NOBILES Days

A Bolt From The Blue

今日はいよいよ抜糸が行われた。
抜糸と言っても、手術痕はホチキスでとめられていたので正確には「抜ホチキス」だ。

まずはギプスの解体からだ。ギプスの技師の方が、歯の鋭くない円状の電動ノコギリ（だから肌に触れても切れない）でギプスの側面二箇所を足の上下方向に縦断するように刃を入れ、足の前後でギプスをぱっくりと二分割した。すぐに痕にお目にかかれると思いきや、以前にも触れたようにギプスと足の間には綿のようなものが巻かれていてまだ見えない。更にそこにハサミを入れて引きはがし、ようやくメスを入れた痕がお目見えした。

うわっ。

思わず口にする。
とは言え、思ったほど切った跡は長くなかったが、それでも8cmほどはあっただろうか。まさに膝の皿の真上から下にかけて足のど真ん中部分に縦にメスを入れたようだった。そこに、針の太さφ1mmくらいあろうかという10本ほどのホチキスが不必要くらいにキラキラと銀色に輝いて俺の身体へと突き刺さっていた。全く、直視するのは一瞬で勘弁という光景だ。
しかも、久々に対面した生の右足は、たったの2週間でかなり筋肉が削げ落ち、細くなっていた。こりゃリハビリで右足を持ち上げるトレーニングをしても重く感じるわけだ。いろんな方から聞いていた事だったとは言え、いささかショックではあった。

その後、実際に執刀もされ、手術後に説明もして下さった先生が痕を診察した。
改めて見るとこの先生も立派なヒゲを蓄え（口ひげではなく、顎まで覆っている）、しかもかなりの巨漢だ。手術前に説明してくれた（後で知ったが整形外科部長らしい）先生も野人系だったが、この先生も野人系だったかもしれない。
ともかく、痕は化膿もなく経過は良好だとのことでそのまま抜糸（抜ホチキス）へと入った。もちろん、麻酔なんか打たない。いや、麻酔が解けていく恐怖を体験しているだけにまっぴら御免だったが。

抜ホチキスは、まさに、文具のホチキスの後ろについている金具のような専用器具で一本一本先生が抜いていく。文具と違うのは、俺の身体の中でホチキスの刃が曲がっているわけではないので、刺さっている方向にまっすぐ抜けば実はほとんど痛みを感じることはなかった。これは意外だった。
ただ、それでも自分の肉から何かが抜かれていく感覚は気持ち悪かったし、少し力のかかり方が違うとやはりチクッとした痛みも感じた。それも10本くらい抜くから、なかなかその間は緊張状態が続いた。

ホチキスを抜いたら、また改めて綿を巻き、その上からギプスを巻く。まだまだ、靭帯がくっつく期間ではなく、もうしばらく固定が必要なのだ。
前回ギプスは寝ている間に巻かれたので分からなかったのだが、湿布かなにかが入っているような袋に入っている包帯状のものだった。これをお湯につける。すると、化学反応を起こして2～3分で固まり始め、15分ほどで完全に硬化するのだという。なお、ガラス樹脂ではなく、ポリなんとか系の化学樹脂らしい。

嬉しかったのは、股関節側のギプスが5cmほど短くなったので、便器にひっかからなくなりそうなことだ。しかし、以前より太ももが露になったので、筋肉の衰えがより分かりやすくなったことも事実だ。出来る範囲の筋トレをしなければ、という気になった。

結婚式の帰りのタクシーで疲れて眠る娘...無防備すぎだ
(PentaxK-7, TamronA14(18.0mm), ProgramMode, 1/50sec, F5.0, ISO400)

さて、入院日記に戻る。手術の日を含めて数えて5日目、先週の月曜日以降の話だ。

その月曜は俺の両親が自宅に来て娘の面倒を見てくれるということで、手術当日以来久々に嫁さんがやってきた。
見舞いの土産...というよりは、自宅の冷蔵庫に残っていた俺の牛乳やらデザートやらを大量に持ってきてくれた。そう、俺は1リットルの成分無調整牛乳を腰に手を当てて飲むのが好きなのだ。250ccの小さい牛乳をちまちま飲むなど、みみっちくってしょうがない。

また話がそれたが。嫁さんには様々な経過もメールで逐一話しちゃってるから今更面白おかしく話したところでしょうがないし、見舞いの菓子でも広げてまあ穏やかに過ごした。着替えを交換し、帰って行った。
その夕方には、入れ替わりで自分の両親が初めて見舞いに来た。その日のお世話で娘（彼らにとっては孫）の写真やら動画を大量に撮ってきたらしく、かなりご満悦で俺にも見せてくれた。入院いて見なくなってからまだ5日しか経っていないのに、確かに動きはもっと活発になったような気がした。結局ほとんどの話が娘の話で終始しているうちに、夕食の配膳時間となったため両親も帰って行った。

こうして、ようやく落ち着きを見せ始めた俺の入院生活。blogの記事もここから駆け足...と思いきやそんなことはないのだ。翌火曜日、再びドタバタとした動きがあったのだ。

火曜日は回診の日だ。この日は副院長が貫禄たっぷりに回ってきた。貫禄はいいのだが、患者としては「些末なことは聞かんでくれたまえ」的に感じられてしまうのでポジティブとは言い難い面もある。それはともかく、その回診の最後で俺は看護士さんからこう告げられる。
「今日お部屋変わりますからねー。」
はい？？

俺のいる部屋は、南側だし、運良く窓側のベッドだったので外も見えるし、同じ部屋のおじさんともそれなりにお話するようになって慣れてきたところだった。まあ、待合室が目の前で、そこに（頭と内蔵は元気なので）おしゃべりなおばちゃん達が群がって喋っていたり、テレビの音がうるさかったりするのが珠に傷であるが、日中に限られるのでそう気にはならなかった。
なのにわざわざ部屋を今から変えるというのはどういうことなのか。

曰く、この部屋は今から手術など措置が必要な人がいる部屋、今から行く部屋は既に措置をすませ、リハビリ中心の人がいる部屋、とのことだった。なんだかその区分が良く分からないが、移転先でも窓側のベッドに入れるというので、まあわがまま言ったところでしょうがないので従うことにした。

その話を聞き、隣のベッドの男性が声をかけてきた。
「ああ、じゃあ僕窓側に移してもらおうかなぁ。ここじゃ一周カーテンで隔離されているみたいで。いいですかね？」
どーぞどーぞ、僕なんて移る側ですから。すぐ看護士さんにお話しして下さい。

午前の間からそこそこ荷物も整理して移動できるようにしておいたのだが、なかなかお声がかからない。14時半からリハビリなので、もうその後かな、と思い始めた14時過ぎになっていきなり「はーい、移動しますー」と台車を伴った看護士さんがやってきた。えーー、今ぁ？？

ロッカーの中の着替えや、PowerBookなどをどんどん2台の台車へ載せていく。ふと看護士さんが「あ、冷蔵庫の残数まだ残ってるね、もったいないからこのテレビ台ごと交換しちゃおう」...この辺の感覚、さすが主婦である。たかだか50円ぽっきりなんだけどね。

そんなわけで、1台目の台車とともに新しい部屋へ松葉杖で向かう。すると、ちょうどハスキー婦人が部屋の前を通っていたので部屋を移る旨言うと、「あら、残念ね、あっちの部屋でも頑張って」などと言われる。いや、一応同じフロアなんだけどね (^_^;。確かにご婦人の部屋の前を通る機会は減るだろうけど。
新しい部屋は前の部屋とはナースステーションを挟んでちょうど対角線といった位置だ。もちろん、引き続き平民部屋である。幸いにして、また窓側のベッド。窓は北側になってしまうが、向かいの建物がこれまでのオフィスビルではなく、一般のマンションや住宅なので、より閑静な雰囲気で悪くない。
部屋には廊下側に既に二人入っていた。どうやら二人とも俺よりも若いくらいの世代のようだ。はす向かいとなるベッドの青年がトイレあたりから帰ってきたところらしく、軽く挨拶をした。快活なスポーツマンのように見えた。

二台目の台車を、こちらの部屋担当の看護士さんが運んできて一通り移動が終わったところで、リハビリへ向かった。

さて、リハビリを終えて新たな部屋へと戻ってきた。

そこで、俺は驚愕する。
先ほど挨拶した快活な青年ではなく、隣のベッドの男だ。彼がスピーカーから音を出して音楽を聴いていたのだ。

きっと、部屋に誰もいないからそうしているに違いないと信じて、自分のベッドに戻ってみる。わざとではなくても、多少の物音は発生する。俺の存在を彼に知らせることが出来るはずだ。
...が、音は鳴り止まない。そういうつもりか。サーーーッと冷たい感覚が首の辺りを包んでいった。

一体コイツは何者だろうか。俺が部屋に移ってからはずっとカーテンを閉ざして顔も見ていないこの男。少なくともこの非社会性ぶりは、30代の社会人ということはないだろう。
ふと、数日前のリハビリルームで見た若い男を思い出した。日本ハムのダルビッシュを小さくしたようなイケメン系のヤツがいたのだ。きっとアイツに違いない。そんなことを思ってみたりもした。

気にしないで本などを読んでみることにする。しかし、あまり得意ではないヒップホップ系のMIXを延々と流し続けられるというのは、やはり気分が良くない。いや、好きなジャンルの音楽だったにしても、聴く意思のない音楽を鳴らされるのはやはり不愉快だ。結局、こちらもヘッドフォンで音楽を聴いて紛らすことにする。
アルバムを一つ聴き終えてヘッドフォンを外す。"Hey, Yo..." 相変わらずHipHopはゴキゲンのようだ。

すると、看護士さんが何かの連絡で俺のところに来た。帰ろうとする看護士さんを呼び止め、指を隣のベッドに向けて、しかめっつらで肩をすくめるジェスチャーを送ってみた。看護士さんもすぐに察したようで、「分かりました、言っておきます」と小声で言った。
...と時を同じくして、隣の音楽の音量がスーーッとフェードアウトして消えた。偶然なのかもしれないが、まさか俺たちのたったこれだけの会話の空気を読んだのだろうか。だとしたらかなりコスい人間に違いない。ともかく、とりあえずHipHop攻撃は止んでようやく静かな環境が病室に訪れた。待合室も遠いし。
しばらくして婦長的立場のちょっと年配の看護士さんが彼のベッドのところに来て注意していた。「音ね、漏れるみたいよ。注意して」「音っスか。そうっスか」。全く悪びれてもいなさそうな声だ。少し高く、はっきりしない話し方に、ますますネガティブな人物像が俺の中で形成されていった。

そして、それから30分としないうちに俺はまた戦慄を覚えることになる。今度は歌声が聞こえてきたのだ。あまり大きな声ではないが、はっきり言ってヘタクソだ。ヘッドフォンにでも切り替えて音楽を聴いているのだろうか。ってか、まさか聴こえないとでも思ってないよね？ね？

すると、ヤツは歌うのを突然止め、愛称のようなものを口走って誰かを呼び止めた。看護士さんだった。そして筋トレをやったからタオルを持ってくるように頼んでいるようなのだが、どうにもその口調が女の子を口説くかのようなネチッこい喋り方に聞こえる。声から察するに看護士さんはソニンちゃんのようだが、彼女はちょっと優柔不断的に感じられるところがあり、よしときゃいいのに彼のそのネチッこいトーンに付き合ってやっているのだ。

あーー、腹立つ。
俺は再び首の周りに冷たいものを感じながら再びヘッドフォンの世界に逃げ込むことにした。

また一つアルバムを聴き終えてヘッドフォンを外すと、どうやら隣のベッドの彼のところには母親が見舞いに来ているようだった。
「なんかよー、○○が買って来た車の雑誌よー、セルシオとかクラウンとかそんなセダンばっかで全然俺の趣味じゃねーんだよ。他の雑誌買って来てくんない？」
セルシオにクラウン...うーん、きっとノーマルなやつじゃなくて、ちょっと車高が低かったり、運転席の前に毛皮が置いてあったりするタイプなのかな (^_^;？
「え？車雑誌？どういうのがいいのよ。私じゃ分からないわよ。」
お母さんは声だけ聞いている限り落ち着いた一般的な喋り方である。
「スポコンだよ、スポコン。」
あー、そっち系ね。
「スポコンって何よ？」
お母さん、ごもっともですよ。
「わかんねーかなー、シルビアとかさー、ランエボとかさー、ドリフトするようなそういうヤツだよ。」
あのね、お母さん多分、ランエボとドリフトの区別すらついてないよ？
「んー、良く分からないけど、今からそこのデパートの本屋行ってみるわよ。」
それ以上甘やかさない方がいいですよ、お母さん。
「じゃあ俺も一緒に行っちゃおっかな。」
入院中ですよね、お宅？
「え？どうやって行くのよ？車椅子で外出れるの？」
「バレねーだろ。ちょっとそこ行くだけなんだから。」
こいつ、入院してる意味分かってんの？
...ひょっとして、猛烈に馬鹿なんじゃなかろうか。

「あーーー、クラブ行きてぇ～。」
「やめなさいよ、行っちゃダメ。クスリとか、はやっちゃってるんでしょ？」
「そうそう、サイバーノ○ピー見てみてぇ。」
「もういないわよ。」
そんな会話がが延々と続く。うーーん。言っちゃなんだけど...自分らだってそういう話しないわけじゃないけど...低俗だなぁ。
というか、「行きてぇ」ということは、行ったことはないのか？コイツは。
別にばっちり聞く耳立てていたわけじゃない。だけど、聞こえてきちゃうんだって。

しかも、はす向かいの快活な青年は翌日に退院だとかで手続きの話をしている。えええ、じゃあ明日から俺、この良く分からんヤツと二人部屋ってこと？？？

そんなうちに、夕食の配膳時間となった。
そこで、俺の中での彼に対する評価は決定的となる。

「おい、なんだよまた魚かよ。ふざけんなよ。」

メシに対する文句が始まったのだ。...っていうか、魚じゃなくて鶏なんですけど。れっきとした肉なんですが、マジ馬鹿ですか。
というか、手術前後に40時間食事しなかった経験以来、食事をできる喜びを感じ、お世辞にも豪華とは言えない病院食を、感謝の気持ちを込めながら大事に食べて来た俺にとって、そうしたセリフは寛容できるものではなかった。

「そんなこと言ってないで。流動食食べてた時から考えたら、全然いいでしょ？最初通常食食べた時、嬉しかったって言ってたじゃない。」
おいおい、お前もその喜びを知ってるんじゃないか。
「へっ、飽きたよ。もうパターンって言うかさ。っていうか、普段10時過ぎとかに食ってんだぜ。こんな6時とかに食ってられるかってんだよ。」
おいおい、まさか今晩もばっちり夜更かしのご予定じゃあるまいな！
「ほら、早く食べちゃいなさいよ」
そんな調子でメシの間中、ずーっと文句を言っていた。これは本当に堪え難かった。

もちろん、横にお母さんがいることを考え合わせれば、逆説的に、あなたのご飯を早く食べたい、という親御さんへの甘えなのかもしれない。そのくらいは分かる。だけどそれを加味してでも寛容できるほど、俺も歳をくっちゃいないのだ。

とにかく、思考回路が俺とはかなり違う人間であることは間違いない。顔だってまだロクに見ていないのだ。
だから、便所に向かうためベッドを離れるのにも緊張が要る。携帯類はシーツの下に隠し、PowerBookもわざわざ一旦ケースに戻す。まあ、さすがに向こうも足悪い（どうやら車椅子らしい）から盗みなんてやろうとしてやれるものではないと思うが。

用を足してから...すぐに部屋には戻らず、思わず足がハスキー婦人の部屋へと向く。
「あら、こんばんは、新しい部屋はどう？」
「いや、それがねぇ...」
早速愚痴である。音楽のスピーカー再生に驚愕し、メシ文句に落胆したこと。何考えているのか良く分からないこと。

これらを聞いてすぐに婦人は言った。
「部屋替えてもらいな、すぐに。今日移動したとかそんなの関係ないよ。我慢することない。」
え？？確かに、2,3日様子を見て我慢ならなかったらとは思っていたが、「今すぐ」か...。
「なんのためにここにいるかって、怪我治すためでしょ。他の不安抱えていることない。ちゃんとやってくれるよ、ここの人達。」
そう言われてみればその通りだ。
「いい？すぐに行くのよ。我慢しちゃダメ。」
婦人は念を押すように繰り返した。
「分かりました。もうこの足で行きます。」

行きますと言いつつ、ナースステーションへの行きすがらにある、もともといた部屋へと寄った。すると、元ルームメートのおじさんは無事俺がもともといた窓側のベッドへと移動していた。
「あ、移れたんですね。良かったですね」
「ああ、こんばんは。どうですか？そちらは？」
「いやぁ...」
また同じ愚痴の繰り返しだ。だが、さっきと違うのは、「もう部屋を移りたい」という決意を明確にしていた点だ。
「そうですか、それは確かに我慢しない方がいいですね。この部屋だって私しかいなくて、全然余ってるわけですからね」
そう、その男性はテレビを見る際に右側を向かないと腰が厳しいので俺がいた側でなくてはならなかったが、俺は別に左右どちらでもいいから、向かいの窓側のベッドを使うことが出来るのだ。
「いや、ほんとこっちのベッドに戻りたいくらいですよ。だから、今から行きます。」
「頑張って下さい。私も一人よりも誰かと一緒の方が気が紛れますから」

覚悟を新たにナースステーションへと乗り込んだ。
「あの、すみません、ご相談というか、要望というか、お話があるんですけども」
入ってすぐに目があったのは、手術当日の夜にお世話になった、あの体育会系ノリの榮倉ちゃん(違)だった。相変わらず顔可愛いなー、なんてのは置いておいて、と。
「え？どうしたのー？まっさか部屋変えてくれとか...？」
なんて察しがいいんだ榮倉ちゃん。っていうかこういう時でもトーンが元気いっぱいだね。
「あ...まあ、一行に集約するならそういうことになります」
「あららら、なんでー？」
既に夜勤シフトに突入し、3～4人程度しかいなかったナースステーション内の空気が急にザワついた。このワガママな患者のせいだ。

ここであまり悪口を言って事を荒立てるのも良くない。何しろ、目的はあの何考えてるか分からない男と部屋を分つことにあるからだ。だから敢えて具体的な文句は言わずに、
「あまりに人種が違うというか、一緒の部屋にいて緊張を要します。彼が悪い人と糾弾するつもりはありませんが、何を考えているか分からないから、ストレスになります」
そう言った。すると、恐らくチーフ的立場の看護士さんが
「じゃあ今晩一緒ってのもきっとイヤよね。部屋変えるのには手続きいるんだけど...とりあえず元の部屋の空いてるベッドにいるものだけ移動しようか」
おお！！

早速、台車を出して来た榮倉ちゃん(違)とともにヤツのいる部屋に向かう。
「さりげなーく移動しちゃいましょ。」とか言っていた榮倉ちゃんだが、「あ？これ持ってく～？わお、シーツの下に大事なものがー、携帯ー！！」元気いっぱいで全然さりげなくない。
そうしているうちに、先のチーフ格の方が部屋に入って来て言った。
「あの、他に空いている部屋もないんで、やっぱり、今回の移動がなかったということにして、元の部屋に完全出戻りにしましょう」
...やった！所望通り、元の部屋の向かいのベッドに入れることになった。

と、そこにその部屋の担当だったソニンちゃん(違)もやってくる。「どうしたんですかー？」「あっちに移動するの」「えーーーーー？」まあ、えー、だよな。数時間前に移動して来たばかりなのだ。
それにしても榮倉ちゃん、一台の台車に無理矢理詰め込む詰め込む。昼は二台要した上に、テレビ台は丸ごと移動しているのに。おーい、PowerBookの上にそんなに本置くなー。冷蔵庫の残時間も無視である。まあ、50円ぽっきりなんだけどさ (^_^;。このあたり、主婦看護士さんと体育会系看護士さんの差か。

そして榮倉ちゃん、ソニンちゃんに若い男性看護士も引き連れ、どやどやと元の部屋に移動する。再びルームメートとなるおじさんもすぐに事情を察し「良かったですね！」と声をかけて下さった。榮倉ちゃんが「○○さん（おじさんの名前）と同じ部屋がいいんだって！」と言ったが、いやほんとそれは本音だった。

こうして、俺はまた心の平穏を取り戻した。"A Bolt From The Blue"＝青天の霹靂だった部屋の移動だったが、滞在数時間にて元のサヤへと戻った。これによっておじさんも念願の窓側を手に入れたし、俺も変わらず窓側をゲットできたので、万事が丸く収まったというものである。
あれから一週間も経つが、彼の部屋はずっと彼の独り部屋のままだった。やっぱり看護士さん達としてもちょっと手を焼いているのだろうか。俺の拒否反応が強烈で他の人を入れづらくなったのもあるだろう。
落ち着いてから背中を押してくれたご婦人にも報告に行った。なんだか、この病院の中での母のようだ（実際母親とほとんど同い年だし）。

nobilesの投稿(20:38:21-2009-10-07) - カテゴリ: Main

No comments yet

コメントを追加

トラックバック

DISALLOWED (TrackBack)

TrackBack URL

DISALLOWED (TrackBack)

日	月	火	水	木	金	土
			1	2	3	4
5	6	7	8	9	10	11
12	13	14	15	16	17	18
19	20	21	22	23	24	25
26	27	28	29	30	31

NOBILES Days

A Bolt From The Blue

コメント

コメントを追加

トラックバック

TrackBack URL

メインページ

Calendar

NewEntries

最新COMMENTS

カテゴリ

Archives

My Links

検索

RSS対応

管理

携帯用ブログ