NOBILES Days
Jump to navigationNew Generations Under The Blue Sky Like Aegean Sea (Headliner) part.2
今日はまだ妻子とも病院に入院で手も掛からないので、ご挨拶と社内の手続きをしようと出社した。同期や同僚からたくさんのメッセージをいただいた。ありがたいことだ。そしてまた、しっかり育てていかなければ、という責任感が湧いたものである。
さあ、昨日の続きだ。
季歩の産まれた病院（拡大はなし）
翌日はこんな秋晴れだった。間違いなく晴れ女に違いない（早くも親バカか？）
とにもかくにも、題名通りの美しい青空だった。
(PentaxK10D, PentaxDA21mmLimitedF3.2, ApertureValueMode, 1/160sec, F10.0, ISO100)
延々と繰り返されると思えた、陣痛の波と小康状態の繰り返しだが、打ち出される陣痛の具合のグラフを良く見ると、小康状態のグラフがだんだん右に向かっている。
俺は最初からいたわけではないので正確なことは分からないが、どうやらこのグラフが右に向かうほど、赤ちゃんがだんだんと降りて来ているということみたいだよ、とご両親がおっしゃっていた。
午後8時前。入院から約15時間。俺が着いてから2時間（かなり長く感じたが、たったそんだけか (′Д`;）。何度目かの看護士さんによる診察。
「もう出口が8cmまで開いてます。頭もすぐそこって感じです。でも、分娩室にはご家族は立ち会えませんから、なるべくここで一緒にいてあげた方が良いです。もう少しですよ！」
もう少しだけど、まだ先か (′Д`;。
ああ、そうそう、この病院では父親であっても分娩室で立ち会うことはできないのだ。いや、俺は立ち会う気満々だったのだが。衛生上の判断だと言われれば従うしかあるまい。
1日に携帯から書き込んだよように、痛みに悶え続けて、もう髪もグシャグシャになって、痛みの大波が来た時にはベッドのパイプを握りしめて耐えている嫁さんの横顔を見ていると、いろんな思いが駆け巡る。
これだけ医療が進歩しても、たった一つの命を産み出すためにはこれだけのパワーが必要なのだということ。今産まれ来る命が、どれだけ重いものであるかということ。
と、同時に、出会ってから結婚してこれまで積み重ねて来た嫁さんと過ごした時間のこと。
そして、これから展開されるであろう3人での生活のこと。
腰をひたすらさすりながら、いろんな思いがあふれて、少し目頭が熱くなった。
と、
「もう耐えられないね？呼ぶよ、呼ぶからね！」
お義母さんがダッシュで看護士さんを呼びにいく。あー、でも、まださっきの診察から5分も経ってないですが...。嫁さん一家は、嫁さん含めせっかちなのだ (^_^;。まあ、それ以上に明け方からずっと付き添っていただいていたのだ。俺以上に早く楽にさせてあげたい、という思いは強いのだろう。
そんな呼びにいく→もっと一緒にいてあげてくださいのコンボを何回か繰り返した後、次の診察でついに「分娩室に行きましょう」との判断が下された。午後8時20分頃のことであった。
良くドラマとかの手術前のシーンそのまんまだが...。
ストレッチャーに載せられた嫁さん。看護士さんが「旦那さん、分娩室の前まで横で励ましてあげて！」と俺に声をかける。
嫁さんは相変わらず余裕なく呻き続けているが、せめておでこをなでたり手を握ったりして「しっかりな」程度しか声をかけることしかできない。所詮父親は痛くも痒くもないのだ。無力感を感じ、あー、やっぱりせめて立ち会いたかった！などと今更ながらその時にも思った。
慌ただしく分娩室の扉の向こうにストレッチャーが消えていくと、産婦人科病棟の廊下はもう静寂だけが残った。陣痛室もウチが最後だったのだ。
嫁さんのご両親と俺の3人。もう待合室に引っ込んで待つしかないのだ。
20畳程度、少し薄暗くすら感じるちょっと殺風景な待合室。最初はテレビがついていたので、所在なげに3人してテレビを見ていた。
「個室ビデオ店...これって事件なのかね。」
「良く会社でも飲みで帰れなくなった人が漫画喫茶とかに泊まってますよ」
「そうかー」
そんな会話をしたところで、別にそちらに意識はない。
しかも、午後9時になると病院全体が消灯となり、テレビは消えた。
3人とも立ってフラフラと歩いたり、廊下の先にある分娩室の前まで行ったりと、とにかく落ち着かない。
「分娩室の横の新生児室って紛らわしいよねー、赤ちゃん泣いてて」
「そうですねー」
中で嫁さんが頑張ってると言うのに、なんとも暢気な会話だが、そんなことしかできないのだ。
ああ、そうだ、うちの実家にも電話をしておこう。
母が出る。
「ああ、夕方にこっちから電話したんだけど」
「あれ？ほんと？電車に乗っていた頃かな」
「うん、2回。」
2回？電車に乗っていた頃？？まさか？
「その後、電話かかってこなかった？」
「え？なんか間違い電話がどうのこうのって」
...やっぱり。
「それ俺だよ」
「嘘。声全然違ったけど？」
「俺だよ俺！！！」
間違い電話だと思っていた電話は親からの電話だったようだ。恐らくだが、1年ほど前に実家は妹がADSL回線を引いた。その際、IP電話のようなものに加入したのではないか。
俺の携帯にかかってきた電話は050で始まる番号だったが、そういえば、IP電話でこれまでの電話回線と同等の品質を保てない環境の場合は050が付いたような気がする。きっと品質が悪いから俺の声も変に聞こえたのではないか。
「私、オレオレ詐欺かと思ってお父さんに言いつけちゃった」
「だから、俺だよ俺！！！ちゃんと●○ですって苗字名乗っただろ！」
....あーーーもーーーそんな場合じゃないっての。
とりあえず、これまでの状況を説明して電話を切った。
...まだ分娩室からは何の報告もない。
それからも田舎の叔母に電話したりだの、とりとめもない話をご両親としたりして過ごす。明け方から付いていていただいたお母さんは「ちょっとテーブルで伏せて寝ようかしら」と突っ伏すが、5分としないうちに、「分娩室を見てくる」とムクッと起きてしまう。
「9時半には出てくるかねぇ？」
まもなく...午後10時を過ぎる (′Д`;。
ただ待つということの辛さがのしかかってくる。これなら、まだ目の前で呻いてくれてる方が状況が掴めたし、腰をさすってあげたり、声をかけたり、一緒に頑張っているという感じもあった。
ああ、いつまでこのジリジリした時間が過ぎるのだろうか。
だだだだだだだ.....
「ねえ！ちょっと！！！」
その時、もう何度目かの「テーブルで突っ伏す→分娩室に偵察」コンボをされていたお義母さんがダッシュで戻って来た。
「中から泣き声聞こえるよ！！」
「本当かぁ？また新生児室じゃないのか？」
「違うわよ！絶対中よ！」
「僕も行ってみます！」
2〜30メートルほど先、角を一つ右に曲がった一番奥にある分娩室まで俺も音を立てぬようにダッシュをかます。確かに、泣き声が聞こえる。間違えなく、右の新生児室でなく、奥からだ！！！
またダッシュで待合室に戻る。
「間違いないです！奥からです！」
「でしょ？」
再び分娩室前に行こうとしたお義母さんが、コソコソしながら戻ってくる。
「助産師サン、出て来た、出て来た。」
テクテクと小柄な助産師さんが待合室に歩いて来た」
「●○さん、おめでとうございます。22時19分、2478g、女の子ですよ。お母さんも、赤ちゃんも元気です。」
.....嗚呼。
どっと力が抜けていくのが分かった。
正直、テンションが上がるというより、ホッとしたというのが一番の感想だ。
「良かったね、親父だね！」
お義父さんが声をかけてくださった。
「身体を綺麗に洗ってお洋服お着せしたりしてから、またお呼びしますね」
あああ、まだ会うには時間かかるのね。
しょうがないので、また実家に電話をかけて報告をしていると
「●○サン、お待たせしました！」
あああ、意外に早いのね。
電話もほどほどに切って分娩室前まで行く。
奥から透明の...なんていうのか、新生児を寝かすトレイのようなものが台車に載せられて出て来た。そこにタオルが敷かれて、その上にさらにタオルを丸めたような塊が見える。ここ、ここにいるのか。
一体...どんな顔をしているのだろうか。猿のようにクシャクシャだったらどうしよう。見るに見れない崩れた顔だったらどうしよう。
看護士さんが台車をグッと俺達の方に押し出してくれる。
ああ、顔が見えた。
産まれてから10数分の季歩
(PentaxK10D, TamronA14(40.0mm), ProgramMode, 1/60sec, F4.5, ISO800)
か細い声を振り絞り、泣いたり、目を開こうとしたりしていた。
...良かった。そこそこ整った顔してるじゃん (^_^;。
「ねえねえ、ちゃんと指全部あるの？」
お義母さんがそそくさと足や腕を引っ張り出す。...ちゃんとあるようだ。
写真を撮っていると...
「あら、ちょっと手、邪魔よ」
手や足を閉まってくれていた看護士さんに厳しい声が。いや、せっかちなので (^_^;。あ、いや全然大丈夫です... (._.ゞ。
「産まれてすぐ母乳も飲まれたんですよー」
え？まじ？
なんと食欲おう盛な赤ちゃんだろうか。
5分ほどの面会でまた赤ちゃんは奥へ。初日は衛生上、抱っこなどはさせてもらえなかった。
「お母さんは1時間ほどしたら部屋に戻ります。またちょっとお待ちくださいね」
ここでご両親は、一度家に帰って布団の準備や、おじいさん、おばあさんの世話をしてくるという。
俺は「出産で頑張った後くらいゆっくりしな」とお義父さんの計らいで取っていただいた嫁さんのための個室で待つことにした。
一人になると、不思議な感情がまた沸き起こって来た。
さっき見たあの小さな小さな子が、自分の子供だという事実。ほんのさっきまで嫁さんのお腹の中で蠢いていたその物体が、今、しっかり赤ちゃんの形をしてこの世に現れたのだ。
なんて幸せなんだろう。
しばらくして戸が鳴った。ストレッチャーに載せられた嫁さんが帰って来たのだ。
一体どれだけやつれてるかと思ったが、思いの外顔色が良い。
ベッドに移されて、看護士さんが出て行く。
開口一番。
「腹減ったー」
どんだけ母子そっくりなんだよ！！
しょうがないので、一度家に戻っていたご両親に、向かう途中におにぎりか何かを買って来てくださるよう電話した。
おにぎりなどを持って戻って来たご両親としばし嫁さんを労ってから、病院を後にすることにした。もう時計は日が変わって午前1時を指そうとしていた。
嫁さんの実家に戻ると、お義父さんが「な、一杯祝杯上げてから寝よう」。
ささやかながら乾杯を交わし、ゆっくりとビールを味わう。あー、長く、感情を揺さぶられた一日だった！
翌日。トビラの写真の通りの快晴。
面会時間の15時に病院に、お義母さんと共に再び会いに行くと、母子同室主義のこの病院、もう嫁さんの部屋のベッドの横には小さな小さな新生児トレイが横付けされていた。
早速、抱いてみる。軽い。なんて軽くて小さいんだろうか。そして、柔らかい。
ますます、このか弱い子を守らなければ。そういう想いを強くしたのだった。
それにしても産まれてくるタイミング、実に絶妙だった。
明日は俺はパイオニア音楽祭へ出演する。
母子ともに健康だったが、まだこのタイミングは病院なので、特に手がかからないのでそれが可能となったのだ。
もし、明日に産気づいていたら...もうライブの方はどうにもならなかっただろう。予定通りに11日後だったとしても、結構どうなるか不安を感じながらの演奏になっていただろう。
加えて。
実は10月1日から嫁さんの会社の制度が変わって、出産祝い金がドーンとアップする予定だったのだ。それはもう、びっくりするくらいに。
嫁さんが最初に陣痛を訴えて来たのは、10/1の日が変わってまだ10分とかいう時間だった。
...まさに10月になった途端に「さ、産まれるか」と出て来たのだ。どれだけお金にうるさい娘になるだろうか (^_^;！！
まあ、とにかく、季歩がもたらしたこの幸運を生かし、明日は思う存分暴れる予定だ。
The 26th PMF
第26回パイオニア音楽祭
4th.Sep.2008(Sat)
@Shibuya O-West
Open=14:30, Event Start=15:00, Our Stage=17:50
Charge=1000yen+1drink500yen
さあ、昨日の続きだ。
季歩の産まれた病院（拡大はなし）
翌日はこんな秋晴れだった。間違いなく晴れ女に違いない（早くも親バカか？）
とにもかくにも、題名通りの美しい青空だった。
(PentaxK10D, PentaxDA21mmLimitedF3.2, ApertureValueMode, 1/160sec, F10.0, ISO100)
延々と繰り返されると思えた、陣痛の波と小康状態の繰り返しだが、打ち出される陣痛の具合のグラフを良く見ると、小康状態のグラフがだんだん右に向かっている。
俺は最初からいたわけではないので正確なことは分からないが、どうやらこのグラフが右に向かうほど、赤ちゃんがだんだんと降りて来ているということみたいだよ、とご両親がおっしゃっていた。
午後8時前。入院から約15時間。俺が着いてから2時間（かなり長く感じたが、たったそんだけか (′Д`;）。何度目かの看護士さんによる診察。
「もう出口が8cmまで開いてます。頭もすぐそこって感じです。でも、分娩室にはご家族は立ち会えませんから、なるべくここで一緒にいてあげた方が良いです。もう少しですよ！」
もう少しだけど、まだ先か (′Д`;。
ああ、そうそう、この病院では父親であっても分娩室で立ち会うことはできないのだ。いや、俺は立ち会う気満々だったのだが。衛生上の判断だと言われれば従うしかあるまい。
1日に携帯から書き込んだよように、痛みに悶え続けて、もう髪もグシャグシャになって、痛みの大波が来た時にはベッドのパイプを握りしめて耐えている嫁さんの横顔を見ていると、いろんな思いが駆け巡る。
これだけ医療が進歩しても、たった一つの命を産み出すためにはこれだけのパワーが必要なのだということ。今産まれ来る命が、どれだけ重いものであるかということ。
と、同時に、出会ってから結婚してこれまで積み重ねて来た嫁さんと過ごした時間のこと。
そして、これから展開されるであろう3人での生活のこと。
腰をひたすらさすりながら、いろんな思いがあふれて、少し目頭が熱くなった。
と、
「もう耐えられないね？呼ぶよ、呼ぶからね！」
お義母さんがダッシュで看護士さんを呼びにいく。あー、でも、まださっきの診察から5分も経ってないですが...。嫁さん一家は、嫁さん含めせっかちなのだ (^_^;。まあ、それ以上に明け方からずっと付き添っていただいていたのだ。俺以上に早く楽にさせてあげたい、という思いは強いのだろう。
そんな呼びにいく→もっと一緒にいてあげてくださいのコンボを何回か繰り返した後、次の診察でついに「分娩室に行きましょう」との判断が下された。午後8時20分頃のことであった。
良くドラマとかの手術前のシーンそのまんまだが...。
ストレッチャーに載せられた嫁さん。看護士さんが「旦那さん、分娩室の前まで横で励ましてあげて！」と俺に声をかける。
嫁さんは相変わらず余裕なく呻き続けているが、せめておでこをなでたり手を握ったりして「しっかりな」程度しか声をかけることしかできない。所詮父親は痛くも痒くもないのだ。無力感を感じ、あー、やっぱりせめて立ち会いたかった！などと今更ながらその時にも思った。
慌ただしく分娩室の扉の向こうにストレッチャーが消えていくと、産婦人科病棟の廊下はもう静寂だけが残った。陣痛室もウチが最後だったのだ。
嫁さんのご両親と俺の3人。もう待合室に引っ込んで待つしかないのだ。
20畳程度、少し薄暗くすら感じるちょっと殺風景な待合室。最初はテレビがついていたので、所在なげに3人してテレビを見ていた。
「個室ビデオ店...これって事件なのかね。」
「良く会社でも飲みで帰れなくなった人が漫画喫茶とかに泊まってますよ」
「そうかー」
そんな会話をしたところで、別にそちらに意識はない。
しかも、午後9時になると病院全体が消灯となり、テレビは消えた。
3人とも立ってフラフラと歩いたり、廊下の先にある分娩室の前まで行ったりと、とにかく落ち着かない。
「分娩室の横の新生児室って紛らわしいよねー、赤ちゃん泣いてて」
「そうですねー」
中で嫁さんが頑張ってると言うのに、なんとも暢気な会話だが、そんなことしかできないのだ。
ああ、そうだ、うちの実家にも電話をしておこう。
母が出る。
「ああ、夕方にこっちから電話したんだけど」
「あれ？ほんと？電車に乗っていた頃かな」
「うん、2回。」
2回？電車に乗っていた頃？？まさか？
「その後、電話かかってこなかった？」
「え？なんか間違い電話がどうのこうのって」
...やっぱり。
「それ俺だよ」
「嘘。声全然違ったけど？」
「俺だよ俺！！！」
間違い電話だと思っていた電話は親からの電話だったようだ。恐らくだが、1年ほど前に実家は妹がADSL回線を引いた。その際、IP電話のようなものに加入したのではないか。
俺の携帯にかかってきた電話は050で始まる番号だったが、そういえば、IP電話でこれまでの電話回線と同等の品質を保てない環境の場合は050が付いたような気がする。きっと品質が悪いから俺の声も変に聞こえたのではないか。
「私、オレオレ詐欺かと思ってお父さんに言いつけちゃった」
「だから、俺だよ俺！！！ちゃんと●○ですって苗字名乗っただろ！」
....あーーーもーーーそんな場合じゃないっての。
とりあえず、これまでの状況を説明して電話を切った。
...まだ分娩室からは何の報告もない。
それからも田舎の叔母に電話したりだの、とりとめもない話をご両親としたりして過ごす。明け方から付いていていただいたお母さんは「ちょっとテーブルで伏せて寝ようかしら」と突っ伏すが、5分としないうちに、「分娩室を見てくる」とムクッと起きてしまう。
「9時半には出てくるかねぇ？」
まもなく...午後10時を過ぎる (′Д`;。
ただ待つということの辛さがのしかかってくる。これなら、まだ目の前で呻いてくれてる方が状況が掴めたし、腰をさすってあげたり、声をかけたり、一緒に頑張っているという感じもあった。
ああ、いつまでこのジリジリした時間が過ぎるのだろうか。
だだだだだだだ.....
「ねえ！ちょっと！！！」
その時、もう何度目かの「テーブルで突っ伏す→分娩室に偵察」コンボをされていたお義母さんがダッシュで戻って来た。
「中から泣き声聞こえるよ！！」
「本当かぁ？また新生児室じゃないのか？」
「違うわよ！絶対中よ！」
「僕も行ってみます！」
2〜30メートルほど先、角を一つ右に曲がった一番奥にある分娩室まで俺も音を立てぬようにダッシュをかます。確かに、泣き声が聞こえる。間違えなく、右の新生児室でなく、奥からだ！！！
またダッシュで待合室に戻る。
「間違いないです！奥からです！」
「でしょ？」
再び分娩室前に行こうとしたお義母さんが、コソコソしながら戻ってくる。
「助産師サン、出て来た、出て来た。」
テクテクと小柄な助産師さんが待合室に歩いて来た」
「●○さん、おめでとうございます。22時19分、2478g、女の子ですよ。お母さんも、赤ちゃんも元気です。」
.....嗚呼。
どっと力が抜けていくのが分かった。
正直、テンションが上がるというより、ホッとしたというのが一番の感想だ。
「良かったね、親父だね！」
お義父さんが声をかけてくださった。
「身体を綺麗に洗ってお洋服お着せしたりしてから、またお呼びしますね」
あああ、まだ会うには時間かかるのね。
しょうがないので、また実家に電話をかけて報告をしていると
「●○サン、お待たせしました！」
あああ、意外に早いのね。
電話もほどほどに切って分娩室前まで行く。
奥から透明の...なんていうのか、新生児を寝かすトレイのようなものが台車に載せられて出て来た。そこにタオルが敷かれて、その上にさらにタオルを丸めたような塊が見える。ここ、ここにいるのか。
一体...どんな顔をしているのだろうか。猿のようにクシャクシャだったらどうしよう。見るに見れない崩れた顔だったらどうしよう。
看護士さんが台車をグッと俺達の方に押し出してくれる。
ああ、顔が見えた。
産まれてから10数分の季歩
(PentaxK10D, TamronA14(40.0mm), ProgramMode, 1/60sec, F4.5, ISO800)
か細い声を振り絞り、泣いたり、目を開こうとしたりしていた。
...良かった。そこそこ整った顔してるじゃん (^_^;。
「ねえねえ、ちゃんと指全部あるの？」
お義母さんがそそくさと足や腕を引っ張り出す。...ちゃんとあるようだ。
写真を撮っていると...
「あら、ちょっと手、邪魔よ」
手や足を閉まってくれていた看護士さんに厳しい声が。いや、せっかちなので (^_^;。あ、いや全然大丈夫です... (._.ゞ。
「産まれてすぐ母乳も飲まれたんですよー」
え？まじ？
なんと食欲おう盛な赤ちゃんだろうか。
5分ほどの面会でまた赤ちゃんは奥へ。初日は衛生上、抱っこなどはさせてもらえなかった。
「お母さんは1時間ほどしたら部屋に戻ります。またちょっとお待ちくださいね」
ここでご両親は、一度家に帰って布団の準備や、おじいさん、おばあさんの世話をしてくるという。
俺は「出産で頑張った後くらいゆっくりしな」とお義父さんの計らいで取っていただいた嫁さんのための個室で待つことにした。
一人になると、不思議な感情がまた沸き起こって来た。
さっき見たあの小さな小さな子が、自分の子供だという事実。ほんのさっきまで嫁さんのお腹の中で蠢いていたその物体が、今、しっかり赤ちゃんの形をしてこの世に現れたのだ。
なんて幸せなんだろう。
しばらくして戸が鳴った。ストレッチャーに載せられた嫁さんが帰って来たのだ。
一体どれだけやつれてるかと思ったが、思いの外顔色が良い。
ベッドに移されて、看護士さんが出て行く。
開口一番。
「腹減ったー」
どんだけ母子そっくりなんだよ！！
しょうがないので、一度家に戻っていたご両親に、向かう途中におにぎりか何かを買って来てくださるよう電話した。
おにぎりなどを持って戻って来たご両親としばし嫁さんを労ってから、病院を後にすることにした。もう時計は日が変わって午前1時を指そうとしていた。
嫁さんの実家に戻ると、お義父さんが「な、一杯祝杯上げてから寝よう」。
ささやかながら乾杯を交わし、ゆっくりとビールを味わう。あー、長く、感情を揺さぶられた一日だった！
翌日。トビラの写真の通りの快晴。
面会時間の15時に病院に、お義母さんと共に再び会いに行くと、母子同室主義のこの病院、もう嫁さんの部屋のベッドの横には小さな小さな新生児トレイが横付けされていた。
早速、抱いてみる。軽い。なんて軽くて小さいんだろうか。そして、柔らかい。
ますます、このか弱い子を守らなければ。そういう想いを強くしたのだった。
それにしても産まれてくるタイミング、実に絶妙だった。
明日は俺はパイオニア音楽祭へ出演する。
母子ともに健康だったが、まだこのタイミングは病院なので、特に手がかからないのでそれが可能となったのだ。
もし、明日に産気づいていたら...もうライブの方はどうにもならなかっただろう。予定通りに11日後だったとしても、結構どうなるか不安を感じながらの演奏になっていただろう。
加えて。
実は10月1日から嫁さんの会社の制度が変わって、出産祝い金がドーンとアップする予定だったのだ。それはもう、びっくりするくらいに。
嫁さんが最初に陣痛を訴えて来たのは、10/1の日が変わってまだ10分とかいう時間だった。
...まさに10月になった途端に「さ、産まれるか」と出て来たのだ。どれだけお金にうるさい娘になるだろうか (^_^;！！
まあ、とにかく、季歩がもたらしたこの幸運を生かし、明日は思う存分暴れる予定だ。
The 26th PMF
第26回パイオニア音楽祭
4th.Sep.2008(Sat)
@Shibuya O-West
Open=14:30, Event Start=15:00, Our Stage=17:50
Charge=1000yen+1drink500yen
nobilesの投稿(23:11:00-2008-10-03) -
カテゴリ: Main
コメント
ぱれお wrote:
2008-10-04 00:25:21
果汁３％ wrote:
前日の日記がリアル過ぎて怖かった(笑)
しかし大食いで強運の持ち主になりそうな予感ですね。
血液型が気になります(笑)
いや〜本当に無事に生まれてよかったですね！
感動しました(つД`)
しかし大食いで強運の持ち主になりそうな予感ですね。
血液型が気になります(笑)
いや〜本当に無事に生まれてよかったですね！
感動しました(つД`)
2008-10-04 21:04:47
nobiles wrote:
＞ぱれおさん
ありがとうございます！
無事、五体満足ってのが何よりです。それが一番ホッとしました。男か女かなんてのはもうどうでも良かったです。
＞かじう
ありがとん〜。もう、記憶が鮮明なうちに克明に書こうと思ってな。そういや血液型聞いてねーな。ガクブル。
ありがとうございます！
無事、五体満足ってのが何よりです。それが一番ホッとしました。男か女かなんてのはもうどうでも良かったです。
＞かじう
ありがとん〜。もう、記憶が鮮明なうちに克明に書こうと思ってな。そういや血液型聞いてねーな。ガクブル。
2008-10-05 01:51:52
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ドキュメントを読むと本当に大変だね。
なんにしても無事生まれてきてよかったね。。