を変えられないからこそ、自分の足で被写体を隈無くいろいろな角度から見ることで発見できることがある。Limitedレンズはそれをさりげなく教えてくれるレンズ達だ。
・ボディ内手ブレ補正機構を搭載している
俺がK10Dを買う決め手となった大きな理由の一つだ。
ボディ内か、レンズ側か、というのは常に議論の的だというのは承知している。どっちが最適解かというのも答えのでない話と思う。
それでもなお、全てのレンズで何らかのプラスの効果があるボディ内補正は、やはり積むべきだと思う（理想を言えば、両方積んで欲しいけど、パテントが絡んでるのかなあ）。
その点においても、Pentaxの姿勢は徹底している。どんなに古いレンズでも、マウントアダプターをかました他マウントのレンズでも、焦点距離さえ入力すれば手ブレ補正が有効になる。
「大口径なら手ブレ補正はいらない」「高感度が良くなっているんだからシャッタースピードで補える」
どれもそれはそれで真実だろう。でも、たとえ同じ環境でも『大口径でスローシャッター、低感度』という「可能性」を残してくれるのがボディ内補正だ。その分だけ、ユーザーの表現手法の選択肢が広がるのだ。カメラを作る側としては可能性はなるべく残す。それを使うか使わないかはユーザーが選べばいい。この姿勢が徹底しているのがいい。
同じ素子と画像エンジンの組み合わせを使った、先に発売された中級機が高い感度に対応しているのに「これは初級機だから」とかいうワケの分からんことを言って、初級機はより低い感度までしか対応しないなんて余計なお世話もいいところなんだよ、某社さんよ。メーカーの傲慢と言ってもいい。初級機でも、小型なサイズを理由に使う上級者だっているんだぜ？
あー、また愚痴っぽくなったけど続けよう。
・ボディ内手ブレ補正機構を使った小技がスゴい
さっきの項目の続きになるけど、このPentax版手ブレ補正機構が、技術者のアイディア炸裂という感じで感服してしまう。
そもそも手ブレ補正機構とは、シャッターを開けている間にカメラが動いてしまう（それがすなわちブレとなる）のを検知し、それを打ち消す方向に補正用レンズや撮像素子を動かすことでブレを減らす機構のことだ。
通常、これらの補正機構はレンズ補正だろうとボディ内補正だろうと、その駆動対象はX方向、Y方向それぞれの駆動方向にレールで保持され、アクチュエーターで駆動される。最近ではCanonが前後方向（Z方向でいいのか？）も補正するハイブリッド型を始めたが、これも単に1軸加えただけと思えば良いだろう。制御は飛躍的に難しくなりそうだけど。
だから、これらの機構では、駆動される撮像素子もしくはレンズは、水平・垂直は維持したままで駆動される。
ところが、2006年のK100Dで導入されたPentaxの手ブレ補正機構SRは全く違う。補正する間、撮像素子のユニットは磁力によって浮上する独自の機構なのだ。だからこのユニットは、なんと回転方向もある程度制御できる。
その代わりにCanonのように前後方向を動かすのは構造的に厳しそうだが...だったら、前後方向のブレにシビアなマクロレンズだけは前後補正レンズを光学系に仕組めばいいんじゃないの？と思うのだが、どうだろう。
閑話休題。Pentaxの技術者がスゴイのは、他社にないこのオンリーワンの機構を単なる手ブレ補正機構で終わらせなかったことだ。考えられるアイディアを次々に新製品に盛り込んできている。
SRの最初の応用はK10Dで導入されたDR＝Dust Reductionだ。
これは、SONYもアクチュエーター式手ブレ補正機構を利用して行ったことだが、撮像素子を手ブレ補正機構で揺すって、そこ（厳密に言えば、その直前にあるローパスフィルター）に付着したゴミをふるい落とす機構だ。
だが、正直言ってこれは、Olympusが先鞭をつけた、ローパスフィルターの超音波振動式と比べると、笑ってしまうくらい効果が低かった。現行機種では、コストを抑えなければならない初級機のK-rにはDRは残っているが、上位機種はK-7以降、ローパスフィルターの超音波振動であるDR2に移行した。
だが、SRの応用はまだまだこんなモンでは終わらなかった。以降はそれらを列挙していく。
・水平自動補正機能
2008年のK20Dで導入されたのがこれだ。
ちょうどこの頃、電子水準器をカメラに表示させる機能が流行り出していて、Pentaxも導入した。しかし、Pentaxの場合、最大2度まで撮像素子を回転できるSRを利用して、傾きをキャンセルする機能を入れてきた。
多分、同じ機能を搭載した他社カメラもあるだろう。しかし、他社のそれは画像補正で回転とトリミングを行っているのに対し、Pentaxは撮像素子自体を回転させるので、画質の劣化も画角の変化もないことが大きな違いだ。
なかなか実用的な機能だが、惜しむらくは水平水準器の精度がイマイチで、これがずれていると、当然自動補正機能で補正されたものもずれてしまった。
でも、SRの応用はまだまだ終わらんよ！
・厳密な視野率100%の達成
一昔前は、一部の上級機のみが実現していたファインダー視野率100%を本体価格10万円台前半の中級機で最初に達成したのが2009年のK-7だ。言わずもがな、現在の我が愛機だ。
視野率とは、実際に撮れる画角のうち、ファインダーで見える範囲をパーセンテージで表したものだ。
知らない人にとっては意外かもしれないが、多くの一眼レフカメラでは、光学ファインダーは実際に写る範囲全体を反映できていない。つまり、ファインダーの端ぎりぎりで「写っていない」と思って撮影したのに、実際の画像では写ってしまっていた、という現象が起きうる。
ちなみに、ミラーレスカメラやコンパクトデジカメなどは、実際に撮影を行う撮像素子からの画像が表示されているので、（余計なことをしていない限り）厳密な視野率100%だ。その代わり、A/D変換や画像処理が行われるのでタイムラグが発生するし、表示するモニターによってはチラつきや粗さが気になる、というわけだ。
さてなぜ一眼レフの光学ファインダーで視野率が100%のものが少ないかというと、シャッターのたびに高速で移動するミラーを含むファインダーの光学系と、撮像素子の光学系とを厳密にマッチングさせるのには、かなり精度の高い、ファインダー側の調整が必要で、あからさまにコストがかかるからだ。例えば、SONYのフルサイズ機α900は、海外に限って廉価版のα850？？が投入されたが、たしかこの2機種のスペックの違いはファインダーの視野率のみだったと記憶している。それでいて確か、価格は8万くらい安くなっていた。
だからこそ、それまで視野率100%の光学ファインダーは上級機のみに限られていた。しかも、どんなに調整しても厳密な100%は難しく、個体差で97%程度のものも少なくなかった。
ところが、K-7および後継のK-5は、極めて高精度な100%視野率光学ファインダーを達成した。
そう。SRを使ってファインダーの視野に撮影の瞬間に撮像素子を合わせこむ制御を行っているのだ。当然、ファインダー側の高精度な調整も大幅に削減できる。これは、撮像素子を回転できるSRだからできる芸当だ。
叡智だね。
他社が血眼で光学ファインダーの調整をキリキリやって、それでも個体差で97%程度のものがゴロゴロ発生している中、「じゃあ、CMOS側を合わせちゃえばいいんだろ」ときたもんだ。
この軽やかさがPentaxだ。実に鮮やかである。
・星を追いかけるAstroTracer
そして2011年、Pentaxは、絶対他社がやらないであろう機能を、またしてもSRを利用して実現させた。
発売したのは、GPSユニットだ。既に多くの他社が一眼レフ用のGPSユニットを発売していた中では、今回も後発となった。
ところが、これにはとんでもない付加機能が搭載されていた。
なんと、GPSで得られた緯度情報から地球の自転による星の動きを算出し、長時間露光の際、星に追従するように撮像素子を動かすという機能である。
これをすると何が嬉しいのかというと、星がちゃんと点として写る。
星を写すには長時間露光をしなければならないが、その間に地球が自転するため、北極星を中心とした同心円上に星が流れた画像になってしまうのだ。これをキャンセルするというわけだ。
もともと、これを実現するには、専用の機械、赤道儀が必要だった。しかし、大掛かりなこの機械は、よほど天文に入れ込んでる人しか所有出来ない。
一般の人が、三脚にカメラを固定し、たかだか1万円そこそこの小さなGPSユニットを取り付ければ、簡易的ではあるが同じ機能を実現できる。
他社ほど大規模な投資はできない。でも、他社にはないオンリーワンな資産をとことん利用して、ユーザーにとってちょっと嬉しい機能を実現する。
これが、技術ってものだよね。
とにかく、技術者達の良心がたくさん詰まったPentaxのカメラは、使っていてとても楽しい。これが俺がPentaxを使う理由かな。
多分、なーんも考えないで「思い出」を残すだけだったら、自動機能に一日の長があるCanonかNikonを選択すればいいと思うよ。だけど、「撮影すること」そのものに楽しみを見いだしたいのだったら、「Pentaxで単焦点行ってみ？」と誘ってあげたいところだね。
nobilesの投稿(23:47:41-2011-07-12) -
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