NOBILES Days
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別れは突然だった。
君は、最期まで僕を庇い、そして死んだ。
Harley Davidson Neo Racing2
(PentaxK-3, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/160sec, F4.0, ISO100)
君と出会ったのは、もう15年前だ。僕がヨメさんと付き合い始めたのとほとんど時を同じくしている。
寮から会社までの6.4kmを自転車通勤しようと思い立ち、君を買った。折しもネットオークションにハマっていた頃、神戸だかの自転車屋から買った。ボディの絶妙の曲線や、「えっ、チャリなのにハーレー？」という意外性が僕のツボにどハマりだった。
Harley Davidson Neo Racing2
一応「MTBスタイル」ということだったが、正直、まあありがちな「カッコだけ」のものではあったことは否定できない。価格は3万円台でMTBとしては安価だったが、その分あらゆるパーツのグレードは低かった。「ハーレー」を名乗ってはいるが、まあ名前だけライセンスだったのだろう。
特に海外製のグリップ型のギアセレクターがイマイチで、1年以内に5回ほど壊れて初期不良で直す羽目になった（店は遠くても提携店で対応してくれた）。結局、販売店側が業を煮やしてShimano製のスティックタイプに交換したところ、パタリと壊れなくなった。
当時はお茶畑の真ん中を走って通勤していた
(RicohRDC-7S(7.5mm), ProgramMode, 1/549sec, F5.3)
それから3年間、僕が結婚するまで君は活躍した。だが、寮から出る引っ越しの際、同僚たちに頼んだので、一般車では君を載せられなかった。結果、数ヶ月間寮に置き去りにしてしまった。
それでも、その頃僕はチャリ通以外運動をしていなかったので、新居からチャリ通したくなって、君を回収しに行った。知らない道を16km自走して帰ったのは冒険だった。
結婚してから住んだ家から会社までは10km強、しかも結構な谷地形を超えていくのでハードだった。それでも、通い始めてみたら、5駅乗って15分歩く電車通勤より、自由が利くチャリ通の方が快適になった。だが、往復で20km以上毎日走っていたら、タイヤはあっという間にダメになった。通勤中にタイヤが消耗して穴が空いて走れなくなったことが2回ほどある。
だが、会社が移転することになって、僕たちも引っ越すことになった。
今度は会社まで23kmもあるところに住むことになった。さすがにチャリだけでは無理だと思い、大きな駅までをチャリにしようと思ったが、これまでとは比べものにならないくらい坂がキツく、歩いた方がマシという結論に至った。
結果、また君のことは軒先で2年ほど放置することになってしまった。子どもができて今の家に引っ越す頃には、君はボロボロに朽ちてしまっていた。
しかもその時僕は右膝の腱を切る怪我をして君に乗れる状態ではなかった。だが、そのリハビリ過程でチャリが好都合と聞き、チャリ屋で君をフルリフレッシュしてもらった。サドルからギヤとブレーキのワイヤー、タイヤまで替えて、ママチャリが買えるくらいの値段になった。
Harley Davidson Neo Racing2
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/400sec, F2.5, ISO100)
それからの6年間は、その修理費に見合った大車輪の活躍だった。他の交通機関が、時間的制約が強かったり混雑したりして、チャリ通と比べ著しく快適性が劣っていたからだ。余程の大雨でない限りはカッパを着てでも君と往復した。おかげで僕の大腿筋は人に驚かれるほど発達した。
...だが、その日々も僕の判断ミスによって突然幕を閉じた。
君の前輪はもう自由が利かなくなってしまった。君が衝撃をほとんど被ったから、僕はほぼ無傷で済んだ。
もともと距離を走っていたし何度か転倒もしていたから、この6年間に限っても君はいろいろ傷んではいた。タイヤは3回、ギヤ周りも2回丸ごと交換した。ペダルもベアリングがダメになって換えた。リヤフェンダーも金属疲労で脱落したな。それでも、その度に直してきた。
だが今回ばかりはかなりの重症だ。
もちろん、全部交換すれば一応は直るだろう。でも一方では、購入から15年を超え、推定走行距離も4万kmとなって、さすがに「くたびれ」が見えていた君に、いつ退役してもらうのか、タイミングを図っていたところはある。残念な形ではあるが、もう今がその時なのかもしれないと、思い至った。
Harley Davidson Neo Racing2
(Panasonic DMC-GM5, Lumix G Vario 12-32/F3.5-5.6(32.0mm), 1/60sec, F6.3, ISO200)
君と過ごした時間は、ほとんどが単なる通勤で定常コースを往復するものだった。でもその時々で僕は様々な思いを抱えながら君を漕いだ。君のボディにはそれが染みついている。
それに、定常コースであっても、四季の移ろいを感じることはできた。梅が咲き、桜が舞い、猛暑に汗をかき、紅葉の下を走り、庭の霜柱を踏みしめながら出かけた。今は、そうした何気ない思い出が愛おしくすらある。
だから、次に乗る君の後継車も、君と同じくらい長く乗りたいと思っている。そして、今度は君のような形での退役はさせまい。そう、誓っている。
嗚呼、愛しき君よ、どうか安らかに。
永い間、ありがとう。
それにしても、君と同じだけ後継車を乗った場合の自分の年齢を計算して目眩がしたよ。
君は、最期まで僕を庇い、そして死んだ。
Harley Davidson Neo Racing2
(PentaxK-3, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/160sec, F4.0, ISO100)
君と出会ったのは、もう15年前だ。僕がヨメさんと付き合い始めたのとほとんど時を同じくしている。
寮から会社までの6.4kmを自転車通勤しようと思い立ち、君を買った。折しもネットオークションにハマっていた頃、神戸だかの自転車屋から買った。ボディの絶妙の曲線や、「えっ、チャリなのにハーレー？」という意外性が僕のツボにどハマりだった。
Harley Davidson Neo Racing2
一応「MTBスタイル」ということだったが、正直、まあありがちな「カッコだけ」のものではあったことは否定できない。価格は3万円台でMTBとしては安価だったが、その分あらゆるパーツのグレードは低かった。「ハーレー」を名乗ってはいるが、まあ名前だけライセンスだったのだろう。
特に海外製のグリップ型のギアセレクターがイマイチで、1年以内に5回ほど壊れて初期不良で直す羽目になった（店は遠くても提携店で対応してくれた）。結局、販売店側が業を煮やしてShimano製のスティックタイプに交換したところ、パタリと壊れなくなった。
当時はお茶畑の真ん中を走って通勤していた
(RicohRDC-7S(7.5mm), ProgramMode, 1/549sec, F5.3)
それから3年間、僕が結婚するまで君は活躍した。だが、寮から出る引っ越しの際、同僚たちに頼んだので、一般車では君を載せられなかった。結果、数ヶ月間寮に置き去りにしてしまった。
それでも、その頃僕はチャリ通以外運動をしていなかったので、新居からチャリ通したくなって、君を回収しに行った。知らない道を16km自走して帰ったのは冒険だった。
結婚してから住んだ家から会社までは10km強、しかも結構な谷地形を超えていくのでハードだった。それでも、通い始めてみたら、5駅乗って15分歩く電車通勤より、自由が利くチャリ通の方が快適になった。だが、往復で20km以上毎日走っていたら、タイヤはあっという間にダメになった。通勤中にタイヤが消耗して穴が空いて走れなくなったことが2回ほどある。
だが、会社が移転することになって、僕たちも引っ越すことになった。
今度は会社まで23kmもあるところに住むことになった。さすがにチャリだけでは無理だと思い、大きな駅までをチャリにしようと思ったが、これまでとは比べものにならないくらい坂がキツく、歩いた方がマシという結論に至った。
結果、また君のことは軒先で2年ほど放置することになってしまった。子どもができて今の家に引っ越す頃には、君はボロボロに朽ちてしまっていた。
しかもその時僕は右膝の腱を切る怪我をして君に乗れる状態ではなかった。だが、そのリハビリ過程でチャリが好都合と聞き、チャリ屋で君をフルリフレッシュしてもらった。サドルからギヤとブレーキのワイヤー、タイヤまで替えて、ママチャリが買えるくらいの値段になった。
Harley Davidson Neo Racing2
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/400sec, F2.5, ISO100)
それからの6年間は、その修理費に見合った大車輪の活躍だった。他の交通機関が、時間的制約が強かったり混雑したりして、チャリ通と比べ著しく快適性が劣っていたからだ。余程の大雨でない限りはカッパを着てでも君と往復した。おかげで僕の大腿筋は人に驚かれるほど発達した。
...だが、その日々も僕の判断ミスによって突然幕を閉じた。
君の前輪はもう自由が利かなくなってしまった。君が衝撃をほとんど被ったから、僕はほぼ無傷で済んだ。
もともと距離を走っていたし何度か転倒もしていたから、この6年間に限っても君はいろいろ傷んではいた。タイヤは3回、ギヤ周りも2回丸ごと交換した。ペダルもベアリングがダメになって換えた。リヤフェンダーも金属疲労で脱落したな。それでも、その度に直してきた。
だが今回ばかりはかなりの重症だ。
もちろん、全部交換すれば一応は直るだろう。でも一方では、購入から15年を超え、推定走行距離も4万kmとなって、さすがに「くたびれ」が見えていた君に、いつ退役してもらうのか、タイミングを図っていたところはある。残念な形ではあるが、もう今がその時なのかもしれないと、思い至った。
Harley Davidson Neo Racing2
(Panasonic DMC-GM5, Lumix G Vario 12-32/F3.5-5.6(32.0mm), 1/60sec, F6.3, ISO200)
君と過ごした時間は、ほとんどが単なる通勤で定常コースを往復するものだった。でもその時々で僕は様々な思いを抱えながら君を漕いだ。君のボディにはそれが染みついている。
それに、定常コースであっても、四季の移ろいを感じることはできた。梅が咲き、桜が舞い、猛暑に汗をかき、紅葉の下を走り、庭の霜柱を踏みしめながら出かけた。今は、そうした何気ない思い出が愛おしくすらある。
だから、次に乗る君の後継車も、君と同じくらい長く乗りたいと思っている。そして、今度は君のような形での退役はさせまい。そう、誓っている。
嗚呼、愛しき君よ、どうか安らかに。
永い間、ありがとう。
それにしても、君と同じだけ後継車を乗った場合の自分の年齢を計算して目眩がしたよ。
nobilesの投稿(23:03:40-2016-02-17) -
カテゴリ: Bicycle
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