NOBILES Days
Jump to navigationF-1 Machine Trend 2009(4) - Redbull RB5
育休から会社に復帰して、いつの間にか1ヶ月が過ぎていた。ボスがボスだけに、復帰リハビリもそこそこに、全然普通に仕事をしてきた。子供と過ごしつつ、仕事をするリズムも程なく出来た。
さてそんな間に、どうやら今年も忌々しい季節が始まったようだ。1月のうちから薬は飲んでいるのだが、それでもくしゃみが頻発するようになった。インフルエンザ対策としてしていたマスクが、そのままヤツ対策になりそうだ。これから3ヶ月ほど、我慢しなければならない。
この体質が娘に遺伝していないことを祈るばかりだ。
Redbull RB5
歴代F-1デザイナーの中でも最も尊敬すべき者の一人であることは間違いなかろう。そう、あのモナコでも遭遇したエイドリアン・ニューウィーがデザインしたレッドブルRB5のデビューだ。
いや、さすがニューウィーというべき、面白いマシンだ。
非常に高く持ち上げられたノーズ、すっぱりとスキャロップをやめたポンツーン後部などは、皮肉にもニューウィーの古巣であるマクラーレンのMP4-24とコンセプトを同じくしている。
だが、そのラインはマクラーレンに比べて大分鋭く、思い切ったものになっている。
まずはノーズだ。
ルノーやウィリアムズ、BMWがなんだったのかと言いたくなるほど細く絞り込まれた先端部、そしてそこから下りる細く長いノーズステー。1800mmと大きく、そして可変となったフロントウィングを支えるのに本当に十分なのかと不安になるほどだ。
ノーズの形状自体は、彼自身のかつての作品、’90年のレイトンハウスCG901を思い起こさせる。
Leytonhouse CG901 (1990)
一方で、その上面にはバルジがモノコックのエッジに沿って立っている。こうしたバルジは空力的には良い影響となるわけがないので単なる空力的な要求とは思えない。
こうしたノーズ上のバルジと言えば、古くは先のレイトンCG901と同じ年のウィリアムズFW13シリーズ、また、’98年のスチュワートSF02などに派手に見受けられる。
Williams FW13B (1990)
Stewart SF02 (1998)
これらは、前者がプッシュロッドのストロークを大きくするため、後者が’98年からのモノコック内部の寸法規定によってトーションバーが外に追いやられたため、止むなくバルジを立てて、これらのサスペンション部品をノーズ上にはみ出させた結果である。
だがRB5はプッシュロッドの受け口はモノコック上面に対してまだ高さに余裕があるし、トーションバーも、その’98年にニューウィー自身が先鞭を付けた横にレイアウトする手法が業界のデファクトスタンダードとなっている。
このレッドブルRB5においては、それよりむしろ、モノコックの断面寸法規定をクリアするためのレギュレーションフィンの類いではないかと推察している。これは、そのニューウィーの’98年作品、マクラーレンMP4-13においても見られる。
McLarenMP4-13 (1998)
ラジエターインレット周りは比較的昨年型に似ている。そして、ポンツーン前部がスキャロップとなっているのも同じだ。
だが、後部は先述した通り、すっぱりとスキャロップは廃されている。その代わり、マクラーレンと比較してもかなり極端に低く絞り込まれていく。横から見ると、高いノーズからスキャロップされたポンツーン前部から極端に低いポンツーン後部まで、綺麗なドロップシェイプが形成されているのが分かる。エキゾーストはリヤサスペンションのアッパーアームの下辺りから出ていて、なんとここがポンツーンの最後部の高さとなっているところが凄い。
更に驚くことに、リヤサスペンションはプルロッドだ！！F-1のサスペンションにおいてプルロッドサスペンションなど2000年のアロウズA21のフロントサス以来ではなかろうか。
Arrows A21 (2000)
一体この内部はどうなっているのか興味深い。現代F-1において必須であるイナーシャダンパーなどをどうやって搭載しているのだろうか。
いやはや、リヤのコンパクトさの追求のためにプルロッドサスを引っ張りだしてくる辺り、空力のためならなんでもやるニューウィーの真骨頂という感じがして実にワクワクしてくる。
興味深い点はまだまだある。
Redbull RB5 Rear View
他車がディフューザを規定ぎりぎりの1000mmの幅でデザインしてきたのに対し、このRB5ではリヤウィングの新規定である750mmの幅に抑えてきた。そして、リヤウィングの翼端板をレファレンスプレーン付近まで下ろし、ディフューザの側壁も兼ねさせている。
これは非常に興味深い。大きく規制が進もうが、ディフューザは大きなダウンフォースを生み出す装置であることに変わりはないはずで、その幅を抑えるというのは極めて異例だと言えるだろう。
その数少ない例は、’91,92年のジョーダン191,192だろう。
Jordan 191 (1991)
ジョーダン191と192のディフューザはRB6よりもさらに細く、6〜700mm程度しかなかった。だが、ゲーリー・アンダーソンによってデザインされた、ジョーダンのデビューマシンである191はフォードのカスタマーV8エンジンながら驚異的な活躍を果たし、またあのミヒャエル・シューマッハのデビューマシンでもあった。ただ、ヤマハV12を積んだ192は一気にマシンバランスが崩れ、惨憺たる結果に終わり、このディフューザコンセプトも破棄されている。
当時の専門誌では、両端のディフューザの無い部分を、流速の速い空気がそのまま抜けて行くことで、ディフューザ部の空気引き抜き効果も高めているのではない無いかと言われていた。RB5もこれと同じ効果を狙っているのかどうか、興味深い。
もう一つは、昨年インダクションポット後方に尾ひれのように延びたシャークフィンを導入し、瞬く間に他チームに伝染させた始祖であるレッドブルだが、RB5では撤廃されている。
確かに、考えてみればリヤウィングの高さは800mmから950mmに上昇したわけで、インダクションポットがリヤウィングに与える影響は減っているはずだ。だったら、わずかでも重量増となる付加物は取り去ろうということなのだろうか。見渡してみると、あれだけ追従した他チームも、シャークフィンを残しているのはトヨタとルノーに限られる。
とにかくも、このRB5、非常に興味深いマシンだ。ヘレスでのテストでは、昨年最年少優勝を果たしたフェッテルが2009年型マシンのトップタイムをマークしている。この思い切ったコンセプトがハマれば、今年の台風の目になるかもしれない。エイドリアン・ニューウィー再び、を是非見てみたいものだ。
さてそんな間に、どうやら今年も忌々しい季節が始まったようだ。1月のうちから薬は飲んでいるのだが、それでもくしゃみが頻発するようになった。インフルエンザ対策としてしていたマスクが、そのままヤツ対策になりそうだ。これから3ヶ月ほど、我慢しなければならない。
この体質が娘に遺伝していないことを祈るばかりだ。
Redbull RB5
歴代F-1デザイナーの中でも最も尊敬すべき者の一人であることは間違いなかろう。そう、あのモナコでも遭遇したエイドリアン・ニューウィーがデザインしたレッドブルRB5のデビューだ。
いや、さすがニューウィーというべき、面白いマシンだ。
非常に高く持ち上げられたノーズ、すっぱりとスキャロップをやめたポンツーン後部などは、皮肉にもニューウィーの古巣であるマクラーレンのMP4-24とコンセプトを同じくしている。
だが、そのラインはマクラーレンに比べて大分鋭く、思い切ったものになっている。
まずはノーズだ。
ルノーやウィリアムズ、BMWがなんだったのかと言いたくなるほど細く絞り込まれた先端部、そしてそこから下りる細く長いノーズステー。1800mmと大きく、そして可変となったフロントウィングを支えるのに本当に十分なのかと不安になるほどだ。
ノーズの形状自体は、彼自身のかつての作品、’90年のレイトンハウスCG901を思い起こさせる。
Leytonhouse CG901 (1990)
一方で、その上面にはバルジがモノコックのエッジに沿って立っている。こうしたバルジは空力的には良い影響となるわけがないので単なる空力的な要求とは思えない。
こうしたノーズ上のバルジと言えば、古くは先のレイトンCG901と同じ年のウィリアムズFW13シリーズ、また、’98年のスチュワートSF02などに派手に見受けられる。
Williams FW13B (1990)
Stewart SF02 (1998)
これらは、前者がプッシュロッドのストロークを大きくするため、後者が’98年からのモノコック内部の寸法規定によってトーションバーが外に追いやられたため、止むなくバルジを立てて、これらのサスペンション部品をノーズ上にはみ出させた結果である。
だがRB5はプッシュロッドの受け口はモノコック上面に対してまだ高さに余裕があるし、トーションバーも、その’98年にニューウィー自身が先鞭を付けた横にレイアウトする手法が業界のデファクトスタンダードとなっている。
このレッドブルRB5においては、それよりむしろ、モノコックの断面寸法規定をクリアするためのレギュレーションフィンの類いではないかと推察している。これは、そのニューウィーの’98年作品、マクラーレンMP4-13においても見られる。
McLarenMP4-13 (1998)
ラジエターインレット周りは比較的昨年型に似ている。そして、ポンツーン前部がスキャロップとなっているのも同じだ。
だが、後部は先述した通り、すっぱりとスキャロップは廃されている。その代わり、マクラーレンと比較してもかなり極端に低く絞り込まれていく。横から見ると、高いノーズからスキャロップされたポンツーン前部から極端に低いポンツーン後部まで、綺麗なドロップシェイプが形成されているのが分かる。エキゾーストはリヤサスペンションのアッパーアームの下辺りから出ていて、なんとここがポンツーンの最後部の高さとなっているところが凄い。
更に驚くことに、リヤサスペンションはプルロッドだ！！F-1のサスペンションにおいてプルロッドサスペンションなど2000年のアロウズA21のフロントサス以来ではなかろうか。
Arrows A21 (2000)
一体この内部はどうなっているのか興味深い。現代F-1において必須であるイナーシャダンパーなどをどうやって搭載しているのだろうか。
いやはや、リヤのコンパクトさの追求のためにプルロッドサスを引っ張りだしてくる辺り、空力のためならなんでもやるニューウィーの真骨頂という感じがして実にワクワクしてくる。
興味深い点はまだまだある。
Redbull RB5 Rear View
他車がディフューザを規定ぎりぎりの1000mmの幅でデザインしてきたのに対し、このRB5ではリヤウィングの新規定である750mmの幅に抑えてきた。そして、リヤウィングの翼端板をレファレンスプレーン付近まで下ろし、ディフューザの側壁も兼ねさせている。
これは非常に興味深い。大きく規制が進もうが、ディフューザは大きなダウンフォースを生み出す装置であることに変わりはないはずで、その幅を抑えるというのは極めて異例だと言えるだろう。
その数少ない例は、’91,92年のジョーダン191,192だろう。
Jordan 191 (1991)
ジョーダン191と192のディフューザはRB6よりもさらに細く、6〜700mm程度しかなかった。だが、ゲーリー・アンダーソンによってデザインされた、ジョーダンのデビューマシンである191はフォードのカスタマーV8エンジンながら驚異的な活躍を果たし、またあのミヒャエル・シューマッハのデビューマシンでもあった。ただ、ヤマハV12を積んだ192は一気にマシンバランスが崩れ、惨憺たる結果に終わり、このディフューザコンセプトも破棄されている。
当時の専門誌では、両端のディフューザの無い部分を、流速の速い空気がそのまま抜けて行くことで、ディフューザ部の空気引き抜き効果も高めているのではない無いかと言われていた。RB5もこれと同じ効果を狙っているのかどうか、興味深い。
もう一つは、昨年インダクションポット後方に尾ひれのように延びたシャークフィンを導入し、瞬く間に他チームに伝染させた始祖であるレッドブルだが、RB5では撤廃されている。
確かに、考えてみればリヤウィングの高さは800mmから950mmに上昇したわけで、インダクションポットがリヤウィングに与える影響は減っているはずだ。だったら、わずかでも重量増となる付加物は取り去ろうということなのだろうか。見渡してみると、あれだけ追従した他チームも、シャークフィンを残しているのはトヨタとルノーに限られる。
とにかくも、このRB5、非常に興味深いマシンだ。ヘレスでのテストでは、昨年最年少優勝を果たしたフェッテルが2009年型マシンのトップタイムをマークしている。この思い切ったコンセプトがハマれば、今年の台風の目になるかもしれない。エイドリアン・ニューウィー再び、を是非見てみたいものだ。
nobilesの投稿(23:32:00-2009-02-11) -
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