NOBILES Days
Jump to navigationToward The Shining Future 4
娘の動きはさらに激しくなってきた。
それに加え、自我が芽生えてきたのか、思い通りにならないことがあると仰け反って泣き叫ぶ。
これも成長の課程なのだろう。でも、しばらくは手に届くところに壊れやすいものを置けなさそうだ。
ごちそうさまー！
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, ProgramMode, 1/60sec, F1.8, ISO400)
さて、転職顛末記第四弾。
4. The Bog [泥沼]
[Back Number]
1. The Start [きっかけ]
2. Left Alone [取り残されて]
3. Go From One Fair To Another [転職フェアはしご]
1週間延長した夏休みを終えて会社に戻ると、厳しい現実が待っていた。
ボスと、その歴代グループメンバーが作り上げてきた壮大なプロジェクトを、俺が一人で引き継がなくてはならなくなったからだ。
このグループは、はっきり言ってボスの壮大なクリエイティビティの体現の場所だった。
ボスは、歯に衣着せぬ発言や猛烈すぎる仕事への取り組み方のために、人によっては眉をひそめることもある尖がった人物だった。でもその実、ものすごく真面目で、そしてグループ全体の成長をちゃんと考えている、本当に頭の回転の速い優秀な人だった。不幸なことに、これまでボスが当たった上司は眉をひそめるタイプの方が多かった。っていうか、制御するには余りある人だったのだ。
ボスは、まだ俺が入社してそう間もない頃、...その性格ゆえ、他の部署から弾き出されるような形で異動してきた。
そしてしばらくすると、それまではエンジニアが一つ一つ波形を見ながら決めていたパラメータを、「そんなもんは自動でできるはずだ」と膨大な量のデータをとり、数式化して、プログラム屋に巨大なプログラムを書かせ、パソコンで自動で測定・設定を行う極めてインテリジェンスなシステムを作り上げた。
結果、パラメータの精度は飛躍的に向上し、こなせる仕事の量も大幅に増えた。
だが、あくまでこのシステムはパラメータを出すためだけのシステムであって、これ自体が商品にはならない。上司らにとっては進化の結果が見えづらく、なぜそんな壮大なシステムが必要なのか、最後まで真の意味では理解されなかったように思う。
それは、この膨大なプログラムの作成には、それまで一度も正社員が充てられず、派遣社員が出たり入ったりして、なかなかボスの構想通りに進まなかったことからも、如実に物語られていると言える。
まあそれ以前に、言うことに従ってくれないボスを苦々しく思っていた面も少なからずあるだろう。このあたりは顛末記の第一回に、「俺達のグループは袋小路にはまりこんでいた」と一言で済ませたが、もう少し踏み込まなくてはならない。
転職活動を始める頃、俺のいた課はバラバラだった。何も動いてくれない課長、自分の部下を囲いこむ豪腕タイプのマネージャー、そしてボスを筆頭にした俺達のグループ、この3勢力が完全に縦割り状態で分裂していた。お互いがそれぞれの飲み会には参加しないほどだった。
とりわけ、マネージャーはボスのやり方が気に入らないらしく、この混乱に乗じてプロジェクトを潰そうとした。
2009年の6月にプログラマーの派遣社員が辞め（させられ）る際、一応課長が他の部の正社員をあてがった。このグループではついに初めての正社員プログラマーだ。
しかしその際、課長がまたトンチンカンな依頼をしたために、その人の籍は隣の部のままだったし、間もなく「仕事の内容が最初の話と違う」と部どうしで揉めることになった。
まあ、あてがわれたプログラマーの正社員の人もかなり偏屈な人で、そもそもボスより年上という時点で仕事がやりづらくなることは目に見えていた。
一番驚いたのが、派遣社員が辞めた次の日、7/1のことだった。
出勤した俺達を待っていたのは、その派遣社員が使っていたパソコンがごっそりなくなった机だった。後任のその正社員が、部をまたいだ仕事に反発し、「絶対にグループの個室には入らない」という意思表示のために、パソコン一式を勝手に自分の机に移動させてしまったのだ。
俺もボスも、この時にガラガラと心の中で何かが崩れていくのを感じた。
こうして、プログラムの後任者と揉めてしまい、全く仕事が進まなくなった。そこに、仕切り屋の豪腕マネージャーが乗り出してきた。
派遣社員がいた頃は、俺達電気設計部隊とプログラマーが机を並べて仕事をしていた。だから、プログラムを変更したい時はすぐ横のメンバーに「こうやってちょうだい！」と言えばすぐに実現できた。
ところがマネージャーは「これからは全て仕様書に起こして、それを課全体でコンセンサスを得なければならない。それからあちらの部にお願いし、検討の上業務に当たってもらう」と言い出した。そんな気の遠くなるような手続きを通していたら、簡単に実現できることも、完成がいつになるか分かったものではない。
事実上、「プロジェクトはやるな」と同義だと俺達は受け取った。
少し時を遡ってしまったが、ボスや俺が現職に嫌気がさしたのにはこういう背景もあったのだ。
さて、俺がこのグループに加わったのは実はまだ2年ほど前だ。既に8年程度はやってきたグループの中では、かなりの後発組ということになる。だがなんだかんだ言って、少なくとも形式上、俺はその巨大システムの唯一の継承者になってしまった。
部分部分については自分も作成に関わっていて分かっていることもあるが、本当にキーになる難解な部分についてはとても理解できていなかった。数学マニアであるボスが作り上げた演算システムは、特許を取得するほどのものだった。
それに、このシステムは「非常に有能なコンピューター」と言ってよい、ボスが中心にいたからこそ素晴らしい成果を上げていた。
もちろん、システムだけで成果を上げるのがゴールだが、上げなければ「不要」と言われて人も金もあてがわれなくなるから、ボスが身を削ってシステムの不備を補い成果を上げてきた面も少なからずある。
つまり現段階では「自動システム」でありながら、ボスの類稀なるスキルあってこそのシステムだったと言える。俺がそこに収まってすぐに成果を上げられるというものではなかったのだ。しかし、間違いなく周囲からはそれを期待されるだろう。
挙句、俺は辞めるボスの仕事のみならず、課でもう一名辞める正社員の仕事も「とりあえず引き継げ」と命じられた。たった半年前には全部で7人でやっていた仕事を、「とりあえず」一人で引き継げというのだ。
...
...もうお腹いっぱいです (´Д｀;。
一度は、残って泥水をすすってでも頑張ろう、と決めたものの、先の見えない不安で押しつぶされそうになった。仕事がふりかかってくるだけではない。会社自体もどうなるのか分からないのだ。
実を言うと、結局ボスからはシステム根幹部分については引き継ぎらしい引き継ぎはしなかった。先に述べたボスが去った後もこのシステムを使う可能性は非常に小さいと考えられたからだ。
それに、ボスも俺がボスの代わりにならないということは強く認識していた。だから、教えても無駄だと思ったのだ。だから、一応数年くらいは騙し騙し仕事をこなせる程度の引き継ぎだけをして、ボスとはずっと人生論みたいのを話していた。
その中で、ボスが言ったこんなセリフが今でも忘れられない。
いいか、お前がこの核心部分を理解しようっていうのは、もはや頑張る頑張らないの問題じゃないんだ。
これは俺の作品であって俺の適性なんだ。
俺は自分の適性にあったことを仕事にできるように生きてきたから、今この会社でこの地位がある。もう投げ捨てるわけだけど。
お前がこれを理解できないからって、お前が俺に人間として負けているかって言ったらそんなわけじゃないんだ。
お前だって俺なんかより全然英語できるし、絵を描くこともできるし、文章書くのだってうまいだろ？
人とうまく妥協点見つける世渡りだって全然うまいじゃないか。
要はそれを生かせるか生かせないかなんだよ、人生で勝つか負けるかなんて。
...俺はその時悟った。俺はここでこの仕事をしている限り、この人を超える存在にはなれないのだと。
いや。実は俺はもう7,8年前からそんなことには気づいていたのだ。
つづく。
それに加え、自我が芽生えてきたのか、思い通りにならないことがあると仰け反って泣き叫ぶ。
これも成長の課程なのだろう。でも、しばらくは手に届くところに壊れやすいものを置けなさそうだ。
ごちそうさまー！
(PentaxK-7, PentaxFA31mmLimitedF1.8, ProgramMode, 1/60sec, F1.8, ISO400)
さて、転職顛末記第四弾。
4. The Bog [泥沼]
[Back Number]
1. The Start [きっかけ]
2. Left Alone [取り残されて]
3. Go From One Fair To Another [転職フェアはしご]
1週間延長した夏休みを終えて会社に戻ると、厳しい現実が待っていた。
ボスと、その歴代グループメンバーが作り上げてきた壮大なプロジェクトを、俺が一人で引き継がなくてはならなくなったからだ。
このグループは、はっきり言ってボスの壮大なクリエイティビティの体現の場所だった。
ボスは、歯に衣着せぬ発言や猛烈すぎる仕事への取り組み方のために、人によっては眉をひそめることもある尖がった人物だった。でもその実、ものすごく真面目で、そしてグループ全体の成長をちゃんと考えている、本当に頭の回転の速い優秀な人だった。不幸なことに、これまでボスが当たった上司は眉をひそめるタイプの方が多かった。っていうか、制御するには余りある人だったのだ。
ボスは、まだ俺が入社してそう間もない頃、...その性格ゆえ、他の部署から弾き出されるような形で異動してきた。
そしてしばらくすると、それまではエンジニアが一つ一つ波形を見ながら決めていたパラメータを、「そんなもんは自動でできるはずだ」と膨大な量のデータをとり、数式化して、プログラム屋に巨大なプログラムを書かせ、パソコンで自動で測定・設定を行う極めてインテリジェンスなシステムを作り上げた。
結果、パラメータの精度は飛躍的に向上し、こなせる仕事の量も大幅に増えた。
だが、あくまでこのシステムはパラメータを出すためだけのシステムであって、これ自体が商品にはならない。上司らにとっては進化の結果が見えづらく、なぜそんな壮大なシステムが必要なのか、最後まで真の意味では理解されなかったように思う。
それは、この膨大なプログラムの作成には、それまで一度も正社員が充てられず、派遣社員が出たり入ったりして、なかなかボスの構想通りに進まなかったことからも、如実に物語られていると言える。
まあそれ以前に、言うことに従ってくれないボスを苦々しく思っていた面も少なからずあるだろう。このあたりは顛末記の第一回に、「俺達のグループは袋小路にはまりこんでいた」と一言で済ませたが、もう少し踏み込まなくてはならない。
転職活動を始める頃、俺のいた課はバラバラだった。何も動いてくれない課長、自分の部下を囲いこむ豪腕タイプのマネージャー、そしてボスを筆頭にした俺達のグループ、この3勢力が完全に縦割り状態で分裂していた。お互いがそれぞれの飲み会には参加しないほどだった。
とりわけ、マネージャーはボスのやり方が気に入らないらしく、この混乱に乗じてプロジェクトを潰そうとした。
2009年の6月にプログラマーの派遣社員が辞め（させられ）る際、一応課長が他の部の正社員をあてがった。このグループではついに初めての正社員プログラマーだ。
しかしその際、課長がまたトンチンカンな依頼をしたために、その人の籍は隣の部のままだったし、間もなく「仕事の内容が最初の話と違う」と部どうしで揉めることになった。
まあ、あてがわれたプログラマーの正社員の人もかなり偏屈な人で、そもそもボスより年上という時点で仕事がやりづらくなることは目に見えていた。
一番驚いたのが、派遣社員が辞めた次の日、7/1のことだった。
出勤した俺達を待っていたのは、その派遣社員が使っていたパソコンがごっそりなくなった机だった。後任のその正社員が、部をまたいだ仕事に反発し、「絶対にグループの個室には入らない」という意思表示のために、パソコン一式を勝手に自分の机に移動させてしまったのだ。
俺もボスも、この時にガラガラと心の中で何かが崩れていくのを感じた。
こうして、プログラムの後任者と揉めてしまい、全く仕事が進まなくなった。そこに、仕切り屋の豪腕マネージャーが乗り出してきた。
派遣社員がいた頃は、俺達電気設計部隊とプログラマーが机を並べて仕事をしていた。だから、プログラムを変更したい時はすぐ横のメンバーに「こうやってちょうだい！」と言えばすぐに実現できた。
ところがマネージャーは「これからは全て仕様書に起こして、それを課全体でコンセンサスを得なければならない。それからあちらの部にお願いし、検討の上業務に当たってもらう」と言い出した。そんな気の遠くなるような手続きを通していたら、簡単に実現できることも、完成がいつになるか分かったものではない。
事実上、「プロジェクトはやるな」と同義だと俺達は受け取った。
少し時を遡ってしまったが、ボスや俺が現職に嫌気がさしたのにはこういう背景もあったのだ。
さて、俺がこのグループに加わったのは実はまだ2年ほど前だ。既に8年程度はやってきたグループの中では、かなりの後発組ということになる。だがなんだかんだ言って、少なくとも形式上、俺はその巨大システムの唯一の継承者になってしまった。
部分部分については自分も作成に関わっていて分かっていることもあるが、本当にキーになる難解な部分についてはとても理解できていなかった。数学マニアであるボスが作り上げた演算システムは、特許を取得するほどのものだった。
それに、このシステムは「非常に有能なコンピューター」と言ってよい、ボスが中心にいたからこそ素晴らしい成果を上げていた。
もちろん、システムだけで成果を上げるのがゴールだが、上げなければ「不要」と言われて人も金もあてがわれなくなるから、ボスが身を削ってシステムの不備を補い成果を上げてきた面も少なからずある。
つまり現段階では「自動システム」でありながら、ボスの類稀なるスキルあってこそのシステムだったと言える。俺がそこに収まってすぐに成果を上げられるというものではなかったのだ。しかし、間違いなく周囲からはそれを期待されるだろう。
挙句、俺は辞めるボスの仕事のみならず、課でもう一名辞める正社員の仕事も「とりあえず引き継げ」と命じられた。たった半年前には全部で7人でやっていた仕事を、「とりあえず」一人で引き継げというのだ。
...
...もうお腹いっぱいです (´Д｀;。
一度は、残って泥水をすすってでも頑張ろう、と決めたものの、先の見えない不安で押しつぶされそうになった。仕事がふりかかってくるだけではない。会社自体もどうなるのか分からないのだ。
実を言うと、結局ボスからはシステム根幹部分については引き継ぎらしい引き継ぎはしなかった。先に述べたボスが去った後もこのシステムを使う可能性は非常に小さいと考えられたからだ。
それに、ボスも俺がボスの代わりにならないということは強く認識していた。だから、教えても無駄だと思ったのだ。だから、一応数年くらいは騙し騙し仕事をこなせる程度の引き継ぎだけをして、ボスとはずっと人生論みたいのを話していた。
その中で、ボスが言ったこんなセリフが今でも忘れられない。
いいか、お前がこの核心部分を理解しようっていうのは、もはや頑張る頑張らないの問題じゃないんだ。
これは俺の作品であって俺の適性なんだ。
俺は自分の適性にあったことを仕事にできるように生きてきたから、今この会社でこの地位がある。もう投げ捨てるわけだけど。
お前がこれを理解できないからって、お前が俺に人間として負けているかって言ったらそんなわけじゃないんだ。
お前だって俺なんかより全然英語できるし、絵を描くこともできるし、文章書くのだってうまいだろ？
人とうまく妥協点見つける世渡りだって全然うまいじゃないか。
要はそれを生かせるか生かせないかなんだよ、人生で勝つか負けるかなんて。
...俺はその時悟った。俺はここでこの仕事をしている限り、この人を超える存在にはなれないのだと。
いや。実は俺はもう7,8年前からそんなことには気づいていたのだ。
つづく。
nobilesの投稿(23:49:40-2010-02-24) -
カテゴリ: Change Job
コメント
No comments yet
コメントを追加
トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)TrackBack URL
DISALLOWED (TrackBack)
メインページ
Calendar
| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
NewEntries
最新COMMENTS
■20-07-11 21:47>ああ、あのeh
■20-07-10 01:07>そうです、予
■20-07-09 22:36>あっ、ショー
■20-07-06 07:27>50-34のチェ�
■18-01-05 00:53>おやこれはぱ
■18-01-04 23:56>手出しちゃっ
■15-07-27 23:21>おっと、今か
■15-07-22 11:40>良質な小説読
■15-02-21 09:29>おや、どなた
■15-02-20 08:05>ほー、勉強に
カテゴリ
- All
- Bicycle
- Breast Cancer
- Change Job
- Formula-One
- Gourmet
- Injury
- Mac
- Main
- Monaco
- Music
- Peugeot
- Photo
- Travel
Archives
My Links
NOBILES Web検索
プロフィール
RSS対応
RSS v2.0
RSS v0.91
RSS v1.0
管理
管理室へ携帯用ブログ
携帯用URL