NOBILES Days
Jump to navigationFrankly Speaking... Vol.16
1年半前まで住んでいた街から引っ越して以来、初めてそこへ行った。その隣町の病院には松葉杖を返しに行ったりしてたんだけどね。
駅周辺の再開発中に引っ越したので、時が経ち、間もなく再開発もラストスパートにかかろうかというこの時期、駅を降りて、かなり風景が変わっていて驚いた。
当たり前だが、引っ越した先で俺が過ごした1年半と同じだけの時間がここでも流れていたんだなと思った。
足のアクシデントで、ろくに別れの儀式もなく離れた街だ。あれから、落ち着いたらゆっくり行こうと思っていたが、たったの1年半で、ここはもう俺の街ではなくなっていた。今さら、別れもクソもなかった。
時計は戻らない。それぞれの時間を過ごしていくだけなのだ。
その後、酔狂にも自分の膝の腱が切れて転倒した場所（言っておくが、こけて切れたのではない。切れたからこけたのだ）にも行った。あれから1年半しか経っていないのが信じられなかった。
気に入っていたレストランのランチを食べようと思ったが、ことごとく日曜の昼は開いていなくて残念に思った。
さてなぜわざわざ出向いたかと言えば、友人のお父さんが亡くなられたので、線香をあげに行ったのだ。たまたま前住んでいた家から歩いて20分ほどのところで、良く行っていた公園からもほど近かった。線香をあげにいっただけなのに、美味しいケーキやら果物やらをお母さまに振舞っていただき、こっちが恐縮だった。
Young Green on the Red Roof
(PentaxK-7, PentaxDA*60-250mmF4(250.0mm), 1/125sec, F4.0, ISO800)
さて、前職ぶっちゃけ回顧録の続き。
前職ぶっちゃけ回顧録
「16.再加入」
*** Back Number ***
1.野放し
2.OFコンビ（ボンクラ親父達）
3.堕落人
4.砂上の楼閣1
5.砂上の楼閣2
6.火の玉、堕ちた
7.さよなら、ブーちゃん
8.新たなるチャレンジ
9.斜陽
10.ハイテンション・プログラマー
11.ドロンパ、郷里に帰る
12.盟友たち
13.大移動
14.編入
15.最短記録
俺と同時期にボスのグループに入り、プログラム部門の中核的役割を期待された派遣社員N村は、異例とも言えるボスからの厚遇にも関わらず、なんの成果も残さないまま2ヶ月と保たずに去った。
そしてまた、グループのプログラミング担当は、広島弁の寡黙な派遣社員「スギさん」ただ1人に戻ってしまった。
これまで散々、ボスのグループに加入しては去って行った派遣社員達について書いてきた。
確かにボスは派遣社員に対して、割と辛辣な態度をとることは多かった。
「だから脱落者が多いんだ。派遣クラッシャーだ」。
グループ外の人達の指摘は、あながち誤りではない。
だが、ボス本人に聞くと、やっぱりそこには明快な基準があった。サドッ気の強いボスだが、決してサドッ気だけでキツく接していたわけではなかった。
もともと人材派遣会社とは、一時的に派遣先の企業における人材の不足の穴埋めをする存在のはずだ。つまりその派遣する人材は須らく即戦力であるべきだ。
俺のように社員として将来まで会社を支えるべき人間は（結局辞めたけどさ (^_^;）違う。育てる役割は会社にある。だからボスも、育成プログラムを考えてじっくり教えていくんだと言った。なるほど、だから俺にはビシビシと厳しくは接しなかったのだ。
だが、いくら人材派遣会社に入社したばかりだろうが派遣社員は違う。仕事内容に慣れてもらう最初の数ヶ月ならともかく、半年、1年といった単位で育成する義理は、派遣される側の会社にはない。
ボスは、自分のグループに配される派遣社員のために会社が払う金を、マネージャーから聞いてきっちり把握していた。つまり、製品の価格に対して上乗せされる彼らの人件費に照らし合わせて、相応の成果を求めたというのだ。考えてみれば、ごくごく当たり前の事である。
特に、派遣社員ではなく、協力企業の正社員だったOKDとODは対価もかなり高かったという。彼らの懐に入るかどうかは別にして、会社が負担する人件費としては、2人はボスよりも高価だった。だからボスは彼らに対してはビシビシと高い水準を要求した。
だが、ともすればこの会社では、正社員でも派遣でも、よっぽど仕事ぶりや人柄に問題がない限り、すぐに「仲良し」「和気あいあい」になっていた。
だから、ボスの割り切った考え方は恐らくドライに過ぎると思われるだろう。でもそれは、コスト意識に欠けるこの会社の象徴的な側面であったように思う。
立場が違う。金の出処が違う。求められるものが変わってくるのは当然のことだ。
ま、俺も当時は全然分からなかったけどね。
「会社の人間はビジネスパートナーであって友達ではない」
当時、そう言ったボスの言葉に「えー、ドライだなあ」と、内心思ったものだが、今ではその意味が分かる。今の会社の人たちとも飲みに誘っていただいたりして楽しくはやっているが、必要以上に仲良くならないようにしている。
さて、グループのプログラミング部門だが、N村の脱落とはさほど関係なく、ボスは次の強化策を考えていた。
やる気なさ過ぎで辞めたYと同時に派遣され、経験の差から一旦は他のグループ（俺がいたところだが）に渡した派遣社員Sの取り込みだ。
SでなくYを選択する痛恨のミスを犯したボスだが、Sの能力は見抜いていた。
だから、Sがまだ俺の下にいて暇だった頃 (^_^;から、上司には内緒で（俺には言ってたけど）ちょくちょくと細かい仕事をこっそり頼みにきたりして、既成事実化を狙っていた。
だがN村の脱落で、それは急務になった。
N村の脱落が決まった日、ボスとスギさんが真剣に話していた。と言うより、ボスがスギさんに対して問うていたと言った方が正しい。
「やっぱり、中核的な人材なんてそう簡単に獲得できるわけがないな。」
「...なあスギよ、お前覚悟あるか？ここのプログラムを取り仕切るつもりあるか？あるんだったら、今から課長のとこ行って、『もう中核的人材とやらを探す必要はない。自分がやります。だから、有望な若手を入れて下さい』って言ってこい。」
言われたスギさんは、黙って立ち上がると、小走りで部屋を飛び出して行った。
それから間もなくだ。まだ当時24歳だった有望な若手Sが、俺から遅れること約3ヶ月で正式にボスのグループに加入することになった。
つづく。
駅周辺の再開発中に引っ越したので、時が経ち、間もなく再開発もラストスパートにかかろうかというこの時期、駅を降りて、かなり風景が変わっていて驚いた。
当たり前だが、引っ越した先で俺が過ごした1年半と同じだけの時間がここでも流れていたんだなと思った。
足のアクシデントで、ろくに別れの儀式もなく離れた街だ。あれから、落ち着いたらゆっくり行こうと思っていたが、たったの1年半で、ここはもう俺の街ではなくなっていた。今さら、別れもクソもなかった。
時計は戻らない。それぞれの時間を過ごしていくだけなのだ。
その後、酔狂にも自分の膝の腱が切れて転倒した場所（言っておくが、こけて切れたのではない。切れたからこけたのだ）にも行った。あれから1年半しか経っていないのが信じられなかった。
気に入っていたレストランのランチを食べようと思ったが、ことごとく日曜の昼は開いていなくて残念に思った。
さてなぜわざわざ出向いたかと言えば、友人のお父さんが亡くなられたので、線香をあげに行ったのだ。たまたま前住んでいた家から歩いて20分ほどのところで、良く行っていた公園からもほど近かった。線香をあげにいっただけなのに、美味しいケーキやら果物やらをお母さまに振舞っていただき、こっちが恐縮だった。
Young Green on the Red Roof
(PentaxK-7, PentaxDA*60-250mmF4(250.0mm), 1/125sec, F4.0, ISO800)
さて、前職ぶっちゃけ回顧録の続き。
前職ぶっちゃけ回顧録
「16.再加入」
*** Back Number ***
1.野放し
2.OFコンビ（ボンクラ親父達）
3.堕落人
4.砂上の楼閣1
5.砂上の楼閣2
6.火の玉、堕ちた
7.さよなら、ブーちゃん
8.新たなるチャレンジ
9.斜陽
10.ハイテンション・プログラマー
11.ドロンパ、郷里に帰る
12.盟友たち
13.大移動
14.編入
15.最短記録
俺と同時期にボスのグループに入り、プログラム部門の中核的役割を期待された派遣社員N村は、異例とも言えるボスからの厚遇にも関わらず、なんの成果も残さないまま2ヶ月と保たずに去った。
そしてまた、グループのプログラミング担当は、広島弁の寡黙な派遣社員「スギさん」ただ1人に戻ってしまった。
これまで散々、ボスのグループに加入しては去って行った派遣社員達について書いてきた。
確かにボスは派遣社員に対して、割と辛辣な態度をとることは多かった。
「だから脱落者が多いんだ。派遣クラッシャーだ」。
グループ外の人達の指摘は、あながち誤りではない。
だが、ボス本人に聞くと、やっぱりそこには明快な基準があった。サドッ気の強いボスだが、決してサドッ気だけでキツく接していたわけではなかった。
もともと人材派遣会社とは、一時的に派遣先の企業における人材の不足の穴埋めをする存在のはずだ。つまりその派遣する人材は須らく即戦力であるべきだ。
俺のように社員として将来まで会社を支えるべき人間は（結局辞めたけどさ (^_^;）違う。育てる役割は会社にある。だからボスも、育成プログラムを考えてじっくり教えていくんだと言った。なるほど、だから俺にはビシビシと厳しくは接しなかったのだ。
だが、いくら人材派遣会社に入社したばかりだろうが派遣社員は違う。仕事内容に慣れてもらう最初の数ヶ月ならともかく、半年、1年といった単位で育成する義理は、派遣される側の会社にはない。
ボスは、自分のグループに配される派遣社員のために会社が払う金を、マネージャーから聞いてきっちり把握していた。つまり、製品の価格に対して上乗せされる彼らの人件費に照らし合わせて、相応の成果を求めたというのだ。考えてみれば、ごくごく当たり前の事である。
特に、派遣社員ではなく、協力企業の正社員だったOKDとODは対価もかなり高かったという。彼らの懐に入るかどうかは別にして、会社が負担する人件費としては、2人はボスよりも高価だった。だからボスは彼らに対してはビシビシと高い水準を要求した。
だが、ともすればこの会社では、正社員でも派遣でも、よっぽど仕事ぶりや人柄に問題がない限り、すぐに「仲良し」「和気あいあい」になっていた。
だから、ボスの割り切った考え方は恐らくドライに過ぎると思われるだろう。でもそれは、コスト意識に欠けるこの会社の象徴的な側面であったように思う。
立場が違う。金の出処が違う。求められるものが変わってくるのは当然のことだ。
ま、俺も当時は全然分からなかったけどね。
「会社の人間はビジネスパートナーであって友達ではない」
当時、そう言ったボスの言葉に「えー、ドライだなあ」と、内心思ったものだが、今ではその意味が分かる。今の会社の人たちとも飲みに誘っていただいたりして楽しくはやっているが、必要以上に仲良くならないようにしている。
さて、グループのプログラミング部門だが、N村の脱落とはさほど関係なく、ボスは次の強化策を考えていた。
やる気なさ過ぎで辞めたYと同時に派遣され、経験の差から一旦は他のグループ（俺がいたところだが）に渡した派遣社員Sの取り込みだ。
SでなくYを選択する痛恨のミスを犯したボスだが、Sの能力は見抜いていた。
だから、Sがまだ俺の下にいて暇だった頃 (^_^;から、上司には内緒で（俺には言ってたけど）ちょくちょくと細かい仕事をこっそり頼みにきたりして、既成事実化を狙っていた。
だがN村の脱落で、それは急務になった。
N村の脱落が決まった日、ボスとスギさんが真剣に話していた。と言うより、ボスがスギさんに対して問うていたと言った方が正しい。
「やっぱり、中核的な人材なんてそう簡単に獲得できるわけがないな。」
「...なあスギよ、お前覚悟あるか？ここのプログラムを取り仕切るつもりあるか？あるんだったら、今から課長のとこ行って、『もう中核的人材とやらを探す必要はない。自分がやります。だから、有望な若手を入れて下さい』って言ってこい。」
言われたスギさんは、黙って立ち上がると、小走りで部屋を飛び出して行った。
それから間もなくだ。まだ当時24歳だった有望な若手Sが、俺から遅れること約3ヶ月で正式にボスのグループに加入することになった。
つづく。
nobilesの投稿(22:26:47-2011-05-23) -
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