NOBILES Days
Jump to navigationThe trend of digital camera 2013 (7)
先週末のブラジルGPをもって、今年のF-1も閉幕した。
後半戦はフェッテルが9連勝という驚異的な強さを発揮した。勝利への強烈な拘りと、極めてクレバーな判断力を合わせ持つ天才が、技術面の天才であるエイドリアン・ニューウィーのマシンに乗るのだから、凄まじい相乗効果である。
でも、最終戦のゴール後に、ウェーバーがヘルメットを取ってクルージングしたのはグッときた。インタビューで、フェッテル2人、憑き物が取れたような顔で「人間同士としてベストの関係ではなかったが、プロとして尊敬しあっていた」とコメントしあって健闘を称え合うのも良かった。'93年の最終戦のセナとプロストを思い出した。
Mark Webber
やっぱりF-1は人間ドラマだ。
とか言いながら来年は技術的に大きなレギュレーション変更がある。勢力が大きく変わる可能性もある。しかし、そこにだって、マシンの性能差に腕で挑むドライバーの戦いがあり、少しでもマシンを速くしようという技術者達の戦いがある。楽しみだ。
デジカメトーク2013、第7回。Nikonが新たな方向性を打ち出したカメラについてだ。
●Nikon Df
他社の新モデル登場日にマイナーチェンジモデルの発表をぶち当てる（Pentax K-3にD610、Panasonic GMにD5300）というプチ嫌がらせをしていたNikon (^_^;。わざとでしょ、絶対。
ついに単独での発表で現れたのは、このDfだった。
Nikon Df
Dfはニコン内の後藤研究室が企画したという。
後藤研究室は、後藤哲朗氏が率いている。後藤氏は、ニコンの一眼レフの歴代フラッグシップ機の開発を指揮してきた伝説的な技術者で、現在はフェローという立場となっている。開発の最前線から距離を置いて、ユーザーの意向やトレンドを探るための組織として、同研究室を開設したのだという。
その研究室の、世に出る最初の大きな成果と言えるのがこのDfとなるわけだ。
さてその外観は、一見して「超クラシカル」である。カメラの上面には、シャッタースピード、感度、露出モード、露出補正といったダイヤルが所狭しと並んでいる。つまりこのカメラは、かつての銀塩カメラの操作性をディジタル一眼レフで再現したもの、というわけである。ペンタ部のロゴまでNikonの旧ロゴとなっている。
さらに、このカメラはいわゆるフルサイズ素子を積む。これはフラッグシップモデルであるD4と同じ素子だ。映像エンジンもD4と同じExpeed3である。それでいて、同社フルサイズ機で最小だったD610より小さく軽い。散々ティーザー広告打って引っ張っただけあって、なかなかに、これまでありそうでなかった立ち位置だ。
だがシビアに見ればハリボテだ。
「プロ向け一眼レフD4と同じ心臓部」と言えば聞こえはいいが、D4は報道やスポーツのカメラマンのために、連写性能や高感度性能に重点を置いたカメラだ。だから、撮像素子はローパスフィルターを搭載した1600万画素に留まる。同社のD800は倍以上の3630万画素、しかもローパスフィルターなしのモデル（D800E）まである。
もちろん、撮像素子のスペックについては賛否あろう。画素数だけが撮像素子の性能ではない、ということは俺自身が散々言ってきたことだ。それでも、Dfの心臓部について、個人的な意見はネガティブだ。
Dfは、スピードとかオートマチックとか、これまでのカメラが追い求めてきたものから解き放たれて、じっくり撮影を楽しむためのもの、と後藤フェローは話している。それならば、スピードやオートマチックなどの頂点とも言えるD4と同じ心臓部というのは最初から矛盾ではないか？凄まじい高感度性能やモアレが出ないことより、繊細な表現力を期待できる、ローパスレスで高画素数の撮像素子を使うべきだったのではないか。
そもそも、この撮像素子のウリの一つである連写性能は、メカが伴っていないため1秒5.5枚に留まる。まあ十分速いけど、別にD4の素子を使う意味がないのは違いない。
まあ、マーケティングの側面が強いのだろう。3600万画素を使えばD800の系列と消費者に思われる。2400万画素にするとD600の系列と思うだろう。しかし、このカメラにはもっと大切な価値を込めたい。そうすると、（方向性は違うはずでも）フラッグシップであるD4と同じ1600万画素にするしかなかったんだろう。逆説的になるが、「D4と同じ」は宣伝文句にもなるしね。
同時期に発表されたD5300がExpeed4を搭載しているのに、Dfが同3に留まるのもいただけない。まあ、同時期に出たD610もExpeed3なので、4がまだフルサイズ素子に対する最適化が進んでいないと見ることもできる。だが、もしDfに本気なら4を頑張って搭載しても良かったんじゃないか？
自慢のメカニカルダイヤル類にもケチをつけさせてもらう。このシャッタースピードのダイヤルは1段ずつしか動かない。1/3段で調整しようとすると...なんと、D610などと同じ、コマンドダイヤルで行うことになる。また、絞りについても、従来の操作方法は再現されていない。かつてはレンズに絞りリングがあったが、今回キットレンズとなった55mmF1.8含め、現行レンズで絞りリングを持つレンズはない。だからDfでは、絞りもコマンドダイヤルで調整することになる。
もちろん、事情は分かる。これまで自動化に突き進み、絞りリングのないレンズラインナップを推し進めてきたのに、Dfだけのために、絞りリング付きのレンズを開発するのはかなりオオゴトになる。
そうやって考えてみると、どんどん裏事情が想像される。
絞りリング付きのレンズを新たに起こすのが難しいのは「言わずもがな」だが、ソフトウェアの開発にも同じことが言える。本当は、マニュアル操作を重視したインターフェースをイチから作りたかったのだろうが、それは膨大なリソースを要する。そうすると、Dシリーズがベースというのが前提となり、大きく変えることは無理だ。そうすると、メカニカルダイヤルを追加するにしても、もともとDシリーズが備えているコマンドダイヤルを省くことは難しくなる。それがあること前提のインターフェース設計だからだ。
だが、逆に言うと、たとえばCanonにDfのようなカメラを出せただろうか？後藤フェローという力のある人が主導したからこそ、ハードウェアに関してはかなりの部分を新規に起こすことが許されたとも見ることもできる。
Dfが中途半端であることは、（程度の差はあるかもしれないが）後藤氏自身も認識しているようだ。「及ばない点はある。Dfが売れれば、またできる」という趣旨を述べている。本当はもっとDシリーズとは違うものをやりたかったに違いない。動画機能を殺したのは、彼なりの矜持であったと思えてくる。
シビアなことを述べたが、その志や買いたい。
「小さい・お手軽・キレイ」などというミラーレスカメラが台頭している中、写真を撮るという行為自体がどんどん軽くなっている。カメラを操ること自体が楽しい行為であること、そして時間をかけて被写体と向かい合うことの尊さ。不完全な形の一歩かもしれないが、Dfがカメラ文化の中でも薄くなりつつある側面を、もう一度ユーザー達に喚起してくれる存在となれば、また面白い展開が待っているに違いない。
つづく。
後半戦はフェッテルが9連勝という驚異的な強さを発揮した。勝利への強烈な拘りと、極めてクレバーな判断力を合わせ持つ天才が、技術面の天才であるエイドリアン・ニューウィーのマシンに乗るのだから、凄まじい相乗効果である。
でも、最終戦のゴール後に、ウェーバーがヘルメットを取ってクルージングしたのはグッときた。インタビューで、フェッテル2人、憑き物が取れたような顔で「人間同士としてベストの関係ではなかったが、プロとして尊敬しあっていた」とコメントしあって健闘を称え合うのも良かった。'93年の最終戦のセナとプロストを思い出した。
Mark Webber
やっぱりF-1は人間ドラマだ。
とか言いながら来年は技術的に大きなレギュレーション変更がある。勢力が大きく変わる可能性もある。しかし、そこにだって、マシンの性能差に腕で挑むドライバーの戦いがあり、少しでもマシンを速くしようという技術者達の戦いがある。楽しみだ。
デジカメトーク2013、第7回。Nikonが新たな方向性を打ち出したカメラについてだ。
●Nikon Df
他社の新モデル登場日にマイナーチェンジモデルの発表をぶち当てる（Pentax K-3にD610、Panasonic GMにD5300）というプチ嫌がらせをしていたNikon (^_^;。わざとでしょ、絶対。
ついに単独での発表で現れたのは、このDfだった。
Nikon Df
Dfはニコン内の後藤研究室が企画したという。
後藤研究室は、後藤哲朗氏が率いている。後藤氏は、ニコンの一眼レフの歴代フラッグシップ機の開発を指揮してきた伝説的な技術者で、現在はフェローという立場となっている。開発の最前線から距離を置いて、ユーザーの意向やトレンドを探るための組織として、同研究室を開設したのだという。
その研究室の、世に出る最初の大きな成果と言えるのがこのDfとなるわけだ。
さてその外観は、一見して「超クラシカル」である。カメラの上面には、シャッタースピード、感度、露出モード、露出補正といったダイヤルが所狭しと並んでいる。つまりこのカメラは、かつての銀塩カメラの操作性をディジタル一眼レフで再現したもの、というわけである。ペンタ部のロゴまでNikonの旧ロゴとなっている。
さらに、このカメラはいわゆるフルサイズ素子を積む。これはフラッグシップモデルであるD4と同じ素子だ。映像エンジンもD4と同じExpeed3である。それでいて、同社フルサイズ機で最小だったD610より小さく軽い。散々ティーザー広告打って引っ張っただけあって、なかなかに、これまでありそうでなかった立ち位置だ。
だがシビアに見ればハリボテだ。
「プロ向け一眼レフD4と同じ心臓部」と言えば聞こえはいいが、D4は報道やスポーツのカメラマンのために、連写性能や高感度性能に重点を置いたカメラだ。だから、撮像素子はローパスフィルターを搭載した1600万画素に留まる。同社のD800は倍以上の3630万画素、しかもローパスフィルターなしのモデル（D800E）まである。
もちろん、撮像素子のスペックについては賛否あろう。画素数だけが撮像素子の性能ではない、ということは俺自身が散々言ってきたことだ。それでも、Dfの心臓部について、個人的な意見はネガティブだ。
Dfは、スピードとかオートマチックとか、これまでのカメラが追い求めてきたものから解き放たれて、じっくり撮影を楽しむためのもの、と後藤フェローは話している。それならば、スピードやオートマチックなどの頂点とも言えるD4と同じ心臓部というのは最初から矛盾ではないか？凄まじい高感度性能やモアレが出ないことより、繊細な表現力を期待できる、ローパスレスで高画素数の撮像素子を使うべきだったのではないか。
そもそも、この撮像素子のウリの一つである連写性能は、メカが伴っていないため1秒5.5枚に留まる。まあ十分速いけど、別にD4の素子を使う意味がないのは違いない。
まあ、マーケティングの側面が強いのだろう。3600万画素を使えばD800の系列と消費者に思われる。2400万画素にするとD600の系列と思うだろう。しかし、このカメラにはもっと大切な価値を込めたい。そうすると、（方向性は違うはずでも）フラッグシップであるD4と同じ1600万画素にするしかなかったんだろう。逆説的になるが、「D4と同じ」は宣伝文句にもなるしね。
同時期に発表されたD5300がExpeed4を搭載しているのに、Dfが同3に留まるのもいただけない。まあ、同時期に出たD610もExpeed3なので、4がまだフルサイズ素子に対する最適化が進んでいないと見ることもできる。だが、もしDfに本気なら4を頑張って搭載しても良かったんじゃないか？
自慢のメカニカルダイヤル類にもケチをつけさせてもらう。このシャッタースピードのダイヤルは1段ずつしか動かない。1/3段で調整しようとすると...なんと、D610などと同じ、コマンドダイヤルで行うことになる。また、絞りについても、従来の操作方法は再現されていない。かつてはレンズに絞りリングがあったが、今回キットレンズとなった55mmF1.8含め、現行レンズで絞りリングを持つレンズはない。だからDfでは、絞りもコマンドダイヤルで調整することになる。
もちろん、事情は分かる。これまで自動化に突き進み、絞りリングのないレンズラインナップを推し進めてきたのに、Dfだけのために、絞りリング付きのレンズを開発するのはかなりオオゴトになる。
そうやって考えてみると、どんどん裏事情が想像される。
絞りリング付きのレンズを新たに起こすのが難しいのは「言わずもがな」だが、ソフトウェアの開発にも同じことが言える。本当は、マニュアル操作を重視したインターフェースをイチから作りたかったのだろうが、それは膨大なリソースを要する。そうすると、Dシリーズがベースというのが前提となり、大きく変えることは無理だ。そうすると、メカニカルダイヤルを追加するにしても、もともとDシリーズが備えているコマンドダイヤルを省くことは難しくなる。それがあること前提のインターフェース設計だからだ。
だが、逆に言うと、たとえばCanonにDfのようなカメラを出せただろうか？後藤フェローという力のある人が主導したからこそ、ハードウェアに関してはかなりの部分を新規に起こすことが許されたとも見ることもできる。
Dfが中途半端であることは、（程度の差はあるかもしれないが）後藤氏自身も認識しているようだ。「及ばない点はある。Dfが売れれば、またできる」という趣旨を述べている。本当はもっとDシリーズとは違うものをやりたかったに違いない。動画機能を殺したのは、彼なりの矜持であったと思えてくる。
シビアなことを述べたが、その志や買いたい。
「小さい・お手軽・キレイ」などというミラーレスカメラが台頭している中、写真を撮るという行為自体がどんどん軽くなっている。カメラを操ること自体が楽しい行為であること、そして時間をかけて被写体と向かい合うことの尊さ。不完全な形の一歩かもしれないが、Dfがカメラ文化の中でも薄くなりつつある側面を、もう一度ユーザー達に喚起してくれる存在となれば、また面白い展開が待っているに違いない。
つづく。
nobilesの投稿(23:40:40-2013-11-28) -
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