NOBILES Days
Jump to navigationHappy Birthday, Ms.Blue Sky
一年前のどんよりとした天気の朝、
君のママは、君がこの世に踏み出したいというサインを送っているのに気づいた。
それは、その扉を開く長い戦いの始まりでもあった。
いよいよその戦いが終盤に差し掛かり、僕がそれを見届けようと向かう時には、
どんよりとした雲が勢い良く去りつつあるその向こうに、
燃えるような夕焼けが輝いていたんだ。
静かで穏やかな夜。君はこの世界へと続く扉をついに開いた。
君と、君のママは戦いに打ち勝った。
そしてその夜が明けると、まるで染めあげたかのような美しい蒼い空が広がっていたんだ。
僕にはそれが君への祝福だとしか思えなかったんだ。
あれから一年が経った。
当初の予報では雨、前日の予報でも曇りか雨だった今日この日、
しかし明けてみればあの日と同じような青空が広がった。
病室からの青空は少し小さいが
(Apple iPhone3GS, 1/804sec, F2.8, ISO70)
誕生日。君の初めての誕生日だ。
そんな時に不甲斐なくも一緒に家にいることのできないこの僕に、ベビーカーで会いに来てくれる君。
その君のために、前日の大雨で濡れた道をお天道様がしっかり乾かしてくれた。
一年ぶりに繰り返そう。間違いなく、君は晴れ女だ。
そんなわけで、今日は入院以来初めて娘と対面した。
闘傷？記もまだまだ半ばで時系列が前後するが、このタイムリーな話を先にしよう。
まだ1歳を迎えたに過ぎない娘は、インフルエンザが蔓延する昨今、病院に入れるわけにはいかない。
だから、車を（法律上は可能だが道徳的に）運転できない嫁さんは、俺か嫁さんの両親が娘の世話をしに来てくれる時にしか見舞いに来れなかった。
だが、リハビリの過程で松葉杖もしっかり使えるようになった俺には、晴れて外出許可が下りるようになった。
娘の、しかも初めての誕生日というスペシャルデー。病院の前で待ち合わせ、近くのお店で食事を共にすることにしたのだ。
ずっと病衣かパジャマで過ごしたこの一週間、久々にジーンズに脚を（ギブスも無理矢理）通し、30分前にはばっちり準備万端整えていた。
最寄り駅に到着した旨連絡を受け、予め記入していた外出届をナースステーションに渡しに行くと、わらわらと看護士さん達（榮倉でもソニンでもオグシオでもない (^_^;。日勤なのでオバさんが多い）が寄って来て、「なに、向かいの喫茶店行くの？何もないよ、デニーズにしなよ。」「いや、あそこは坂の下だから大変よ、デパートにしなさいよ。」「そうよ、コムサのカフェならオシャレでランチもやってるわよ。」うーん、すげぇ迫力だぜ。でも、ありがたく参考にさせていただくことにする。
そうして病院の入り口に下りて行くと、既にチビな嫁がベビーカーにチビな娘を乗せて俺のことを待っていてくれた。
久々の娘との対面。むしゃぶりつきたい気分を必死で抑え、穏やかに話しかけてみる。いきなりビックリさせる行動をとって泣かれるのはイヤだもんね。さすがに一週間ぶりの対面なので、若干「なんだっけ？この人？」的な表情が胸に痛い。が、もともとすぐに愛想笑いをする子ではないので、そこは割り引いて考えることにした。
それよりも、この1週間で掛け値なしで一回り大きくなった気がして驚いた。
まあ、立ち話もなんなので早速移動することにする。
看護士さん達に不評の向いの喫茶店は、なんとまだ開店すらしていなかった。じゃあ、と（普通に）歩いて2,3分ほどのデパート内のカフェコムサを目指すことにした。
一週間ぶりのシャバの空気だぜ。そして、見事な秋晴れは、久方ぶりのこの目にはまばゆくすら感じられた。やはり、早く復帰したい。
が、少し現実も思い知ることになった。
理学療法士さんに高さも調整してもらい、練習してちょっと自信もついた松葉杖での歩行だったが、いざ道に出てみると歩道などにもアンジュレーション（うねり？）が結構あるのだ。非常に歩きにくい。これがもし車いすだったら、転倒する不安も感じたことだろう。
また、デパート内のスロープも、ベビーカーやトローリーを引いているわけでもない健常者が平気でスタスタと向こうから歩いてくる。肩幅より少し開いて突かなくてはならない松葉杖の先端を蹴られるのではないか、という不安に駆られた。
逆に言えば、障害者の方々は常にこういう不安と戦っているということだ。世の中、なんてアンチバリアフリーなんだろう、と自分が弱い立場になって初めて気づくのである。
5分ほどかけてようやくカフェコムサに辿り着く。
大分楽になったはずの松葉杖だが、やっぱり右足を常に少し上げて突かないような姿勢を保つのはかなり疲れる。歩きの虫のこの俺が、たったこれだけの距離に苦労するのだから滑稽だ。動かなくなれば片足でさえこんなに重いものなのか。五体満足とはいかに幸せなことだろうか。
そんな感慨は今は端に置いておこう。なんつったって愛する娘との1週間ぶりの対面なのだから。
オーダーをしてからすぐ、ベビーカーから娘を抱き上げると、食事の間から最後までずっと抱きっぱなしだった (^_^;。嗚呼親ばか。
食事は、パスタに、サラダ、ドリンク、ケーキのセットを頼んだ。何しろ病院食ばかりだったから、しっかりとした味付けのものは久々だ。大好きなペペロンチーノを堪能し、秋の果物（梨、いちじく、巨峰）満載のタルト、そして久々のコーヒーまでしっかり味わった。
最初はキョロキョロしたり、俺のTシャツのボタンを引っ張ったりしていた娘だが、俺がパスタに手をつける頃にはコックリコックリと居眠りを始める始末だった。この辺りも入院前と変わらぬマイペースぶりにホッとする。
起きたところで、嫁さんの持って来たパックの離乳食を食べさせてやる。久々の家族三人の時間とてもリラックスできた。
...ちなみにこの店は駅前のデパート内にあり、巨大なタワーマンションとも直結している。マンションは、そこそこ築年数もいっているのだが、今でも結構なお値段がしてセレブも数多く住んでいると聞く。
今回隣に座った、ママ友と思しき女性二人（聞き手側のママが赤ちゃん連れてた）の会話が、この地区の象徴なのか、と思って思わず聞き耳を立ててしまった。「やっぱりぃ、そこは国際結婚だからぁ」「あー、もう、ハイハイとかしちゃったらイタリアではどうなっちゃうだろぅ〜」「やっぱ、イタリア人の文化って違ってぇ」...あい、さいでっか。
再び、松葉杖を突き、ベビーカーを押す嫁さんとともに病院の前まで戻る。楽しい時間はあっという間に終わり。俺はまた隔離生活に戻り、嫁さんと娘はたった二人で自宅へと帰って行った。
こうして久々に娘と会い、下界に出て、ますます復帰への思いを強くした。そんな今日のリハビリはとても力が入ったものである。
さて、リハビリを終えて部屋に戻ると、（今後書くであろう入院記で改めて登場することになる）仲良くなった、俺の母親と同い年のご婦人が車いすで訪れて下さった。
「これね、娘さんに！」
まだ知り合ってから1週間も経っていないこの俺の娘の誕生日のために、わざわざプレゼントを用意して下さっていたのだ。
心温まるプレゼント
(Apple iPhone3GS, 1/60sec, F2.8, ISO86)
こうして怪我をしなければ会うことのなかったであろう人とのつながり。
...悪いことばかりじゃないな。秋晴れの青空はますます蒼を濃くしていた。
君のママは、君がこの世に踏み出したいというサインを送っているのに気づいた。
それは、その扉を開く長い戦いの始まりでもあった。
いよいよその戦いが終盤に差し掛かり、僕がそれを見届けようと向かう時には、
どんよりとした雲が勢い良く去りつつあるその向こうに、
燃えるような夕焼けが輝いていたんだ。
静かで穏やかな夜。君はこの世界へと続く扉をついに開いた。
君と、君のママは戦いに打ち勝った。
そしてその夜が明けると、まるで染めあげたかのような美しい蒼い空が広がっていたんだ。
僕にはそれが君への祝福だとしか思えなかったんだ。
あれから一年が経った。
当初の予報では雨、前日の予報でも曇りか雨だった今日この日、
しかし明けてみればあの日と同じような青空が広がった。
病室からの青空は少し小さいが
(Apple iPhone3GS, 1/804sec, F2.8, ISO70)
誕生日。君の初めての誕生日だ。
そんな時に不甲斐なくも一緒に家にいることのできないこの僕に、ベビーカーで会いに来てくれる君。
その君のために、前日の大雨で濡れた道をお天道様がしっかり乾かしてくれた。
一年ぶりに繰り返そう。間違いなく、君は晴れ女だ。
そんなわけで、今日は入院以来初めて娘と対面した。
闘傷？記もまだまだ半ばで時系列が前後するが、このタイムリーな話を先にしよう。
まだ1歳を迎えたに過ぎない娘は、インフルエンザが蔓延する昨今、病院に入れるわけにはいかない。
だから、車を（法律上は可能だが道徳的に）運転できない嫁さんは、俺か嫁さんの両親が娘の世話をしに来てくれる時にしか見舞いに来れなかった。
だが、リハビリの過程で松葉杖もしっかり使えるようになった俺には、晴れて外出許可が下りるようになった。
娘の、しかも初めての誕生日というスペシャルデー。病院の前で待ち合わせ、近くのお店で食事を共にすることにしたのだ。
ずっと病衣かパジャマで過ごしたこの一週間、久々にジーンズに脚を（ギブスも無理矢理）通し、30分前にはばっちり準備万端整えていた。
最寄り駅に到着した旨連絡を受け、予め記入していた外出届をナースステーションに渡しに行くと、わらわらと看護士さん達（榮倉でもソニンでもオグシオでもない (^_^;。日勤なのでオバさんが多い）が寄って来て、「なに、向かいの喫茶店行くの？何もないよ、デニーズにしなよ。」「いや、あそこは坂の下だから大変よ、デパートにしなさいよ。」「そうよ、コムサのカフェならオシャレでランチもやってるわよ。」うーん、すげぇ迫力だぜ。でも、ありがたく参考にさせていただくことにする。
そうして病院の入り口に下りて行くと、既にチビな嫁がベビーカーにチビな娘を乗せて俺のことを待っていてくれた。
久々の娘との対面。むしゃぶりつきたい気分を必死で抑え、穏やかに話しかけてみる。いきなりビックリさせる行動をとって泣かれるのはイヤだもんね。さすがに一週間ぶりの対面なので、若干「なんだっけ？この人？」的な表情が胸に痛い。が、もともとすぐに愛想笑いをする子ではないので、そこは割り引いて考えることにした。
それよりも、この1週間で掛け値なしで一回り大きくなった気がして驚いた。
まあ、立ち話もなんなので早速移動することにする。
看護士さん達に不評の向いの喫茶店は、なんとまだ開店すらしていなかった。じゃあ、と（普通に）歩いて2,3分ほどのデパート内のカフェコムサを目指すことにした。
一週間ぶりのシャバの空気だぜ。そして、見事な秋晴れは、久方ぶりのこの目にはまばゆくすら感じられた。やはり、早く復帰したい。
が、少し現実も思い知ることになった。
理学療法士さんに高さも調整してもらい、練習してちょっと自信もついた松葉杖での歩行だったが、いざ道に出てみると歩道などにもアンジュレーション（うねり？）が結構あるのだ。非常に歩きにくい。これがもし車いすだったら、転倒する不安も感じたことだろう。
また、デパート内のスロープも、ベビーカーやトローリーを引いているわけでもない健常者が平気でスタスタと向こうから歩いてくる。肩幅より少し開いて突かなくてはならない松葉杖の先端を蹴られるのではないか、という不安に駆られた。
逆に言えば、障害者の方々は常にこういう不安と戦っているということだ。世の中、なんてアンチバリアフリーなんだろう、と自分が弱い立場になって初めて気づくのである。
5分ほどかけてようやくカフェコムサに辿り着く。
大分楽になったはずの松葉杖だが、やっぱり右足を常に少し上げて突かないような姿勢を保つのはかなり疲れる。歩きの虫のこの俺が、たったこれだけの距離に苦労するのだから滑稽だ。動かなくなれば片足でさえこんなに重いものなのか。五体満足とはいかに幸せなことだろうか。
そんな感慨は今は端に置いておこう。なんつったって愛する娘との1週間ぶりの対面なのだから。
オーダーをしてからすぐ、ベビーカーから娘を抱き上げると、食事の間から最後までずっと抱きっぱなしだった (^_^;。嗚呼親ばか。
食事は、パスタに、サラダ、ドリンク、ケーキのセットを頼んだ。何しろ病院食ばかりだったから、しっかりとした味付けのものは久々だ。大好きなペペロンチーノを堪能し、秋の果物（梨、いちじく、巨峰）満載のタルト、そして久々のコーヒーまでしっかり味わった。
最初はキョロキョロしたり、俺のTシャツのボタンを引っ張ったりしていた娘だが、俺がパスタに手をつける頃にはコックリコックリと居眠りを始める始末だった。この辺りも入院前と変わらぬマイペースぶりにホッとする。
起きたところで、嫁さんの持って来たパックの離乳食を食べさせてやる。久々の家族三人の時間とてもリラックスできた。
...ちなみにこの店は駅前のデパート内にあり、巨大なタワーマンションとも直結している。マンションは、そこそこ築年数もいっているのだが、今でも結構なお値段がしてセレブも数多く住んでいると聞く。
今回隣に座った、ママ友と思しき女性二人（聞き手側のママが赤ちゃん連れてた）の会話が、この地区の象徴なのか、と思って思わず聞き耳を立ててしまった。「やっぱりぃ、そこは国際結婚だからぁ」「あー、もう、ハイハイとかしちゃったらイタリアではどうなっちゃうだろぅ〜」「やっぱ、イタリア人の文化って違ってぇ」...あい、さいでっか。
再び、松葉杖を突き、ベビーカーを押す嫁さんとともに病院の前まで戻る。楽しい時間はあっという間に終わり。俺はまた隔離生活に戻り、嫁さんと娘はたった二人で自宅へと帰って行った。
こうして久々に娘と会い、下界に出て、ますます復帰への思いを強くした。そんな今日のリハビリはとても力が入ったものである。
さて、リハビリを終えて部屋に戻ると、（今後書くであろう入院記で改めて登場することになる）仲良くなった、俺の母親と同い年のご婦人が車いすで訪れて下さった。
「これね、娘さんに！」
まだ知り合ってから1週間も経っていないこの俺の娘の誕生日のために、わざわざプレゼントを用意して下さっていたのだ。
心温まるプレゼント
(Apple iPhone3GS, 1/60sec, F2.8, ISO86)
こうして怪我をしなければ会うことのなかったであろう人とのつながり。
...悪いことばかりじゃないな。秋晴れの青空はますます蒼を濃くしていた。
nobilesの投稿(19:12:55-2009-10-01) -
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