NOBILES Days
Jump to navigationThe Review of Formula One 2011
連休を前に、仕事でお世話になっているお客さん（と言ってもグループ会社内だけど）と忘年会をした。
例のアホのリーダーもしょうがないので呼んだ。
夏頃にはイライラさせられまくってたリーダーだが、丸投げされた仕事をちゃんとこなしていけば、意外にちゃんと評価に反映してくれることが分かって、多少俺の気分も緩和されていた。
だがこの人、酒が入るとさらにタチが悪くなるのだった。
まず、地理の話で間違ったことを言った女性を指差して、ことある度に「あ、バカ？バカ？」なんて繰り返しはじめた。他のグループから、わざわざ参加してくれたのに。
散々指刺されてバカ呼ばわりされた女性はその後、「...あの人って、あんなに厄介だったの？」とドン引きしていた。ま、失礼なのはシラフでも同じなんだよねえ、彼 (′Д`;。
そしてその後たまたま、以前本blogで触れた「オツボネさま」の話題になった。すると、よせばいいのに「あ、あ、君もだいぶやられてたよね？？」と俺のことを指差しはじめた。
あの件は、確かにお役所的だったり、ちょっと陰湿さを感じるオツボネの態度に当時は腹が立ったが、そもそもは俺が決まった手順を踏まなかったのが良くなかったと俺は思っている。件が収まった後は、お互い変な態度を引きずることなく接するようにもなった。
だから、「あれはまあ、しょうがないてすよ。こっちが...」と言おうとしたら、人の言葉を遮るように「あ、あ、あれは一緒にPC買った○○さんが矢面に立つべきですよねっ！」と、今度はその場にいた先輩を指差し始めた（鈍感な先輩は気づいていなかったけど）。
...いやいやいや。
他のグループの人がそう言うならまだ分かる。確かに先輩は俺に任せ切りだった。でも、ノートPCが欲しいと言って巻き込んでいったのは、どちらかというと俺の方なので、それはそれでしょうがなかったし、経緯を知らない人はそう感じるだけのことだ、ついても知ってるし、仮に矢面に立つならアンタであるべきじゃないの？そもそもその役割を考えれば、軽口を叩いてる場合ではなく、俺のやり方が間違っていたことを窘める（たしなめる）べきなんじゃないか？
挙句、お客さんもいるその場で「あ、お、俺、ヤツ嫌い！」と名指しでオツボネ批判を始めた。おいおいおいおい、まさか俺まで巻き込むつもりじゃねーだろーな？？
それでも、他は気が知れたメンバーなので、会は楽しく過ごせた。あのリーダーさえ、なあ...。
今年のF-1も先日のブラジルGPで終幕を迎えた。
Sebastian Vettel with Redbull RB7
例年以上に小欄でF-1を取り上げる機会が少なかった気もするが、別に見ていなかったわけではない。むしろほとんど全戦金曜フリー走行から見た。なにより、何か書き始めたら長くなるのが目に見えてるから触れなかった面はある。
さて、今年のF-1はセバスチャン・フェッテルとレッドブルが連覇した。15回ポールに11回優勝という記録的な強さだった。
レッドブルのマシンがいいから？もちろんだ。
しかし、僚友ウェバーが優勝1回に留まることを考えれば簡単にマシンだけの力とは言えない。若くて、お調子者のようにすら見えるフェッテルだが、誰よりも速く走るため必要なことに真摯に取り組み、努力を惜しまないことで知られる。タイトルはその成果だ。
特に今年は彼のピレリの使いこなし方がフォーカスされた。ウェバーと差が大きくついた一番の要因の一つだ。
さて、2011年で技術的に大きく変わった要素は、タイヤの他にDRSが挙げられよう。
Drag Reduction Systemは、リヤウィングのフラップを、ドライバーの操作により7cmまで跳ね上げることができる。つまり、ダウンフォースの必要がない直線で作動させればリヤウィングの抵抗が減ってトップスピードが伸びる。このシステムがルールによって導入された。
DRSは、予選まではコース全域で使えるが、決勝では定められたポイントで前車と1秒以内に接近していた時のみ、別に定められた区間で作動させることができる。
つまり、これはある種のオーバーテイク振興策である。
現代のF-1は空力性能もブレーキ性能もあまりに高度に洗練化されすぎて、いくら前車に接近しても追い越しが難しかった。コース側の変更でどうにかしようという動きもあったが、マシンの進化のスピードや、費用を考えれば効果は限定的と言わざるを得なかった。これを、こうしたデバイスを導入することでショーアップしようという狙いだ。
この策は奏功し、今年は例年にない数のオーバーテイクが見られた。しかし一方で、作られたオーバーテイクなどつまらないという批判も多かった。
ん？俺？
個人的にはDRSには好意的だ。DRSが有効になる1秒差を巡る攻防もスリリングだったし、結局DRSも道具なのだから、ドライバーやチームごとの使い方の違いも際立って興味深かった。
そもそもDRSは単純なオーバーテイクボタンではない。
'90年代前半に流行したオーバーテイクボタンは、ボタンを押した時に、小型の燃料タンクに収めた予選用の高出力ガソリンを使用するというものだった。もちろん、そのガソリンの開発にも難しさがあったろうが、仕組み自体は極めて簡単だ。今年復活したKARSも、重さや回生力に差はあれ、そこでほとんど差が出ないくらい、あっという間に技術的に煮詰まって、大して見るべきものがなくなってしまった。
一方DRSはかなり高度な空力開発を要求される。そう、DRS自体はルールで定められたが、その範囲内で開発し、使いこなすのは各チームの力量に依るのだ。
DRSの技術論に入ろう。
具体的には、DRSの作動時と非作動時のドラッグ変化量が大きいことが効果的とされた。つまり、DRS非作動時には、多少ドラッグが多くともしっかりとダウンフォースを稼ぎつつ、DRSが作動すればグッとダウンフォースとドラッグが減ってストレートスピードが伸びる。
これを実現するためには、リヤウィングのメインプレーンを、DRS作動時にギリギリストールするレベルに仕上げることが有効だった。つまり、フラップがないとウィングとして機能しなくなるほど強烈な曲率のプロファイルにするということだ。
フラップが下りていればMAXのダウンフォースを発生し、DRSが作動した途端、フラップのみならずメインプレーンもストールすれば、ドラックはさらに減ってストレートスピードがさらに伸びる。
が、これがまた奥深い。ストールするかしないかは、かなり微妙な領域なので、タイヤカスなとがウィングに付着すると、DRS非作動時にもストールしてダウンフォース不足に陥る現象に悩まされるチームもあった。
また、DRSはギヤのセッティングとも密接な関わりがあった。
つまり、せっかく効果の高いDRSを完成させたとしても、7速のギヤ比を高めにしておかないと、19000回転というエンジンのリミッターに当たってスピードが頭打ちになってしまう。だが、高すぎるギヤ比にすると、今度はDRS非作動時に、7速の伸びが鈍くなる。
何を重視するかでセッティングを大きく変えなければならないので、テストがない今のF-1においてフリー走行の重要度が一層高まった。
DRSを巧みに利用して、自車の弱点を克服したのがレッドブルである。
レッドブルはDRSを、最高速を伸ばすためでなく、ストレートに入ってからの加速力に利用した。そのために、7速のギヤ比を低めにした。結果、非力なルノーエンジンゆえに昨年まで苦手にしていた高速サーキットであるベルギーとイタリアでフェッテルがポールを獲得した。トップスピードが全車中ほぼ最下位のマシンでだ。
確かにトップスピードは遅い。しかし、ギヤ比が低めなので、その速度に達するまでの時間が他車より短いので、結果としてストレート全体にかかる時間が短縮できる。DRS、KARSの併用で、その加速力は爆発的になる。
その代わり、DRSを使ってもエンジンのリミッターにかかって頭打ちになってしまうので、ストレートエンドのブレーキング競争には使えない。マシンの総合力が高く、予選で前に出て戦える、つまり他車を追い抜く必要のないレッドブルだからこそ採れる作戦だ。
とにかく、少なくとも技術的にはDRSは面白い開発テーマであったし、それによって発生したバトルはわざとらしいどころか、駆け引きも見られて、なかなかスペクタクルだったと個人的には思う。
レッドブルの秀逸なバッケージングの一端は、強烈な前傾姿勢にも表れているだろう。
F-1のレギュレーションは、様々な空力部品の装着を制限するため、各部の寸法を細かく規定している。
このうち、高さ方向の基準となるのが、車体の底部分のレファレンスプレーンだ。俺の記憶では、1994年までは地上が基準だったものが、ステップドボトムの導入とともにレファレンスプレーン基準に変わったと記憶している。
マシンがレギュレーションに合致しているか調べる車検では、レファレンスプレーンからの距離を測定していく。
これを逆手にとったのがレッドブルだ。
このレファレンスプレーン自体を前傾させ、地上と並行ではないようにしたのだ。
これが何を意味するか？
前傾姿勢になると、前が沈み、後ろが上がる。つまり、フロントウィングが地上に近づき、ディフューザーは逆に高くなる。
これが実に理にかなっている。フロントウィングは地上に近づけば近づくほど、ベンチュリー効果によるグランドエフェクトが増してダウンフォースが増える。ディフューザーが高くなるということは、規定よりも大きな空間を確保し、これもあからさまにダウンフォースが増すことに寄与する。
ところが、車検では基準台にマシンを載せるのでレファレンスプレーンは水平になる。完全にレギュレーションを遵守したマシンなのだ。
解説者の小倉氏が鈴鹿で目撃したところによると、レッドブルのマシンは車検時にリヤタイヤを外さなければ、レファレンスプレーンが車検台に設置しなかったという。
このことから、レッドブルのディフューザーは他車より数cm程度高くなっていたと推測される。これを実現するためには、設計の最初の段階から計算に入れていなければ不可能だ。シーズン途中にマクラーレンやフェラーリも前傾セッティングを始めたようだが、そのゲインは2〜3cmの範囲だったと思われる。
また、今年も話題となったフロントウィングの「たわみ」についての研究ももっとも進んでいた。
すなわち、車検時に荷重をかけても基準以内のたわみしか発生しないのに、コースを走行してダウンフォースがかかると大きくたわんで地面に近づき、さらに強力なダウンフォースを得る仕組みだ。
他チームが違反の疑いを訴えたところ、むしろそのチームの方が問題があったほど、レッドブルのそれは作り込まれたものだった。
何より、今年一番のデバイスであるエキゾーストブローイングは、圧倒的な完成度を誇り、今年の独走の礎となった。
このようにレッドブルの速さは、エイドリアン・ニューウィーという絶対的なリーダーのもとで、様々な分野にわたって継続的な開発が行われている賜物だ。このことを知れば、レッドブルが独走しても、一言で「つまらない」とは言えなくなる。F-1とは実に奥深いスポーツなのである。
例のアホのリーダーもしょうがないので呼んだ。
夏頃にはイライラさせられまくってたリーダーだが、丸投げされた仕事をちゃんとこなしていけば、意外にちゃんと評価に反映してくれることが分かって、多少俺の気分も緩和されていた。
だがこの人、酒が入るとさらにタチが悪くなるのだった。
まず、地理の話で間違ったことを言った女性を指差して、ことある度に「あ、バカ？バカ？」なんて繰り返しはじめた。他のグループから、わざわざ参加してくれたのに。
散々指刺されてバカ呼ばわりされた女性はその後、「...あの人って、あんなに厄介だったの？」とドン引きしていた。ま、失礼なのはシラフでも同じなんだよねえ、彼 (′Д`;。
そしてその後たまたま、以前本blogで触れた「オツボネさま」の話題になった。すると、よせばいいのに「あ、あ、君もだいぶやられてたよね？？」と俺のことを指差しはじめた。
あの件は、確かにお役所的だったり、ちょっと陰湿さを感じるオツボネの態度に当時は腹が立ったが、そもそもは俺が決まった手順を踏まなかったのが良くなかったと俺は思っている。件が収まった後は、お互い変な態度を引きずることなく接するようにもなった。
だから、「あれはまあ、しょうがないてすよ。こっちが...」と言おうとしたら、人の言葉を遮るように「あ、あ、あれは一緒にPC買った○○さんが矢面に立つべきですよねっ！」と、今度はその場にいた先輩を指差し始めた（鈍感な先輩は気づいていなかったけど）。
...いやいやいや。
他のグループの人がそう言うならまだ分かる。確かに先輩は俺に任せ切りだった。でも、ノートPCが欲しいと言って巻き込んでいったのは、どちらかというと俺の方なので、それはそれでしょうがなかったし、経緯を知らない人はそう感じるだけのことだ、ついても知ってるし、仮に矢面に立つならアンタであるべきじゃないの？そもそもその役割を考えれば、軽口を叩いてる場合ではなく、俺のやり方が間違っていたことを窘める（たしなめる）べきなんじゃないか？
挙句、お客さんもいるその場で「あ、お、俺、ヤツ嫌い！」と名指しでオツボネ批判を始めた。おいおいおいおい、まさか俺まで巻き込むつもりじゃねーだろーな？？
それでも、他は気が知れたメンバーなので、会は楽しく過ごせた。あのリーダーさえ、なあ...。
今年のF-1も先日のブラジルGPで終幕を迎えた。
Sebastian Vettel with Redbull RB7
例年以上に小欄でF-1を取り上げる機会が少なかった気もするが、別に見ていなかったわけではない。むしろほとんど全戦金曜フリー走行から見た。なにより、何か書き始めたら長くなるのが目に見えてるから触れなかった面はある。
さて、今年のF-1はセバスチャン・フェッテルとレッドブルが連覇した。15回ポールに11回優勝という記録的な強さだった。
レッドブルのマシンがいいから？もちろんだ。
しかし、僚友ウェバーが優勝1回に留まることを考えれば簡単にマシンだけの力とは言えない。若くて、お調子者のようにすら見えるフェッテルだが、誰よりも速く走るため必要なことに真摯に取り組み、努力を惜しまないことで知られる。タイトルはその成果だ。
特に今年は彼のピレリの使いこなし方がフォーカスされた。ウェバーと差が大きくついた一番の要因の一つだ。
さて、2011年で技術的に大きく変わった要素は、タイヤの他にDRSが挙げられよう。
Drag Reduction Systemは、リヤウィングのフラップを、ドライバーの操作により7cmまで跳ね上げることができる。つまり、ダウンフォースの必要がない直線で作動させればリヤウィングの抵抗が減ってトップスピードが伸びる。このシステムがルールによって導入された。
DRSは、予選まではコース全域で使えるが、決勝では定められたポイントで前車と1秒以内に接近していた時のみ、別に定められた区間で作動させることができる。
つまり、これはある種のオーバーテイク振興策である。
現代のF-1は空力性能もブレーキ性能もあまりに高度に洗練化されすぎて、いくら前車に接近しても追い越しが難しかった。コース側の変更でどうにかしようという動きもあったが、マシンの進化のスピードや、費用を考えれば効果は限定的と言わざるを得なかった。これを、こうしたデバイスを導入することでショーアップしようという狙いだ。
この策は奏功し、今年は例年にない数のオーバーテイクが見られた。しかし一方で、作られたオーバーテイクなどつまらないという批判も多かった。
ん？俺？
個人的にはDRSには好意的だ。DRSが有効になる1秒差を巡る攻防もスリリングだったし、結局DRSも道具なのだから、ドライバーやチームごとの使い方の違いも際立って興味深かった。
そもそもDRSは単純なオーバーテイクボタンではない。
'90年代前半に流行したオーバーテイクボタンは、ボタンを押した時に、小型の燃料タンクに収めた予選用の高出力ガソリンを使用するというものだった。もちろん、そのガソリンの開発にも難しさがあったろうが、仕組み自体は極めて簡単だ。今年復活したKARSも、重さや回生力に差はあれ、そこでほとんど差が出ないくらい、あっという間に技術的に煮詰まって、大して見るべきものがなくなってしまった。
一方DRSはかなり高度な空力開発を要求される。そう、DRS自体はルールで定められたが、その範囲内で開発し、使いこなすのは各チームの力量に依るのだ。
DRSの技術論に入ろう。
具体的には、DRSの作動時と非作動時のドラッグ変化量が大きいことが効果的とされた。つまり、DRS非作動時には、多少ドラッグが多くともしっかりとダウンフォースを稼ぎつつ、DRSが作動すればグッとダウンフォースとドラッグが減ってストレートスピードが伸びる。
これを実現するためには、リヤウィングのメインプレーンを、DRS作動時にギリギリストールするレベルに仕上げることが有効だった。つまり、フラップがないとウィングとして機能しなくなるほど強烈な曲率のプロファイルにするということだ。
フラップが下りていればMAXのダウンフォースを発生し、DRSが作動した途端、フラップのみならずメインプレーンもストールすれば、ドラックはさらに減ってストレートスピードがさらに伸びる。
が、これがまた奥深い。ストールするかしないかは、かなり微妙な領域なので、タイヤカスなとがウィングに付着すると、DRS非作動時にもストールしてダウンフォース不足に陥る現象に悩まされるチームもあった。
また、DRSはギヤのセッティングとも密接な関わりがあった。
つまり、せっかく効果の高いDRSを完成させたとしても、7速のギヤ比を高めにしておかないと、19000回転というエンジンのリミッターに当たってスピードが頭打ちになってしまう。だが、高すぎるギヤ比にすると、今度はDRS非作動時に、7速の伸びが鈍くなる。
何を重視するかでセッティングを大きく変えなければならないので、テストがない今のF-1においてフリー走行の重要度が一層高まった。
DRSを巧みに利用して、自車の弱点を克服したのがレッドブルである。
レッドブルはDRSを、最高速を伸ばすためでなく、ストレートに入ってからの加速力に利用した。そのために、7速のギヤ比を低めにした。結果、非力なルノーエンジンゆえに昨年まで苦手にしていた高速サーキットであるベルギーとイタリアでフェッテルがポールを獲得した。トップスピードが全車中ほぼ最下位のマシンでだ。
確かにトップスピードは遅い。しかし、ギヤ比が低めなので、その速度に達するまでの時間が他車より短いので、結果としてストレート全体にかかる時間が短縮できる。DRS、KARSの併用で、その加速力は爆発的になる。
その代わり、DRSを使ってもエンジンのリミッターにかかって頭打ちになってしまうので、ストレートエンドのブレーキング競争には使えない。マシンの総合力が高く、予選で前に出て戦える、つまり他車を追い抜く必要のないレッドブルだからこそ採れる作戦だ。
とにかく、少なくとも技術的にはDRSは面白い開発テーマであったし、それによって発生したバトルはわざとらしいどころか、駆け引きも見られて、なかなかスペクタクルだったと個人的には思う。
レッドブルの秀逸なバッケージングの一端は、強烈な前傾姿勢にも表れているだろう。
F-1のレギュレーションは、様々な空力部品の装着を制限するため、各部の寸法を細かく規定している。
このうち、高さ方向の基準となるのが、車体の底部分のレファレンスプレーンだ。俺の記憶では、1994年までは地上が基準だったものが、ステップドボトムの導入とともにレファレンスプレーン基準に変わったと記憶している。
マシンがレギュレーションに合致しているか調べる車検では、レファレンスプレーンからの距離を測定していく。
これを逆手にとったのがレッドブルだ。
このレファレンスプレーン自体を前傾させ、地上と並行ではないようにしたのだ。
これが何を意味するか？
前傾姿勢になると、前が沈み、後ろが上がる。つまり、フロントウィングが地上に近づき、ディフューザーは逆に高くなる。
これが実に理にかなっている。フロントウィングは地上に近づけば近づくほど、ベンチュリー効果によるグランドエフェクトが増してダウンフォースが増える。ディフューザーが高くなるということは、規定よりも大きな空間を確保し、これもあからさまにダウンフォースが増すことに寄与する。
ところが、車検では基準台にマシンを載せるのでレファレンスプレーンは水平になる。完全にレギュレーションを遵守したマシンなのだ。
解説者の小倉氏が鈴鹿で目撃したところによると、レッドブルのマシンは車検時にリヤタイヤを外さなければ、レファレンスプレーンが車検台に設置しなかったという。
このことから、レッドブルのディフューザーは他車より数cm程度高くなっていたと推測される。これを実現するためには、設計の最初の段階から計算に入れていなければ不可能だ。シーズン途中にマクラーレンやフェラーリも前傾セッティングを始めたようだが、そのゲインは2〜3cmの範囲だったと思われる。
また、今年も話題となったフロントウィングの「たわみ」についての研究ももっとも進んでいた。
すなわち、車検時に荷重をかけても基準以内のたわみしか発生しないのに、コースを走行してダウンフォースがかかると大きくたわんで地面に近づき、さらに強力なダウンフォースを得る仕組みだ。
他チームが違反の疑いを訴えたところ、むしろそのチームの方が問題があったほど、レッドブルのそれは作り込まれたものだった。
何より、今年一番のデバイスであるエキゾーストブローイングは、圧倒的な完成度を誇り、今年の独走の礎となった。
このようにレッドブルの速さは、エイドリアン・ニューウィーという絶対的なリーダーのもとで、様々な分野にわたって継続的な開発が行われている賜物だ。このことを知れば、レッドブルが独走しても、一言で「つまらない」とは言えなくなる。F-1とは実に奥深いスポーツなのである。
nobilesの投稿(23:46:02-2011-12-27) -
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