NOBILES Days
Jump to navigationDestroyed again - (1) The low sound
1ヶ月以上blogのエントリーが空いた。
その間に、大変なことがあったからだ。大怪我をして手術を受け、入院をしていた。
今回からはそのことを延々と綴っていくことにする。
怪我をする前は庭のアジサイが綺麗な頃だった
(PentaxK-3, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/160sec, F3.2, ISO100)
「コトン」
俺はその時、確かにそんな音を聞いた。なにか、軽いものが落ちたような音だった。だから、ひょっとして自分が何か落とし物をしたのか、とさえ一瞬思ったほどだった。
しかし次の瞬間、地面に落ちていたのは俺自身だった。
あれっ？？なんで？？
その日（2014/6/29）、俺は忙しい休日を過ごしていた。
午前中は、来年小学生になる長女のため、ランドセル展示会の視察に行った。その帰りに、嫁さんが気になっていたというパスタ屋に家族で昼食に行った。
一旦家に戻ると、今度は徒歩で、家族とともに行きつけの酒屋へ行き、高級ワインの試飲会に参加した。ちゃんとキッズスペースもあったので、子どもたちはそこで楽しくお絵描きし、俺と嫁さんは普段飲めない高級ワインを心から楽しんだ。
そして、少し酔いを覚ましてから、今度はシンセを担いでバンドのリハに向かった。リハに入る前に、前から気になっていた店で佐世保バーガーなんて食った。リハは新曲に対する準備不足が露呈したが、まあ相変わらず楽しく演奏した。
全てを満喫し、楽器を担いで自宅近くのターミナル駅まで帰って来た。あ、さすがにリハの打ち上げ飲みは遠慮しといた (^_^;。だから、昼のワインも抜けて、ほぼシラフだ。
ターミナル駅から自宅までは、ローカル線にするか、バスにするか悩んだが、ローカル線がわずか1〜2分後に発車することが分かったので、そちらを選択することにした。それまで乗っていた電車を降りると、乗り換えのため、急いで階段を下り始めた。
1段、2段と下りてスピードに乗り、おもむろに一段抜かしに移行する。よし、これなら間に合いそうだ。
「コトン」
そう思った刹那、その音が聞こえた。
「あれっ？」
何かを落としたのかと思って振り返ろうとしたが、何やら様子がおかしい。なぜなら、自分の頭が、自分の想定よりもはるかに低い位置にあったからだ。俺は、いつのまにか階段の上に尻餅をついていたのだ。
俺は混乱した。なぜ俺はこんな姿勢になっているんだ？？すぐに立ち上がろうとする。
「うあっ」
左足がガクガクとして力が入らない。
あれ？この感覚、どこかで味わったような…。そう思いながらも、俺は本能的にそれを信じたくなくて、ひたすら残りの階段を下りることに専念する。右足と、手すりに掴まった左腕に力を入れて立ち上がると、1段ずつ歩を進め、その階段を下りきった。
「ローカル線に乗らなければ！」
その段階に至っても、俺は自分の身体に起きたことが信じられず、ローカル線のホームに上がる階段に向かって歩き始めた。それでも、俺はだんだんと、自由の利かない左足の状況を冷静に分析しはじめていた。「いや、でもこうやって歩けるんだから違う。『あの時』とは違う」。自分に言い聞かせるようにして、ローカル線のホームへと上がる階段にその左足をかけようとした瞬間だった。
「ぐああ！！！」
左足の膝を曲げた瞬間、強烈な痛みが俺を襲った。前のめりになるようにしてその階段にへたり込む。
その階段に座るように向き直り、激痛の走った左膝を触る。膝の皿がある。「だから『あの時』とは違うはずだ」。そう再び自分に言い聞かすが、自分の顔がどんどん蒼白になり、脂汗が飛び出てくるのが分かった。
冷静な側の俺の脳は残酷な事実を把握し始める。まず間違いなく「あの時」と同じだ。少なくとも、この強烈な痛みがある時点で、ただ事ではない。明日の朝に通常通りに出勤できるような状況でないのは間違いない。
「あの時」。
俺は、5年前にも足の大怪我をした。右膝蓋腱断裂である。
膝蓋腱とは、太ももの筋肉と脛の骨とを結ぶ腱で、膝のお皿を被うような形態をしている。人間の身体の中で最も大きな腱らしい。めったには切れないものだが、走っている時など、急激に膝を伸ばそうとすると、太ももの筋肉の引っぱる力に負けて切れることがあるという。糖尿病や関節リウマチの疾患がある人でも起き得るらしい。ちなみに、ラグビーの大畑大介は引退を宣言していた年、試合中に右膝蓋腱を断裂し、引退を早めることになった。
5年前怪我した時、俺は転職活動をしていた。いわゆるリーマンショックというやつをきっかけに、会社の業績が急降下となった頃だ。5人いたチームメンバーのうち、3人が派遣切りとなり、チームリーダーも早期優遇退職に応募することを選んだ。俺が1人取り残されることになったのだ。
それを機に、ずっと希望していた職種への転職を模索し、ついに面接の機会を得た。それに先立ち、SPIのような事前試験を受けることになった。
そして「その日」、俺は事前試験を翌日に控え、家路を急いでいた。進行方向の信号が変わりそうになった。「おいおい、早く帰って寝なけりゃ！」俺はダッシュし始めた。すると、ふいに横から酔っぱらいがフラフラと出てきた。
「マズい！」
俺は方向を変えた。酔っぱらいの右側に少し体をひねって避けた。急ブレーキをかけるように右足を着地したその刹那、「カポン」というような音が聞こえた。そして、気づくと転倒していた。記憶が定かでないが、腕に擦り傷を負っていたので、前のめりに倒れたのだろう。下り坂で、それなりにスピードに乗っていた。
そのときも俺は、なんとか立ち上がると、交差点の歩道を渡り終えるところまでは歩いたのだ。しかし、渡り終えて右足をもっと上げようとして膝を曲げようとした瞬間、悲鳴とともにもんどり打って倒れた。周囲にいた人が肩を貸してくれて、ビルの非常階段のようなところに座った俺は自分の携帯で救急車を呼んだのだった。
「○○行き、間もなく発車いたします。時間です、お急ぎ下さい！」
5年前から、つい先日の話に戻ろう。
背中側のホーム上から、ローカル線の発車を告げるアナウンスが聞こえてきた。あれに乗ったところで、俺は多分ローカル駅から自宅までのおよそ2kmを歩いて帰るのは難しいだろう。もうローカル線は諦めよう。
じゃあどうする？このターミナル駅からバスに乗れば自宅まで徒歩3分程度のところまで帰れる。だが、10kgの楽器を背負って帰れるのか？そもそも、この足を一刻も早く診てもらうべきじゃないか？
いずれにしても、もう駅の中に留まる理由はなくなった。まずは左足をひきずりながら、楽器を背負って、改札を目指した。ターミナル駅は改装中で迷路のようだ。日曜の夜で、酒が入った連中も含め、どんどん人が向かってくる。恐怖を感じながらも、なんとか改札を出た。
…やっぱりバスで帰るのもダメだ。救急車だ。
バンドの飲みも辞退して帰ってきたので、まだ22時を過ぎたばかりだった。嫁さんはまだギリギリ起きている頃だ。まずは嫁さんに電話した。
階段を下りている時に、膝が抜けるようになったこと。前回と同じかどうか分からないが、かなり似た感覚があること。曲げると激痛があること。恐らく、かなり深刻な事態なので、救急車を呼ぶということ。
もちろん嫁さんも驚いていたが、その電話を受けて、迎えであったり何らかの対応が必要であろうということで、近所に住む嫁さんのご両親にも連絡をしてくれた。
そして、次に俺は119番に電話をかけた。1秒もしないで「火事ですか、救急ですか？」と、オペレーターが出た。もちろん救急です。
やりとりの順番は覚えていないが、確かまず場所を聞かれ、次に患者の様子を聞かれたと思う。
「あ、自分なんですが」
「え？ご本人？」
ギャグのようだが大マジっす。
改札出てすぐのロータリーのところにいる、と俺が言うと、「駅員さんに言って対処してもらえないか？」と言う。いやー、もう窓口まで歩いていくのは無理っす。「分かりました、数分でそちらに着きます」。
最後の力を振り絞り、ロータリーの目立つところまで移動した。太い柱があったので、その横に楽器を置き、自分も寄りかかった。
改めて左膝を触ってみる。ハーフパンツなので膝は露わになっている。明らかに腫れている。やっぱり、只事では済まないのは間違いない。階段で激痛が走った件（くだり）でも述べたが、前回は膝を触ったら、お皿がどこかに行ってしまったと感じたが、今回はお皿がある。きっと今回はあのときほど酷くはないに違いない。そう自分に言い聞かせた。
すると、後ろから駅員がやってきた。そして、ロータリーの車道から、歩道の広場のようになっているところへ上がれる部分に立っていたポールを下げ始めた。つまり、車を通れるようにしている。どうやら、ここに救急車を停めさせるつもりなのだろう。俺が移動ムリ、と言ったから別途駅に連絡が行ったのだろうか。その駅員と一瞬目が合ったのだが、もし救急車と全然関係なかったら無駄に精神的ダメージになりそうなので黙っていた。
ほどなく、救急車のサイレンが近づいてきた。チカチカと明滅するパトランプが見えてきた。
一応場所を特定させない配慮から、手前からサイレンの音量は絞られたが、それでもギンギンに目立つ。運転席の救急隊員が見えたので、手を振ってアピールした。すると、救急車はすぐにその場で大きく右に向くと、お尻をこちらに向けて、さっき駅員が開けたスペースにバックで入ってきた。
停車した救急車から隊員たちが下りてきた。すると、彼らは俺ではなくまず駅員の方に向かった。あれっ？
「お疲れさまです」
「どうも。患者さんは…？」
「いや、それが…」
「...あ、あの、僕です」
「あ、あれ？あなたですか？」
…いや、ギャグじゃなくて大マジなんですけどね。
救急車のリヤゲートが開いた。
「どうですか、自分で乗れますか？」
「あ、左膝さえ曲げなければ」
楽器とカバンを手早く隊員が回収してくれた。俺は支えられながら、救急車に入り、担架ベッドに座った。
救急車が来たためか知らないが、さっきまではほとんど人がいなかった歩道の広場に、若者が数人寄って来ていた。見物なのか？かと言って、別に写メを取る訳でもないし、救急車に乗り込んだ俺に注目するでもない。ひょっとしたら担架が出動すると思ってたのかな？すんません、地味に自分で乗り込んじゃって。
そういえば5年前は、救急車が20mくらい離れたところに止まってしまったために、担架に乗せられて、ガラガラと派手に移動したものだ。余裕はないが、そのことは少し頭をよぎった。
つづく。
その間に、大変なことがあったからだ。大怪我をして手術を受け、入院をしていた。
今回からはそのことを延々と綴っていくことにする。
怪我をする前は庭のアジサイが綺麗な頃だった
(PentaxK-3, PentaxFA31mmLimitedF1.8, 1/160sec, F3.2, ISO100)
「コトン」
俺はその時、確かにそんな音を聞いた。なにか、軽いものが落ちたような音だった。だから、ひょっとして自分が何か落とし物をしたのか、とさえ一瞬思ったほどだった。
しかし次の瞬間、地面に落ちていたのは俺自身だった。
あれっ？？なんで？？
その日（2014/6/29）、俺は忙しい休日を過ごしていた。
午前中は、来年小学生になる長女のため、ランドセル展示会の視察に行った。その帰りに、嫁さんが気になっていたというパスタ屋に家族で昼食に行った。
一旦家に戻ると、今度は徒歩で、家族とともに行きつけの酒屋へ行き、高級ワインの試飲会に参加した。ちゃんとキッズスペースもあったので、子どもたちはそこで楽しくお絵描きし、俺と嫁さんは普段飲めない高級ワインを心から楽しんだ。
そして、少し酔いを覚ましてから、今度はシンセを担いでバンドのリハに向かった。リハに入る前に、前から気になっていた店で佐世保バーガーなんて食った。リハは新曲に対する準備不足が露呈したが、まあ相変わらず楽しく演奏した。
全てを満喫し、楽器を担いで自宅近くのターミナル駅まで帰って来た。あ、さすがにリハの打ち上げ飲みは遠慮しといた (^_^;。だから、昼のワインも抜けて、ほぼシラフだ。
ターミナル駅から自宅までは、ローカル線にするか、バスにするか悩んだが、ローカル線がわずか1〜2分後に発車することが分かったので、そちらを選択することにした。それまで乗っていた電車を降りると、乗り換えのため、急いで階段を下り始めた。
1段、2段と下りてスピードに乗り、おもむろに一段抜かしに移行する。よし、これなら間に合いそうだ。
「コトン」
そう思った刹那、その音が聞こえた。
「あれっ？」
何かを落としたのかと思って振り返ろうとしたが、何やら様子がおかしい。なぜなら、自分の頭が、自分の想定よりもはるかに低い位置にあったからだ。俺は、いつのまにか階段の上に尻餅をついていたのだ。
俺は混乱した。なぜ俺はこんな姿勢になっているんだ？？すぐに立ち上がろうとする。
「うあっ」
左足がガクガクとして力が入らない。
あれ？この感覚、どこかで味わったような…。そう思いながらも、俺は本能的にそれを信じたくなくて、ひたすら残りの階段を下りることに専念する。右足と、手すりに掴まった左腕に力を入れて立ち上がると、1段ずつ歩を進め、その階段を下りきった。
「ローカル線に乗らなければ！」
その段階に至っても、俺は自分の身体に起きたことが信じられず、ローカル線のホームに上がる階段に向かって歩き始めた。それでも、俺はだんだんと、自由の利かない左足の状況を冷静に分析しはじめていた。「いや、でもこうやって歩けるんだから違う。『あの時』とは違う」。自分に言い聞かせるようにして、ローカル線のホームへと上がる階段にその左足をかけようとした瞬間だった。
「ぐああ！！！」
左足の膝を曲げた瞬間、強烈な痛みが俺を襲った。前のめりになるようにしてその階段にへたり込む。
その階段に座るように向き直り、激痛の走った左膝を触る。膝の皿がある。「だから『あの時』とは違うはずだ」。そう再び自分に言い聞かすが、自分の顔がどんどん蒼白になり、脂汗が飛び出てくるのが分かった。
冷静な側の俺の脳は残酷な事実を把握し始める。まず間違いなく「あの時」と同じだ。少なくとも、この強烈な痛みがある時点で、ただ事ではない。明日の朝に通常通りに出勤できるような状況でないのは間違いない。
「あの時」。
俺は、5年前にも足の大怪我をした。右膝蓋腱断裂である。
膝蓋腱とは、太ももの筋肉と脛の骨とを結ぶ腱で、膝のお皿を被うような形態をしている。人間の身体の中で最も大きな腱らしい。めったには切れないものだが、走っている時など、急激に膝を伸ばそうとすると、太ももの筋肉の引っぱる力に負けて切れることがあるという。糖尿病や関節リウマチの疾患がある人でも起き得るらしい。ちなみに、ラグビーの大畑大介は引退を宣言していた年、試合中に右膝蓋腱を断裂し、引退を早めることになった。
5年前怪我した時、俺は転職活動をしていた。いわゆるリーマンショックというやつをきっかけに、会社の業績が急降下となった頃だ。5人いたチームメンバーのうち、3人が派遣切りとなり、チームリーダーも早期優遇退職に応募することを選んだ。俺が1人取り残されることになったのだ。
それを機に、ずっと希望していた職種への転職を模索し、ついに面接の機会を得た。それに先立ち、SPIのような事前試験を受けることになった。
そして「その日」、俺は事前試験を翌日に控え、家路を急いでいた。進行方向の信号が変わりそうになった。「おいおい、早く帰って寝なけりゃ！」俺はダッシュし始めた。すると、ふいに横から酔っぱらいがフラフラと出てきた。
「マズい！」
俺は方向を変えた。酔っぱらいの右側に少し体をひねって避けた。急ブレーキをかけるように右足を着地したその刹那、「カポン」というような音が聞こえた。そして、気づくと転倒していた。記憶が定かでないが、腕に擦り傷を負っていたので、前のめりに倒れたのだろう。下り坂で、それなりにスピードに乗っていた。
そのときも俺は、なんとか立ち上がると、交差点の歩道を渡り終えるところまでは歩いたのだ。しかし、渡り終えて右足をもっと上げようとして膝を曲げようとした瞬間、悲鳴とともにもんどり打って倒れた。周囲にいた人が肩を貸してくれて、ビルの非常階段のようなところに座った俺は自分の携帯で救急車を呼んだのだった。
「○○行き、間もなく発車いたします。時間です、お急ぎ下さい！」
5年前から、つい先日の話に戻ろう。
背中側のホーム上から、ローカル線の発車を告げるアナウンスが聞こえてきた。あれに乗ったところで、俺は多分ローカル駅から自宅までのおよそ2kmを歩いて帰るのは難しいだろう。もうローカル線は諦めよう。
じゃあどうする？このターミナル駅からバスに乗れば自宅まで徒歩3分程度のところまで帰れる。だが、10kgの楽器を背負って帰れるのか？そもそも、この足を一刻も早く診てもらうべきじゃないか？
いずれにしても、もう駅の中に留まる理由はなくなった。まずは左足をひきずりながら、楽器を背負って、改札を目指した。ターミナル駅は改装中で迷路のようだ。日曜の夜で、酒が入った連中も含め、どんどん人が向かってくる。恐怖を感じながらも、なんとか改札を出た。
…やっぱりバスで帰るのもダメだ。救急車だ。
バンドの飲みも辞退して帰ってきたので、まだ22時を過ぎたばかりだった。嫁さんはまだギリギリ起きている頃だ。まずは嫁さんに電話した。
階段を下りている時に、膝が抜けるようになったこと。前回と同じかどうか分からないが、かなり似た感覚があること。曲げると激痛があること。恐らく、かなり深刻な事態なので、救急車を呼ぶということ。
もちろん嫁さんも驚いていたが、その電話を受けて、迎えであったり何らかの対応が必要であろうということで、近所に住む嫁さんのご両親にも連絡をしてくれた。
そして、次に俺は119番に電話をかけた。1秒もしないで「火事ですか、救急ですか？」と、オペレーターが出た。もちろん救急です。
やりとりの順番は覚えていないが、確かまず場所を聞かれ、次に患者の様子を聞かれたと思う。
「あ、自分なんですが」
「え？ご本人？」
ギャグのようだが大マジっす。
改札出てすぐのロータリーのところにいる、と俺が言うと、「駅員さんに言って対処してもらえないか？」と言う。いやー、もう窓口まで歩いていくのは無理っす。「分かりました、数分でそちらに着きます」。
最後の力を振り絞り、ロータリーの目立つところまで移動した。太い柱があったので、その横に楽器を置き、自分も寄りかかった。
改めて左膝を触ってみる。ハーフパンツなので膝は露わになっている。明らかに腫れている。やっぱり、只事では済まないのは間違いない。階段で激痛が走った件（くだり）でも述べたが、前回は膝を触ったら、お皿がどこかに行ってしまったと感じたが、今回はお皿がある。きっと今回はあのときほど酷くはないに違いない。そう自分に言い聞かせた。
すると、後ろから駅員がやってきた。そして、ロータリーの車道から、歩道の広場のようになっているところへ上がれる部分に立っていたポールを下げ始めた。つまり、車を通れるようにしている。どうやら、ここに救急車を停めさせるつもりなのだろう。俺が移動ムリ、と言ったから別途駅に連絡が行ったのだろうか。その駅員と一瞬目が合ったのだが、もし救急車と全然関係なかったら無駄に精神的ダメージになりそうなので黙っていた。
ほどなく、救急車のサイレンが近づいてきた。チカチカと明滅するパトランプが見えてきた。
一応場所を特定させない配慮から、手前からサイレンの音量は絞られたが、それでもギンギンに目立つ。運転席の救急隊員が見えたので、手を振ってアピールした。すると、救急車はすぐにその場で大きく右に向くと、お尻をこちらに向けて、さっき駅員が開けたスペースにバックで入ってきた。
停車した救急車から隊員たちが下りてきた。すると、彼らは俺ではなくまず駅員の方に向かった。あれっ？
「お疲れさまです」
「どうも。患者さんは…？」
「いや、それが…」
「...あ、あの、僕です」
「あ、あれ？あなたですか？」
…いや、ギャグじゃなくて大マジなんですけどね。
救急車のリヤゲートが開いた。
「どうですか、自分で乗れますか？」
「あ、左膝さえ曲げなければ」
楽器とカバンを手早く隊員が回収してくれた。俺は支えられながら、救急車に入り、担架ベッドに座った。
救急車が来たためか知らないが、さっきまではほとんど人がいなかった歩道の広場に、若者が数人寄って来ていた。見物なのか？かと言って、別に写メを取る訳でもないし、救急車に乗り込んだ俺に注目するでもない。ひょっとしたら担架が出動すると思ってたのかな？すんません、地味に自分で乗り込んじゃって。
そういえば5年前は、救急車が20mくらい離れたところに止まってしまったために、担架に乗せられて、ガラガラと派手に移動したものだ。余裕はないが、そのことは少し頭をよぎった。
つづく。
nobilesの投稿(22:27:49-2014-07-20) -
カテゴリ: Injury
コメント
No comments yet
コメントを追加
トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)TrackBack URL
DISALLOWED (TrackBack)
メインページ
Calendar
| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
NewEntries
最新COMMENTS
■20-07-11 21:47>ああ、あのeh
■20-07-10 01:07>そうです、予
■20-07-09 22:36>あっ、ショー
■20-07-06 07:27>50-34のチェ�
■18-01-05 00:53>おやこれはぱ
■18-01-04 23:56>手出しちゃっ
■15-07-27 23:21>おっと、今か
■15-07-22 11:40>良質な小説読
■15-02-21 09:29>おや、どなた
■15-02-20 08:05>ほー、勉強に
カテゴリ
- All
- Bicycle
- Breast Cancer
- Change Job
- Formula-One
- Gourmet
- Injury
- Mac
- Main
- Monaco
- Music
- Peugeot
- Photo
- Travel
Archives
My Links
NOBILES Web検索
プロフィール
RSS対応
RSS v2.0
RSS v0.91
RSS v1.0
管理
管理室へ携帯用ブログ
携帯用URL