NOBILES Days
Jump to navigationThe Day (1)
この2,3日に起きた出来事の数々はこれまでの人生にはなかったことばかりで、なんて表現していいのか...気持ちが溢れている。
まあ、ここは時系列の順に行こう。
本編の内容が大分ハードなので、カピバラ親子でまずはお和みください
(PentaxK-7, PentaxDA55-300mmF4-5.8(107.5mm), ApertureValueMode, 1/160sec, F4.0, ISO800)
その日はあっけないほどにあっさりやってきた。
入院翌日。生涯初めての手術だ。目的は、膝蓋骨靭帯の縫合。靭帯が切れて曲げられなくなった膝を曲げられるようにすることだ。
前日の先生の説明によると、膝の皿は太ももの強靭な筋肉に支えられており、その靭帯は人体の中でも一番と言ってよいほど頑丈にできているとのことだった。そこが切れた。よっぽど力の入り方が悪かったとしか言えないようだ。
状態によっては糸や針金などで靭帯と骨を縫合すれば良いが、人工靭帯によって補強する必要もあるかもしれない。また、太ももの筋肉が強靭であるが故、ギブスを割ってリハビリで膝を曲げた瞬間、縫合した部分が再度切れる危険性もないとは言えないらしい。
入院は傷が安定する2週間が目処。ギブスは状態次第で1〜2ヶ月。そしてリハビリは固まった膝の関節を再び曲げるために非常に大変なものになる。聞けば聞くほど心に重しが乗っかっていく気分だ。
この日は術後の説明を聞くために嫁さんは夕方に来ることになっていた（子供がいるからおいそれと長時間外出するわけにはいかないのだ）。よって、13時開始の手術には付き添いもなく、一人出陣することになった。
一着700円程度もするTパンツと呼ばれる、ふんどしのようなパンツ（何しろオケケが横からもろにはみ出るくらい小さいのだ）に、病衣一枚を羽織り、看護士さんの押す車いすで手術室に入る。
まずは準備室のようなところでベッドに移る。その際、病衣もはぎ取られ、Tパンツ一枚となる。まさに裸一貫である。すぐに布みたいなのをかぶせてくれたけど。
そんなあられもない姿でベッドに横たわった俺に、重装備の手術着をまとった猛者達が容赦なく群がって作業を始める。
「ベッドの高さ上げますよー。こんなもんかな？」...高っ！
そこからガラガラと数名でベッドを押され、4部屋ほど並んだ手術室の一番手前に入っていく。目まぐるしい。その途中、前日に説明してくれた毛深い野人のような先生が声をかけてきたのが聞こえた。
「○○さん、人工靭帯がうまくハマれば3週間でギブスとれます......」
「なんか声が遠ざかってく感じねー」
ベッドを押している看護士さんが暢気にそんな声をかける。いやほんと、めまぐるしすぎて処理しきれないんですけど。
そして、またベッドから手術台へ移動することになるのだが...案の定ベッドが高くなりすぎていてすぐには移動できない。
「ほらぁ、やっぱり高過ぎじゃない」「まあ、それはミキティのやることだから」
重装備の猛者達も普通の人間なのだと、ちょっと安心するやら不安になるやらである。
そんなこんなでようやく手術台に乗ったところで視界をぐるりとする。壁から天井までは全て黄緑色で統一され、いかにも埃一つも許さないといった雰囲気だ。部屋の四隅は角ではなく斜めになっていて、まあ部屋が四角形に近い八角形になっていると思えばいいだろうか。どんな効果があるのか知らんけど。
そして俺の体の上には直径70cmはあろうかという巨大なライトが二つ、ごつい支柱にぶら下がり、俺の躯を照らし出そうと手ぐすね引いて待っているかのようだった。
その間にも、手術着の猛者達が群がってせっせと準備を進めていた。右腕には血圧計、胸には心電図の電極が当てがわれる。そしておもむろに、眼鏡に白髪まじりの貫禄たっぷりの男性が俺を覗き込んできた。彼が麻酔医のようだ。
これまでの猛者達の矢継ぎ早の話し方と違い、ゆっくり一つ一つ過去の麻酔経験などを訪ねる彼の話し方は、この人なら信頼できそうだ、と俺に思わせるには十分だった。
今回は足の手術ということで、麻酔は下半身麻酔で、脊椎に注射することになっていた。背中から注射なんてどれだけ痛いのだろうかと戦々恐々としていた。
背中から注射するため、麻酔医に向ける形で背中を丸める姿勢をとらされる。ほぼ丸裸の大の男が、重装備の人たちの中で（健康な）左足を抱えてエビのように丸くなっている姿は、客観的にみればさぞかし滑稽であったろう。ともかく、背中に一通り消毒され、いよいよ麻酔が打たれる。
あれっ？
意外なほど痛みはなく針が脊椎へ入ったようだ。
だが、そこから奥へとじんわり麻酔がしみ込んでいく感じは、どんよりと重い感じでとても気分が良いものとは言えなかった。
そして今度は眠るための薬が点滴される。下半身麻酔で済むとはいえ、手術の様子を患者がばっちり見聞きするのは、患者にとっても術者にとっても負担になるからだ。
その効き目は実に強力で、ブログのネタ探しにあんなに執心していたのに(えー？)、2,3分と経たないうちにあっさり俺の記憶は途切れた。
「終わりましたよ！」
俺の記憶が再開するのは、裸一貫でベッドを異常に高く上げられたあの手術準備室のようなところだった。
続く。
まあ、ここは時系列の順に行こう。
本編の内容が大分ハードなので、カピバラ親子でまずはお和みください
(PentaxK-7, PentaxDA55-300mmF4-5.8(107.5mm), ApertureValueMode, 1/160sec, F4.0, ISO800)
その日はあっけないほどにあっさりやってきた。
入院翌日。生涯初めての手術だ。目的は、膝蓋骨靭帯の縫合。靭帯が切れて曲げられなくなった膝を曲げられるようにすることだ。
前日の先生の説明によると、膝の皿は太ももの強靭な筋肉に支えられており、その靭帯は人体の中でも一番と言ってよいほど頑丈にできているとのことだった。そこが切れた。よっぽど力の入り方が悪かったとしか言えないようだ。
状態によっては糸や針金などで靭帯と骨を縫合すれば良いが、人工靭帯によって補強する必要もあるかもしれない。また、太ももの筋肉が強靭であるが故、ギブスを割ってリハビリで膝を曲げた瞬間、縫合した部分が再度切れる危険性もないとは言えないらしい。
入院は傷が安定する2週間が目処。ギブスは状態次第で1〜2ヶ月。そしてリハビリは固まった膝の関節を再び曲げるために非常に大変なものになる。聞けば聞くほど心に重しが乗っかっていく気分だ。
この日は術後の説明を聞くために嫁さんは夕方に来ることになっていた（子供がいるからおいそれと長時間外出するわけにはいかないのだ）。よって、13時開始の手術には付き添いもなく、一人出陣することになった。
一着700円程度もするTパンツと呼ばれる、ふんどしのようなパンツ（何しろオケケが横からもろにはみ出るくらい小さいのだ）に、病衣一枚を羽織り、看護士さんの押す車いすで手術室に入る。
まずは準備室のようなところでベッドに移る。その際、病衣もはぎ取られ、Tパンツ一枚となる。まさに裸一貫である。すぐに布みたいなのをかぶせてくれたけど。
そんなあられもない姿でベッドに横たわった俺に、重装備の手術着をまとった猛者達が容赦なく群がって作業を始める。
「ベッドの高さ上げますよー。こんなもんかな？」...高っ！
そこからガラガラと数名でベッドを押され、4部屋ほど並んだ手術室の一番手前に入っていく。目まぐるしい。その途中、前日に説明してくれた毛深い野人のような先生が声をかけてきたのが聞こえた。
「○○さん、人工靭帯がうまくハマれば3週間でギブスとれます......」
「なんか声が遠ざかってく感じねー」
ベッドを押している看護士さんが暢気にそんな声をかける。いやほんと、めまぐるしすぎて処理しきれないんですけど。
そして、またベッドから手術台へ移動することになるのだが...案の定ベッドが高くなりすぎていてすぐには移動できない。
「ほらぁ、やっぱり高過ぎじゃない」「まあ、それはミキティのやることだから」
重装備の猛者達も普通の人間なのだと、ちょっと安心するやら不安になるやらである。
そんなこんなでようやく手術台に乗ったところで視界をぐるりとする。壁から天井までは全て黄緑色で統一され、いかにも埃一つも許さないといった雰囲気だ。部屋の四隅は角ではなく斜めになっていて、まあ部屋が四角形に近い八角形になっていると思えばいいだろうか。どんな効果があるのか知らんけど。
そして俺の体の上には直径70cmはあろうかという巨大なライトが二つ、ごつい支柱にぶら下がり、俺の躯を照らし出そうと手ぐすね引いて待っているかのようだった。
その間にも、手術着の猛者達が群がってせっせと準備を進めていた。右腕には血圧計、胸には心電図の電極が当てがわれる。そしておもむろに、眼鏡に白髪まじりの貫禄たっぷりの男性が俺を覗き込んできた。彼が麻酔医のようだ。
これまでの猛者達の矢継ぎ早の話し方と違い、ゆっくり一つ一つ過去の麻酔経験などを訪ねる彼の話し方は、この人なら信頼できそうだ、と俺に思わせるには十分だった。
今回は足の手術ということで、麻酔は下半身麻酔で、脊椎に注射することになっていた。背中から注射なんてどれだけ痛いのだろうかと戦々恐々としていた。
背中から注射するため、麻酔医に向ける形で背中を丸める姿勢をとらされる。ほぼ丸裸の大の男が、重装備の人たちの中で（健康な）左足を抱えてエビのように丸くなっている姿は、客観的にみればさぞかし滑稽であったろう。ともかく、背中に一通り消毒され、いよいよ麻酔が打たれる。
あれっ？
意外なほど痛みはなく針が脊椎へ入ったようだ。
だが、そこから奥へとじんわり麻酔がしみ込んでいく感じは、どんよりと重い感じでとても気分が良いものとは言えなかった。
そして今度は眠るための薬が点滴される。下半身麻酔で済むとはいえ、手術の様子を患者がばっちり見聞きするのは、患者にとっても術者にとっても負担になるからだ。
その効き目は実に強力で、ブログのネタ探しにあんなに執心していたのに(えー？)、2,3分と経たないうちにあっさり俺の記憶は途切れた。
「終わりましたよ！」
俺の記憶が再開するのは、裸一貫でベッドを異常に高く上げられたあの手術準備室のようなところだった。
続く。
nobilesの投稿(21:18:34-2009-09-26) -
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