NOBILES Days
Jump to navigationLotus Blossoms(3) --- Prologue of Lotus79
今日は北埼玉の事業所へ出張した。家からだと3時間以上かかるので、5時起きである。暗い。こんなの朝じゃない。真夜中だ。
そして、寒い。車内や室内でも、どこからか冷気が入ってきている感じだった。夏は記録的な暑さで話題になるくせに、これだから盆地は、とひとりごちたものだ。
年明けてからこっち、忙しい忙しいと思ってたが、それでもまだまだ余裕ある生活だったんだな。今日はハードだった。 風邪ぶり返したんじゃないか？
「変な顔、変な顔〜」じゃれあう姉妹（一方的）
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/40sec, F2.5, ISO800)
さて、「食玩ロータスF-1を勝手に解説コーナー」2台目は、その強さ、美しいフォルム、そして黒いカラーリングから「ブラックビューティ」と呼ばれた不朽の名車79だ。
時代背景からいこう。
前回紹介したウェッジシェイプ72以外にも、各チームはエアログリップ、つまりダウンフォースを獲得しようと様々なトライをした。
たとえば、1970年にデビューしたMarchのF-1処女作701は、（72とは違い）フロントラジエターの旧来のスタイルながら、マシンのサイドに、ウィング状に整形した構造体を備えていた。これは、燃料タンクを内蔵していたのだが、ダウンフォースを得ようという狙いは明らかだった。
March 701
701は、表彰台を獲得するなど、初年度としてはまずまずの成績を挙げた。しかしながら、このウィング状の構造体の効能はほとんど無かった。なぜなら、負圧となってダウンフォースを生むべきウィング下面に、サイドから空気が入り込んでくるため、ほとんど負圧は発生していなかったと想像されるからだ。これだけ翼弦が長く巨大だと、ウィングとしての効率は非常に低い。
一方、開発の現場では風洞実験が急速に一般的になっていった。
72の影響もあり、F-1マシンは円筒状の葉巻型から、角張った箱型へと変容して行く。
ウェッジシェイプのために生まれたサイドポンツーンであったが、フロントタイヤとリヤタイヤの間を埋める形となり、急激な体積変化がなくなることによる空気抵抗の削減という効果もあったのだ。
72とは違う路線として、フロントタイヤの前に、巨大な流線形のパーツを取り付ける「スポーツカーノーズ」も広く流行した。フロントタイヤを隠すことによる空気抵抗の削減と同時にノーズ自体でもダウンフォースの獲得が見込めた。ノーズの中にラジエターを収めるのがセオリーで、だからこの時代は、シェイプこそ箱型となったが、サイドラジエターはまだ少数派で、依然フロントラジエターが主流だった。それでも、単純な葉巻型は淘汰され、何らかの構造体をサイドに置いたマシンが増えた。
スポーツカーノーズのTyrell003と、ウェッジウェイプ化したFerrari312
さてさて、Lotusに話を戻そう。実はLotusは、72の後継機の開発に苦しんでいた。
1974年にデビューした76は、ドライバーがシフトレバーを操作すれば自動でクラッチが切れる、後世の装備で言えばセミオートマチックミッションに近い、電磁クラッチを搭載した意欲作だった。
ところがこれがトラブル続きで、ドライバーのフィーリングも良くなかったため、数戦で引っ込められて72が再び引っ張り出されることになってしまった。
Lotus76
さらに1976年に投入された77では、セッティングを自由に行えることをコンセプトに、コースによって容易にホイールベースやトレッドを変えられるようになっていた。
サスペンションも、72のトーションバースプリングに替え、特性が分かりやすいコイルスプリングとし、さらにメンテしやすいよう車体の外側に置かれる無骨なものになった。それは、とても空力に気を使っているようには感じられるものではなかった。
77自体も、初めて日本で開かれたF-1で優勝はしたが、成功作とまでは言えない成績だった。ホイールベースやトレッドも、ロング＆ワイドで固定になった。しかし、77では「フリーセッティング」以外にも、新たな取り組みが数多く行われていた。
まず、それまでは2つのチューブを並行に並べ、バルクヘッド（隔壁）で繋げたツインチューブラーモノコックが一般的だった中で、1つのチューブ自体で形成する、シングルチューブラーモノコックを採用した。これにより、大幅な軽量化はもちろん、非常に細身なモノコックに仕上がった。フロントサスが剥き出しなのは、モノコックが細すぎるためだった。
さらに、途中からサイドポンツーン下端にブラシが取り付けられた。かなり間抜けな外観なのだが、これには後のマシンに繋がる大きな意味があった。
Lotus77
この頃、とりわけトップチームの開発者たちは風洞実験などで、ウィングではなく、車体自体にダウンフォースが発生する現象に気づき始めていた。
たとえば、当時Brabhamチームの新進気鋭のデザイナーだったゴードン・マーレイだ。
マーレイは、BT42というマシンで、モノコックの断面を三角形（実際には台形状）として、大幅に強度を上げつつ軽量化を果たしていた（トライアンギュラーモノコック）。
マーレイはこのモノコックの前よりの底面付近に（今のF-1マシンのモノコック基部のように） V字パネルを配して、マシンの底に空気が入り込まないようにすると、急激にダウンフォースが増えることに気付いた。
これは、マシンの底に空気を入り込まなくすることで、マシンの底面に負圧を発生させていたことになる。トライアンギュラーモノコックの形状自体も底面の空気を排斥する働きがあったと思われる。
だが当時、なぜダウンフォースが増えたのか、マーレイも理解できていなかったようだが、ここにこそ対地効果＝グランドエフェクトの萌芽があった。
Brabham BT42
ロータスではさらに具体的な狙いを持って研究を続けていた。その中心人物は、あの「サイドウィング」March701を開発したピーター・ライトだった。
ロータスに移籍してからも、ライトはサイドポンツーンをウィング形状としてダウンフォースを獲得する研究を続けていた。
その中で、翼端板のようなものをつけたモデルで風洞実験をしていると、急にダウンフォースが増えた。すると、モデルの翼端板がずり落ちて地面と接していた。偶然ではあるが、空気をシールしてやることが重要だということに気づいたのだ。
そこで、先述の77のサイドに取り付けられたブラシである。このような可動する部品を底面に装着してレギュレーション違反にならないか、実戦で確かめたのである。したたかな戦略だ。
そしてロータスは、1977年に投入した78でついに、サイドポンツーンをウィング形状として、その側面をパネルでシールした、通称「ウィングカー」を実現した。
この実現には、ボディの横幅を大幅に狭くできる、77で投入したシングルチューブラーモノコックが不可欠だった。姿は大きく異なっても、モノコックといい、ブラシといい、77は78を産んだ偉大な母だったことが分かる。
Lotus78
この年78は、アメリカ人のスタードライバー、マリオ・アンドレッティのドライブで3勝を挙げた。その間、サイドのブラシは、ゴムスカートに換装され、マシン底面の気密性が上がると同時に、性能も飛躍的に向上した。
しかし、他チームはまだ、このマシンが速い理由がサイドポンツーンにあるとはあまり考えていなかった。そこは、コーリン・チャップマンの話術もあった。アンドレッティのテクニックに加え、優先ドレインシステムやLSDなど、78は他にも先進的な装備を持っていたので、それらを大々的にアピールして煙に巻いていた。
それに、78のサイドポンツーンも完成されたものではなかった。なぜなら、それはかなりウィングに近いものとして設計されたからだ。
しかし、実際に78のサイドポンツーンで起きていたのはウィングの効果ではなかった。地面とウィング状の凸面との間に、霧吹きの原理と同じ、ベンチュリー効果が生んだ負圧によって両者を引き寄せる力（グランドエフェクト）が発生していたのだ。
だから、78から始まる一連のマシンを「ウィングカー」と称するのは理論的には誤りである。ここでは「ベンチュリーカー」と呼ぶ。
ベンチュリーを完璧には理解できず、ウィングの延長として設計された78ではダウンフォースの発生ポイントが前過ぎた。結果、リヤのダウンフォースが不足して、リヤウィングを立てざるを得ず、コーナーリングはオンザレールながら、空気抵抗が大きく、直線スピードがとても遅いマシンに成り下がってしまったのだった。 それでも5勝を挙げ、'77年最速マシンであることは証明した。
やっと79に辿り着いた (′Д`;。
というわけで、1車種1回で終らず、つづく (^_^;。
そして、寒い。車内や室内でも、どこからか冷気が入ってきている感じだった。夏は記録的な暑さで話題になるくせに、これだから盆地は、とひとりごちたものだ。
年明けてからこっち、忙しい忙しいと思ってたが、それでもまだまだ余裕ある生活だったんだな。今日はハードだった。 風邪ぶり返したんじゃないか？
「変な顔、変な顔〜」じゃれあう姉妹（一方的）
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/40sec, F2.5, ISO800)
さて、「食玩ロータスF-1を勝手に解説コーナー」2台目は、その強さ、美しいフォルム、そして黒いカラーリングから「ブラックビューティ」と呼ばれた不朽の名車79だ。
時代背景からいこう。
前回紹介したウェッジシェイプ72以外にも、各チームはエアログリップ、つまりダウンフォースを獲得しようと様々なトライをした。
たとえば、1970年にデビューしたMarchのF-1処女作701は、（72とは違い）フロントラジエターの旧来のスタイルながら、マシンのサイドに、ウィング状に整形した構造体を備えていた。これは、燃料タンクを内蔵していたのだが、ダウンフォースを得ようという狙いは明らかだった。
March 701
701は、表彰台を獲得するなど、初年度としてはまずまずの成績を挙げた。しかしながら、このウィング状の構造体の効能はほとんど無かった。なぜなら、負圧となってダウンフォースを生むべきウィング下面に、サイドから空気が入り込んでくるため、ほとんど負圧は発生していなかったと想像されるからだ。これだけ翼弦が長く巨大だと、ウィングとしての効率は非常に低い。
一方、開発の現場では風洞実験が急速に一般的になっていった。
72の影響もあり、F-1マシンは円筒状の葉巻型から、角張った箱型へと変容して行く。
ウェッジシェイプのために生まれたサイドポンツーンであったが、フロントタイヤとリヤタイヤの間を埋める形となり、急激な体積変化がなくなることによる空気抵抗の削減という効果もあったのだ。
72とは違う路線として、フロントタイヤの前に、巨大な流線形のパーツを取り付ける「スポーツカーノーズ」も広く流行した。フロントタイヤを隠すことによる空気抵抗の削減と同時にノーズ自体でもダウンフォースの獲得が見込めた。ノーズの中にラジエターを収めるのがセオリーで、だからこの時代は、シェイプこそ箱型となったが、サイドラジエターはまだ少数派で、依然フロントラジエターが主流だった。それでも、単純な葉巻型は淘汰され、何らかの構造体をサイドに置いたマシンが増えた。
スポーツカーノーズのTyrell003と、ウェッジウェイプ化したFerrari312
さてさて、Lotusに話を戻そう。実はLotusは、72の後継機の開発に苦しんでいた。
1974年にデビューした76は、ドライバーがシフトレバーを操作すれば自動でクラッチが切れる、後世の装備で言えばセミオートマチックミッションに近い、電磁クラッチを搭載した意欲作だった。
ところがこれがトラブル続きで、ドライバーのフィーリングも良くなかったため、数戦で引っ込められて72が再び引っ張り出されることになってしまった。
Lotus76
さらに1976年に投入された77では、セッティングを自由に行えることをコンセプトに、コースによって容易にホイールベースやトレッドを変えられるようになっていた。
サスペンションも、72のトーションバースプリングに替え、特性が分かりやすいコイルスプリングとし、さらにメンテしやすいよう車体の外側に置かれる無骨なものになった。それは、とても空力に気を使っているようには感じられるものではなかった。
77自体も、初めて日本で開かれたF-1で優勝はしたが、成功作とまでは言えない成績だった。ホイールベースやトレッドも、ロング＆ワイドで固定になった。しかし、77では「フリーセッティング」以外にも、新たな取り組みが数多く行われていた。
まず、それまでは2つのチューブを並行に並べ、バルクヘッド（隔壁）で繋げたツインチューブラーモノコックが一般的だった中で、1つのチューブ自体で形成する、シングルチューブラーモノコックを採用した。これにより、大幅な軽量化はもちろん、非常に細身なモノコックに仕上がった。フロントサスが剥き出しなのは、モノコックが細すぎるためだった。
さらに、途中からサイドポンツーン下端にブラシが取り付けられた。かなり間抜けな外観なのだが、これには後のマシンに繋がる大きな意味があった。
Lotus77
この頃、とりわけトップチームの開発者たちは風洞実験などで、ウィングではなく、車体自体にダウンフォースが発生する現象に気づき始めていた。
たとえば、当時Brabhamチームの新進気鋭のデザイナーだったゴードン・マーレイだ。
マーレイは、BT42というマシンで、モノコックの断面を三角形（実際には台形状）として、大幅に強度を上げつつ軽量化を果たしていた（トライアンギュラーモノコック）。
マーレイはこのモノコックの前よりの底面付近に（今のF-1マシンのモノコック基部のように） V字パネルを配して、マシンの底に空気が入り込まないようにすると、急激にダウンフォースが増えることに気付いた。
これは、マシンの底に空気を入り込まなくすることで、マシンの底面に負圧を発生させていたことになる。トライアンギュラーモノコックの形状自体も底面の空気を排斥する働きがあったと思われる。
だが当時、なぜダウンフォースが増えたのか、マーレイも理解できていなかったようだが、ここにこそ対地効果＝グランドエフェクトの萌芽があった。
Brabham BT42
ロータスではさらに具体的な狙いを持って研究を続けていた。その中心人物は、あの「サイドウィング」March701を開発したピーター・ライトだった。
ロータスに移籍してからも、ライトはサイドポンツーンをウィング形状としてダウンフォースを獲得する研究を続けていた。
その中で、翼端板のようなものをつけたモデルで風洞実験をしていると、急にダウンフォースが増えた。すると、モデルの翼端板がずり落ちて地面と接していた。偶然ではあるが、空気をシールしてやることが重要だということに気づいたのだ。
そこで、先述の77のサイドに取り付けられたブラシである。このような可動する部品を底面に装着してレギュレーション違反にならないか、実戦で確かめたのである。したたかな戦略だ。
そしてロータスは、1977年に投入した78でついに、サイドポンツーンをウィング形状として、その側面をパネルでシールした、通称「ウィングカー」を実現した。
この実現には、ボディの横幅を大幅に狭くできる、77で投入したシングルチューブラーモノコックが不可欠だった。姿は大きく異なっても、モノコックといい、ブラシといい、77は78を産んだ偉大な母だったことが分かる。
Lotus78
この年78は、アメリカ人のスタードライバー、マリオ・アンドレッティのドライブで3勝を挙げた。その間、サイドのブラシは、ゴムスカートに換装され、マシン底面の気密性が上がると同時に、性能も飛躍的に向上した。
しかし、他チームはまだ、このマシンが速い理由がサイドポンツーンにあるとはあまり考えていなかった。そこは、コーリン・チャップマンの話術もあった。アンドレッティのテクニックに加え、優先ドレインシステムやLSDなど、78は他にも先進的な装備を持っていたので、それらを大々的にアピールして煙に巻いていた。
それに、78のサイドポンツーンも完成されたものではなかった。なぜなら、それはかなりウィングに近いものとして設計されたからだ。
しかし、実際に78のサイドポンツーンで起きていたのはウィングの効果ではなかった。地面とウィング状の凸面との間に、霧吹きの原理と同じ、ベンチュリー効果が生んだ負圧によって両者を引き寄せる力（グランドエフェクト）が発生していたのだ。
だから、78から始まる一連のマシンを「ウィングカー」と称するのは理論的には誤りである。ここでは「ベンチュリーカー」と呼ぶ。
ベンチュリーを完璧には理解できず、ウィングの延長として設計された78ではダウンフォースの発生ポイントが前過ぎた。結果、リヤのダウンフォースが不足して、リヤウィングを立てざるを得ず、コーナーリングはオンザレールながら、空気抵抗が大きく、直線スピードがとても遅いマシンに成り下がってしまったのだった。 それでも5勝を挙げ、'77年最速マシンであることは証明した。
やっと79に辿り着いた (′Д`;。
というわけで、1車種1回で終らず、つづく (^_^;。
nobilesの投稿(23:40:52-2012-01-27) -
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