NOBILES Days
Jump to navigationFrankly Speaking... Vol.15
娘の情操教育に、こどもチャレンジの「しまじろう」が絶大な効力を発揮している。
例えば「歯磨きしよう」と言っても遊びに首ったけでなかなか反応してくれないが、こどもチャレンジのパペットで歯磨きの真似なんかしてから、「ほら、次はキーちゃんの番だよ」なんて言うと「うん！」なんて言って極めて素直に歯磨きを開始する。
こうした道具があっても、親がサボっちゃいけないな、とも思った。
こどもチャレンジには、たしか隔月だったと思うがDVDがついてくる。が、嫁さんが機械の操作を苦手としているのもあって開封さえすることなくしまいこんでいた。や、それどころか、「邪魔だから捨てちゃおう」くらいのことは言っていた。
だが、「シャキーン！」のDVDを自分でプレーヤーに突っ込む技を覚えたあたりで、試しに「しまじろう」のDVDも見せたら、これが見事にハマッた。楽しい歌や踊りが入っているし、付属のオモチャの遊び方みたいのも楽しげに紹介されていたのだ。それを見た娘は、これまた嫁さんが「遊ばないから捨てちまおう」なんて言ってた山から、全然遊ばなかったオモチャを引っ張り出してきて遊んでいる。
オモチャの方もなかなかうまくできていて、微妙に親が手を出さないといけなかったりして、親子のコミュニケーションもとれるようになっている。
なるほど、与えるだけじゃダメなのだ。小さな子どもは大人の真似をして成長する。
嫁さんの同僚が「子どもチャレンジ、散らかるだけで全然遊ばないから解約した」と言っていたらしいが、きっとそれは大人が何も手を出さなかったからだと思う。
そして、俺の「しまじろう」パペットの操作技術がどんどん向上していくのだった。
二人暮らし末期にはそれすら通用しない気味になってたけど。
「ママーーーーッ！」
(PentaxK-7, PentaxDAFisheye10-17mmF3.5-4.5(10.0mm), 1/250sec, F10.0, ISO100)
さて、次女の誕生でお休みしていた前職ぶっちゃけ日記...日記じゃねーよな、回顧録だな。それにようやく気づいた第15回 (^_^;。久々の「ボスのグループの派遣クン列伝」だ。
前職ぶっちゃけ回顧録
「15.最短記録」
*** Back Number ***
1.野放し
2.OFコンビ（ボンクラ親父達）
3.堕落人
4.砂上の楼閣1
5.砂上の楼閣2
6.火の玉、堕ちた
7.さよなら、ブーちゃん
8.新たなるチャレンジ
9.斜陽
10.ハイテンション・プログラマー
11.ドロンパ、郷里に帰る
12.盟友たち
13.大移動
14.編入
3年ほど前のことになる。
事業所が移転してから、代わり映えも手応えもない仕事にやる気をなくし、異動願も考えた俺は、このブログで何度も登場してきたキレ者「ボス」のグループへ編入されることになった。
過酷な労働環境と言われたこのグループへの編入に関し、俺は何の不安もなかったと以前言った。
それは半分本当で半分嘘だ。
確かに、ボスは他の人が思うほど話が通じない人間だとは思っていなかったから、うまくやれる自信はあった。だが、少なくともあの会社の中にあっては先鋭的な考え方をする人だったし、課の他の人と衝突も良く起きていただけに、俺はニュートラルでいたいと思った。
しかし、ボスにとってそれはある程度織り込み済みだったようだ。
ボスの部屋に俺の席となるPCを設けつつも、従来の居室スペースにも俺の席を残した。そして、前の業務が片付くまで、午前は居室、午後はこっちって感じでやろう、ということになった。
俺の編入とほとんど時を同じくして、先述の派遣社員Yの契約が終了することになった。Yは、同時に加入して俺の下に入ったSとは違って社交性もあまりなかったし、何よりやる気がなく、存在感もなかった。これでボスにとって5人目の「派遣切り」ということになる。
Yの代わりとして、新たに派遣社員N村が加入した。俺とN村は、ボスの構築していたパラメーター自動設定システムのオリエンレクチャーを一緒に受けることになった。
N村は、ボスと同い年だったが、割と体格が良く、ちょっと強面でもあった。ダチョウ倶楽部のジモンを少し縦に伸ばしてメガネをかけさせるとかなりいい感じだ。しかも、確か腰を悪くしていた関係で、ちょっと踏ん反り返って偉そうに見える姿勢だった。
それだけに、グループ以外の人にとっては、なんだか怖い人、というイメージがあったようだ。しかし実際は少し声が高く、ひ弱い感じで喋る人で、大声を出すのを聞いたことがないほどだった。
実際に俺が接した感じは結構気弱な性格と映った。そしてそれは意外な形で的中することになる。
ボスのレクチャーは1日2〜3時間程度だった。何しろ当時でも開発を始めてから5年を経過してシステムは巨大なものになっていたため、全貌を網羅するには2週間程度を要した。いたるところにボスの大好きな数学が登場し、オリエンと言いながら、決して難易度は低くなかった。正直言うと、ディープ過ぎるパートに入ると猛烈な睡魔に襲われた。
レクチャーと並行して、実際にシステムを稼働する実技も開始された。
「パラメーターの自動設定システム」と聞くと、ポンとボタンを押せばさっくりパラメーターが弾き出されてくるイメージを持つかもしれないが、実際にはシステムを熟知した人でなければマトモに動かせないものだった。
もちろん、ボスの終着点は「なんの知識のない派遣社員でも操作可能なシステム」だった。しかし、以前も述べたように、ボスの構想を全て実現するにはプログラム部門のリソースが少な過ぎた。
もともと精度が低くても問題ない「製品群C」用のプログラムを、桁違いの精度が求められる「製品群D」に対応させるために建て増しを繰り返してきたために、吐き出されるデータの格納場所もバラバラだったし、インターフェースも難解だったのである。
そんなシステム操作実技に一緒に四苦八苦していた俺とN村だが、N村は何度も同じ初歩的なミスを繰り返していた。
...あれれ？あれあれ？
しかも会話をしていても、なんだかチグハグというか、要領を得ていないフワフワとした発言が目立つようになっていった。
それでもボスは、これまでの派遣社員にしていたような辛辣な態度を、N村に対してはとらなかった。後に本人が語ったところによると、同い年ということもあるし、やる気を見せてくれなかった前任者Yの反省もあった。プログラム組の中核を担える人材として派遣会社に強く働きかけて引っ張ってきたのがN村だったので、ゆっくりでもシステムに馴染んでもらおうと手を尽くしていた。
2週間のレクチャーが終わって、プログラミングの実務に入ってもらう時も、かなり取っつきやすく、興味を持ってもらえるようなテーマを当てがっていた。
ところがそれから2週間も経たない頃だ。N村が会社を休んだ。理由は、「妻の体調」ということだった。
翌日の金曜日、またしてもN村は来なかった。グループ員全員、声には出さないがイヤーな予感を感じ始めていた。
そして週が明けた。
「あ？？なんだこりゃ？」
やはりN村からその日も休む旨のメールがボスのところに入っていた。
しかも、その内容は前の週2日の理由とは変容していた。
「最寄駅までは来たのですが、家に引き返しました。しばらく休ませていただきます。なお、私の病状については営業からY課長様へご報告させていただきます。」
ボスに集められてメールを見たグループ員全員、目が点になった。
「マジかよ！俺、ほんっとに気ぃ使ってたのに。2ヶ月経ってねーぞ。最短記録だ。」
人呼んで「クラッシャー」たるボスも、さすがに動揺していた。
N村は心の病にかかってしまったのだという。結局、業務を続けるのは困難と判断し、契約を解除することになった。
「また犠牲者が出たね。よっぽどイヤだったんだろうね、あそこの仕事が。」
またぞろ、グループ外ではそんな噂話が行われた。例によって契約解除の理由を部屋の外では一切ボスが話さなかったからだ。
だが、ほぼ同期入団？で多くの時間を横で過ごしていた限り、ボスが言う通り、ボスはN村をかなり大事に扱っていたし、むしろ世間話などでは、無口な「スギさん」より、同学年のボスと盛り上がることも多かった。
理由があるとすれば、ボスの与えた仕事をこなす自信がないから、ということくらいしか考えられない。実際、N村を引き継いだ後任者がフォルダを開くと、成果物とも呼べないような、どうしようもないソースの欠片しか残されていなかった。「中核」と言えるようなスキルがあったかどうかは、かなり疑わしいと言わざるを得ない。
そうだとしてもこの事態に陥るまでの期間があまりに短すぎる。これはボスとも話していないし、推測に過ぎないが、もともと心の病を持っていて、復帰の場として送り込まれたとしか俺には思えない。
もちろん、心の病を乗り越えようとしている人に、復帰の場所は与えられなければならないとは思う。しかし、「中核を担える人材」というバリバリに働かなければならないことは明白な職場に、そんな人を送り込むなんてどう考えてもおかしくないか？
ま、推測にすぎないのだが。
とにもかくにもグループは、中核的役割を期待された人材を、またしても期待外れの失望とともに失うことになったのだった。
つづく。
例えば「歯磨きしよう」と言っても遊びに首ったけでなかなか反応してくれないが、こどもチャレンジのパペットで歯磨きの真似なんかしてから、「ほら、次はキーちゃんの番だよ」なんて言うと「うん！」なんて言って極めて素直に歯磨きを開始する。
こうした道具があっても、親がサボっちゃいけないな、とも思った。
こどもチャレンジには、たしか隔月だったと思うがDVDがついてくる。が、嫁さんが機械の操作を苦手としているのもあって開封さえすることなくしまいこんでいた。や、それどころか、「邪魔だから捨てちゃおう」くらいのことは言っていた。
だが、「シャキーン！」のDVDを自分でプレーヤーに突っ込む技を覚えたあたりで、試しに「しまじろう」のDVDも見せたら、これが見事にハマッた。楽しい歌や踊りが入っているし、付属のオモチャの遊び方みたいのも楽しげに紹介されていたのだ。それを見た娘は、これまた嫁さんが「遊ばないから捨てちまおう」なんて言ってた山から、全然遊ばなかったオモチャを引っ張り出してきて遊んでいる。
オモチャの方もなかなかうまくできていて、微妙に親が手を出さないといけなかったりして、親子のコミュニケーションもとれるようになっている。
なるほど、与えるだけじゃダメなのだ。小さな子どもは大人の真似をして成長する。
嫁さんの同僚が「子どもチャレンジ、散らかるだけで全然遊ばないから解約した」と言っていたらしいが、きっとそれは大人が何も手を出さなかったからだと思う。
そして、俺の「しまじろう」パペットの操作技術がどんどん向上していくのだった。
二人暮らし末期にはそれすら通用しない気味になってたけど。
「ママーーーーッ！」
(PentaxK-7, PentaxDAFisheye10-17mmF3.5-4.5(10.0mm), 1/250sec, F10.0, ISO100)
さて、次女の誕生でお休みしていた前職ぶっちゃけ日記...日記じゃねーよな、回顧録だな。それにようやく気づいた第15回 (^_^;。久々の「ボスのグループの派遣クン列伝」だ。
前職ぶっちゃけ回顧録
「15.最短記録」
*** Back Number ***
1.野放し
2.OFコンビ（ボンクラ親父達）
3.堕落人
4.砂上の楼閣1
5.砂上の楼閣2
6.火の玉、堕ちた
7.さよなら、ブーちゃん
8.新たなるチャレンジ
9.斜陽
10.ハイテンション・プログラマー
11.ドロンパ、郷里に帰る
12.盟友たち
13.大移動
14.編入
3年ほど前のことになる。
事業所が移転してから、代わり映えも手応えもない仕事にやる気をなくし、異動願も考えた俺は、このブログで何度も登場してきたキレ者「ボス」のグループへ編入されることになった。
過酷な労働環境と言われたこのグループへの編入に関し、俺は何の不安もなかったと以前言った。
それは半分本当で半分嘘だ。
確かに、ボスは他の人が思うほど話が通じない人間だとは思っていなかったから、うまくやれる自信はあった。だが、少なくともあの会社の中にあっては先鋭的な考え方をする人だったし、課の他の人と衝突も良く起きていただけに、俺はニュートラルでいたいと思った。
しかし、ボスにとってそれはある程度織り込み済みだったようだ。
ボスの部屋に俺の席となるPCを設けつつも、従来の居室スペースにも俺の席を残した。そして、前の業務が片付くまで、午前は居室、午後はこっちって感じでやろう、ということになった。
俺の編入とほとんど時を同じくして、先述の派遣社員Yの契約が終了することになった。Yは、同時に加入して俺の下に入ったSとは違って社交性もあまりなかったし、何よりやる気がなく、存在感もなかった。これでボスにとって5人目の「派遣切り」ということになる。
Yの代わりとして、新たに派遣社員N村が加入した。俺とN村は、ボスの構築していたパラメーター自動設定システムのオリエンレクチャーを一緒に受けることになった。
N村は、ボスと同い年だったが、割と体格が良く、ちょっと強面でもあった。ダチョウ倶楽部のジモンを少し縦に伸ばしてメガネをかけさせるとかなりいい感じだ。しかも、確か腰を悪くしていた関係で、ちょっと踏ん反り返って偉そうに見える姿勢だった。
それだけに、グループ以外の人にとっては、なんだか怖い人、というイメージがあったようだ。しかし実際は少し声が高く、ひ弱い感じで喋る人で、大声を出すのを聞いたことがないほどだった。
実際に俺が接した感じは結構気弱な性格と映った。そしてそれは意外な形で的中することになる。
ボスのレクチャーは1日2〜3時間程度だった。何しろ当時でも開発を始めてから5年を経過してシステムは巨大なものになっていたため、全貌を網羅するには2週間程度を要した。いたるところにボスの大好きな数学が登場し、オリエンと言いながら、決して難易度は低くなかった。正直言うと、ディープ過ぎるパートに入ると猛烈な睡魔に襲われた。
レクチャーと並行して、実際にシステムを稼働する実技も開始された。
「パラメーターの自動設定システム」と聞くと、ポンとボタンを押せばさっくりパラメーターが弾き出されてくるイメージを持つかもしれないが、実際にはシステムを熟知した人でなければマトモに動かせないものだった。
もちろん、ボスの終着点は「なんの知識のない派遣社員でも操作可能なシステム」だった。しかし、以前も述べたように、ボスの構想を全て実現するにはプログラム部門のリソースが少な過ぎた。
もともと精度が低くても問題ない「製品群C」用のプログラムを、桁違いの精度が求められる「製品群D」に対応させるために建て増しを繰り返してきたために、吐き出されるデータの格納場所もバラバラだったし、インターフェースも難解だったのである。
そんなシステム操作実技に一緒に四苦八苦していた俺とN村だが、N村は何度も同じ初歩的なミスを繰り返していた。
...あれれ？あれあれ？
しかも会話をしていても、なんだかチグハグというか、要領を得ていないフワフワとした発言が目立つようになっていった。
それでもボスは、これまでの派遣社員にしていたような辛辣な態度を、N村に対してはとらなかった。後に本人が語ったところによると、同い年ということもあるし、やる気を見せてくれなかった前任者Yの反省もあった。プログラム組の中核を担える人材として派遣会社に強く働きかけて引っ張ってきたのがN村だったので、ゆっくりでもシステムに馴染んでもらおうと手を尽くしていた。
2週間のレクチャーが終わって、プログラミングの実務に入ってもらう時も、かなり取っつきやすく、興味を持ってもらえるようなテーマを当てがっていた。
ところがそれから2週間も経たない頃だ。N村が会社を休んだ。理由は、「妻の体調」ということだった。
翌日の金曜日、またしてもN村は来なかった。グループ員全員、声には出さないがイヤーな予感を感じ始めていた。
そして週が明けた。
「あ？？なんだこりゃ？」
やはりN村からその日も休む旨のメールがボスのところに入っていた。
しかも、その内容は前の週2日の理由とは変容していた。
「最寄駅までは来たのですが、家に引き返しました。しばらく休ませていただきます。なお、私の病状については営業からY課長様へご報告させていただきます。」
ボスに集められてメールを見たグループ員全員、目が点になった。
「マジかよ！俺、ほんっとに気ぃ使ってたのに。2ヶ月経ってねーぞ。最短記録だ。」
人呼んで「クラッシャー」たるボスも、さすがに動揺していた。
N村は心の病にかかってしまったのだという。結局、業務を続けるのは困難と判断し、契約を解除することになった。
「また犠牲者が出たね。よっぽどイヤだったんだろうね、あそこの仕事が。」
またぞろ、グループ外ではそんな噂話が行われた。例によって契約解除の理由を部屋の外では一切ボスが話さなかったからだ。
だが、ほぼ同期入団？で多くの時間を横で過ごしていた限り、ボスが言う通り、ボスはN村をかなり大事に扱っていたし、むしろ世間話などでは、無口な「スギさん」より、同学年のボスと盛り上がることも多かった。
理由があるとすれば、ボスの与えた仕事をこなす自信がないから、ということくらいしか考えられない。実際、N村を引き継いだ後任者がフォルダを開くと、成果物とも呼べないような、どうしようもないソースの欠片しか残されていなかった。「中核」と言えるようなスキルがあったかどうかは、かなり疑わしいと言わざるを得ない。
そうだとしてもこの事態に陥るまでの期間があまりに短すぎる。これはボスとも話していないし、推測に過ぎないが、もともと心の病を持っていて、復帰の場として送り込まれたとしか俺には思えない。
もちろん、心の病を乗り越えようとしている人に、復帰の場所は与えられなければならないとは思う。しかし、「中核を担える人材」というバリバリに働かなければならないことは明白な職場に、そんな人を送り込むなんてどう考えてもおかしくないか？
ま、推測にすぎないのだが。
とにもかくにもグループは、中核的役割を期待された人材を、またしても期待外れの失望とともに失うことになったのだった。
つづく。
nobilesの投稿(23:51:28-2011-05-18) -
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