NOBILES Days
Jump to navigationThe elevation before the beginning of F-1 season
インターネットが普及してからというもの、ニューマシンが発表されるや数時間経てば、F-1ニュースサイトでその写真や動画を見れるようになった。昔なんて...たとえば俺が中学生の時なんかは、速報誌なんかが出る日に、夜抜け出してコンビニ行って買ったり、立ち読みしたもんだ。
'92年の4月号をよく覚えている。旧型MP4/6の改良型で開幕戦を惨敗したマクラーレンが、新型MP4/7Aをシルバーストーンを走らせた記事だ。MP4/6の前時代的なオス型モノコックから細身のメス型モノコックになった外見の変化に加え、その記事に書かれた「フライバイワイヤ」という聞き慣れない言葉に、新時代の到来を感じて心が躍ったもんだ。その後のブラジルGPでのグダグダぶりを見てズッコケるわけだが。
2000年ごろにはインターネットのF-1ニュースも当たり前になったけど、当初は画像の解像度が低かった。それを必死に脳内補完して形状を推測して設計の狙いを探ったりしたよなあ。翻って現代は高解像度の画像も得られるし、HD動画も珍しくない。いい時代にはなったけど、かつてのあのドキドキ感、焦らされ感がなくなったことはちょっと寂しくもあるかな。
Grandprix Special Apr.1992
もちろん、まだ現存しますよ。あまりに読み過ぎて表紙ぼろぼろだけどね。
さて、2014年シーズンを戦うF-1マシンが出揃った。
今シーズンは技術的に大きな変革の年である。8年間続いた排気量2.4リットルV型8気筒自然吸気エンジン時代が終わり、同1.6リットルV型6気筒ターボエンジンとなる。しかも、ERSという複雑なエネルギー回生システムも導入された。昨年までのKERSとは比較にならないほど大掛かりなものだ。つまり、エンジン...というより「パワーユニット」の実力がレースの行方を大きく左右する可能性があるということだ。だから、「F-1は走る実験室」とするホンダも来シーズンからの復帰を決めたわけだ。
ところが1月末に相次いだ新車発表では、そうした車の根本部分ではなく、車体の先端に注目が集まってしまった。多くのチームが、本来のノーズと思われるところから前方に向かって、細いくちばしのような構造物を垂れ下げたような形状を採用してきたのだ。その見た目から、「アリクイノーズ」などと揶揄されている。ロータスにいたっては、まるで牙のように2本飛び出ている。
これは言うまでもなく、レギュレーション変更が影響している。昨年までの超ハイノーズでは、他車と接触した場合に深刻な事態を招きかねなかった。
これは、2010年ヨーロッパGPでのウェバーとコバライネンの事故が典型と言われる。ウェバーのレッドブルRB6のハイノーズがコバライネンのロータスT127のリヤタイヤに乗り上げた結果、ウェバーのマシンは上空へ跳ね上げられた。幸いウェバーのレッドブルはボトム側から着地した。そのおかげでウェバーも無事だったが、極めて危険なクラッシュだった。
こうした事故を防ぐため、FIAはノーズを低くするレギュレーション変更を行った。
だが、ノーズ先端部分に関する寸法規制は、「ノーズ先端から50mm後方の位置で断面積が9000mm2なければならない」という文言だった。9000mm2と言うとエラく大きいように聞こえるが、10cm×9cmだ。大きめのスマートフォンサイズの平面を規定の低い位置...断面の中心が基準面から185mm...に作れば、残りの部分は高く成形しても違反にならない。これが、アリクイノーズ誕生の秘密である。ええと、詳しく言うとノーズの長さやらいろいろあるけど割愛していい？（誰に？ (^_^;）
こうしたレギュレーションができると、F-1マシンデザイナー達は、規則の裏をかいて、なんとか以前と同じ効果を得ようと頭を捻ってくる。
たとえば'83年のフラットボトム規制では、ブラバムBT52のアローシェイプが生まれた。これはポンツーンを極力短くして、空気抵抗を減らしてウィングを生かす狙いだった。しかし翌年以降はロータス94Tが採用したディフューザーが主流になっていった。これは、ポンツーンが長くても抵抗になるどころか強大なダウンフォースを生んだ。補機類がかさばるターボ時代にもマッチしていた。
近年では、'09年の大幅なディフューザー容積削減に対し、ブラウンBGP001などのマルチディフューザーが生まれたが、'10年にそれが禁止されるや、その'10年のうちにレッドブルRB6が先鞭をつけたエキゾーストブローが主役になった。エンジン点火タイミングを制御して排気を空力に積極的に利用するというもので、'13年後半戦のフェッテル9連勝を演出した。
さて今回'14年のノーズ寸法規制下ではアリクイノーズが主流であるが、フェラーリやメルセデス、ロータスらは違うソリューションを用いた。確かに、余計な突起で空気流が乱されるくらいなら、スムースな形状を選ぶというのは理解できる。
また、レッドブルは突起にスリットが穿たれている。エイドリアン・ニューウィーは'12年の段差ノーズ規則導入の際も、ノーズ上の段差に穴を穿っている。これで後方への気流の影響を減らそうというのだろうか。このスリットはさらに、昨年にも存在した、モノコック上面のスリットに繋がっていて上下の空気流の最適化を細かく図っているようだ。
こうした過程はある意味では環境に最適化していく生物体系のようでもあり、単純に興味深い。だから、F-1ファンをやめられんのだよ。
そんな俺としては、こうしたレギュレーション変更がある度に「こんな醜いマシンではF-1のファン離れが加速しちゃうよ！」なんていうヒステリックな声にはおよそ賛同できかねる。
だって、そんなことを言いながらコアなファンはF-1ファンを辞めてないわけだし、そもそもライトなファンはマシンの細かいディティールなんて興味ないのだ。それより、その形状に込められた開発者の狙い、思い、苦労を想像する方が断然楽しめるんだけどな。
さて、今年のニューマシンの中でダントツにカッコいいと思うのがメルセデスAMGのW05だ。
Mercedes AMG W05
いたずらにアリクイノーズにせずにスラントノーズを採用した上、極力フロントウィングとの干渉避けるべくかなり短くなっている。さらに、薄いノーズ先端を補うべく、ウィングステーを分厚くして先述の断面積規定をクリアしている。初走行でいきなりそこが壊れてクラッシュするというオチもあったが、他チームを圧倒する周回数を稼いでみせた。
新しいパワーユニットもなかなかの仕上がりのようだし、それを極めてスリムなリアボディに収めている。フロントサスのジオメトリーにも新しいチャレンジが見られる。これはかなりホンモノ感があるぞ。
逆に、ここ数年F-1シーンを席巻してきたレッドブルはかなり厳しいようだ。メルセデスとフェラーリがユニットをかなり仕上げてきた中で、ルノーが一人負けしてしまっている。それだけでなく、レッドブルは冷却にも問題を抱えているらしい。あんなにダルなポンツーンになったのに！？結構問題は根深そうだ。
そんなわけで、いろいろ思いを巡らせるこの時期が一番楽しいんだよなあ。
'92年の4月号をよく覚えている。旧型MP4/6の改良型で開幕戦を惨敗したマクラーレンが、新型MP4/7Aをシルバーストーンを走らせた記事だ。MP4/6の前時代的なオス型モノコックから細身のメス型モノコックになった外見の変化に加え、その記事に書かれた「フライバイワイヤ」という聞き慣れない言葉に、新時代の到来を感じて心が躍ったもんだ。その後のブラジルGPでのグダグダぶりを見てズッコケるわけだが。
2000年ごろにはインターネットのF-1ニュースも当たり前になったけど、当初は画像の解像度が低かった。それを必死に脳内補完して形状を推測して設計の狙いを探ったりしたよなあ。翻って現代は高解像度の画像も得られるし、HD動画も珍しくない。いい時代にはなったけど、かつてのあのドキドキ感、焦らされ感がなくなったことはちょっと寂しくもあるかな。
Grandprix Special Apr.1992
もちろん、まだ現存しますよ。あまりに読み過ぎて表紙ぼろぼろだけどね。
さて、2014年シーズンを戦うF-1マシンが出揃った。
今シーズンは技術的に大きな変革の年である。8年間続いた排気量2.4リットルV型8気筒自然吸気エンジン時代が終わり、同1.6リットルV型6気筒ターボエンジンとなる。しかも、ERSという複雑なエネルギー回生システムも導入された。昨年までのKERSとは比較にならないほど大掛かりなものだ。つまり、エンジン...というより「パワーユニット」の実力がレースの行方を大きく左右する可能性があるということだ。だから、「F-1は走る実験室」とするホンダも来シーズンからの復帰を決めたわけだ。
ところが1月末に相次いだ新車発表では、そうした車の根本部分ではなく、車体の先端に注目が集まってしまった。多くのチームが、本来のノーズと思われるところから前方に向かって、細いくちばしのような構造物を垂れ下げたような形状を採用してきたのだ。その見た目から、「アリクイノーズ」などと揶揄されている。ロータスにいたっては、まるで牙のように2本飛び出ている。
これは言うまでもなく、レギュレーション変更が影響している。昨年までの超ハイノーズでは、他車と接触した場合に深刻な事態を招きかねなかった。
これは、2010年ヨーロッパGPでのウェバーとコバライネンの事故が典型と言われる。ウェバーのレッドブルRB6のハイノーズがコバライネンのロータスT127のリヤタイヤに乗り上げた結果、ウェバーのマシンは上空へ跳ね上げられた。幸いウェバーのレッドブルはボトム側から着地した。そのおかげでウェバーも無事だったが、極めて危険なクラッシュだった。
こうした事故を防ぐため、FIAはノーズを低くするレギュレーション変更を行った。
だが、ノーズ先端部分に関する寸法規制は、「ノーズ先端から50mm後方の位置で断面積が9000mm2なければならない」という文言だった。9000mm2と言うとエラく大きいように聞こえるが、10cm×9cmだ。大きめのスマートフォンサイズの平面を規定の低い位置...断面の中心が基準面から185mm...に作れば、残りの部分は高く成形しても違反にならない。これが、アリクイノーズ誕生の秘密である。ええと、詳しく言うとノーズの長さやらいろいろあるけど割愛していい？（誰に？ (^_^;）
こうしたレギュレーションができると、F-1マシンデザイナー達は、規則の裏をかいて、なんとか以前と同じ効果を得ようと頭を捻ってくる。
たとえば'83年のフラットボトム規制では、ブラバムBT52のアローシェイプが生まれた。これはポンツーンを極力短くして、空気抵抗を減らしてウィングを生かす狙いだった。しかし翌年以降はロータス94Tが採用したディフューザーが主流になっていった。これは、ポンツーンが長くても抵抗になるどころか強大なダウンフォースを生んだ。補機類がかさばるターボ時代にもマッチしていた。
近年では、'09年の大幅なディフューザー容積削減に対し、ブラウンBGP001などのマルチディフューザーが生まれたが、'10年にそれが禁止されるや、その'10年のうちにレッドブルRB6が先鞭をつけたエキゾーストブローが主役になった。エンジン点火タイミングを制御して排気を空力に積極的に利用するというもので、'13年後半戦のフェッテル9連勝を演出した。
さて今回'14年のノーズ寸法規制下ではアリクイノーズが主流であるが、フェラーリやメルセデス、ロータスらは違うソリューションを用いた。確かに、余計な突起で空気流が乱されるくらいなら、スムースな形状を選ぶというのは理解できる。
また、レッドブルは突起にスリットが穿たれている。エイドリアン・ニューウィーは'12年の段差ノーズ規則導入の際も、ノーズ上の段差に穴を穿っている。これで後方への気流の影響を減らそうというのだろうか。このスリットはさらに、昨年にも存在した、モノコック上面のスリットに繋がっていて上下の空気流の最適化を細かく図っているようだ。
こうした過程はある意味では環境に最適化していく生物体系のようでもあり、単純に興味深い。だから、F-1ファンをやめられんのだよ。
そんな俺としては、こうしたレギュレーション変更がある度に「こんな醜いマシンではF-1のファン離れが加速しちゃうよ！」なんていうヒステリックな声にはおよそ賛同できかねる。
だって、そんなことを言いながらコアなファンはF-1ファンを辞めてないわけだし、そもそもライトなファンはマシンの細かいディティールなんて興味ないのだ。それより、その形状に込められた開発者の狙い、思い、苦労を想像する方が断然楽しめるんだけどな。
さて、今年のニューマシンの中でダントツにカッコいいと思うのがメルセデスAMGのW05だ。
Mercedes AMG W05
いたずらにアリクイノーズにせずにスラントノーズを採用した上、極力フロントウィングとの干渉避けるべくかなり短くなっている。さらに、薄いノーズ先端を補うべく、ウィングステーを分厚くして先述の断面積規定をクリアしている。初走行でいきなりそこが壊れてクラッシュするというオチもあったが、他チームを圧倒する周回数を稼いでみせた。
新しいパワーユニットもなかなかの仕上がりのようだし、それを極めてスリムなリアボディに収めている。フロントサスのジオメトリーにも新しいチャレンジが見られる。これはかなりホンモノ感があるぞ。
逆に、ここ数年F-1シーンを席巻してきたレッドブルはかなり厳しいようだ。メルセデスとフェラーリがユニットをかなり仕上げてきた中で、ルノーが一人負けしてしまっている。それだけでなく、レッドブルは冷却にも問題を抱えているらしい。あんなにダルなポンツーンになったのに！？結構問題は根深そうだ。
そんなわけで、いろいろ思いを巡らせるこの時期が一番楽しいんだよなあ。
nobilesの投稿(23:40:53-2014-02-16) -
カテゴリ: Formula-One
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