NOBILES Days
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先週某日、1人はるばる埼玉北部へ出張した。
内陸で、夏に気温が高くなることが全国的に話題になる地域だ。前日の予報でも熱中症に注意、なんて聞いた。が、曇りがちだったからか、そう大したことはなかった。
それよりも、自宅近くから大都心までの電車が、車両点検やらで10分くらい遅れた。それでも、乗り換えを効率良くやって主張先への電車は予定通りに乗れた。と、ホッとしたのもつかの間だった。今度はその電車も別要因でジリジリと遅れ始めて、最終的には20分くらい遅れやがった。信じらんねー！
完全にマージン食い潰したが、幸い、出席する会議の開始前に到着できた。
キックオフ的なものだったこともあり、会議はさっくり終わった。そのあと、担当者を呼び止めて確認事項をさらった。前日に結構な時間を割いて準備して行ったので、だいたい片付けられた。大満足だ。
考えてみれば俺にとって、1人きりの出張って、恥ずかしながらほぼ初めてだったのではなかろうか。
前職時代の出張なんて、たいてい一緒に先輩がついていたし、割と急に命じられたのもあって「行きゃなんとかなる」「先輩もいるし」という調子で、まったく主体的じゃなかった。
前職を悪く言ってるんじゃないよ。俺の問題だ。そして前職のままだったら、程度の差はあれ俺自身はずっと受け身で変わらなかっただろう。
俺がF-1に初めて興味を持ったキッカケとなったものは、今も手元に残っている。いや違う、意識してしっかり「残してある」。
それは、くもん出版が発行していた「コペル21」という、子ども向けの科学雑誌だった。当時くもんに通っていた関係で親がとってくれるようになったんだろう。
「F1がやってくる！」は、その1987年11月号の巻頭特集だった。
それまでも、F-1のイメージみたいなものは持っていたが、具体的に競技として意識したのはおそらくこの記事を見た時が最初だったと思う。
「コペル21」1987年11月号 F-1特集
記念すべきこの雑誌は未だに俺の本棚のF-1コーナーにしっかりと並んでいる。先日なんとなく、久々にこれを出して開いてみた。
すると目次のところに、記入しながら投函しなかったアンケートハガキが、切り離されずについたままになっていた。その「もっとも印象に残った記事」欄には、子どもの頃の俺のきったねぇ字でこう書いてあった。
「5〜6ページのF-1のスタートの写真がすごかった」
俺が「イッちゃう」くらいF-1にハマるのは、この2年後の「セナの衝撃」を待たねばならないが、既にこの時、かなり興味は持っていたことが分かる。
どれ、そのF-1のスタートの写真とやらを見てやろう、とページをめくる。
キャメルイエローのロータスがホールショットを決め、キヤノンのロゴが目立つウィリアムズ2台が後に続く。そして、マルボロの白赤のマクラーレンが隙を伺う。'87年のF-1シーンお馴染みのシーンである。たしかに、テンション上がる写真だ。
しかし、その写真に入っていたキャプションを見て俺は速攻「おい！」とツッコミを入れた。
キャプションにはこう書いてあった。
「第5戦デトロイトグランプリのスタート。ポールポジションはセナが獲得。」
俺の脳内F-1データベースは、「1987年にセナがボールポジションを獲得したのは、サンマリノGPだけである」と回答していた。デトロイトで行われたU.S.グランプリでは、優勝はしたがポールはとっていない。
では、どこのグランプリのスタートシーンなのか、一瞬にしてサーチモードに入る。
ポールを獲ったサンマリノか？
いや、ロータス99Tのサイドポンツーン上のターボ吸気用のシュノーケルが低く角張った形状をしている。これは99T中期型以降の特徴だから序盤戦のサンマリノGPではない。この仕様は、まさにデトロイトから投入された。
だが、市街地サーキットであるデトロイトと言いながら、コース脇にグリーンゾーンがある時点でおかしい。
1000馬力と言われたターボ全盛の時代に、ウィングもあまり立てていないのも低速の市街地コースらしくない。パワーに任せて、ウィングを「ついたて」並みにおっ立ててダウンフォースを力づくで得るのがターボ時代の特徴だ。この写真の各マシンは、市街地仕様どころか、明らかに高速コース仕様だ。
あれ？キャメルタバコのロゴがLOTUSになっている（それ、ターボのシュノーケルよりも、ウィングのセッティングよりも気づくの後 (^_^;？？？）。
'87年にタバコ広告に規制があったのはイギリスかドイツの二択である。っていうか、先にタバコロゴに気づいてたらシュノーケルもウィングも気づく必要なくないか (^_^;？
イギリスGPのシルバーストーンも、ドイツGPのホッケンハイムリンクも、現在とは大きくレイアウトが異なり、超高速サーキットだった。なので、ウィングの空力セッティングとも合致する。
しかし、この年のイギリスGPは、スタートからピケとマンセルのシビアなマッチレースが展開され、セナの入り込む余地はなかったはずだ。
...なるほど、ドイツGPホッケンハイムリンクか（2秒）。
そう結論づけて、おもむろに本棚から「F-1全史1986-1990」を取り出すと、1987年のドイツGPのリザルトを開く。
予選1位：マンセル、2位：セナ
なるほどなるほど、2位でイン側スタートのセナがホールショットを奪い、ポールでアウト側スタートのマンセルを抜いたというのがこの写真というわけか。以降のドライバー達の順序も予選結果と符合する。
ビンゴ。コペル21に掲載されたスタート写真は1987年ドイツGPのもので間違いなさそうだ。
そこまで思い至って俺はハッとした。
「私は、母親を殺してしまった」
大げさ？でも俺は、俺をF-1という深淵なるエンターテイメントへ誘ってくれた記事、まさにそのものの誤情報を、25年ぶりにバッサリ切ってしまったのだ。なんだか妙に感慨深かった。
ちなみにこのセリフは、実は1951年のイギリスGPでエンツォ・フェラーリが言ったと言われるものだ。
このレースで、自ら興したフェラーリチームのF-1マシンが、かつて自身がリーダーとして率いた最強アルファロメオを打ち破って初優勝を達成した。
この年をもってアルファロメオはF-1を撤退し、フェラーリはF-1の盟主として駆け上がっていくことになるわけだ。
内陸で、夏に気温が高くなることが全国的に話題になる地域だ。前日の予報でも熱中症に注意、なんて聞いた。が、曇りがちだったからか、そう大したことはなかった。
それよりも、自宅近くから大都心までの電車が、車両点検やらで10分くらい遅れた。それでも、乗り換えを効率良くやって主張先への電車は予定通りに乗れた。と、ホッとしたのもつかの間だった。今度はその電車も別要因でジリジリと遅れ始めて、最終的には20分くらい遅れやがった。信じらんねー！
完全にマージン食い潰したが、幸い、出席する会議の開始前に到着できた。
キックオフ的なものだったこともあり、会議はさっくり終わった。そのあと、担当者を呼び止めて確認事項をさらった。前日に結構な時間を割いて準備して行ったので、だいたい片付けられた。大満足だ。
考えてみれば俺にとって、1人きりの出張って、恥ずかしながらほぼ初めてだったのではなかろうか。
前職時代の出張なんて、たいてい一緒に先輩がついていたし、割と急に命じられたのもあって「行きゃなんとかなる」「先輩もいるし」という調子で、まったく主体的じゃなかった。
前職を悪く言ってるんじゃないよ。俺の問題だ。そして前職のままだったら、程度の差はあれ俺自身はずっと受け身で変わらなかっただろう。
俺がF-1に初めて興味を持ったキッカケとなったものは、今も手元に残っている。いや違う、意識してしっかり「残してある」。
それは、くもん出版が発行していた「コペル21」という、子ども向けの科学雑誌だった。当時くもんに通っていた関係で親がとってくれるようになったんだろう。
「F1がやってくる！」は、その1987年11月号の巻頭特集だった。
それまでも、F-1のイメージみたいなものは持っていたが、具体的に競技として意識したのはおそらくこの記事を見た時が最初だったと思う。
「コペル21」1987年11月号 F-1特集
記念すべきこの雑誌は未だに俺の本棚のF-1コーナーにしっかりと並んでいる。先日なんとなく、久々にこれを出して開いてみた。
すると目次のところに、記入しながら投函しなかったアンケートハガキが、切り離されずについたままになっていた。その「もっとも印象に残った記事」欄には、子どもの頃の俺のきったねぇ字でこう書いてあった。
「5〜6ページのF-1のスタートの写真がすごかった」
俺が「イッちゃう」くらいF-1にハマるのは、この2年後の「セナの衝撃」を待たねばならないが、既にこの時、かなり興味は持っていたことが分かる。
どれ、そのF-1のスタートの写真とやらを見てやろう、とページをめくる。
キャメルイエローのロータスがホールショットを決め、キヤノンのロゴが目立つウィリアムズ2台が後に続く。そして、マルボロの白赤のマクラーレンが隙を伺う。'87年のF-1シーンお馴染みのシーンである。たしかに、テンション上がる写真だ。
しかし、その写真に入っていたキャプションを見て俺は速攻「おい！」とツッコミを入れた。
キャプションにはこう書いてあった。
「第5戦デトロイトグランプリのスタート。ポールポジションはセナが獲得。」
俺の脳内F-1データベースは、「1987年にセナがボールポジションを獲得したのは、サンマリノGPだけである」と回答していた。デトロイトで行われたU.S.グランプリでは、優勝はしたがポールはとっていない。
では、どこのグランプリのスタートシーンなのか、一瞬にしてサーチモードに入る。
ポールを獲ったサンマリノか？
いや、ロータス99Tのサイドポンツーン上のターボ吸気用のシュノーケルが低く角張った形状をしている。これは99T中期型以降の特徴だから序盤戦のサンマリノGPではない。この仕様は、まさにデトロイトから投入された。
だが、市街地サーキットであるデトロイトと言いながら、コース脇にグリーンゾーンがある時点でおかしい。
1000馬力と言われたターボ全盛の時代に、ウィングもあまり立てていないのも低速の市街地コースらしくない。パワーに任せて、ウィングを「ついたて」並みにおっ立ててダウンフォースを力づくで得るのがターボ時代の特徴だ。この写真の各マシンは、市街地仕様どころか、明らかに高速コース仕様だ。
あれ？キャメルタバコのロゴがLOTUSになっている（それ、ターボのシュノーケルよりも、ウィングのセッティングよりも気づくの後 (^_^;？？？）。
'87年にタバコ広告に規制があったのはイギリスかドイツの二択である。っていうか、先にタバコロゴに気づいてたらシュノーケルもウィングも気づく必要なくないか (^_^;？
イギリスGPのシルバーストーンも、ドイツGPのホッケンハイムリンクも、現在とは大きくレイアウトが異なり、超高速サーキットだった。なので、ウィングの空力セッティングとも合致する。
しかし、この年のイギリスGPは、スタートからピケとマンセルのシビアなマッチレースが展開され、セナの入り込む余地はなかったはずだ。
...なるほど、ドイツGPホッケンハイムリンクか（2秒）。
そう結論づけて、おもむろに本棚から「F-1全史1986-1990」を取り出すと、1987年のドイツGPのリザルトを開く。
予選1位：マンセル、2位：セナ
なるほどなるほど、2位でイン側スタートのセナがホールショットを奪い、ポールでアウト側スタートのマンセルを抜いたというのがこの写真というわけか。以降のドライバー達の順序も予選結果と符合する。
ビンゴ。コペル21に掲載されたスタート写真は1987年ドイツGPのもので間違いなさそうだ。
そこまで思い至って俺はハッとした。
「私は、母親を殺してしまった」
大げさ？でも俺は、俺をF-1という深淵なるエンターテイメントへ誘ってくれた記事、まさにそのものの誤情報を、25年ぶりにバッサリ切ってしまったのだ。なんだか妙に感慨深かった。
ちなみにこのセリフは、実は1951年のイギリスGPでエンツォ・フェラーリが言ったと言われるものだ。
このレースで、自ら興したフェラーリチームのF-1マシンが、かつて自身がリーダーとして率いた最強アルファロメオを打ち破って初優勝を達成した。
この年をもってアルファロメオはF-1を撤退し、フェラーリはF-1の盟主として駆け上がっていくことになるわけだ。
nobilesの投稿(23:47:22-2012-05-20) -
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