NOBILES Days
Jump to navigationThe Bee in Nairobi --- The Constant Gardener
先日のライブの前日は嫁さんと家でゆっくり過ごした。その際、嫁さんの撮りためた映画を一本観た。
ちょいと前の写真と同じ時の写真だが、一応本文に関連して。
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimited, ApertureValueMode, 1/500sec, F2.5, ISO100)
以前にも記した通り、俺は映画やドラマの類はほとんど観ない。それに対し、嫁さんは結構映画好きのようだ。ただし、夫婦は似るのか、メジャーどころよりも、単館上映しているようなマニアックな映画が好きなようだ。我が家のケーブルテレビの番組ガイドの裏には嫁さんの「これ録画してメモ」が赤ペンで書き込まれている。興味ある映画を見つけるとここに書いていくのだが、ほとんどは、映画に疎い俺が聞いたこともないようなものばかりだ。レコーダーの予約ができない（しようとしない）嫁さんに代わって、俺がせっせと予約をするわけである。
一方で、ドラマは結構ミーハー物好きのようだが、まあ、それも彼女の母や妹と文句を言い合うためのもののようだから、アマノジャッキーには違いあるまい。
それはともかくとして、単館上映しているようなマイナーな映画ということは、須らく地味で暗いものが多くなる。かなり重いテーマな物も多いのもあって、最初の方はのめり込まないようにライブの小道具の準備なんかしながら、というスタンスだった。
...でも、このような場合、大抵はそのスタンスを貫くことは難しいのである。なぜならそれらの作品は大概、地味なのにグイグイと観る者を引き込んでいく力があるからだ。恐るべし、嫁さんセレクションである。
今回の映画はそれほどマイナーではないようだが、「ナイロビの蜂」という映画だ。主にアフリカが舞台となるが、主人公はイギリスの外交官だ。
序盤でいきなりその奥さんが亡くなる。殺されたのだ。うぉー、重い。しかも、日本のドラマにありがちなドラマチック（安っぽいとも言える）なテーマ曲もなく、沈鬱でビート感のないBGMがむしろ虚無感を加速させる役割を担っているのである。
物語は前半、時系列を前後した回想シーンを断片的に連ねることによって、徐々に殺された妻の人物像が明かされていき、なぜ死に至ったのかが淡々と示されていく。
（俺が見た限りの俺の解釈だが）妻はNGOだかなんだかで活動していた、社会正義心が強い、行動力のある弁護士だったこと。そして、大手製薬会社とアフリカの政府高官との癒着を暴こうとしていたこと。それを夫に隠していたこと。リスクを冒してでもついに核心に迫ろうとしていたこと。
ここで演出が巧妙なのは、淡々とした映像であるにも関わらず、合間合間に程よく夫婦の甘い思い出を挿入したり、普遍だった妻の夫への強い愛を夫が気づく場面を紡ぐことで、観る者の「妻を失った悲しみ」を倍増させ、さらには、いわゆる「良い子ちゃん」な外交官だった彼が、物語後半で「思い切った行動」に出る強い動機付けとしていることだ。彼の「決意」を違和感なく受け入れられるのである。「なんでそーなるの？」と叫びたくなるような意味不明の行動をとる国内ドラマの主人公よりもはるかに感情移入が容易である。
後半に入ると、物語は急速にスピード感とスリル感、加えてスケール感が増していく。だが、過剰な演出をせず、淡々と映像を紡いでいく手法は不変である。これがこの映画のリアリティにつながっている。ここぞとばかりにタイアップ曲が大音量で挿入される「お前はプロモーションビデオか」と突っ込みたくなるようなドラマとは、根本的に表現したいものが違うのである。
彼は、命の危険に及ぶような妨害を受けつつも、一歩一歩、妻の足跡を辿るように核心へ近づいていく。そして、遂に彼は妻の最期の場所へと辿り着くのだ。
...最終的に、夫婦の当座の願いは成就する。
だが、この映画が最後に伝えた重要なメッセージは、彼らの直接の敵だった者達がその座を追われても、彼らが憂えた社会の構造は根本的にはほぼ不変であったことである。ある意味では彼らのストーリーが完結したことで観る者は溜飲を下げるし、最後まで決して汚されなかったものがあることで大きな救いともなる。しかし、彼らが夢見た世界が訪れたわけではないと示すことで、観た者には強烈なメッセージが残る。こうした社会的メッセージ色の強い映画においては難しいさじ加減であったろうが、十分納得のいく終幕だったように思う。
この点においても「社会問題に真っ向から取り組んだ」という宣伝文句とは裏腹に、単にそれが舞台装置としてしか機能しておらず、何一つメッセージを発信することのない日本のドラマに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいところだ。
まあ、たまには映画を観てみるものである。でもそれならばメッセージのある映画に限る。過剰な演出は御免被る。
ちょいと前の写真と同じ時の写真だが、一応本文に関連して。
(PentaxK10D, PentaxFA77mmLimited, ApertureValueMode, 1/500sec, F2.5, ISO100)
以前にも記した通り、俺は映画やドラマの類はほとんど観ない。それに対し、嫁さんは結構映画好きのようだ。ただし、夫婦は似るのか、メジャーどころよりも、単館上映しているようなマニアックな映画が好きなようだ。我が家のケーブルテレビの番組ガイドの裏には嫁さんの「これ録画してメモ」が赤ペンで書き込まれている。興味ある映画を見つけるとここに書いていくのだが、ほとんどは、映画に疎い俺が聞いたこともないようなものばかりだ。レコーダーの予約ができない（しようとしない）嫁さんに代わって、俺がせっせと予約をするわけである。
一方で、ドラマは結構ミーハー物好きのようだが、まあ、それも彼女の母や妹と文句を言い合うためのもののようだから、アマノジャッキーには違いあるまい。
それはともかくとして、単館上映しているようなマイナーな映画ということは、須らく地味で暗いものが多くなる。かなり重いテーマな物も多いのもあって、最初の方はのめり込まないようにライブの小道具の準備なんかしながら、というスタンスだった。
...でも、このような場合、大抵はそのスタンスを貫くことは難しいのである。なぜならそれらの作品は大概、地味なのにグイグイと観る者を引き込んでいく力があるからだ。恐るべし、嫁さんセレクションである。
今回の映画はそれほどマイナーではないようだが、「ナイロビの蜂」という映画だ。主にアフリカが舞台となるが、主人公はイギリスの外交官だ。
序盤でいきなりその奥さんが亡くなる。殺されたのだ。うぉー、重い。しかも、日本のドラマにありがちなドラマチック（安っぽいとも言える）なテーマ曲もなく、沈鬱でビート感のないBGMがむしろ虚無感を加速させる役割を担っているのである。
物語は前半、時系列を前後した回想シーンを断片的に連ねることによって、徐々に殺された妻の人物像が明かされていき、なぜ死に至ったのかが淡々と示されていく。
（俺が見た限りの俺の解釈だが）妻はNGOだかなんだかで活動していた、社会正義心が強い、行動力のある弁護士だったこと。そして、大手製薬会社とアフリカの政府高官との癒着を暴こうとしていたこと。それを夫に隠していたこと。リスクを冒してでもついに核心に迫ろうとしていたこと。
ここで演出が巧妙なのは、淡々とした映像であるにも関わらず、合間合間に程よく夫婦の甘い思い出を挿入したり、普遍だった妻の夫への強い愛を夫が気づく場面を紡ぐことで、観る者の「妻を失った悲しみ」を倍増させ、さらには、いわゆる「良い子ちゃん」な外交官だった彼が、物語後半で「思い切った行動」に出る強い動機付けとしていることだ。彼の「決意」を違和感なく受け入れられるのである。「なんでそーなるの？」と叫びたくなるような意味不明の行動をとる国内ドラマの主人公よりもはるかに感情移入が容易である。
後半に入ると、物語は急速にスピード感とスリル感、加えてスケール感が増していく。だが、過剰な演出をせず、淡々と映像を紡いでいく手法は不変である。これがこの映画のリアリティにつながっている。ここぞとばかりにタイアップ曲が大音量で挿入される「お前はプロモーションビデオか」と突っ込みたくなるようなドラマとは、根本的に表現したいものが違うのである。
彼は、命の危険に及ぶような妨害を受けつつも、一歩一歩、妻の足跡を辿るように核心へ近づいていく。そして、遂に彼は妻の最期の場所へと辿り着くのだ。
...最終的に、夫婦の当座の願いは成就する。
だが、この映画が最後に伝えた重要なメッセージは、彼らの直接の敵だった者達がその座を追われても、彼らが憂えた社会の構造は根本的にはほぼ不変であったことである。ある意味では彼らのストーリーが完結したことで観る者は溜飲を下げるし、最後まで決して汚されなかったものがあることで大きな救いともなる。しかし、彼らが夢見た世界が訪れたわけではないと示すことで、観た者には強烈なメッセージが残る。こうした社会的メッセージ色の強い映画においては難しいさじ加減であったろうが、十分納得のいく終幕だったように思う。
この点においても「社会問題に真っ向から取り組んだ」という宣伝文句とは裏腹に、単にそれが舞台装置としてしか機能しておらず、何一つメッセージを発信することのない日本のドラマに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいところだ。
まあ、たまには映画を観てみるものである。でもそれならばメッセージのある映画に限る。過剰な演出は御免被る。
nobilesの投稿(23:39:25-2008-07-25) -
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