NOBILES Days
Jump to navigationLotus Blossoms(5) --- Porpoise on the road
長女が保育園で進級した。
通っている保育園は、幼稚園と同じ年齢になると制服になる。一応着るかどうかは自由だけど。
着てみればとても可愛いのだが（親バカ）、なかなか気難しモード中な長女はなかなか着てくれないらしい。
保母さんも新しく入った人ばかりで、お迎え時間などはドタバタらしい。多分、子供にもストレスになってることだろう。
でも思えば2年前は俺＝転職、嫁さん＝育休から復帰、長女＝保育園に入園と3人とも新環境でイッパイイッパイだった。
そう考えれば、この年度開始は落ち着いたもんだね。
Daughter and Lotus81
(PentaxLX, PentaxFA43mmLimitedF1.9)
さて、「食玩Lotus F-1モデル勝手に解説」コーナーだが...失敗したなー。一番オイしいモデル、79が2台目にきちゃったから、残りの4台は絶対同じテンションでは行けない (^_^;。
ってか79の回から何週空いてんだ orz。
まあいいや、せっかくのネタだから、マターリと連載を継続しよう。
今回は、この食玩シリーズでたまたま俺が最初に買った1台、Lotus81である。
んー。正直、このシリーズ6台のうちの1台として、なぜ81が選ばれたのか、全然分からない。他の5台はツッコミどころがあろうと、それなりに理由が見つかるからだ。81はタイトルどころか1勝もしてないし、エポックメイキングでもないし...。
ま、とりあえず前回の79の時代から81の時代までの流れを述べていこう。
79の大成功を受け、Lotusは翌1979年に向けて、さらなるニューマシンの開発に動いた。その開発方針は、ベンチュリーをさらに極めることだった。
具体的には、79でかなり小型化された前後のウィングを、さらに踏み込んで廃止し、必要なダウンフォースはベンチュリーで全て得よう、というものだ。
そのために、79以上に徹底的に風洞実験が繰り返された。
結果、発表会に姿を現したニューマシンLotus80は、フロントウィングを持たず、リヤウィングもベンチュリーの延長のように低い位置にマウントされていた。トレッドやホイールベースは拡大され、広がったスペースは全てベンチュリーに充てられた。以前はサイドポンツーンの側面のみに限られたスライディングスカートは、リヤタイヤに沿って、マシン後端まで延長された。
それだけではない。フロントノーズは幅広となり、この内部にもベンチュリーが構築された上、スライディングスカートまで装着された。
この'79年は実はJPSがスポンサーから外れた。イタリアの酒造メーカーであるMartiniがつき、そのオーナーの希望によりマシンはブリティッシュグリーンに塗られた。
しかし、往年のブリティッシュグリーンに「戻った」Lotusから、前年の輝きは「ブラックビューティ」とともに失われていた。風洞では素晴らしい性能を発揮していたという80だが、現実のサーキットでは大きな問題を抱えた。
それが、ポーパシング（porpoising）だ。
ベンチュリーカーでは、マシンと地面の間で構成されたベンチュリー（本来向かい合わせた両方の構造体合わせてベンチュリー構造である）によって空力＝グランドエフェクトが発生するので、その間隔、つまり車高が一定でなければ、安定したダウンフォースを得られなかった。
逆に、車高が変化するとダウンフォースの量も急激に変化する。すると一度マシンが跳ねて車高が乱れると、ダウンフォース量が乱高下して上下の振動（ピッチンク）が止まらなくなった。極めて複雑になったスライディングスカートも、引っ掛かりによってスムースな上下動ができず、その度にダウンフォースが抜けるという結果になった。
これでは、とても安定した走行ができるものではなかった。実戦投入された'79年第5戦の時点で既に80は、フロントウィングが付き、リヤウィングも高くマウントされ、当初のコンセプトからかけ離れたマシンに成り下がっていた。
いざレースでは、初戦のスペインGPこそ4番グリッドから3位表彰台に登るが、皮肉にもこれが80の最後の完走となった。2戦連続のリタイヤの末、それ以上の80の開発を諦め、Lotusは主戦マシンを79に戻した。
Lotus80
この'79年、成功をおさめたのは、それまで中団にいたLigierであり、Williamsだった。Ligier JS11もWilliams FW07も、基本的にはLotus79の忠実なデッドコピーだった。
JS11で特徴的だったのは、リヤタイヤ前の跳ね上げだった。
Lotus80はこの部分にもスライディングスカートを設け、シャシーの後端まで全てベンチュリーとしたが、ポーパシングに悩まされることとなった。
JS11では、この部分はリヤタイヤの前で抜いてしまう。このことが、うまく車高の変化を吸収したのではないかと言われている。
外見上もちょうど羽のように見えて、カラーリングも相まってチャームポイントとなっていた。
Ligier JS11
一方のFW07であるが、JS11のような目に見える特徴らしい特徴がない。つまりこのマシンは、極めて真っ当なLotus79の進化型だと言える。一足飛びに究極形（だと信じたもの）を追い求めた80の代わりのようだ。
79は初の本格的なベンチュリーカーとして極めて意義のあるマシンだが、革新的な装備が多すぎて、足回りであるとかシャシーそのものの強度などはその運動性能に対して十分ではなかった。だから、'78年にあれだけ強かった79が、'79年に80の代役として引っ張り出された際には中段に沈むことになったのだ。
パトリック・ヘッドという非常に優秀なエンジニアが足回りの基本を固めつつ、79のベンチュリーを堅実に取り込んだFW07は非常に高いポテンシャルを誇った。
Williams FW07
しかし意外にも、この'79年を制したのはLigierでもWilliamsでもなかった。名門Ferrariである。
名門なのに「意外にも」と言うのには訳がある。
Ferrariは1965年から74年までの10シーズンチャンピオンを輩出できなかったが、'70年を過ぎてからは若きルカ・モンテツェモーロ（現FIAT会長）がマネージメントに就き、「スーパーラット」ことニキ・ラウダのドライバー起用によって戦力は整っていった。そしてマウロ・フォルギエリの手になるフラット12気筒エンジンを中心とした、葉巻型から脱却した箱型の低重心コンセプトが実を結び、1975年と1977年にラウダがチャンピオンに輝いた。
ラウダの話もしたくなっちゃうけど、長くなるからよそう。技術的な話を進めるよ。
そのラウダがFerrariから移籍したBrabhamは、Lotus79に対抗するためにファンカーBT46Bを繰り出した。
逆に言えば、Brabhamはそうせざるを得なかった。なぜなら、彼らが持っていたのはAlfa Romeoの、幅が広いフラット型12気筒エンジンだったからだ。
ベンチュリーカーでは、ベンチュリーを大きくとるために、幅の狭いモノコックとエンジン、そしてギヤボックスが必要装備だった。だからBrabhamのマーレイも、Alfa Romeoに無理を言って翌1979年からV12エンジンを用意させてベンチュリーカーを作った。だが、Brabhamもポーパシングに苦しめられることになる。
Brabham BT48
では、'78年にBrabhamと同じくフラット12エンジンだったFerrariはどうか。
結果から言えば、Ferrariはフラット12エンジンのまま'79年を迎えることになる。Ferrariの場合、ホイールベースの短縮とマスの集中を目的に幅広の横置きトランスミッション（＝Transverse。312Tシリーズの「T」の由来だ）だったし、シャシーも鋼管フレームで極めて旧時代的な構造だった。
だが、それでもFerrariはそこにベンチュリーを導入してきた。栄光の312Tシリーズとベンチュリーの融合。それが312T4である。
Ferrari 312T4
幅が狭いコスワースDFVエンジン＋ヒューランドのギヤボックスというイギリスのコンストラクター勢と比べると、312T4のベンチュリーははるかに限られた空間だった。当然ダウンフォースの発生量もそれなりだった。
だから312T4には、他車と比べるとはるかに巨大な前後のウィングが装着された。しかし幸いなことに、フラット12エンジンが叩き出す馬力はDFVに対して数十馬力余裕があったので、ウィングが発生するドラッグをキャンセルできた。そして何より、ベンチュリーにダウンフォースを頼りきらなかったことで、ポーパシングにはほとんど悩まされずに済んだ。
パワフルで信頼性に富んだ312Tプラットフォームに、他車ほどベンチュリーに頼り切らずにポーパシングに悩まされなかったこと。
なんとも消極的な理由が強さに繋がったのが皮肉であるが、ともかくもこのマシンには、'77年にラウダと入れ替わるように台頭したジル・ヴィルヌーブと、Wolfから移籍したジョディ・シェクターという2人の超一流ドライバーが乗った。彼らのドライビングという要素が加わって、'79年のFerrariは完成を見た。
圧倒的なスピードを誇るヴィルヌーブに、ベテランの域に達しようとしていたシェクターは円熟味のあるシュアなドライビングで対抗した。チームとしても、シェクターをナンバーワンとして扱っていたので、ヴィルヌーブもそれに従い、無茶にシェクターに仕掛けることはせず、よくサポートした。...この年にシェクターがタイトルを取ったら、翌年は自分が、と信じて。
この構造は、奇妙なくらい前年のLotusのケースと符合する。タイトル決定の場がモンツァというところまで同じだ。Lotusにとっては最後のタイトルであり、Ferrariにとってはその後20年以上も無縁（2000年のミヒャエル・シューマッハーまで）となるタイトルだったことも似ている。
しかしFerrariが違ったのは、ナンバー2であるヴィルヌーブが事故に巻き込まれることはなかったし、トップでチェッカーを受けたシェクターがペナルティを喰らうこともなかったことか。それどころか、地元モンツァで熱狂するティフォシ達の前で、1-2フィニッシュでタイトルを確定させるというパーフェクトなシチュエーションだった。
だがしかしそのFerrariも、栄華の翌年の戦闘力という点では、やはりLotusと同じ運命を辿る。
ほとんどキープコンセプトとなった'80年用マシン312T5は、前年113ポイントを稼いだ一流ドライバー2人をもってして中団以下に沈んだ。「'80年は自分が」と期したヴィルヌーブは表彰台のない入賞4回で6ポイントと夢砕かれ、前年チャンピオンのシェクターに至っては5位1回で2ポイントで、予選落ちまで経験した。シェクターは「このフェラーリはカミオン（トラック）だ」という、後年のプロストと同じセリフを残し、30歳という若さで引退した。もっともこの引退は、アパルトヘイトという人権問題を抱えた南アフリカという彼の国籍も関係していると言われているが。
ともかく、前年に栄華を極めたチームが翌年に極度の不振に陥るくらい、ベンチュリーカー時代のF-1マシンの進化は凄まじいスピードだった。Ferrariも、もはや312Tシリーズでは戦えないことを悟り、ブランニューのマシンを投入することになる。
あれっ！？
79の時より断然ノリノリじゃん (^_^;。まさか81にたどり着けないとは思わなんだ。まあ、それだけこの70年代末が激動で、実に興味深い時代だったことの証だ。
というわけで、81と'80年シーズンについてはまた次回！
通っている保育園は、幼稚園と同じ年齢になると制服になる。一応着るかどうかは自由だけど。
着てみればとても可愛いのだが（親バカ）、なかなか気難しモード中な長女はなかなか着てくれないらしい。
保母さんも新しく入った人ばかりで、お迎え時間などはドタバタらしい。多分、子供にもストレスになってることだろう。
でも思えば2年前は俺＝転職、嫁さん＝育休から復帰、長女＝保育園に入園と3人とも新環境でイッパイイッパイだった。
そう考えれば、この年度開始は落ち着いたもんだね。
Daughter and Lotus81
(PentaxLX, PentaxFA43mmLimitedF1.9)
さて、「食玩Lotus F-1モデル勝手に解説」コーナーだが...失敗したなー。一番オイしいモデル、79が2台目にきちゃったから、残りの4台は絶対同じテンションでは行けない (^_^;。
ってか79の回から何週空いてんだ orz。
まあいいや、せっかくのネタだから、マターリと連載を継続しよう。
今回は、この食玩シリーズでたまたま俺が最初に買った1台、Lotus81である。
んー。正直、このシリーズ6台のうちの1台として、なぜ81が選ばれたのか、全然分からない。他の5台はツッコミどころがあろうと、それなりに理由が見つかるからだ。81はタイトルどころか1勝もしてないし、エポックメイキングでもないし...。
ま、とりあえず前回の79の時代から81の時代までの流れを述べていこう。
79の大成功を受け、Lotusは翌1979年に向けて、さらなるニューマシンの開発に動いた。その開発方針は、ベンチュリーをさらに極めることだった。
具体的には、79でかなり小型化された前後のウィングを、さらに踏み込んで廃止し、必要なダウンフォースはベンチュリーで全て得よう、というものだ。
そのために、79以上に徹底的に風洞実験が繰り返された。
結果、発表会に姿を現したニューマシンLotus80は、フロントウィングを持たず、リヤウィングもベンチュリーの延長のように低い位置にマウントされていた。トレッドやホイールベースは拡大され、広がったスペースは全てベンチュリーに充てられた。以前はサイドポンツーンの側面のみに限られたスライディングスカートは、リヤタイヤに沿って、マシン後端まで延長された。
それだけではない。フロントノーズは幅広となり、この内部にもベンチュリーが構築された上、スライディングスカートまで装着された。
この'79年は実はJPSがスポンサーから外れた。イタリアの酒造メーカーであるMartiniがつき、そのオーナーの希望によりマシンはブリティッシュグリーンに塗られた。
しかし、往年のブリティッシュグリーンに「戻った」Lotusから、前年の輝きは「ブラックビューティ」とともに失われていた。風洞では素晴らしい性能を発揮していたという80だが、現実のサーキットでは大きな問題を抱えた。
それが、ポーパシング（porpoising）だ。
ベンチュリーカーでは、マシンと地面の間で構成されたベンチュリー（本来向かい合わせた両方の構造体合わせてベンチュリー構造である）によって空力＝グランドエフェクトが発生するので、その間隔、つまり車高が一定でなければ、安定したダウンフォースを得られなかった。
逆に、車高が変化するとダウンフォースの量も急激に変化する。すると一度マシンが跳ねて車高が乱れると、ダウンフォース量が乱高下して上下の振動（ピッチンク）が止まらなくなった。極めて複雑になったスライディングスカートも、引っ掛かりによってスムースな上下動ができず、その度にダウンフォースが抜けるという結果になった。
これでは、とても安定した走行ができるものではなかった。実戦投入された'79年第5戦の時点で既に80は、フロントウィングが付き、リヤウィングも高くマウントされ、当初のコンセプトからかけ離れたマシンに成り下がっていた。
いざレースでは、初戦のスペインGPこそ4番グリッドから3位表彰台に登るが、皮肉にもこれが80の最後の完走となった。2戦連続のリタイヤの末、それ以上の80の開発を諦め、Lotusは主戦マシンを79に戻した。
Lotus80
この'79年、成功をおさめたのは、それまで中団にいたLigierであり、Williamsだった。Ligier JS11もWilliams FW07も、基本的にはLotus79の忠実なデッドコピーだった。
JS11で特徴的だったのは、リヤタイヤ前の跳ね上げだった。
Lotus80はこの部分にもスライディングスカートを設け、シャシーの後端まで全てベンチュリーとしたが、ポーパシングに悩まされることとなった。
JS11では、この部分はリヤタイヤの前で抜いてしまう。このことが、うまく車高の変化を吸収したのではないかと言われている。
外見上もちょうど羽のように見えて、カラーリングも相まってチャームポイントとなっていた。
Ligier JS11
一方のFW07であるが、JS11のような目に見える特徴らしい特徴がない。つまりこのマシンは、極めて真っ当なLotus79の進化型だと言える。一足飛びに究極形（だと信じたもの）を追い求めた80の代わりのようだ。
79は初の本格的なベンチュリーカーとして極めて意義のあるマシンだが、革新的な装備が多すぎて、足回りであるとかシャシーそのものの強度などはその運動性能に対して十分ではなかった。だから、'78年にあれだけ強かった79が、'79年に80の代役として引っ張り出された際には中段に沈むことになったのだ。
パトリック・ヘッドという非常に優秀なエンジニアが足回りの基本を固めつつ、79のベンチュリーを堅実に取り込んだFW07は非常に高いポテンシャルを誇った。
Williams FW07
しかし意外にも、この'79年を制したのはLigierでもWilliamsでもなかった。名門Ferrariである。
名門なのに「意外にも」と言うのには訳がある。
Ferrariは1965年から74年までの10シーズンチャンピオンを輩出できなかったが、'70年を過ぎてからは若きルカ・モンテツェモーロ（現FIAT会長）がマネージメントに就き、「スーパーラット」ことニキ・ラウダのドライバー起用によって戦力は整っていった。そしてマウロ・フォルギエリの手になるフラット12気筒エンジンを中心とした、葉巻型から脱却した箱型の低重心コンセプトが実を結び、1975年と1977年にラウダがチャンピオンに輝いた。
ラウダの話もしたくなっちゃうけど、長くなるからよそう。技術的な話を進めるよ。
そのラウダがFerrariから移籍したBrabhamは、Lotus79に対抗するためにファンカーBT46Bを繰り出した。
逆に言えば、Brabhamはそうせざるを得なかった。なぜなら、彼らが持っていたのはAlfa Romeoの、幅が広いフラット型12気筒エンジンだったからだ。
ベンチュリーカーでは、ベンチュリーを大きくとるために、幅の狭いモノコックとエンジン、そしてギヤボックスが必要装備だった。だからBrabhamのマーレイも、Alfa Romeoに無理を言って翌1979年からV12エンジンを用意させてベンチュリーカーを作った。だが、Brabhamもポーパシングに苦しめられることになる。
Brabham BT48
では、'78年にBrabhamと同じくフラット12エンジンだったFerrariはどうか。
結果から言えば、Ferrariはフラット12エンジンのまま'79年を迎えることになる。Ferrariの場合、ホイールベースの短縮とマスの集中を目的に幅広の横置きトランスミッション（＝Transverse。312Tシリーズの「T」の由来だ）だったし、シャシーも鋼管フレームで極めて旧時代的な構造だった。
だが、それでもFerrariはそこにベンチュリーを導入してきた。栄光の312Tシリーズとベンチュリーの融合。それが312T4である。
Ferrari 312T4
幅が狭いコスワースDFVエンジン＋ヒューランドのギヤボックスというイギリスのコンストラクター勢と比べると、312T4のベンチュリーははるかに限られた空間だった。当然ダウンフォースの発生量もそれなりだった。
だから312T4には、他車と比べるとはるかに巨大な前後のウィングが装着された。しかし幸いなことに、フラット12エンジンが叩き出す馬力はDFVに対して数十馬力余裕があったので、ウィングが発生するドラッグをキャンセルできた。そして何より、ベンチュリーにダウンフォースを頼りきらなかったことで、ポーパシングにはほとんど悩まされずに済んだ。
パワフルで信頼性に富んだ312Tプラットフォームに、他車ほどベンチュリーに頼り切らずにポーパシングに悩まされなかったこと。
なんとも消極的な理由が強さに繋がったのが皮肉であるが、ともかくもこのマシンには、'77年にラウダと入れ替わるように台頭したジル・ヴィルヌーブと、Wolfから移籍したジョディ・シェクターという2人の超一流ドライバーが乗った。彼らのドライビングという要素が加わって、'79年のFerrariは完成を見た。
圧倒的なスピードを誇るヴィルヌーブに、ベテランの域に達しようとしていたシェクターは円熟味のあるシュアなドライビングで対抗した。チームとしても、シェクターをナンバーワンとして扱っていたので、ヴィルヌーブもそれに従い、無茶にシェクターに仕掛けることはせず、よくサポートした。...この年にシェクターがタイトルを取ったら、翌年は自分が、と信じて。
この構造は、奇妙なくらい前年のLotusのケースと符合する。タイトル決定の場がモンツァというところまで同じだ。Lotusにとっては最後のタイトルであり、Ferrariにとってはその後20年以上も無縁（2000年のミヒャエル・シューマッハーまで）となるタイトルだったことも似ている。
しかしFerrariが違ったのは、ナンバー2であるヴィルヌーブが事故に巻き込まれることはなかったし、トップでチェッカーを受けたシェクターがペナルティを喰らうこともなかったことか。それどころか、地元モンツァで熱狂するティフォシ達の前で、1-2フィニッシュでタイトルを確定させるというパーフェクトなシチュエーションだった。
だがしかしそのFerrariも、栄華の翌年の戦闘力という点では、やはりLotusと同じ運命を辿る。
ほとんどキープコンセプトとなった'80年用マシン312T5は、前年113ポイントを稼いだ一流ドライバー2人をもってして中団以下に沈んだ。「'80年は自分が」と期したヴィルヌーブは表彰台のない入賞4回で6ポイントと夢砕かれ、前年チャンピオンのシェクターに至っては5位1回で2ポイントで、予選落ちまで経験した。シェクターは「このフェラーリはカミオン（トラック）だ」という、後年のプロストと同じセリフを残し、30歳という若さで引退した。もっともこの引退は、アパルトヘイトという人権問題を抱えた南アフリカという彼の国籍も関係していると言われているが。
ともかく、前年に栄華を極めたチームが翌年に極度の不振に陥るくらい、ベンチュリーカー時代のF-1マシンの進化は凄まじいスピードだった。Ferrariも、もはや312Tシリーズでは戦えないことを悟り、ブランニューのマシンを投入することになる。
あれっ！？
79の時より断然ノリノリじゃん (^_^;。まさか81にたどり着けないとは思わなんだ。まあ、それだけこの70年代末が激動で、実に興味深い時代だったことの証だ。
というわけで、81と'80年シーズンについてはまた次回！
nobilesの投稿(23:55:03-2012-04-04) -
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