NOBILES Days
Jump to navigationCatastrophe Vol.5
悲しみだけが日本を覆った日から2週間が経って、新たに一歩を踏み出す動きも見られるようになってきた昨今。俺の周囲にも大きな喜ぶべきニュースがあった。
嫁さんの妹と、俺の妹が1日違いで相次いで出産した。いずれも女の子で、母子ともに健康だということだ。
新しい家族が増えるのはこの上なく幸せなことだ。こんな困難な時期に生まれたわけだが、一緒に頑張れるメンバーが増えたとも言える。
俺の妹も、出産後の最初のメールでこう言った。
「守るべきものができるって、すごく幸せなことだね」
実は俺の嫁さんも既に産休に入った。
あと2ヶ月もしないうちに我が家にも新しい家族が増える。守るべき大切なものが、また一つ、増える。楽しみだ。
さて、震災当日ドキュメンタリーの続きだ。
The Shadow
(PentaxK-7, PentaxDA55-300mmF4-5.8(62.5mm), 1/400sec, F5.6, ISO100)
席に戻ると、さっき連絡した友人から着信があったのに気づいた。しまった、せっかくこの携帯壊滅状況の中で電話が繋がったのに！
すぐにかけ直すがやっぱりなかなか繋がらない。a社のノーマル携帯でだめなのでiPhoneでも試すが、さらにお話にならない。発信さえできない。
それでも試すこと数回でつながった（もちろんa社）。間もなく家に着くので、向かってくれとのことだった。
よし。じゃあもらったばかりの非常食を土産に向かうことにしよう。
フリーズドライを作り始めた同僚達（出来上がりに30分もかかるらしい）に挨拶して退出することを告げると、皆ちょっと寂しそうだった。それはそうだ。戦友が帰任してしまうようなものだ。
ちょっと後ろ髪は引かれたが、宿主である旧友とゆっくり語りたくもあり、身支度を整えて会社を出た。
その友人は15kmばかり大通りを歩いてきたが、かなり人が多かったと言っていた。
が、俺は必殺iPhoneのGoogle Mapsで、彼の家までほぼ一直線の細い道を通って行ったので、至って静かだった。コンビニや食事の店も穏やかに営業していて、とても異常事態が起きているとは信じられなかった。
20分強歩いて旧友のマンションにたどり着いた。
インターフォンで呼び出すと
「あれっ、もう着いたの？」
...すんません、超早足なんでね。
玄関に通されると、目の前に熱帯魚の水槽があった。が、地震でもほとんどこぼれなかったという。
彼も着いたばかりだというが、ザッと見て実害はほとんどないと言っていた。さすが最新鋭マンション。...築18年の我が家はどうなっているだろうか。
幸い、家は嫁さんの実家のすぐ近くだ。多分少しは確認してくれているだろう。友人宅に着いた報告代わりに嫁さんに電話し、何か聞いていないか尋ねると、2階のタンスがいくつか開いてしまい、多少散乱していたそうだが、ザッと見た感じでは大物は大丈夫そうだ、とお義父さんが言っていたという。
思ったよりも大きな被害はなさそうで少しホッとした。
前回述べた通り、彼の嫁さんと2歳の息子さんは、幸運にも島根に里帰りしていて地震には遭わずに済んだ。
つまり、野郎2人というわけだ。せっかく家にたどり着いたものの、地震で妙なテンションだったし、それぞれの持ち寄ったカップラーメンに、俺が持って来た牛肉の缶詰、そして彼の家にあった割といいワインという意味の分からん取り合わせで晩酌を始めた。
が、肴は最悪のものだった。
まだ新しいSONYの40インチテレビに映し出される光景は、現実とは信じ難いものだった。
海岸線に沿って飛ぶヘリからの映像は、それを追い越すようにして陸地に迫る巨大な波を捉えていた。
うねる波が有無を言わさぬかのように、車も、船も、家も、何もかもを巻き込んでその渦の一部へと変えていく。
映像が切り替わる。今度は夜の映像だ。
漆黒の海のそばで、いくつもの炎が立ち上がり、狼煙のように狂おしく煙が立ち上がっている。
極めて非現実的な映像であるため、大きさの感覚が分からないほどだ。しかし、間違いなくそこには人々の生活の場が存在していたであろうことは想像に難くなかった。
これらの映像を野郎二人組で見たことはある意味幸いだったかもしれない。
もちろん、コトの重大さは理解してはいるし、重い空気にはなるが、ちょっと騒ぎながら見ることで、少し和らいで受け止めることができた気がする。
ありがたいことに、暖かい風呂をご馳走になり、布団で寝る。このことの尊さが身に染みる。嫁さんや同僚たちは、本来人が泊まることを想定して作られていないオフィスで世を明かさなければならないのだ。まして、被災地の人々は...。
そんなことが頭を駆け巡ったが、いろいろあって疲れたことと、安堵感が勝り、やがて眠りに落ちた。
つづく？
嫁さんの妹と、俺の妹が1日違いで相次いで出産した。いずれも女の子で、母子ともに健康だということだ。
新しい家族が増えるのはこの上なく幸せなことだ。こんな困難な時期に生まれたわけだが、一緒に頑張れるメンバーが増えたとも言える。
俺の妹も、出産後の最初のメールでこう言った。
「守るべきものができるって、すごく幸せなことだね」
実は俺の嫁さんも既に産休に入った。
あと2ヶ月もしないうちに我が家にも新しい家族が増える。守るべき大切なものが、また一つ、増える。楽しみだ。
さて、震災当日ドキュメンタリーの続きだ。
The Shadow
(PentaxK-7, PentaxDA55-300mmF4-5.8(62.5mm), 1/400sec, F5.6, ISO100)
席に戻ると、さっき連絡した友人から着信があったのに気づいた。しまった、せっかくこの携帯壊滅状況の中で電話が繋がったのに！
すぐにかけ直すがやっぱりなかなか繋がらない。a社のノーマル携帯でだめなのでiPhoneでも試すが、さらにお話にならない。発信さえできない。
それでも試すこと数回でつながった（もちろんa社）。間もなく家に着くので、向かってくれとのことだった。
よし。じゃあもらったばかりの非常食を土産に向かうことにしよう。
フリーズドライを作り始めた同僚達（出来上がりに30分もかかるらしい）に挨拶して退出することを告げると、皆ちょっと寂しそうだった。それはそうだ。戦友が帰任してしまうようなものだ。
ちょっと後ろ髪は引かれたが、宿主である旧友とゆっくり語りたくもあり、身支度を整えて会社を出た。
その友人は15kmばかり大通りを歩いてきたが、かなり人が多かったと言っていた。
が、俺は必殺iPhoneのGoogle Mapsで、彼の家までほぼ一直線の細い道を通って行ったので、至って静かだった。コンビニや食事の店も穏やかに営業していて、とても異常事態が起きているとは信じられなかった。
20分強歩いて旧友のマンションにたどり着いた。
インターフォンで呼び出すと
「あれっ、もう着いたの？」
...すんません、超早足なんでね。
玄関に通されると、目の前に熱帯魚の水槽があった。が、地震でもほとんどこぼれなかったという。
彼も着いたばかりだというが、ザッと見て実害はほとんどないと言っていた。さすが最新鋭マンション。...築18年の我が家はどうなっているだろうか。
幸い、家は嫁さんの実家のすぐ近くだ。多分少しは確認してくれているだろう。友人宅に着いた報告代わりに嫁さんに電話し、何か聞いていないか尋ねると、2階のタンスがいくつか開いてしまい、多少散乱していたそうだが、ザッと見た感じでは大物は大丈夫そうだ、とお義父さんが言っていたという。
思ったよりも大きな被害はなさそうで少しホッとした。
前回述べた通り、彼の嫁さんと2歳の息子さんは、幸運にも島根に里帰りしていて地震には遭わずに済んだ。
つまり、野郎2人というわけだ。せっかく家にたどり着いたものの、地震で妙なテンションだったし、それぞれの持ち寄ったカップラーメンに、俺が持って来た牛肉の缶詰、そして彼の家にあった割といいワインという意味の分からん取り合わせで晩酌を始めた。
が、肴は最悪のものだった。
まだ新しいSONYの40インチテレビに映し出される光景は、現実とは信じ難いものだった。
海岸線に沿って飛ぶヘリからの映像は、それを追い越すようにして陸地に迫る巨大な波を捉えていた。
うねる波が有無を言わさぬかのように、車も、船も、家も、何もかもを巻き込んでその渦の一部へと変えていく。
映像が切り替わる。今度は夜の映像だ。
漆黒の海のそばで、いくつもの炎が立ち上がり、狼煙のように狂おしく煙が立ち上がっている。
極めて非現実的な映像であるため、大きさの感覚が分からないほどだ。しかし、間違いなくそこには人々の生活の場が存在していたであろうことは想像に難くなかった。
これらの映像を野郎二人組で見たことはある意味幸いだったかもしれない。
もちろん、コトの重大さは理解してはいるし、重い空気にはなるが、ちょっと騒ぎながら見ることで、少し和らいで受け止めることができた気がする。
ありがたいことに、暖かい風呂をご馳走になり、布団で寝る。このことの尊さが身に染みる。嫁さんや同僚たちは、本来人が泊まることを想定して作られていないオフィスで世を明かさなければならないのだ。まして、被災地の人々は...。
そんなことが頭を駆け巡ったが、いろいろあって疲れたことと、安堵感が勝り、やがて眠りに落ちた。
つづく？
nobilesの投稿(23:22:01-2011-03-28) -
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