NOBILES Days
Jump to navigationThe Peace And The War
そういえば...せっかく師匠が先日のライブの写真を寄せてくれたのに、メンバーには配ったものの自分があまり見ていなかった。
今回も素晴らしい出来映えである。
恒例のアレのシーンから。
恒例のアレ
(CanonEOS20D(85.0mm), ManualExposure, 1/160sec, F2.0, ISO800)
この年末、興味深い番組2つを見た。
一つはクリスマスイブに放映されたドラマで、太平洋戦争を始めた首相として認知されている東條英機をビートたけしが演じたものだ。
番組表のお隣では、昼の長寿バラエティ番組の特番で、共演者同士の物真似をして馬鹿騒ぎするという全く実のない番組をやっている中、あえてこうした重いテーマに真摯に取り組んだこの局の姿勢にはなかなか感心した。
もともとは予告編での、豪華な出演者陣の迫真の演技に興味を抱き、観るに至ったわけだが、前半がドキュメンタリー、後半がドラマという2部構成となっていた。
ドラマでは、初めて公開されるという彼の手記をもとに、東條が首相に就任する直前から、日本が太平洋戦争へと突入していくまでを描いている。
ヒトラー、ムッソリーニ、東條と並んで称されることもあるが、その実、彼の人物像は独裁者などでは全くなく、実直に自分の指名を全うしようとした努力人であったようだ。実際、ドラマでも戦争を回避したいという天皇の意向を受け、なんとか外交での打開策を図ろうとする姿が描かれていた。
しかしながら、統帥権を盾にあくまで戦争へ突っ走ろうとする、特に陸軍幕僚をコントロールすることができず、かといって、彼自身が内閣を総辞職すれば違う可能性があったのにそれをできなかった、彼の限界が描かれる。
もう一つは、そのビートたけしの番組に以前にも話題にしたあの元幕僚長がやってきてパネラー達と討論する番組だ。
そこで彼が話したことは大変興味深かった。
太平洋戦争での日本が正しかったとする彼の歴史観は、やはり俺には受け容れがたいものだが、しかしそれ以外の彼の主張はまた別の日記で俺が述べたことと極めて近いものだったからだ。
すなわち、今の自衛隊が置かれた極めて不自然で曖昧な立場。命を賭して危険な地域に派遣されて仕事をこなしたのに、それを賞賛されるどころか、政争の具にされてしまう状況。にも関わらず、政治は全くそれを改善しようとしない。それどころか、いわゆる制服組と言われている連中は商社と癒着して私服を肥やしていた（彼自身はそれをオブラートに包んでみせたが）。それをなんとか打破したいという彼の思いは良く分かった。
それでも、太平洋戦争を正当化することは得策とは思えない。あの時代の軍部と、現在の自衛隊には連続性はないし、思想的にはつながっていないこと、そしてそれが平和的思想に基づいていることを丁寧に説明しなければ他の国の理解は得られまい。
以前のエントリーでも書いたように、歴史は勝者の都合の良いように書き換えられ、事実と異なるかもしれない。
しかし、事実を追求するのは歴史家の仕事である。現在国際的に認知されている「歴史」を認識した上で物事にあたるのが、今日の世界を生きるグローバルに生きる人間の成すべきことであろう。
独りよがりの履き違えた「愛国心」は却って国益を損なう。「我々は正義だ」と声高に叫んで単独行動で突き進んだ超大国がその後陥った袋小路を見てみれば良い。
とは言え、実際に部隊を率いていた彼の言葉には考えさせられるものがあった。
実質的に軍隊である自衛隊を持ちながら、国際的な平和を維持するための活動に参加しないということが可能か？
残念ながら日本は米国に寄り添いすぎた。何より、それなりの力もある国際的なプレーヤーであるのに、貢献しないなどということはあり得ないのだ。
だから、そうした派遣をできるような法的な裏づけは早急にしなければならない。
その中で常に問題になるのが集団的自衛権の話だ。平和維持活動のために米軍と危険地域にいて、米軍が他の国家に攻撃されたら自衛隊はどうするのか。その国家の軍隊に攻撃できるか？
今の日本の憲法・法律ではできない。しかし、そこで討たずして米軍との同盟関係を保てるだろうか？討たなければ大いなる裏切りである。
自衛隊の活動の法律的裏づけを取ろうとすると、いずれ必ず、不戦主義を謳った第九条は壁として立ちはだかるのである。
彼がそこまで意識しての歴史観なのかは定かではなかったが、こうした不整合を取り払うには、第九条が生まれた経緯、つまり先の大戦での日本の行動が誤りではなかったとすることが第九条を改正させる早道と考えてもおかしくはない。少なくともそう考えている政治家は少なくないだろう。
だがそれこそ、事実と関係なく、自分達の都合のために歴史を書き換えることだと俺は思う。
第九条がある限り、自衛隊の存在はやはり極めて曖昧な立場であることは確かだ。しかし、第九条と先の大戦の反省と共に歩んだこの60年間は否定してはならない。非常に難しいハードルだが、第九条の平和の精神を受け継ぎつつ、自衛隊の存在と行動を法的に明確に規定することが急務であることは明白だ。
とは言え、それを作業するべき場が、あんな小学生の学級会以下のことやってるようでは、いつになることやら、だが。
もちろん、戦争は起こってはならないものだ。しかし、民族、宗教、そして利権がからまりあったこの世界では、先進国の側にいるこの国においてそれらと無縁でいるという理想論ばかりは語れない。その点においても、彼の意見と俺の意見は一致したのだった。違うのは歴史観だけであったのだ。
話を先のドラマに戻そう。
実に不勉強で恥じ入る次第なのだが、統帥権という言葉を初めて知った。
番組では、旧帝国憲法下においては作戦の遂行や兵力の移動に関する権限は統帥権の名の下に、内閣...つまりは首相や陸軍大臣の有する行政権からは独立していたとされた。だがどうも文献を読むと、この統帥権はそう単純なものではなく極めて解釈の難しい、議論の多々ある言葉のようだ。
帝国憲法そのものは決して統帥権の独立を謳うものではなく、本来、幕僚が決定した作戦は陸軍および海軍大臣を通し、総理大臣へと報告する義務があった。しかし、戦時の作戦の秘匿という名の下に、満州事変をきっかけとして、統帥権は独立しているという思想が軍部のみならず行政の上層部にさえも蔓延したという。
また、昭和5年のロンドン海軍軍縮条約への調印が政争の具とされ、そこに軍部がつけこみ、憲法上規定が曖昧だった軍の編成権と軍部のものとした。これが515事件にもつながり、政党政治の終焉にもつながったとされる。
もちろん、この時代の世界の状況というのもある。だから、あの戦争の原因は極めて複雑で有機的に様々な事象が絡み合っている。
そもそも、「統帥権の独立」という言葉だって、もともとは軍隊の中で、指示する政治家が違う部隊と部隊が分かれて内戦とならないようにという意図で謳われたものだというのだ。それが一部の人間の思い違い、解釈の違いから気がつけば一国の総理大臣ですらそれに囚われてしまう事態が起きた。
だから、今後日本が戦争へと突き進まない保証はどこにもないと思えた。
だからこそ、たとえそれが戦勝国による意図的なものであったとしても、ほとんど資料もない中で「日本は正しかった」などと思い込むことは極めて危険だと、改めて思ったのである。
今回も素晴らしい出来映えである。
恒例のアレのシーンから。
恒例のアレ
(CanonEOS20D(85.0mm), ManualExposure, 1/160sec, F2.0, ISO800)
この年末、興味深い番組2つを見た。
一つはクリスマスイブに放映されたドラマで、太平洋戦争を始めた首相として認知されている東條英機をビートたけしが演じたものだ。
番組表のお隣では、昼の長寿バラエティ番組の特番で、共演者同士の物真似をして馬鹿騒ぎするという全く実のない番組をやっている中、あえてこうした重いテーマに真摯に取り組んだこの局の姿勢にはなかなか感心した。
もともとは予告編での、豪華な出演者陣の迫真の演技に興味を抱き、観るに至ったわけだが、前半がドキュメンタリー、後半がドラマという2部構成となっていた。
ドラマでは、初めて公開されるという彼の手記をもとに、東條が首相に就任する直前から、日本が太平洋戦争へと突入していくまでを描いている。
ヒトラー、ムッソリーニ、東條と並んで称されることもあるが、その実、彼の人物像は独裁者などでは全くなく、実直に自分の指名を全うしようとした努力人であったようだ。実際、ドラマでも戦争を回避したいという天皇の意向を受け、なんとか外交での打開策を図ろうとする姿が描かれていた。
しかしながら、統帥権を盾にあくまで戦争へ突っ走ろうとする、特に陸軍幕僚をコントロールすることができず、かといって、彼自身が内閣を総辞職すれば違う可能性があったのにそれをできなかった、彼の限界が描かれる。
もう一つは、そのビートたけしの番組に以前にも話題にしたあの元幕僚長がやってきてパネラー達と討論する番組だ。
そこで彼が話したことは大変興味深かった。
太平洋戦争での日本が正しかったとする彼の歴史観は、やはり俺には受け容れがたいものだが、しかしそれ以外の彼の主張はまた別の日記で俺が述べたことと極めて近いものだったからだ。
すなわち、今の自衛隊が置かれた極めて不自然で曖昧な立場。命を賭して危険な地域に派遣されて仕事をこなしたのに、それを賞賛されるどころか、政争の具にされてしまう状況。にも関わらず、政治は全くそれを改善しようとしない。それどころか、いわゆる制服組と言われている連中は商社と癒着して私服を肥やしていた（彼自身はそれをオブラートに包んでみせたが）。それをなんとか打破したいという彼の思いは良く分かった。
それでも、太平洋戦争を正当化することは得策とは思えない。あの時代の軍部と、現在の自衛隊には連続性はないし、思想的にはつながっていないこと、そしてそれが平和的思想に基づいていることを丁寧に説明しなければ他の国の理解は得られまい。
以前のエントリーでも書いたように、歴史は勝者の都合の良いように書き換えられ、事実と異なるかもしれない。
しかし、事実を追求するのは歴史家の仕事である。現在国際的に認知されている「歴史」を認識した上で物事にあたるのが、今日の世界を生きるグローバルに生きる人間の成すべきことであろう。
独りよがりの履き違えた「愛国心」は却って国益を損なう。「我々は正義だ」と声高に叫んで単独行動で突き進んだ超大国がその後陥った袋小路を見てみれば良い。
とは言え、実際に部隊を率いていた彼の言葉には考えさせられるものがあった。
実質的に軍隊である自衛隊を持ちながら、国際的な平和を維持するための活動に参加しないということが可能か？
残念ながら日本は米国に寄り添いすぎた。何より、それなりの力もある国際的なプレーヤーであるのに、貢献しないなどということはあり得ないのだ。
だから、そうした派遣をできるような法的な裏づけは早急にしなければならない。
その中で常に問題になるのが集団的自衛権の話だ。平和維持活動のために米軍と危険地域にいて、米軍が他の国家に攻撃されたら自衛隊はどうするのか。その国家の軍隊に攻撃できるか？
今の日本の憲法・法律ではできない。しかし、そこで討たずして米軍との同盟関係を保てるだろうか？討たなければ大いなる裏切りである。
自衛隊の活動の法律的裏づけを取ろうとすると、いずれ必ず、不戦主義を謳った第九条は壁として立ちはだかるのである。
彼がそこまで意識しての歴史観なのかは定かではなかったが、こうした不整合を取り払うには、第九条が生まれた経緯、つまり先の大戦での日本の行動が誤りではなかったとすることが第九条を改正させる早道と考えてもおかしくはない。少なくともそう考えている政治家は少なくないだろう。
だがそれこそ、事実と関係なく、自分達の都合のために歴史を書き換えることだと俺は思う。
第九条がある限り、自衛隊の存在はやはり極めて曖昧な立場であることは確かだ。しかし、第九条と先の大戦の反省と共に歩んだこの60年間は否定してはならない。非常に難しいハードルだが、第九条の平和の精神を受け継ぎつつ、自衛隊の存在と行動を法的に明確に規定することが急務であることは明白だ。
とは言え、それを作業するべき場が、あんな小学生の学級会以下のことやってるようでは、いつになることやら、だが。
もちろん、戦争は起こってはならないものだ。しかし、民族、宗教、そして利権がからまりあったこの世界では、先進国の側にいるこの国においてそれらと無縁でいるという理想論ばかりは語れない。その点においても、彼の意見と俺の意見は一致したのだった。違うのは歴史観だけであったのだ。
話を先のドラマに戻そう。
実に不勉強で恥じ入る次第なのだが、統帥権という言葉を初めて知った。
番組では、旧帝国憲法下においては作戦の遂行や兵力の移動に関する権限は統帥権の名の下に、内閣...つまりは首相や陸軍大臣の有する行政権からは独立していたとされた。だがどうも文献を読むと、この統帥権はそう単純なものではなく極めて解釈の難しい、議論の多々ある言葉のようだ。
帝国憲法そのものは決して統帥権の独立を謳うものではなく、本来、幕僚が決定した作戦は陸軍および海軍大臣を通し、総理大臣へと報告する義務があった。しかし、戦時の作戦の秘匿という名の下に、満州事変をきっかけとして、統帥権は独立しているという思想が軍部のみならず行政の上層部にさえも蔓延したという。
また、昭和5年のロンドン海軍軍縮条約への調印が政争の具とされ、そこに軍部がつけこみ、憲法上規定が曖昧だった軍の編成権と軍部のものとした。これが515事件にもつながり、政党政治の終焉にもつながったとされる。
もちろん、この時代の世界の状況というのもある。だから、あの戦争の原因は極めて複雑で有機的に様々な事象が絡み合っている。
そもそも、「統帥権の独立」という言葉だって、もともとは軍隊の中で、指示する政治家が違う部隊と部隊が分かれて内戦とならないようにという意図で謳われたものだというのだ。それが一部の人間の思い違い、解釈の違いから気がつけば一国の総理大臣ですらそれに囚われてしまう事態が起きた。
だから、今後日本が戦争へと突き進まない保証はどこにもないと思えた。
だからこそ、たとえそれが戦勝国による意図的なものであったとしても、ほとんど資料もない中で「日本は正しかった」などと思い込むことは極めて危険だと、改めて思ったのである。
nobilesの投稿(00:50:38-2009-01-21) -
カテゴリ: Main
コメント
ぱれお wrote:
2009-01-28 00:05:55
nobiles wrote:
目先のことに囚われず、先のことを見据えて欲しいものです。
...もちろん、経営者もね！！！
...もちろん、経営者もね！！！
2009-01-28 00:35:55
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思想はいろんなのがあるのであえて肯定も否定もしないが、最近のテレビや国会は言葉尻を捉えて揚げ足取りをとるのが多くてなんかうんざりな感じ。
政治家なんて全くの聖人君子でなくても良いが、ちゃんとやることやってくれって感じ。